クルツのハイテンションな声が、メリダ島に響いた。
「さあ、競技も残すところ後一つ!
それは、『匍匐前進競走』ぉぉぉぉぉっっ!!
この競技ではいる得点は!何と!
2000点だぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
一瞬、時が止まり、誰かが呟いた。
「今までの競技の意味は……?」
更なる沈黙が訪れた・・・・・・・・・
フルメタル・パニック!
メリダ島スポーツウォーズ(後編)
沈黙は、太陽が傾くまで続いた。
まず最初にヤンが復活した。
「な、なあクルツ、とりあえずさっさと始めないと、時間が来るぞ?」
「あ、ああ、そうだな。
それじゃぁ気を取り直して、最終種目『匍匐前進競走』を開始だぁぁぁ!!」
ひたすら盛り上がりまくるクルツにテッサが声を掛けた。
「だけどクルツさん」
「何?テッサ」
「あの・・・・・・もう、時間がありませんよ?
私たち
TDDがレクリエーションを許可して貰った時間まで、後1時間です。
さっきの凍ってる間に数時間が過ぎてしまいましたから・・・・・・」
「・・・・・・それって、マジ?」
「はい。マジもマジの、大マジです」
「・・・・・・・・・となると・・・1レースしかできない・・・・・・か・・・・・・・・・」
クルツが一頻り考え込んだ。
そして一言。
「えー、時間的な都合によりましてー、匍匐前進競走は最終チームだけとのことになりますー。
御了承をお願いしますー」
「了承!(0.000001秒:宇宙新)」
匍匐前進競走に参加することになっていたメンバーの2人以外全員が了承した。
それはもう、某・邪夢を作る女性をも超えるスピードで。
それは、パシリ一号どころか一匹狼マンをも超えるスピードだった。
了承しなかった内の一人は宗介で、話がよく分からずに目を白黒させていた。
もう一人はベンで、ひたすらクルツに文句を言った。
最終レース参加者の四人は後2人いる。
一人はマオで、「今度こそ宗介に勝ってやる!」と意気込んでおり、もう一人はクルツで、やる気は無くはなさそうだ。
さて、ここで一応匍匐前進競走の説明をする。
ただ単に匍匐前進で競走するだけです。
コースには、山ほどのトラップがあります。
そのトラップにかかる覚悟があれば、別に走っても構いません。
ですが、トラップは基本的に膝丈あたりのものが多いので、走るのは大いにマイナスになります。
ずだーーーんっっっっ
最早恒例とした散弾銃によるスタートの合図。
まずトップに躍り出たのは黒組のクルツ。
彼は両足で走っていた。
「匍匐前進なんかに付き合ってられますかってんだ」
しかし、次の瞬間、
ドゴオオオオオオンンン!!
細いワイヤーに引っ掛かり、爆弾を爆発させてしまった。
「ぎゃーす!」
クルツは真っ黒焦げになった。
だが、それでも走っていた。
「クルツ、人間じゃないな」
マオが呟き、宗介とベンは力の限りその言葉を肯定した。
その時、
カチリ
・・・・・・ベンの肘の下から、そんな音がした。
今までの経験から、それが対人地雷であることが、ベンには分かってしまった。
青ざめるベン。
彼は、クルツやマオやカリーニンにマデューカスのような、人外の存在ではない。
死んだらそれっきりなのだ。
もちろん、復元も出来ない。
彼らのように『復元』できるのは、本来上級天使や上級魔族ぐらいなのだから。
・・・・・・と、『バス○ード』ではなっている。
マオがベンに言った。
「ベン・・・・・・短い付き合いだったね。
キミのことは忘れないわ、5分・・・いえ、5秒ぐらいは」
宗介も言った。
「さらばです、中尉。
あなたには恨みがたくさんありましたから、同情はしません。
ですが、一言だけ言っておきましょう。
どうか・・・・・・
地獄に堕ちてください」
・・・・・・止め刺してどーするよ
そーいうわけで、ベンは脱落した。
彼にも無限の再生能力があったならば、歴史は別の方向へと動いていただろう。
しかし、所詮それは『 i f 』の出来事でしかないのだ。
未だトップを独走するクルツだが、その姿は惨憺たる有様だった。
まず、さっきの爆傷。
そいで、頭を矢で射抜かれ、斧がめり込んでい、土手っ腹には槍がぶっ刺さり、 左胸にはミサイルが突き刺さって、右肩がえぐり取られ、背中にも数多くの矢が生えている。
目は眼孔から漏れ出て、何となく『腐った死体』を思い浮かばせる。
ついでに周りをブンブンと蝿の大群がたむろっている。
しかもそれで走っているのだ。
辺りに死臭を撒き散らしながら!
