オーストラリアで大規模な戦いが繰り広げられていた頃、ここプラントでは連日そのことに関する会議が開かれていた。
「カーペンタリアの部隊はすぐに撤収させるべきです。徹底抗戦など無駄死にを出すだけです!」
最高評議会の場で、エザリア・ジュールがカーペンタリアの部隊の回収を声高に叫んでいた。
彼女からみれば、カーペンタリアの部隊を徹底抗戦させるばど戦死者を増やすだけの無意味な行動としか思えない。
ましてその無意味な行動に、自分の息子が含まれているのだから絶対に容認できない。
「かといって、カーペンタリアに潜水母艦など派遣する余裕はないですよ」
「赤道連合の存在もあります。カオシュン基地から送れる戦力は限られますので、あまり効果はないのでは?」
しかし帰ってくる意見はどれも否定的なものばかりだった。エザリアにとって腹立たしいが一理あるものばかりだ。
ザフト軍は地球各地に部隊を展開させていた。彼らを回収する為にはどうしても多くの物資や人員を運べる潜水艦が必要となる。
ザフトが有する大型輸送機の数は少ない。このため必然的に兵力の移動は潜水母艦に頼っている。
だがその潜水母艦そのものがアラスカで多く失われているので、カーペンタリアへの救出部隊への派遣もままならない。
スピットブレイクの影響は確実にザフトを蝕んでいたのだ。
「かといって、カーペンタリアに展開している部隊のうち、少なくない数の兵士が開戦以来のベテラン達だ。
人的資源に劣る我々にそんな無駄遣いをする余裕などないぞ!」
エザリアの言う事も真実であった。
元々プラントは総人口が2000万人しかいない国家なのだ。兵役につけるコーディネイターなど限られる。
今回のような兵士の無駄使いをする余裕などないはずなのだ。
エザリアの主張を受けて、パトリックは暫く考える素振りを見せたあとに答えた。
「……良いだろう。救援部隊を向かわせる」
「ぎ、議長?!」
多くの議員が驚いたような顔をして、パトリックの顔を見る。
だが当の本人はそれを気にもせず続ける。
「無論、装備などはその場で放棄し、人員のみで撤収させる。それなら輸送機でもことたりるだろう」
「ですが制空権が……」
「ユーラシア連邦の勢力圏で飛ばすしかないだろう。こちらから根回しする必要があるが」
苦々しく呟くパトリック。
彼から言わせれば、例え核を連合が手に入れていたとしても順次生産を開始したフリーダムがあれば物の数ではない。
だがカーペンタリアの部隊を完全に見捨てると、世論がうるさい事も事実だ。
スピットブレイクの失敗、パナマ攻略失敗と言う立て続けの失態で、パトリックは非常に追い詰められている。
一連の敗北をクライン派に押し付けてはいるが、それもいつまで続くかは判らない。
ある程度のパフォーマンスは必要だった。
「すぐさま準備に取りかかれ。一兵でも多く撤収させろ」
徹底抗戦を命じてから24時間後に行われたこの命令の変更だったが、いささか遅かったことは否めない。
何故ならすでにクルーゼは独自に作戦行動を取っていたのだ。
しかしこの時、彼らにとってさらに忌むべき事態が進行していることを、彼らはまだ知る由も無かった。
青の軌跡 第14話
ワシントンD.C……地球圏最強国であり、地球連合の中核を成す大西洋連邦の首都である重要都市だ。
この重要都市の中枢、いや大西洋連邦の中枢であるホワイトハウスに激震が走った。
「ユーラシア連邦が単独停戦を企んでいるだと!?」
「はい。情報機関の報告によりますと、月の中立都市ですでに数回の交渉が行われているようでして」
大西洋連邦大統領であるグリフィスは驚愕のあまり絶句した。いや国務長官サカイを除く多くのメンバーも同じように絶句していた。
「馬鹿な……連中は一体何を考えているんだ?」
硬直が溶けたあとに出た大統領の疑問に、唯一冷静だったサカイが答えた。
「ユーラシア連邦は今までの戦いで国土、特に主要国の西ヨーロッパ諸国に甚大な損害を受けています。
さらに、アラスカ、オーブ、ビクトリアで多大な損失を被り、軍は再建に四苦八苦していると聞きます。
恐らくはこれ以上戦いを続けても、国益につながらないと判断してのではないでしょうか」
大西洋連邦反ブルーコスモス派の重鎮であり、国際協調派のサカイらしい答えにグリフィスは眉をひそめた。
