GGG 〜勇者たる者〜
俺のカンに間違いは無い。この男、佐津田刑事は丘の下から天野平和研究所をにらみながらそう思った。ヒゲ面でゴツい顔だが、正義感の強い男としてGアイランド署内では有名だ。彼が今担当しているのは数年前に起こった三千万ドル強奪事件。その犯人が天野博士だとにらんだのだ。
彼が調べまくった結果、天野博士にはほとんど収入が無く、研究所をやっていけるような経済状況ではない。
「しかも最近、若い研究員を雇ったらしいな。どんなやつだか知らんが、まともなやつではあるまい・・・」
『ハァ・・・・』
(ん?)
突然、佐津田刑事の後ろからため息のような声が聞こえたが、気のせいだ、と直ぐに研究所のほうへ視線を戻した。彼の後ろには、パトカーが一台あるだけなのだ。
(行く価値あり、だな)
佐津田はパトカーを走らせ、天野研究所へ向かった。快晴。先日とはうって変わった青空が広がっていた。
火鳥は赤いジャケットに黄色いシャツ、ジーンズ、スニーカーの上に白衣を着ていた。さらに伊達めがね。どこからどう見ても、ダサい。
「何だあいつは・・・」
佐津田刑事も、当たり前の感想を漏らす。何せダサい上に、「こどもいきものずかん」を脇に抱えているのだから。
「い、いい若いもんがこんな真昼間から、ここで何をやってるんだ・・?」
「いい若いもんは真昼間から勉強をしています。・・・・これはスミレですか?」
と、指差した先にはゆりの花。
「あれはハトですか?」
と、視線の先にはひらひらと舞う蝶。
「・・・はぁ?」
「おお、火鳥!そろそろ迎えがくるぞ」
タイミング悪く、天野博士がそこへやってきた。
「おやおや、誰かと思えば天野博士。会いたかったですよぉ」
「出来れば一生会いたくなかったわ」
「博士とは親友なんですか?」
「んな訳あるか!」
巨大な柱を中心に円形にコンピューターが配置されている。その一番外周の席で、老人と女性が話をしていた。
「凱の調子はどうじゃ?」
白髪の老人、獅子王博士がオペレーターの命(みこと)に聞いた。
「このところずいぶん調子がいいみたいですよ。それに今日は例の彼が来ますから」
「そうじゃな。天野のやつ、やっと起動までこぎつけたらしい」
「火鳥勇太郎でしたっけ?名前」
「そうじゃ。サイボーグではなく、完全な機械の身体・アンドロイド。そして、この前のU−01を破壊した脅威のロボット・ファイバード。ガイガーと一騎打ちでもさせてみたいもんだな。ハハハハハ!!」
U−01とは、サセボに現れた化け物のコードナンバーだ。回収された化け物の腕(軍よりも先に回収班が到着した)を調査した結果、地球圏の技術ではなかったことから、このコードが与えられた。Uはアンノウン(正体不明)のことだ。
「ああ、そうそう。D装備の改修作業の方はどうなってるんですか?赤木さんからのコールが毎日うるさいんですよね」
「このごろ界震のほうも多いからなぁ。改修自体ももう少しで終わる。そう伝えておいてくれ」
「了解」
「本当にアレでよかったんですか、博士?」
迎えのヘリコプターの中で、火鳥が聞いた。
「問題ない!」
火鳥の言うアレとは、佐津田刑事の今の状態のことだ。博士の開発した「ミラクルハード接着剤」で木と同化してしまっている。『犯罪臭い』などといって弄り回していたらそのザマ。
ほとほとあきれて(それに加え多少キレて)、博士は軟化剤を使わずに迎えの車に乗ったのだ。
「心配せずとも、240時間もすれば自然と外れるわ!」
「それは安心ですね!!」
ちなみに、火鳥は一日が24時間だということを知らない。
「地球には、お前一人で来たのか?」
「いえ、仲間がいます。この付近に散らばっていますけど」
「そうか。GGG(スリージー)についたら、いろいろ聞かせてもらうとしよう」
「困ったな・・・・」
GGG本部に着いた直後、火鳥は道に迷った。行けども行けども行き止まりだ。通路の真ん中でキョロキョロしていると、一人の青年が通りかかった。
「ああ、そこの金色のお兄さ〜ん!」
「き、金色!?」
火鳥が呼び止めたのは、呼ばれたとおり、身体が金色の青年だ。だが、そんな呼ばれ方が初めてだった彼は面食らった。
「い、いや・・・・何の用?」
「博士をご存知ありませんか?」
「博士?」
「天野博士です!」
「・・・・君、天野博士の知り合いなの?」
「はい。火鳥勇太郎といいます」
「ああ、君が例のアンドロイド」
「今は身体をお借りしています」
「・・・・・・・・なんだって?」
メテオ・スイーパー(M・S)部隊、下地島基地。日陰者なM・S部隊の中でも、さらに日陰な基地がここだ。そのためコメット・ブラスター(C・B)部隊からの懲罰でここに転属させられる場合がある。
この日、C・Bから二人の“転向組”が出向してくる予定だった。
「懲罰で来るようですね、指令」
この基地で副指令と教官を務めている如月が言った。黒と紫の中間のような髪の色をしている女性だ。
M・SはC・Bが任務失敗した隕石の迎撃と、C・Bの養成機関を兼ねている。最近では、大量に落ちてくるチューリップの撃墜も任務だ。(成功例はほとんど無いが)
「そうだな。ところで、名簿は見たかね?」
「いえ、まだですが・・・・」
「まあ、ちょっと目を通すと、面白いよ」
指令である、ロバートはそう言って微笑んだ。
如月は資料を呼び出し、個人情報のページを開く。それを見た如月は、驚きで声が出なかった。
「こ、これって・・・・・」