オマケに彼が通った後は、草木が枯れ、腐り、土の表層にいた虫が仰向けになってピクピクと痙攣し、息絶えていくのだ。
・・・・・・この日より彼は、ソンビの中のゾンビ(ゾンビオブゾンビ)と呼ばれるようになった。
そしてまた、彼はトラップに引っ掛かった。
ぎゅいっ
びだーんっっ
クルツの前の地面が盛り上がり、鉄板が出てきた。
そして彼はそれに正面衝突。
「ふはははは、効かんよ!そんな攻撃!!」
そう言いながら、鉄板に人型の穴を空け、彼は走り去った。
・・・・・・鼻が潰れてとっても間抜けな顔になっているが。
マオと宗介は、壮絶なデッドヒートを繰り広げていた。
マオが抜けば、宗介が抜き返し、そうすればまた、マオが抜き返す。
しかし、その勝負も、マオが虎ばさみに引っ掛かり、終わった。
さすがの彼女も、これには勝てなかった。
セラフィムダスト(無責任カルテット参照)がテラテラ輝いて見えるほど塗られていたからだ。
セラフィムダストは、致死量があまりに少なすぎて計測不能という、超猛毒だ。
宗介は、そのセラフィムダストが体中に回り、動けなくなったマオに言った。
「マオ、安らかに眠れ」
「勝手に殺すな!」
そんな毒が全身に回っているのに死なない。
・・・・・・結局、彼女も人間ではないな。
こうして、匍匐前進競走は宗介とクルツの一騎打ちになった。
だが、宗介とクルツの差は歴然としている。
誰の目にも、クルツの勝ちは明らかだった。
「クールツぅぅーー!!」
「ソースケぇぇーー!!」
どっかのマンガのように、かなり離れた位置にいる2人はお互いを見つめ合い、咆吼するかのように名前を呼んだ。
別にそれだったらいいのだが、クルツは腐った死体状態(汗)
振り向いたときに眼孔からこぼれ落ちていた右目が、地面に落ちた。
「あっ、右目右目……」
クルツはしゃがんで右目を取ろうとした。
が、その時にワイヤーに引っ掛かった。
「あ・・・・・・」
大・爆・発!!!!
クルツは爆風で宗介の後方100mへと吹っ飛ばされた。
ついでに右目も吹っ飛ばされた。
「勝機!」
宗介はここぞとばかりに、猛然とダッシュをかけた。
「アマい、アマすぎるぞソウスケぇ!」
だが、匍匐前進のダッシュにはやはり限界があり、人間の限界を超えた超魔生物クルツは1秒でその差を縮めた。
超魔生物になったからには呪文は使えないが、驚異的な再生能力が発現する。
文字通り、一瞬で腐った死体からノーマルクルツへと再生する,
いや、それだけではなく、異形の化け物へと変化した。
その化け物とは、『ザボエラ』・・・・・・。(名前、間違えてたかも)
クルツ・・・・・・お前、魔族だったんだな、一度は竜の紋章を持つ少年を追いつめた。
そして彼は宗介へと襲いかかった。
だが、宗介も普通の人間ではなかった。
「斬魔剣、弐の太刀!」
景太郎仕込み(中編参照)の技をかました。
サバイバルナイフで……(汗)
「ぐああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
神鳴流の技で弐の太刀と名が付く技は、狙った相手のみを切り裂く技。
そしてまた、『魔』に対して最も効力を発揮する技でもある。
よって、クルツは悶え苦しんだ。
超魔生物の形態を維持できないほどに。
通常の状態に戻ったクルツは、宗介に言った。
「宗介、非道いじゃないか、親友のオレを攻撃するなんて」
「正当防衛だ」
「ったく、もー。
じゃ、今度こそおっさきー」
そう言うとクルツはまた走り出した。
どがあぁぁぁぁぁぁん
どがあぁぁぁぁぁぁん
どっごおおおおむっ
・・・・・・クルツが走っていった方向から、凄まじい爆音が何度も聞こえた。
クルツは、何回どころか、何十回もトラップに引っ掛かり、やっとトラップを回避するようになった。
トラップを回避しながら進むだけの余裕が生まれたからだ。
そして遂に最後のトラップ・・・・・・?の所まで来た。
何故これが最後と分かったかというと、
「この先最後の障害。
料理の後始末はきちんとしましょう」
と書かれた看板があったからだ。
最後の言葉の意味がよく分からなかったが、クルツは先へと進んだ。
するとそこには、
バットを持った紅葉と黒煙がいた。
「え?え?え?え?」
クルツは混乱の極みに叩き落とされた。
「これがトラップなのか?
いや、しかし、これはどう見てもただの障害であってトラップじゃない。
じゃあ、一体何なんだ?」
クルツは1秒ほどの間に、そう考えた。
しかし、クルツの中で結論が出るよりも先に、紅葉と黒煙が動き始めた。
カキーーン
カキーーン
カキーーン
カキーーン
カキーーン
×数百回
紅葉と黒煙が、バットで野球ボールをクルツに向けて打ちまくった。
千本ノックっすか・・・・・・?(滝汗)
全てのボールは、ものの見事にクルツに命中した。
頭。
眼。
顎。
首。
肩。
胸。
鳩尾。
腹。
臑。
そして男の大事なところ(お下品)。
ボールがぶつかる度に、彼は珍妙なポーズを取ってくれたが、この際それは関係ない。
そうこうしている内に、宗介がクルツに追いついてしまった。
しかし、クルツは気付かずに、紅葉と黒煙の攻撃を受けていた。
ボールが飛び交うグラウンド(?)を、宗介は匍匐前進で潜り抜けた。
紅葉と黒煙の横を抜ける際、彼(?)らは宗介に向けて、
ーーグッ
という音を立てつ、右手の親指を立てた。
ニヒルな笑みと共に。
ーーグッ
宗介も、彼らに向けて親指を立てて見せた。
友情の勝利だった。
しかし、ここにオチがある。
それはーーーー
時間超過により、全ての競技は無効試合。
あとがき
なんかなー、オチがベタだな。
でも、オレの芸風って、こうだし。
ベタベタなのが好きだからね。
それにしても、本当は紫苑君も使いたかったんだけどねー、ウチにもういるから。
神崎 紫苑クン。
あーそうだ、早いトコTDA書かなくちゃなー。
だけどね、ちょっとあってさ、暫くの間、執筆速度がめっちゃ遅くなりそうなんだよね。
・・・・・・いつになったら書き上がるのかなぁ?
書いても書いても、なんか納得がいかなくて、もう三、四回書き直したし・・・・・・
ま、愚痴はここまでで、それでは!