「だからこの戦争から降りると? それは人類全体に対する背信行為だろう」
対プラント強硬論を唱えて大統領になったブルーコスモス寄りの彼にとってユーラシア連邦の行為は利敵行為どころか、
全人類(彼の主観ではナチュラルのみを意味する)に対する裏切りに他ならない。
「連中は空の化け物に魂でも売り渡したか、あの背信者どもめ」
散々同盟国を罵倒する大統領。だがエキサイトする大統領をサカイは覚めた目で眺めていた。
(アラスカで煮え湯を飲まされ、オーブ、ビクトリアで手痛い損害を受け、さらにヨーロッパでゲリラ攻撃に悩まされれば停戦だって
したくもなるさ。彼らにだって彼らなりの考えがあるんだ。世界は何も我が国の理論だけでは動いている訳ではない)
良識派で知られるサカイは、大統領の見識の狭さを嘆く。
(地球圏最強国の代表がこれではな………ブルーコスモスが幅を利かせるのもわかる気がする)
だが彼の主人(彼にとって非常に不本意なことに)は目の前の男なのだ。今は彼のサポートに徹するしかない。
「落ち着いてください、大統領閣下。まだユーラシア連邦が完全に停戦を結ぶと決まったわけではありません」
「これが落ち着いていられるか! だいたい外交は君の職域だろうが! なぜ連中の停戦交渉を掴めなかった!」
当り散らすように弾劾する大統領だが、サカイは涼しい顔で答える。
「我々はアラスカの件で剣呑になっていた関係の修復に手一杯でしたので、そこまでは掴めなかったのです」
サカイは自分が最後まで反対したアラスカの自爆作戦のことを出して、淡々と反論する。
「あの作戦でどれだけ関係が悪化したか、お解かりなのですか?」
サカイはこの反論に出席者は思わずうなる。確かにアラスカの作戦でユーラシア連邦と仲がこじれたのは事実だった。
だがここでブルーコスモス派の軍人であるキンケード大将が疑問をはさむ。
「それにしても、なぜユーラシアは停戦に応じたのでしょう? 現状で停戦すればどうなるかはわかっていると思いますが……」
思想はともかく有能な軍人のひとりであった彼からすれば、ユーラシア連邦の停戦が理解できなかった。
ユーラシア連邦は少なくともこちらがNJCの技術を入手したことを知っているはずなのだ。
そして、さらにこちらは地球連合軍のどの構成国にも先んじてMSの量産に成功し、それを実戦配備している。
ユーラシア連邦、東アジア共和国と言った国々が大西洋連邦に従っていたのは、そういったアドバンテージが大西洋連邦にある為だ。
そんな状況で停戦などすれば、どんな目にあうか理解しているはずだ。
「さらに現状では地球連合が有利な状況です。このままいけばザフトを地球から叩き出せるでしょう」
「ふん、どうせ連中から何かしら餌でももらったんだろう」
グリフィスは吐き捨てるように同盟国をけなす。
だがひとしきりけなし終えると、グリフィスはやや冷静さを取り戻したのか彼は静かになった。
「まぁ良い。今は連中の暴挙をいかに止めるかを考える必要がある」
「ですが、彼らも主権国家です。こちらが相手の外交にあれこれ口出しすることは出来ないと思いますが?」
このサカイの言葉に、グリフィスは鼻で笑う。
「は、よくそんな悠長なことを言ってられるな、国務長官。良いかね、もしユーラシアが脱落すれば宇宙反攻作戦に影響がでるぞ」
これにキンケードが頷く。
「確かに。仮にユーラシアが脱落すればこちらの宇宙艦隊は30%ほど戦力がダウンします。
そうなれば艦隊のやりくりが非常に苦しくなります。恐らく予備兵力が皆無になるでしょう」
地球連合軍は宇宙艦隊の再建を急ピッチで推し進めていたが、それとて限界がある。
開戦初頭の消耗や、膠着した戦線で失われた貴重な兵士、将帥……これらの消耗を考えれば再建できる艦隊の規模など決まっている。
航宙艦を操るためには技量と経験が必要とされる。その習得は一朝一夕で成し遂げられるものではないのだ。
入れ物ばかり作っても、中身が無ければ意味がない。ソフトウェアである人間がいなければ戦争はできないのだ。
「軍の予算を増額してもらってはいますが、教官となるベテラン兵士にも事欠く有様です。
仮に現在再建している艦隊が壊滅すれば、地球連合は宇宙軍の再建に2年は必要となると思われます」