如月は一度軍のパイロットになり、その後M・Sに出向。そのまま鞍替えしたクチだ。だから、その名簿の顔を良く知っている。
「サカイ少尉、シラギク少尉。どちらも軍のエースパイロットだ」
「知っています。私も、その・・・・・・」
「『女帝の如月』も形無しだね」
「し、指令!」
「ははははは」
『女帝の如月』は軍パイロットの時代に如月についた二つ名だ。他を引き付けない操縦テクニックとセンスはまさに女帝だった。旧連邦・ジオンともに彼女に勝る戦闘機パイロットはいなかった。
それを一変させたのが、『サムライ・コジロー』の登場だ。軍の誇る戦闘機ネットワークシミュレータで如月が五分とたたずに撃墜された。しかも、戦闘を圧倒的優位に進めることが出来るLLM(長距離通常ミサイル)を一切使用せず、SLM(短距離通常ミサイル)のみでだ。
コジローは何時、いかなる戦いにおいても接近戦を優先する。LLM(ロング・レンジ・ミサイル)よりMLM(ミドル・レンジ・ミサイル)。MLMよりSLM(ショート・レンジ・ミサイル)の搭載を指示する。これが『サムライ』たる所以だ。
コジローは養成学校を出て直ぐ対木星トカゲの戦闘機編隊に配属された。
与えられた機体は旧式ながらパイロットから絶大な信頼を得ている『辰龍』。機首レーザー砲を二基標準装備し、作戦に応じてミサイルパックを取り替えることによりオールラウンドの活躍が可能だ。旗艦の護衛、攻撃機(対艦、この場合チューリップを叩くことを目的とした機)、戦闘機(対艦載機)のどれでもこなせる。
如月も含めたパイロットに一番人気があったのは、LLM×8、MLM×4、の組み合わせだ。攻撃機はZEX弾頭ミサイル×2が主流。ZEX弾頭というのは、新西暦以前の条約により一切姿を消した(ハズの)核弾頭の代替品として開発された物だ。
宇宙移民時代、つまり400年ほど前に開発されたこの兵器は、反物質と物質が混ざったときに生じるエネルギーで目標を破壊する。絶大な威力を誇り、小型で格納にも便利なこの兵器の泣き所は、現在のMS以上に高価だということだ。開発された当時は、1基で移民シャトル1機を1年は維持・稼動できた。
これ一基で旧連邦軍のジムなら数十機、辰龍ならその三倍はそろえられる。対チューリップ、とりわけ目標予測地点が人口密集地や軍の拠点で無い限り使用は認められていない。
予算を減らされ続けた軍がそろえているZEX弾頭の数は少ないのだ。もっとも、400年前は旧世紀時代の核並の数をそろえていた。軍上層部の予算拡張が簡単にまかり通る時代だったのだ。軍上層部の命令で中世の貴族制度まで復活したくらいだ。
このような背景もあり、攻撃機自体の出番もまた、少ない。戦艦の主砲で相手の特殊なフィールドを無効化し、戦闘機によるLLM一斉射撃で破壊する。時間はかかるが、ZEX弾頭を使うより安上がりだ。
その代わり作戦失敗率はかなり高い。はっきり言って、「軍はがんばりました」程度のことが言えれば攻撃はどんなに少なくても良いのだ。血の気の多いコジローは、撃墜失敗して大気圏に突入するチューリップに攻撃をかけたことがある。突入角が狂い、危うく火だるまになりかけた。
そのことを如月にとやかく言われて模擬戦をした。女帝とまで言われ、誰もが知っていたエースパイロットの座は、そこで奪われた(その後如月は戦闘機パイロットを辞めた)。
他にも原因があるのだが、M・S部隊に転向したのはそんな感じだ。一方コジローと、その相棒(空戦・宙戦は二機で一組、三組で一小隊)のシラギクは、軍の勧めもあり、C・B部隊に転向した(多少騙した部分もある)。だが、戦場に出ることを望んでいたコジローがそれを良しとするはずもなく直ぐにC・B部隊指令と衝突。懲罰として送られてきたのだ(軍からの派遣なら直ぐに戻れる可能性も高いが、転向は完全に鞍替えで、なかなか戻れない)。
M・S、C・B共に正パイロット資格は難関だが、軍の戦闘機パイロットは一定の飛行時間と撃墜数、メンタルと簡単なペーパーテストをクリアすれば資格が取れる。
民間の場合、ペーパーと体力テストでM・S候補生、規定以上の訓練単位でM・S準パイロット、筆記テストとシミュレーター実技合格でM・S正規パイロット。さらに一定の出撃と迎撃(実際にミサイルを撃ち込む一番機以外は『迎撃』には含まれない)、難易度の高い(軍のモノとはレベルが格段に上)筆記テスト合格で、C・B準パイロット。宇宙での環境に慣れるために半年置き、さらにメンタル面でのトレーニングを経て初めてC・B正規パイロットだ。
その上、オービタルステーション勤務のC・Bパイロットになれるのは九割がたアースノイドだ。大多数の人間がエリート意識を持っている『地求人』にとって、『宇宙人』に自分たちの安全を任せるのが不安で仕方がないのだ。逆に、コロニー駐屯のC・Bは九割がスペース・ノイドとなる。自分の家は、自分で守りたいということだ。便宜上、宇宙ではコロニー防衛任務の第二次迎撃部隊がメテオ・スイーパーと呼ばれている。つまり、スペース・ノイドはいきなり宇宙での迎撃を行うことになる。
民間人は、軍のようにM・S、C・Bを好きに選べるわけではない(軍からの転向はM・SとC・Bをある程度自由に変えられる)。だから、C・Bを目指す若者は、近道のために軍に入隊する者も多い。下地島迎撃基地の和馬や圭も軍からの転向組だ。人それぞれ事情はあるのだが。
もっとも、それも軍の狙いであり、ただでさえ少ない戦闘機パイロットを確保するための物だ。そうと分かっていても、軍に入ってでもコメット・ブラスターに憧れる若者は五万といる。おかげで軍の台所事情はずいぶんと楽になった。
