がんばれ乙女達!
局面32 「見知らぬ地に」
「うあああああ、、、うあああ、、、」
自分のした事を思い出し、後悔と恐怖に包まれた声を上げ、涙する『パイロット』
友人を亡くし、親友と死闘を演じた事を、、、
彼の心が、悲しみの闇に包まれていく。
だが、、、
闇ある所に、光がある。
光があるから、闇がある。
やさしく包まれた左手。
『歌姫』が、背中から、彼を包み込むように、体を寄せる。
「大丈夫です。落ち着いてくださいな」
そう言うと、彼の頭を自らの左胸へと導く。
「、、、あ、、、」
『静かな、外は夜に包まれた、この地で、あなたを待っていました』
「わたくしの、心臓の鼓動、、、聞こえますか?」
『あのとき、彼と決別して忘れたでしょう、微笑を取りにくるのを』
「、、、う、、うん、、、」
『あれから、、、あの出会いから少しだけ、時間が過ぎて』
「しっかりと、、、聞こえますか?」
『あの時の想い出が、わたくしの記憶の中で優しくなっています』
「良く、、、聞こえる、、、よ、、、」
トクン、、、トクンと、規則正しい音が、彼の耳に、、、心に響く
悲しみが、その音と共に、和らいでいく。
ゆっくりと、癒されていく。
赤子が母親の胸で、優しさに包まれ眠るように、彼女の胸で、、、
彼女の心に包まれる、、、
『外は星の降る、この場所で
何時でも貴方が、悲しい顔ではなく笑っていることを
いつもこの地で、願っていました
今は遠くても、またいつか会えるようにと』
「落ち着きましたか?」
「うん、、、ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
まだ痛む体で彼女の方を向き、微笑みかける『パイロット』
そして、それに応じるように、『歌姫』も優しく微笑む。
「そうですわ!喉、、、渇いていますわよね?」
「ええ、少し」
「それでは今、何かお持ちしますね?待っててくださいな」
傷つき、ボロボロになった彼の心
闇に染まる前に差し込む光
それは、優しく彼を包み込む。
『いつから、あの方の微笑みは、こんなに儚くなったのでしょう
あなたが優しいからたった一つの、選択の間違いで、壊れてしまうのでしょうね
それでも大切なものだけを、光にかえてあなたは、、、戦うのでしょう
この遠い空を越えて、あなたの大事な友人達の所に行くのでしょう。それがあなたの強さなのですから。
この星の降る場所で
この想いを、あなたに伝えたかった、届けたかった
「いつも側にいてあげます」と
「あなたの心が冷たくなったら、わたくしがその心を抱きしめてさしあげます」
たとえ、今は遠くても、あなたときっと会えると信じていましたから、、、
静かな、この場所で・・・』
「あら、すみません。これでは、、、飲めませんよね?」
「ま、、、まあ、ちょっと、、、」
彼のために注いだ紅茶がティーカップで湯気を立てる。
今の彼ではティーカップでは飲めないことに、いまさらながら気付く『歌姫』
「、、、そうですわ!」
「え、、、あの、、、」
彼のティーカップを手にし、彼のすぐ横に座ると、彼の口元へとカップを近づける。
「は〜い、お口を少し開けてくださいね♪」
「いや、その、、、」
「あらあら、どうなさったのですか?」
「あの、、、」
真横には彼女の顔があり、そんな状況で飲ませてもらうのは、さすがに照れるようだ。
だが彼女はそんな事には気付かず、、、
「口移しの方が、、、よろしいですか?」
「いぃっ!?」
さりげなく爆弾を落とす。
「少し、お待ちくださいね?」
「いや!そのままで良いデス!!カップから頂きます!!!」
「、、、そうなんですか?」
「はい!カップからで良いです!!」
「、、、分かりました。はい、どうぞ」
結局、彼女がサポートしながら、カップから飲む『パイロット』
「、、、残念です、、、」
「え??」
「何でもありませんわ♪」
、、、君、婚約者がいるんでしょ、、、
可哀想に、、、『幼馴染』、、、