パーンッ パーンッ!
 

 乾いた音が、太平洋上に浮かぶ無人の(筈の)小島、通称メリダ島の空高くに響いた。
 
ワーッ、ワーーッ!
 
 と言う歓声が、メリダ島全域を覆い尽くした。

 いつもはとても静かなはずのこの島で一体何が起きているのか・・・・・・

 その疑問は、この言葉で氷解することになる。
 
「これより、“ミスリル”西太平洋戦隊“トゥアハー・デ・ダナン”による、第一回運動会を開催しまーーす!」
 







ルメタル・パニック
メリダ島スポーツウォーズ(前編)

プレゼンテッド バイ E.T
原作 TMK









 そもそも事の起こりはと言うとだ。

「最近クルーのストレスが溜まっているようです。

 何か発散させる機会を設けた方が良いのではないでしょうか」

 と言う、強襲揚陸潜水艇トゥアハー・デ・ダナン(戦隊と、戦隊の中核となる潜水艇の名前は同じ)の副艦長であるマデューカス中佐の言葉に、

「そうですね。

 それじゃあ、日頃の訓練の成果も一緒に見られるように、こういう形にしたらどうでしょう・・・・・・」

「こういう形?」

「はい。

 ・・・・・・運動会」

 こう、トゥアハー・デ・ダナン艦長のテレサ・テスタロッサ大佐が答えたのだ。



 こうして、(あらゆる意味で)世界で一番凄い運動会が始まったのだ。




 
「第1ー種目っ!
 
 ミスリル式障害物走ーーっ!!」
 
 異様にテンションの高い“SRT”というエリートグループに属する、クルツ・ウェーバー軍曹が魂の底から叫んだ。
 
うおぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉ!!!
 
ドンドンドン、パフパフパフ!
 
 ・・・・・・凄まじい歓声と、太鼓などの音が響いた。

「第1グループは赤組相良宗介軍曹、白組メリッサ・マオ曹長、青組ベルファンガン・クルーゾー中尉、黒組ヤン・ジュンギュ伍長。

 初っ端からハイレベルなメンバーです。
 
 それでは位置について、よーい」
 
ズダーーン!!
 
 散弾銃(実弾)の音を合図に、四人が一斉に走り出す。

 ・・・・・・その時に空から鳥が数羽、ぼとぼとっと落ちてきたのは言うまでもない。

 何たって「お約束」だから。





 コースは樹林の中、150mの直線、20mをかけて90°カーブし、ラスト30mの直線で構成されている。

 200mのコースには、18の障害物&トラップがある。





 まず先頭に立ったのはマオとベン(ベルファンガン・クルーゾー中尉の愛称。・・・マオしかそれで呼んでないみたいだけどさ)。

 その2人の目の前に、障害物競走定番のハードルが来た。

 2人がそれを飛び越え、着地した瞬間。
 
ドゴーーーンン!!
 
 埋まっていた地雷が爆発した。

 ・・・・・・ミスリル式なのだ。

 これぐらい当たり前だ。

 それを見て汗をだらだらと流すヤン伍長。

 宗介は慌てず騒がず懐から取り出したモノを投げつける。

 投げたものとは、手投げ弾・・・だった。
 
ドゴォン! ズガァーンン!!
 
 手投げ弾が爆発、次いで地雷が誘爆した。

 さらに爆風で吹っ飛んだハードルがヤンの目の前のハードルにぶつかり、クルツの方へと飛んでいく。

「ギャーーース!」

 クルツの悲鳴が聞こえるのはお約束♪

 ヤンは、

「ラッキー!」

 と言いながら、第二の障害である地雷を飛び越えた。

 だが、彼は気付いていなかった。

 宗介のコースに、だが、爆風で被さっていた土が吹き飛ばされたために、輪っかになったロープが露出していたことに。

 故に。
 
「どうわあぁぁぁぁぁああ!」
 
 彼は木に吊された。

 逆さ吊りで。

 宗介は軽くジャンプして縄を避け、右腕を振って、袖口に隠した銃を装備、そして撃つ!
 
たんっ、たんっ、たたんっ、たんっ!
 
 銃弾が、手投げ弾と地雷が巻き起こした煙を引き裂いて地面に吸い込まれる。

 その瞬間、爆発、爆発、爆発ぅっ!
 