『一定の撃墜数』を満たす前に散る若者が大半ではあるが、軍からの転向者の優遇自体、木星トカゲが現れてからの規定であり、あからさまな『捨て石集め』だ。
(だが、例の条約の期限切れが後一年あまり。軍は何を考えているのだ・・・・)
白髪の好々爺、ロバート指令は軍の考えが分からなかった。彼も昔は戦闘機乗りとして活躍していた。その頃からの友人は、今は軍の中枢、元帥だ。
彼は中将扱いとなっている。軍から切り離されたとはいえ、『転向』のシステムをはじめとして、いろいろつながりはあるのだ。完全には独立していない。中将が聞ける程度の話は、耳に入っている。元帥の口から語られることもある。
(400年条約は・・・・・・・・・・)
「400年条約?何ですか、それは?」
司令室までたどり着けた火鳥は、天野博士達の会話に割って入った。ちなみに金色のお兄さんこと獅子王凱は別室に向かった。
「おお、やっと来たか、火鳥」
「はい。それで、その400年条約というのは?」
「私が説明しよう」
ライオンのような髪型をした、大柄な男性。GGG総司令・大河長官だ。
「はじめまして、火鳥君。それとも、ファイバードと言うべきかな?」
「火鳥で良いです」
「そうか。400年条約というのはだな。400年前、宇宙に人類が進出した時に、ある組織が戦争を始めようとしたのだ。戦争は良くない、誰もがそう考えた。だが、その頃独裁者だった軍の最高指令・リュフランは、宣戦布告を認めた。全面戦争になりかけたが、ある人物がその組織と和解し、条約を結んだ。向こう400年間、一切の戦闘行為を禁止すると」
「なるほど。それで、後一年したらその条約が無効になるわけですね?」
「理解が早くて助かるよ。その通り。一年後には、地球圏全体、木星トカゲ・・・・を交えた三つ巴戦争になる」
「木星トカゲ」の部分で多少間があったが、火鳥はさして気にしなかった。
「なるほどなるほど」
ことの深刻さを理解しているかは分からないが、とりあえずこれ以上説明する必要はなくなった。
「それで、ある組織というのは?」
「彼らはラアルゴンと名乗っている」
「ラアルゴン、ねぇ・・・・」
「よくもまあいけしゃあしゃあと嘘が出ますなぁ」
天野の言葉を、
「“嘘”は一つも言っていない」
と、大河は軽く流した。確かに、その通りだ。
「ところで、そのリュフランという人はどうなったのですか?」
「ある時を境に行方不明になった。ちょうど、条約締結の一月前だな。その頃から軍の首脳に日系人が目立ち始めるようになる。今の参謀三羽烏がいい例だ」
「フジ中将・サハラ少将・ヒラカワ少将のことデス」
共通語から少しずれた言葉遣いの女性が言った。白人・金髪で、美人といって差し支えない。『訛り』がみられるのは、共通語以前の言語、つまり英語や日本語などを日常的に使うコロニーが存在するからだ。ネオ・アメリカ、ネオ・ジャパン、ネオ・チャイナなどのコロニーがそれで、それぞれの『ネオ・カントリー』コロニー同士で行う格闘技大会などがある。
女性、スワン・ホワイトは、Gアイランドに来るまではネオ・アメリカコロニーに住んでいた。
「地球の古い歴史はこれくらいにしよう。それで火鳥君、我々としては君がかなり興味深い。なぜ、アンドロイドに乗り移ったのか、変形するはずのない汎用ジェットが変形した理由。それ以上に、君の戦闘能力が」
「順を追って説明します。まず、私が地球に来た理由、それを最初に説明します。我々宇宙警備隊は『ドライアス』を追って来ました」
「ちょっと待て火鳥。『我々』、というからには、お前だけではないのか。それと、ドライアスというのは?」
「博士の研究所の地下に一人、他にも三人、来ています。ドライアスは宇宙監獄サルガッソで拘束されていたエネルギー生命体です。ですが奴は脱走し、ココまで逃げてきたのです」
「なるほど。では、君の仲間を呼び出してもらうことは出来るかな?」
「僕は隊長で、そういうことも可能ですが、今は無理のようです」
「無理じゃと?」
「はい。研究所の地下は出方が分からないといっています。他の三人は、『キュウキュウシャ』、『ショウボウシャ』、『ぱとかあ』にそれぞれ乗り移ったので、今は無理です」
「そ・・・そうか。それでは、変形した理由を教えてもらえるかな?」
大河は多少冷や汗をかいていた。
「精神エネルギーが乗り移ると、その物体の構造を変化させることが出来るのです。詳しい理由は自分でも分かりませんが」
「・・・・・・不思議だな」
大河がつぶやいた瞬間、内部にけたたましい警告音が鳴り響いた。同時に、スワンがオペレーターシートに走り、続いて赤い髪の女性が司令室に走りこんできた。
「遅れました!」
「ご苦労、命君」
別のオペレーターシートにすわり、インカムを付ける。カードキーを通して本人認証を済ませると、複数の立体ウィンドウが出現した。
「SS−0区画にアンノウン出現!大きさは・・・旧型D装備と同じくらいだそうです」
すばやく命が報告した。つまり、モビルスーツの倍程度の大きさだ。
「火麻参謀から通信が入りました。動きが遅いため、付近の不法居住者の救助活動を行うようです」
「あいつ、もう現場に向かったのか」
天野の声に、
『ジイサン!俺の行動力をバカにするなよ!』
と、火麻の声が飛び込んできた。
「自分だって歳の癖に」
「富士観測所データと照会!界震値ゼロ、ヘテロダインではないデス!」