「!! 大統領、あと2年も戦争は続けるのは財政上の問題から絶対に認められません!」
「そうです!! これ以上国民に負担を強いる事は出来ません!」
キンケードの意見に財務長官など文官が猛反発する。
彼らの言う事も一理ある。ハイテク化が進んだ近代戦闘はひどく金がかかるものなのだ。
ハイテク化すればするほど兵器一個あたりの値段は跳ね上がっていく。
さらに戦闘機やMSなどは日々整備をしなければならないのだ。必要な整備部品もどこからか調達しなければならない。
無論、医薬品、食料品など人間が必要とするものにも莫大な金がかかる。必要な資金をひねり出す役人達からすれば
戦争など早めに終わらせてもらいたいというのが本音だった。
「……キンケード大将、もしユーラシア連邦が脱落した場合、地球連合軍がザフトを打ち破るにはどうすればいい?」
グリフィスの問にキンケードはやや躊躇ったのちに答える。
「核ミサイルの無制限の使用を許可いただければある程度の勝算はあります」
だがこの答えにサカイは猛反対する。
「馬鹿な、核を無制限に使えばどうなるか判っているのか?! 確実に核よる報復合戦を呼ぶぞ!」
「オーブは連中の核で滅んだのですよ? すでに相手はこちらに核攻撃を加えているのです。
こちらが報復する理由は十二分にあると思いますが?」
「核による報復はやむをえないが、プラント本土への核攻撃は反対する。私はプラントを破壊するようなことは容認できん。
あれは富の源泉なのだ。あれを叩き壊しては戦後の復興にも支障をきたす」
「化け物連中がこの戦争を引き起こしたのですよ? 殲滅されても文句は言えないと思いますが?」
(だいたいブルーコスモスが暴走した挙句にユニウス7に核を撃ち込んだのがことの発端だろうが!)
喉元まで出掛かった罵声を、すべての精神力を費やしてサカイは飲み込む。そして大統領に向かって進言する。
「かと言って、プラントを叩き壊すのは賛成できません。あれは我が国が世界の覇権を握り続けるための道具なのです」
サカイとてコーディネイターが好きと言う訳ではない。
だがその個人的感情を差し引いても、彼はコーディネイターの完全殲滅などは容認できない。
まず現実的に言うとプラントとは経済的植民地であり、資源供給地であり、理事国に奉仕する貴重な奴隷なのだ。
大西洋連邦を筆頭に理事国が栄えていたのは、プラントから様々なものを搾取して来たおかげだ。
これを失えばその経済的損失は計り知れない。サカイのような政治家にとってそんな損失は絶対に認められない。
それは彼のスポンサーたる財界も同意見だ。
(私もスポンサーの意向には逆らえないんでね。それだけは阻止させてもらう)
ここでサカイはブルーコスモスに穏健派のマリア・クラウスが復帰したことを思いだす。
(そうだ。彼女を通じてブルーコスモスの強硬派を食い止めよう。何ならアズラエルと直談判しても良い。
私が頭を下げる程度で事態が改善するなら安いものだ)
現実主義者の彼にとって容認できないのはブルーコスモスの掲げるコーディネイターの絶滅政策であった。
それさえ無ければ、彼はブルーコスモス派との妥協も利益になるな、とさえ考えはじめた。
そんなことを思いつつ、彼はユーラシア連邦とプラントの停戦を阻止すると明言した。
「何としても連中に停戦を思い止めさせてみせます。ですから核の無制限使用は思いとどまってください」
そんなサカイにグリフィスは釘をさす。
「わかった。だがそう言うからには何としても止めろよ……何だったら連中の軍本部に戦術核を撃ち込んでやるとでも言っても良い」
「それは拙いと思いますが……」
別にこの時代、大量破壊兵器は核だけではない。生物化学兵器、いわゆるBC兵器だってその脅威は健在だ。
ユーラシア連邦が報復としてそれを持ち出さないと言う保証はない。
「判っている。だが連中にはこちらが核を一方的に使える立場であると判らせる必要がある」
グリフィスは少しだけ考える素振りをすると、キンケードに尋ねた。
「キンケード大将、NJC搭載型核ミサイルの生産はどうなっている?」
「一ダースほど揃っています。きちんと起爆するかの実験も必要ですが……」
「そのうち、数基をカーペンタリアに撃ち込むことは可能か?」