 ・・・・・・今度は地雷一個じゃなく、地雷群だったらしい。

 それを見て、顔を青白く染めるヤン。

 だが、
 
「負けてられるか!」
 
 再起動を果たし、ブーツに仕込んだグルカナイフを、腹筋の力で取り出し、縄を切る。

 葉擦れの音がし、ヤンが万有引力の法則によって、地面に引かれる(落ちる、とも言う)。

 しかし彼は空中で猫のような身のこなしで、見事に着地をする。

 だが、地上15mから落ちた衝撃は凄まじく、

「い・・・・・・痛ひ・・・・・・」

 と、涙目になる。

 これで犬耳と尻尾をつけたら、きっと人気が出ることだろう。

 だが、この際そんなことは関係ない。
 
「ひ、ひでえ・・・」

 彼は、集中力を最大限に引き上げ、宗介を追撃した。



 ヤンがやっとこさ足の痺れから回復し、宗介目掛けて走り始めたとき、宗介は14の罠をくぐり抜け、ラスト前のカーブに入っていた。

 宗介がカーブを抜ける直前、跳んだ。
 
「負けてたまるかぁっ!」
 
「軍曹、後ろががら空きだ!」
 
 ・・・・・・いつの間にか復活を遂げたマオが足を引っかけようとし、ベンが後ろからマシンガンを撃ってきたのだ。

 宗介はそれを何とか回避し、逆にグレネードを放った。
 
「「何ィっ!?」」
 
 どっごぉぉぉぉぉむ!
 
 大爆発!
 
 宗介はグレネードを放ったときの反動を利用し、草むらに隠れたロープも飛び越える。

 しかし、マオもベンも全然何ともなかった。
 
「喰らえ!積○気冥界波!」
 
 マオの声がすると同時に、何か、得体の知れない白いもやが宗介を目掛けて飛んでくる。

 宗介は慌てず騒がず、
 
「クリス○ルウォール!」
 
「なにっ!?」

 もやが、宗介とマオの間に突如出現した透明な壁に阻まれ、逆流してきた。
 
「ぐわあーーッ」
 
 マオの体が傷だらけになる。

 そしてハー○スに生き返らされた巨○座の聖闘○のセリフを言う。

「ぐっ・・・うう。

 こ・・・こんなばかな。

 ○界波の威力が全てこの私にはねかえってきた・・・

 せ・・・せっかく生き返ったというのに危うくあの世へ逆戻りするところだったぞ・・・うう・・・」



 お前死んだのか?



「クールに行こうぜ!
 
 オーロラエ○スキュージョン!」
 
 ベンが腰だめに構え、手を空に向けて、組む。

 そして振り下ろす。

 そこから派生するのは−273℃という超低温の凍気!

 しかし宗介は反則的にも、某○鳥座の○闘士のセリフを言いながら同じ技を返す。
 
「オーロラエクス○ュージョン!」
 
 それは−273.15℃の凍気。

 そしてそれはつまり、絶対零度。
 
 凍気を操る聖○士の戦いにおいては、より低温を操る聖闘○が勝つという。

 よって、ベンはアレの通りに、吹き飛ばされた。

「−273℃の凍気を押し返すとは・・・・・・まさか絶対零度の凍気!?」

 ベンは驚愕した。

 しかし今は関係ない。
 
「これで止めだ・・・
 
 ギャラクシアンエクスプロージョン!!!!」
 
 超空間から現れた小惑星群がマオとベンに向けて降り注ぐ!
 
「「うわあああああぁぁぁぁっっっっっっっ」」
 
 2人は血塗れになって倒れた。

「聖衣も無しで生きているとは・・・・・・

 貴様らなかなかやるな」

「おっさきー」

 ヤンが自分の技の直撃を食らっても尚生きている2人に驚嘆していた宗介の横を、漁夫の利で駆け去っていく。

「あっ、貴様!」

「勝負の世界は厳しいんですよ、軍曹!」

「スターライトエ○スティンクション」

 ヤンがスターラ○トエクスティンクションの光に包まれ消滅した。



 ラストのラスト。

 宗介はゴールの手前10mに来ていた。

 突破した罠は17。

 罠は後一つ残っている。

(どこだ・・・・・・

 どこにあるんだ・・・?