『バスだ!バスがケツに引っ付いてやがる!!人影も見えるぜ!!』
「大変だ!!博士、私も行きます!!」
人が助けを求めていることを知った火鳥は、直ぐに名乗り出た。もちろん、天野はそれを却下する理由はない。
「分かった!大河長官、地上への直通を借りるぞ!!」
「許可しよう」
大河の椅子にあるスイッチの一つを押すと、司令室の中央に柱が現れた。扉が開くと、中は円筒形の部屋だということが分かる。
「これに、乗ればいいんですね?」
「ああ、地上まで直通だ!行くのだ、勇者よ!!!」
「はい!!」
趣味のいい備品が多い部屋に、蒼い髪の男が入ってきた。イングラム・プリスケンだ。真新しい、統合軍中佐の階級章をつけていた。手には百円ライターくらいの大きさの、一枚のデータチップがある。全体が緑で、チップには小さく“SS”と書かれていた。専用の端末機を自分の端末にリンクさせ、そのチップを接続する。
チップには『R−0』『R−1』『R−2』『R−3』『R−GUN』『R−4』の六つの情報が入っていた。このデータチップは、簡単な罰則のログから軍上層部の機密データ保存まで、幅広く用いられている。保存できるデータ量も、MSのメインディスク並だ(ハードディスクは破損の危険が高いため、三枚の光ディスクに情報は保存される)。
慣例として、紙の書類が使われるのは任官や各種防衛上級資格証書(M・SやC・Bなど)、それに最重要機密書類だ。時代が変わってもデータより紙のほうがしっくりくる。もちろん、機密書類などは暗号化したデータのほうが都合がいいのだが、それを頑なに拒む人間もいるのだ。
Rシリーズ。彼を中心に進んでいるプロジェクトだ。マオ・インダストリー社が開発した、アナハイム社製モビルスーツに変わる軍の新戦力として期待されている、パーソナル・トルーパー(PT)。機体の構造がMSよりも単純で不具合が発生しにくく、単純なゆえ拡張性が高い。同じ人型でもMSより安価で量産が可能で、MS以上に徹底したブロック構造でダメージ部の切り離しも可能だ。
パーソナルトルーパーの拡張性を生かし、『徹底した武装強化で単機での要塞攻略が可能』をコンセプトに開発された『R−0』、通称グラン・ゼロ。テストパイロットは設計者であるシュウ・シラカワ博士だ。だが、そのコンセプト故巨大化し、量産化を考えていない特機、『スーパーロボット』に近い機体となった。その分攻撃力は現存する全ての機動兵器よりも高い。
開発者は『軍にケンカを売れる』機体だと言った。
PT特有のブロック構造を生かし『単機で輸送と戦闘が可能』な『R−1』。作戦区域まで、輸送機を使うことなく展開が可能な“戦闘機に変形できる”PTだ。変形自体、MSの開発を行っているアナハイムも幾度と無く試作したが、強度の問題から実現が遅れている。PTはMSと比べて構造的に強度が高いため、早く実現が可能になったのだ。実際には大差ない時間差だが、次期主力の座を争う上で、それは致命傷になり得る。
変形機構自体は特殊汎用型戦闘機『バルキリー』がその先駆けとなった。空陸宇に対応した機体は実戦配備が済んでいる他、機動性を生かしてC・B機の護衛任務も行っている。任務中に木星トカゲに迎撃されたらそれこそタダでは済まされない。過去にそのような事例があってから護衛がされるようになった。
ただ、バルキリーにも弱点がある。“戦闘機乗り”には“大空が自分の戦場”というプライドがあり、それは人型での陸戦への異常なまでの拒否反応に現れた(宙間飛行テストパイロットを勤めたコジローもかなりの拒否反応を出した)。お陰で十分なテストが済んでいるにも関わらず、実際に配備している部隊は少ない。
そのバルキリーだが、慣れれば辰龍よりも動きは良くなる。戦闘機には出来ない“脚部を前に突き出した状態”の、ガウォーク形態での急制動やホバリング、人型での市街地戦も出来る。
バルキリーは、MS乗りやPT乗りが使用しない、“戦闘機乗り”のための機体だ。
逆に、次期主力に期待されている可変機は現在のジム・ゲシュペンストとの交代なので大半がMSやPT乗り。つまりバルキリーとは逆に人型としての任務を主としている。バルキリーが“可変戦闘機”ならこれは“可変MS”(またはPT)になる。
現在、MSは中央に『骨』の役割をするフレームをおき、それに『筋肉』である駆動系、さらに『皮膚』の役割をする装甲を取り付けて完成する。
PTはプラモデルのように頭・胴・腕・脚の個々に分かれて独立し、切り離しも自由だ。被弾すれば誘爆する前に部位を捨てる。元祖スーパーロボット『D装備』と同じだ。
現在は量産型モビルスーツ『ジム3』と量産型パーソナルトルーパー『ゲシュペンストMk−II』が7:3ほどの割合で配備されている。技術者の割合も大体そのくらいなのだが、“400年条約”に『機動兵器保有数の制限』があるため、1機でも無駄な戦力は持てない。そのため近いうちに全機の主力交代を行う(機動兵器の保持数は条約の期間を延長にも関わる。軍や政府としては延長したいのだ)。ちなみに、そのための臨時予算は軍の年間予算の倍程度ある。そこまでに重要な条約ということだ。
予定ではAE社とマオ社の一騎打ちだったが、ネルガル重工の参入で事態が複雑になった。ネルガル重工が開発した新機軸の機体・エステバリス。省スペース・高性能・低価格をウリに、審議会に殴り込みをかけたのだ。これにより比較性能テストのみだった予定が、急遽全機による実戦トライアルへと変更となった。