この言葉に会議に参加しているメンバーの多くが愕然とした。だがブルーコスモス派のキンケードは淡々と答える。
「可能です。ですが撃ち込む際には友軍を避難させておく必要があります」
「そんなことは判っている。可能なら可能とさえ答えてくれればよい」
そう言うと、グリフィスは改めて命じた。
「カーペンタリアへの核攻撃を行う。作戦の変更をキンメル中将に伝えろ」
グリフィスはカーペンタリアを核で吹き飛ばすことで、大西洋連邦が核を使えることを内外に示すつもりだった。
この示威行為でユーラシア連邦を牽制し、同時に地球連合内での大西洋連邦の覇権を確固たるものにする……それが彼の目的だ。
さしものサカイも軍事目標に対する核攻撃、それも限定的な報復攻撃まで反対することはできなかった。
かくして地球連合は開戦以来、2回目の核攻撃をザフトに見舞うこととなる。
この核攻撃の実施の決定は即座にアズラエルの元に届けられた。ユーラシアが単独で停戦を目論んでいると言う情報と共に。
「なるほど………ユーラシアが」
「はい。連中を牽制するためにも核を使うと大統領は言っていたそうです」
ブルーコスモス本部で、サザーランドから受け取った報告にアズラエルは顔をしかめた。
「核を使うと言うことは、今後はザフトも容赦なく核を使うかもしれませんね」
アズラエルはジェネシスの存在を思い出し、今後の展開を憂いた。
(さてさてどうしたものか……核を使うのはもう覆せないから仕方ないにしても、その後が問題だ)
人類滅亡への序曲が鳴り響いているような気がしはじめたアズラエルは、今後どのような手を打つべきかを考え始めた。
(カーペンタリアを核で吹き飛ばせば、ザフトもこっちが核を使えることに気づく。
恐らくボアズにフリーダムを配備するだろうな。こちらの核動力炉搭載機の開発も進んでいるとはいえ、
あまり歓迎できるものじゃない……ビクザムを何機もソロモンに配備されるようなもんだからな)
アズラエルはフリーダムのコンセプトは迎撃にあると踏んでいた。
(あの移動砲台が何機も配備されるとボアズ突破は至難の業だな。それにミーティアがついたら最悪だな。
あれってどう見てもデンドロビウムだよな……というか唯でさえ強いあの2機をさらに強化するのは反則だろう)
しかし戦争に反則(厳密には戦争にもルールはあるが)もくそも無い。最終的に勝ったものが正義なのだ。
(拠点攻撃用MSを改良して、対MS戦闘でも出来るようにしておこう。
核ミサイルとは別に拠点攻撃兵器も開発しているからな。フリーダムを抑えればあとは何とかなる)
アズラエルが構想しているプラント本土攻略作戦……その前段階とも言うべき、ボアズ攻略戦を外すわけにはいかない。
そんな風に今後の展開に頭を悩めるアズラエルとは打って変わって、サザーランドはかなりにこやかだった。
「アズラエル様、何故そう悩む必要があるのですか?」
「何故って……連中も報復してくる可能性があるでしょう。そのときに生じる被害を考えていたんですよ」
アズラエルの言葉にサザーランドはなるほどと頷いた後、アズラエル、いや正確にはアズラエルに宿る修の精神を
凍りつかせるような言葉を口にした。
「しかし核の保有量ではこちらがプラントを圧倒しています。多少の損害はでるでしょうが戦争には必ず勝てます。
いざとなれば、新たに連合に加盟した赤道連合やスカンジナビア王国などの部隊を盾にすればよいでしょう」
所詮、死ぬのは末端の兵士達。気に病むことはない……サザーランドの考えにアズラエルは心底震え上がった。
自分の目の前にいる男は本当に自分と同じ人間なのか……とすら思い始めた。
「ははは、まぁそうだね」
笑って返すが、心のそこでは、絶対に自分はこうはなるまい……と彼は誓った。
大西洋連邦の中枢で核兵器の使用が決定した頃、ここオーストラリアでの大きな動きがあった。
そう、ザフト軍総力出撃の報が地球連合軍艦隊総旗艦ハルのキンメルの元に届けられたのだ。
「なるほど、連中は守備軍の総力を挙げて出撃したのか」
「はい。衛星軌道に展開中の第6艦隊からの報告では、第13軍に直進コースを取っている部隊が主力隊と考えれる規模だそうです」
現在、カーペンタリア上空は完全に連合軍の支配下にある。その為にザフトの動きは衛星軌道から筒抜けだった。