 最後の罠は・・・・・・)

 残り7m

 6m・・・

 5m・・・

 4m・・・

 3m・・・

 2m・・・

 1m・・・

 50cm・・・

 40cm・・・

「デッドリードライブ!」

 何処かへ消え去ったはずのヤンが復活し、超音速で迫ってきた。

 そして、
 
 びたーーんっっっ!!
 
 ・・・・・・透明な壁にぶつかって、薄っぺらの紙みたいになった。
 
「なにぃっ!?」
 
 キッキィィ〜〜
 
 どこぞの婦警さんに匹敵する足ブレーキで、透明な壁ギリギリ手前でストップする。

 ・・・・・・正確にいうと、2.4cm手前。

「ま、まさか・・・・・・

 クリスタル○ォール!?」

 驚愕も露わにする宗介。

 そしてさらに・・・・・・

「我は踊る○の楼閣!」
 


 嘘ォっ!?
 


 べちゃっ!
 
 ・・・・・・マオが潰れた。

 オマケに、

「トベ○ーラ!」
 


 マジっすかぁっ!?
 


 でもやっぱり。
 
 ごんんっ!
 
 壁にぶつかって、潰れる。

(どうしろというのだ、一体!?

 コースから出れば失格になる。

 前には行けない。

 では上空は・・・・・・?)

 ぽいっ

 宗介は自らの疑問を解消すべく、ラバーボール銃をぶっ放した。

 じゃきんっ
 
 どかっ!
 
 ラバーボールは見えない壁に阻まれ、明後日の方向へ飛んでいった。
 
「ぎゃーーす!」
 
 遠くでクルツの悲鳴が聞こえるが、この際無視だ。

(ならば地下はどうだ?)
 
「ワームズ○インド!!」
 
 背中から伸びてきた金属的な輝きを放つ黒い触手が土の中に消え、ゴールの向こう側から現れた。

 それを見て頷く宗介。


 
「召還!タイ○ン!!」
 
 突如、影が覆った。

 そして・・・・・・
 
 ズッシィィィィィンンッッッ!!!!
 
 巨大な影が落ちてきた。

 全高8m近いASにも匹敵する大きさの人影。

 その人影の正体は、
 
 腰布を巻いたむさいオッさんだった。
 
 彼が着地した衝撃で、震度7(と表されるが、実際は震度10とか11とか言いたくなるほどの)巨大な地震が起こった。

 そして巨大な地割れができる。

 その地割れは宗介のコースだけに生まれ、地下から透明な壁の下を通り、ゴールまで続いていた。



 宗介は土の中を移動して、ゴールへと辿り着いた。









 
「結果発表〜〜〜!!!!」
 
 何故か(爆)包帯だらけのクルツが叫んだ。
 
「第4位!
 
 泣く子も黙る鬼曹長、メリッサーぁ、マオ!!」
 
「殺すぞ、クルツ!」 
 
「第3位!
 
 意外や意外のSRT所属、ウルズ1。
 
 ベルファンガン・クルーゾー中尉!!」
 
「余計なお世話だ!」
 
「第2位!
 
 そんな馬鹿な、嘘だろ!?オイ!!
 
 ヤン ジュンギュ伍長!!」
 
「非道いよ、その言い方は・・・・・・」
 
「第1位!
 
 ある意味予想通りの、メリダ島の最終兵器!
 
 その名は、相良ぁー、宗介ぇぇっっっ!!!」
 
「む。」
 
「ではー、第2グループ、行ってみようかーっ!
 
 それでは位置について、よーい」
 
ズダーーン!!
 
 













 ・・・・・・・・・・・・

 戦いはまだ始まったばかりだった・・・・・・・・・





 あとがき

 原作者のTMK殿は、我が親友(と少なくとも僕は思っている)の弟です。

 学校で、「弟が、『フルメタでウサギとカメをやってみてくれ』って言ってたよ」と。

 それでインスピレーションが湧いて、こーゆー作品が出来上がりました。

 ……って、前中後編の三部作ですけど。



 さぁーて、他にはどんな競技が良いかなぁ?