R−1は“審議会”に参加することが決定しており(データを見た上層部の人間が勝手に登録した)この協議によって、試作機のままおわるか、量産されるかが決まる。もちろん、これは他の企業も同じで、AE社のMS・ゼータプラスやネルガルのエステバリス・空戦機がトライアルされる。
現在R−1は2機あり、内1機が量産を前提としたもので、もう1機はデータ収集用で専属パイロットのカスタム機だ。
R−2は『中距離からの地上援護』を基本コンセプトに開発された。大出力の新型エンジンにより空中や水上のホバリングが可能。R−1とR−2のどちらかが“審議会”に選ばれる予定だったが、エンジンの量産が不可能なことから見送られた。そのため、エンジンをさらに高出力なモノに換装した。
その分扱う武器の種類は幅広く、下は単装式ロケットランチャーから上は戦艦搭載のメガ粒子砲まで。R−1の中・遠距離援護をすることが主な任務だ。近接格闘戦には向かないが、圧倒的な火力で敵を近づけなければ問題ない。この機体も2機あり、R−1と同じように実戦配備用と量産化用になっている。
R−3は量産を一切目的とせず、1機しかロールアウトしていない。中距離からの援護を中心に考えられ、“サイコミュ”とほぼ同じ効果のある“T−LINK”システムを搭載している。これにより、“ビット”型の兵器を装備し、エネルギーフィールドを張ることでバリアとしても使用可能だ。また、その転用で木星トカゲの兵器が持つエネルギーフィールド・“ディストーションフィールド”を無効化できることが確認されている。
この機体は“念能力者”専用機で、立った状態で操縦するシステムだ。コントロールも全てT−LINKシステムを介して行い、考えるだけで動く。システムを通して指示を送り、映像も直接頭に入ってくる。慣れれば自分が巨大化して戦っているような感もある。
R−GUNは『PTサイズとしての最大火力』をコンセプトに開発された。そして完成したのが通称“メタルジェノサイダー”だ。R−GUNが変形し、大砲のような形になって発射される。威力は戦艦の主砲を超え、チューリップさえ一撃で消滅させる。その代わりエネルギー効率が最悪で、一発撃てばメインジェネレーターが熱暴走を起こし、作動しなくなる。そのためメインに“T−エンジン”、サブに“核融合炉”と、二つのエンジンが搭載された。撃ったら即帰還。それがR−GUNの戦い方だ。
R−GUNにはその尋常ではないエネルギー効率の低さを考慮し、外部からのエネルギー供給システムがある。戦艦並の冷却システムさえあれば、組み合わせ次第で無尽蔵に撃ち続けることが可能だ。
考え方によっては『パイロットの入った主砲』にも成りかねないのだが。
また、R−1からR−GUNまでの4機は同じチームが開発している。また、全ての機体に変形機構が設けられていて、コックピットも他のPTと比べると狭い(立って操縦するR−3は別)。
そしてR−0からR−GUNまでの開発が終了したことで開発がスタートしたR−4。『R−0並の火力とR−1を超える機動力をPTサイズに収める』を目標にR−0とR−1からR−GUNまでのチーム(つまり2チーム)が合同で開発している機体だ。
専用の火器をグラン・ゼロのチームが、機体の基本設計をR−ナンバーのチームが行った。
1号機はR−0に使用したBHエンジンを小型化して搭載し、絶大な出力を得た。それにあわせて大出力のバーニアを四基、背部に搭載した。だが、月面でのテストでバーニア出力に小型化した機体が耐えられずに自壊し、破棄となった。パイロットは脱出に成功している。
2号機はかろうじて無事だった1号機のBHエンジンをそのまま搭載し、量産化には向いていないが「軽くて丈夫」なガンダリウム合金を構成材に使用した。結果、1号機と同型のバーニアでも自壊せず、テストは順調に進んだ。だが、新たな問題が起こった。機体の冷却が、エンジンの発熱に追いつかなかったのだ。そのため、長時間の運用が出来なかったが、リミッターを装備してとりあえずの運用は可能になった。この機体を利用して武器テストが行われた。
だが、この機体も自壊することになる。大出力のビームキャノンの実験中、エンジンが理論値以上に発熱し、内部から爆発したのだ。パイロットは蒸発、爆発で月に新たなクレーターを一つ造った。公式にはC・B、M・Sが撃墜失敗した隕石が落下したと伝えられた。半民半官組織の天体危機管理機構は、何かと便利な理由付けに利用される。もちろん、それをすべて信じる人間は幾分もいないのだが。
だが、開発は中止されること無く3機目に移った。今度は通常の核融合炉がエンジンだ。冷却機もPTの物を流用し、“チャクラム・シューター”をはじめとした専用武器も開発された。その後、4基目のB・Hエンジン(ただし低出力型)に換装され、実戦配備された。出力はR−0の十分の一程度だ。この機体はR−4とは別系列扱いになり“ヒュッケバイン”のコードが与えられた。ヒュッケバインは暇な開発者がその後もコツコツと開発を続け、現在は通常エンジンを搭載したMk−IIが完成している。何処から予算が下りたのかは不明だ。
4機目・5機目は同時進行で設計・開発が行われた。コンセプトを二つに分け、“R−1を超える超PT的な機動性”と、“グラン・ゼロに匹敵する攻撃力”を新たなコンセプトに開発した。もちろん、両機共に目指すところは量産化だ(これは技術協力の代わりにマオ社が出した条件)。実用化が出来れば、これが採用されることは必然。マオ・インダストリー社からの出向技術者は、とにかくシャカリキになって開発に励んだ。