「連中は第5軍より第13軍を先に撃破するつもりなのか?」
キンメルは敵の意図に驚きを隠せなかった。
第13軍司令官のパウルス少将はやや優柔不断の傾向があるがそこまで無能ではない。だからそう簡単にやられはしない……。
少なくともキンメルはそう思っている。しかし他の幕僚はそうは思っていないらしい。
「通信を傍受した結果、敵主力隊の指揮官はクルーゼのようです。恐らくパウルス少将の第13軍は苦戦は間逃れないでしょう」
「あのクルーゼが直接指揮しているのか?」
「擁する部隊もそれなりに精鋭のようです。尤もパウルス少将も一方的敗北は被らないと思いますが……」
「ふむ。だが第13軍が打撃を受ければ後々の戦局に影響がでかねん。地上での戦闘はこれで終わりではないからな」
「では航空支援を行いますか? 最高司令部に打電すれば特殊部隊の派遣も可能と思いますが」
「ふむ……」
だが彼の艦隊の艦載機は初期の航空戦での疲労が残っている。
弾薬の消耗分こそ補充したが航空機の補充は明後日以降になる予定だった。
「動ける航空隊を出す。陸上空母に降ろせば航続距離の問題は解消できる。あと空中給油機も派遣するように司令部に打電しろ」
「了解しました」
一方で、ザフト軍総力出撃の報はただちに各軍司令部にも届けられていた。
「こちらに向かって来るのは2個師団相当か……と言う事はこの部隊は時間稼ぎのための部隊か」
ブラットレーは敵の目的を看破すると、今後の策を練り始める。
(2個師団に相当する戦力か……これを撃滅できれば大きな戦果だが、そう簡単にいくかな?)
相手はベテラン揃い、逆にこちらのMSパイロットはひよっ子揃い……物量で圧倒しているがどこまで戦えるか非常に怪しい。
(こちらは陸上戦艦、陸上巡洋艦にさらにアークエンジェルがある。これらを前面に出して火力で押しつぶすか)
MSが心もとないなら、連合軍お得意の火力で叩き潰すことをブラットレーは考えた。
わざわざ相手の得意分野で戦ってやる必要はない。正面からの一騎打ちなど中世で終わっている。
「よし敵を一気に踏み潰す。向かってくる部隊の抵抗を撥ね退ければ、抜け殻同然のカーペンタリアを制圧することなど容易い」
カーペンタリアに向かう途中には幾つかの前線基地が点在するが、脅威ではないと彼は判断する。
この判断を受け、第5軍は予想される敵との接敵場所に向かった。
ついにザフトが動き出したとの情報は、緩みきったアークエンジェルの空気を一変させた。
常にザフトと戦ってきた彼らはザフトの脅威が骨身にしみていたのだ。だらけた雰囲気は消え、緊迫した空気が流れる。
そんな緊迫した雰囲気の中にひとりの少女がいた。
「いよいよね」
自室のベットの上で仰向けになりながら、フレイは迫り来る実戦に思いをはせる。
「私の償いの為の戦いが……いえ、私の戦いが」
己の鎧として与えられたストライクルージュ、彼女を護衛する105ダガーを見た彼女は自分が何を望まれているかを理解していた。
「私は前線での広告塔ってわけね……」
だが彼女はそこに甘えるつもりはさらさらない。
「私は誰かに守られて、安全な後ろにいるつもりはないわ。私にお姫様役をやる資格なんて無いんだから」
強い意志をその瞳に宿しながら、彼女はそのときを待つ。
あとがき
すいません。サイの出番は次回になってしまいました。
いえ、色々と裏方達の動きとか書いていたらいつのまにかこうなってしまいまして(爆)。
特に地球連合のお偉いさんの描写なんてほとんど無かったので、色々と書いてみたかったんです。
さてついに核攻撃が承認されたわけですが……ますますクルーゼが生き残るか確信を持てなくなってきた(苦笑)。
さて次回(多分)は戦闘になります。SEED本編キャラによる大規模戦闘です。
フレイ&サイがどこまで活躍するかは未定です。まぁ最初から大活躍はないと思いますが……。
それでは青の軌跡第15話でお会いしましょう。
代理人の感想
クルーゼは云々とだけあるのは、イザーク坊ちゃんの運命は既に決まっているということでしょうか(笑)。
まぁそれはともかく。
冒頭の大西洋連合トップのやり取りがブッ○ュとパ○エルとラムズ○ェルドの会話に見えて仕方が無かった、
とゆーか読んでて大笑いしてました(爆)。
これが現実なのかなぁ(核爆)。