量産ラインが安定している核融合炉エンジンを搭載し、徹底的なエネルギー効率の上昇、オートで敵弾予測・回避を行うプログラムと反応の早いOS。それを生かすために徹底的に削られた装甲。R−4−4、通称“ファイナス”。特殊白兵戦兵器中“チャクラム・スラッシャー”を装備している。それをさらに発展させたものが、現在開発中の“ファング・スラッシャー”だ。
この機体は2号機までに使われた大出力ブースターを外部接続し、機体が自壊することを回避(1号機は機体内部接続部が損傷して爆発した)。さらにキックモーターを各所に配したことで、宙戦能力が飛躍的に上昇させた。宇宙でなら“バルキリー”を超える機動力を発揮することが可能だ。遅くとも敵弾の感知から0.01秒内に弾道予測、被弾直前までパイロットからの反応がない場合オートで回避する(このシステムをオフにすることも出来る)。
これだけのスペックをAE社のゼータプラスと同等の費用で生産・運用できる。変形できず、空戦能力が低く(ある程度飛行することは可能)、従来のような輸送機は必要になるが、宇宙での活躍は疑う余地もない。
機動性重視の4号機に比べ、火力重視の5号機は開発が多少難航していた。一番の理由が、主武装である“超長距離迎撃専用二連式加粒子砲”の開発が難航したからだ(長ったらしい名前だが、これは開発主任の意向)。この兵器は唯一、イングラム以下のチームから外れた、外様的なチームが開発を行っている。ヒラガー技術中佐を中心にしたチームは、コストを一切考えずに設計・開発した。それで付いたとおり名が“宇宙一の無駄遣いチーム”。
結果、スペックを見ただけなら納得のいくものがあるが、コストを見れば頭を抱える。
まずスペックは大気圏外での最大射程が約100キロ、威力は“あさなぎ”級旧式宙戦駆逐艦をまとめて10隻ほど葬れる。
T−エンジン2機の同時フル稼働にも耐え、さらに五回程度までなら連射も可能(その代わり撃つたびに威力と射程が低くなる)。
コスト面を見れば代用・共有のパーツが存在しないため、完全にラインを作り直す必要があり、当面はこれ1基造る費用で一個艦隊が三ヶ月ほど維持できる。
ファイナスの場合、武器・機体の旧世代機との互換率は70%程度ある。5号機はこの互換率が30%以下で、武装にいたっては10%だ。しかも武器の互換しているパーツのほとんどはボルトだとかエネルギーパイプという互換してようと無かろうとそう変わらないパーツだったりする(数を作るためそれなりに有用だが)。
『PT搭載型核融合炉で動くようにしろ』とだけ言われたヒラガー技術中佐(以下ヒラガー中佐)は言われたとおり、収束ユニットに核融合炉からのエネルギーを使い、撃つためのエネルギーは別の場所から供給できるシステムにした。それは、エネルギー開発のために月面に建造されていたマイクロウェーブ送信施設だ。B・Hエンジンに匹敵するエネルギーを常に供給でき(出力はT−エンジン>B・Hエンジンの図式になる)、C・B基地“オービタルステーション”を経由して地球圏内ならほぼ全域をカバーできる。
兵器転用としてなら合格点になるが、当初期待されていた発電量よりも低く、エネルギー開発としては落第点だ。したがって現在は半ば閉鎖状態にある。
解体する計画も出ていた施設だけに、これは政府・軍ともに歓迎するべきことでもある。建造と同じくらい、解体にもかかるのだ。というのも、この施設に電力を供給している、子機のような存在があるからだ。
ハイランドというソーラーパネルを並べた施設から、マイクロウェーブで送られ、それを月の施設がそれをまとめて地上や各施設に送っている。ハイランドは現在二十基ほどあり、ほとんど全施設が閉鎖している(月施設やハイランド自体、十年ほど前に建造されたもの)。
その性能に目をつけた戦自研こと戦略自衛隊技術開発部門(極東自治区、つまり日本列島が独自に保有する軍事組織が戦略自衛隊。緊急時は統合軍の指揮下)が中佐のチームごと引き抜き、加粒子砲を持っていった。
開発チームは特に気にせず(機動兵器としては無用な兵器だったため。開発にかかった費用は請求中)開発を続けている。
開発に関する資料に目を通したイングラムは、そのメディアをフォーマットした。
(当初の予定とずれ込んでいるな)
開発期間が多少長引いている。特に、R−1からR−4−4までの開発が伸びたのが問題だった。だが、それも今の状況の前ではかすむことだ。
「EI−02との交戦か。“炎の勇者”と“破壊の勇者”、見ものだな」
自分のモバイルには、すでに監視衛星からの映像とGGG司令室の映像、さらに現地からの中継映像も入っている。
「聞こえるか?」
コ画面に映っていた人物に話しかけた。ヘルメットを被っているため、顔を確認することは出来ない。
『はい、中佐』
四つ目の画面に、若い女性が映った。パイロットスーツとヘルメットをかぶっている。
「手出しは無用だ。だが、Gストーンが破壊される可能性がある場合、標的を処分しろ」
『了解』
「サイボーグの生死は問わない」
『・・・了解しました』
そう応えると、通信を切った。
現場に到着した火鳥は、“アンノウン”の足元から一気に飛び上がった。大昔の怪獣映画のような外見の顔の部分を思いっきり蹴り上げる。
だが、当たり前のように効果は無い。
『おい凱、アンドロイド!付近のホームレスは全員救助した!』
火鳥は瞬時に身を翻し、“ケツ”の部分へ向かった。残るはバスの中の人間だけだ。だが、バスまでもう一歩というところで、振動が火鳥を揺さぶった。この区画は12年前の“ヘテロダイン災害”以降、一切の再開発を行わず、ごみに埋もれている。アンノウンはそれに躓いたのだ。・・・・バカのようだが。
一度“OE兵器”によって廃墟となったこの土地には、ゴミの不法投棄が酷く、山のように詰まれている。その上住み着く人間も多い。
『火鳥、子供たちは救出した!』
火鳥の耳に、金色のお兄さんこと凱の声が飛び込んできた。実際には一キロほど先にある灰ビルの屋上からだ。
アンドロイドに乗り移った火鳥の身体能力はサイボーグ・凱と並んで人間のそれ以上だ。
「了解!」
それを聞くと、火鳥は空中に飛び出した。
「ファイヤァァァジェェェェェット!!」
地上に落下する前に、ファイヤージェットが現れ、火鳥はその機首につかまった。
そして変形し、フォームアップする。
「チェィィィンジ、ファイバァァァド!!」
脚にあるミサイルを左右に放った。崩れた瓦礫がアンノウンにかぶさり、完全に埋まる。
「凱から、ギャレオンの発進要請シグナル確認!」
命がそういうと、大河は立ち上がって、答えた。
「ギャレオンの封印を解除!特殊硬化ベークライトを破壊せよ!!」
「了解!!」
命が懐からキーを取り出した。スワンも同じくキーを取り出す。
「ミコト、スリー・ツー・ワン、ゴー!」
スワンと同時にキーを差込み、回した。
『ギャレオン、覚醒を確認。特殊硬化ベークライト、破壊確認』
「3番空母浮上、作業員は全員非難せよ!なお、これよりアンノウンをEI−02と認定・呼称する!」
「もう大丈夫だぞ」
金色のお兄さんが板についてきたような凱が、助けた子供たちに言った。女の子二人と男の子三人。よくいる五人組のようだ(最も、この場合ロボットが足りないが)。
「うわっはー!すごいや、金色のおじさん!!」
「き、君まで・・・・・し、しかもおじさん?これでも俺はまだ二十歳だぞ」
「?」
『ギャレオン、戦闘エリア到達します』
凱の頭に、命の通信が入ってきた。バイザーの類は通さず、サイボーグ化した『耳』で通信を聞くことが可能だ。
「じゃあ、ここでおとなしくまってろよ!」
凱はそう言い残すと、ビルから飛び降りた。
そして、下から現れた巨大な獅子、ギャレオンの口に飲み込まれる。
ライオンは頭部が上に上がり、後ろ足が伸びて脚部、前足が開いて腕部になり、完全に人型になった。
『フュージョン、ガイガー!!』
サイボーグ凱は、ギャレオンとフュージョンすることにより、メカノイド・ガイガーに変形するのだ!
その瞬間、瓦礫の下からEI−02が飛び出した。同時に、左右の『手』からビームのようなものを発射する。
脚のブースターを使って回避したが、直撃を受けたビルは、片方のビームでは凍り、もう片方のビームでは熔解した。
『火鳥、いくぞ!!』
『了解!!』
空中でガイガーは身を翻し、ブースターを併用して一気に地面に着地する。その間にファイバードはEI−02の後ろ側に回りこんだ。
ファイバードがミサイルを放ち、ガイガーはそれと同時に前からEI−02の喉を掻き斬った。首が半分えぐられ、背中側がクレーターのような穴が出来た。
もう一撃、加えようとした瞬間、EI−02は解けるようにゴミの中に消えた。ガイガーの爪は空を薙ぎ、ミサイルは地面をえぐった。
『何処へ行った!?』
『後ろだ、凱!!』
ゴミの中から現れたEI−02はガイガーを掴んだ。銃口ではなく、五本の指でだ。
『クッ!』
バキバキというフレームが軋む音が木霊する。
『凱ッ!』
ファイバードが殴りかかろうとした瞬間、地面が震えた。
『ドリルガオー!!』
地から会われたドリルタンクはEI−02の腹部を貫通し、同時に左右に分裂すると、ガイガーの腕にドッキングする。そしてドリルをEI−02の腕に叩きつけ、それを断ち切る。
着地すると、もう一方の腕に向かってドリルガオーを撃ちだした。二つのドリルはEI−02の残った腕を切り裂き、両断する。
『フレイム・ジェット!!』
『ステルス・ガオー!!』
二人は同時に叫んだ。瞬間、スパイラルを描きながら二機が現れ、ミサイルとビーム砲を連射する。ステルスガオーはその名の通りステルス爆撃機の姿をしていた。
『武装合体、ファイバード!!』
ファイバードは武装合体し、ガイガーはグライダーのようにステルスガオーにドッキングした。そして空を切り裂いていたドリルガオーともう一度ドッキングする。
ガイガーは上空から急降下してドリルをロケットパンチの要領で放つ。墜落ギリギリの距離で急上昇、ドリルを回収した。
よろめいたEI−02にファイバードは斬りかかる。
だが、EI−02はゴミを盾にして両方の攻撃を防いだ。
そのゴミは触手のように両機を掴み、地面に何度も叩きつける。そして何度も互いにぶつけた。精神エネルギーが中心にあるファイバードは、エネルギーの意思である程度装甲の強化が可能だったが(そのお陰で戦闘機が接近戦に耐えられる)、地球の技術で開発されたガオーマシン、そしてサイボーグ凱はそうもいかない。
数回の攻撃によりゆがんでいたフレームが、さらに悲鳴を上げる。
『ぐ・・・あぁ!!』
『くそぉ、凱、大丈夫か!?』
『み、命!』
GGG司令室にレッドコールと特Aクラスのコールが鳴り響いた。レッドコールはガイガーとガオーマシンの耐久度限界を、特Aクラスはガイガーからの要請だった。
「ガイガーから、コード・FFの承認要請コールです!」
「・・・・・・成功確率は?」
大河の質問に、命はシミュレーションデータを参照して答えた。願いもむなしく、結果は・・・
「破損レベル70%超、Gストーン出力不安定。確率・・・・0.9723%・・・未満」
「残念だが・・・承認は・・・・」
大河の声は明らかに震えていた。コード・FFを承認すれば99%失敗、自壊する。だが、このまま見過ごしても破壊される。
正規軍はEIシリーズと判断した時点で統合政府による規定で出撃不可能(EIシリーズと判断しなければコード・FFは承認不可能)。
「いや、出来る!!」
一人の老人が司令室に入ってきた。若者の間でも流行りそうに無いシューズを履いて、白髪が逆モヒカンに禿げ上がっている。火麻とあわせればちょうどいい。
「獅子王、貴様、今まで何処に行っておった!!」
「いや、済まんな天野。まぁ、それはそうとて、確率論はただの目安じゃ!ヤツは、勇者なのじゃからな!!」
「・・・・・・そうですね、博士。いつの間にか私も臆病になっていたようです」
大河は、身につけているペンダントの裏からチップを渡すと、命に投げ渡した。
「卯都木君、受け取りたまえ!!成功率なんてのは目安に過ぎん!!凱は勇者だ、99%の勇気が成功へと導いてくれる!!」
「了解!」
小型チップをカードキーに取り付け、通すとカバー付きのスイッチが現れた。同時に過負荷がかかり、チップが使い物にならなくなる。
「コード・ファイナル・フュージョン・プログラム」
スイッチをカバーごと叩き割った。
「ドラーイブ!!」
その瞬間、獅子の足枷は外された。
『サンキュー、命!ファイナル・フュージョン!!』
ガイガーを中心に緑色の竜巻(実際にはエネルギーの渦)が発生し、触手を全て消滅させた。干渉でEI−02が吹き飛び、ファイバードも開放される。
EI−02は渦の外から冷凍ビームや熱線を出すが、ことごとく弾かれた。
『何が起こってるんだ、凱!?』
『見ていてくれ、火鳥!』
分離したガオーマシンは渦に乗るようにガイガーの周りを回り、ガイガーは下半身が前後逆に、腕が後ろに移動した。
そして渦の外からもう一つのガオーマシン、ライナーガオーが現れた。旧世紀に走っていた新幹線の形をしている。
その3機は徐々にガイガーに近づく。
ドリルガオーは分離してドリル部分が前に折れ、脚部にドッキングした。その後、後部が展開し、足になった。
ライナーガオーはガイガーの腕が移動したことによって出来た空洞を付きぬけ、肩のパーツを作った。
ステルスガオーは背部にドッキングし、排気部がライナーガオーとドッキングする。カバーが開き、手が現れる。そして頭部に巨大なヘルメットのようなものが被さった。
フェイスガードが展開し、緑の渦は消滅した。
『ガオッ!ガイッ!ガーーー!!!』
渦の中から現れたもの。それは勇者王、ガオガイガー!!
「成功だぁ!!!」
司令部は沸き立った。凱は、0.9%の成功率を、99%の勇気で『絶対の成功』に変えたのだ。
『ブロウクン!』
ガオガイガーの右腕が急激に回転し始めた。
『マグナム!!』
その回転力を保ったまま、EI−02に右腕を飛ばす。右腕は腹部を貫いて、ガオガイガーの腕に再度接続された。
『火鳥!!』
『凱ッ!』
『『とどめだ!!』』
二人の声が重なった。
『フレイムソード!!』
『ヘル!!』
火炎がEI−02を包み、ガオガイガーのエネルギーフィールドもそれを拘束する。
『チャージ!!』
『アンド!!』
炎の渦は徐々に範囲を狭め、エネルギーフィールドはEI−02の各部を消滅させていく。
『アァァァップ!!』
『ヘヴン!!』
炎の渦とエネルギーフィールドはEI−02の動きを完全に止めた。それに向かい、剣を構えたファイバードが突撃する。
『ゲム・ギム・ガン・ゴー・グフォ』
ガオガイガーの左右の手に集まったエネルギーを一つにする。
ファイバードが相手を一刀両断しようとした瞬間、動きを止めた。それに呼応するように炎の渦も消滅する。
(・・・・なんだ、この違和感・・・)
『ハァァァァァ!!』
今度はガオガイガーが突撃する。一気に腕を突き出し、相手の胸を抉った。
『止めろ、凱ぃぃ!!』
火鳥の声が響く。だが、ガオガイガーは止まらない。相手の胸にあった赤い球を抉りとり、それを握りつぶそうとする。
『これは、敵なんだぁぁぁ!!』
『やめるんだ、凱!』
『ウワァァァァァ!!』
ガオガイガー・・・・凱には、火鳥の声は届いていなかった・・・・・・・・
あとがき・・・・と言い訳。
というわけで世界観の説明が主な話です。特にストラトス・フォーと無責任黙示録が重要な位置を占めています。
PT・MS云々は『PTとMSってどこが違うんだよ!!』って言うくらい、明確な違いの分かる資料が無かったので完全に勝手な設定を作りました。ですから『フレームが中心にあるから頑丈なんだ!』とか『ブロック構造はもろい!!』って言う突っ込みはご了承ください。お願いします・・・
R−0からR−4までの機体設定もオリジナルが入りまくってます。原型さえ分からないくらいにいじったのもあります。特にR−0とか。
あとガガガ承認の時に大河が臆病なのはその方が後々伏線として・・・
次は何ヶ月先になるか分かりませんが、よろしくお願いします。(←何を!?とかいう突っ込みはなしの方向でw
代理人の感想
うわ、説明長い(爆)。
それと、好きなキャラを引き立たせるために他のキャラをぞんざいに扱った場合、
そのキャラのファンから総スカンを食うのは避けられないかと。