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第一話 奪われた『G』
炎に包まれていく工場の中、キラは少女を無理やりシェルターの中へと押し込んだ。
「なに・・・おまえは・・・?」
「いいから!僕はあっちのシェルターに行く」
キラはそのまま扉を閉めると隣のブロックのシェルターへと走り出した。
(くそっ・・・!何でこんなことに・・・)
キラは走りながら毒ついた。
(ここは中立のコロニー『ヘリオポリス』なのに・・・なんで・・・こんな・・・)
「・・・く!早く!X‐105、303を起動させるんだ!」
女の声が格納庫に響いた。
キラは思わずキャットウォークの下へと目をやり、幌のかかったMSに身を隠しながらライフルを撃つ女性に気付く。
「大尉!Mk-Ⅲと他の二機のほうは・・・?」
少し離れた所にいる作業着姿の男性が聞く。
「ステイメンとキャノンのほうはウラキ少尉達が向かってる!MK-Ⅲの方は別にいい!
いくらコーディネーターでもあのロックは外せないわ!」
奥のほうから爆音と悲鳴が上がった。来る途中にあった職員がザフトが攻めてきたといってたのを思い出す。
敵がザフトだというなら彼らは圧倒的に不利だ。
ザフトは全員コーディネーターで身体能力等でナチュラルを凌駕している。
キラはさっきの女性を後ろから狙っているザフト兵を見つけ思わず叫んだ。
「後ろ!!」「!?くっ」「ちぃ!」
振り向きざま銃を撃つがかわされる。そして上にいるキラに目を止める。
「子供・・・!?」
女性が目を見開くのを見た。彼女はさっきのザフト兵に威嚇射撃をするとキラに向って叫んだ。
「来い!!」
「左のシェルターブロックへ行きます!おかまいなく!」
キラが大声で言うと彼女は顔を出していたザフト兵を撃ちながら叫んだ。
「あそこはもう、ドアしかない!!」
その言葉にキラは足を止め、そのままキャットウォークから飛び降りた。
「大尉その子は・・・ぐぅっ!?」
離れた所にいた男性が撃ち倒される。
「ハマナ!」
女性兵士が叫んだ瞬間、
「あうっ・・・!」
隠れてたザフト兵の銃弾が肩に命中し血が飛び散る。
別のザフト兵がナイフを抜き放って彼女に迫る。キラは思わず庇おうするその時―――
「―――キラ・・・?」
ナイフを掲げたザフト兵が声を上げる。キラは驚いてその顔を見る。
バイザー越しに見えた顔は三年前に別れた親友だった。
「―――アスラン?」
キラの口から意識せずにその名がこぼれる。その声に相手が一瞬震えるのが感じ取れた。
思っても見なかった形での再会に、二人は言葉もなく立ち尽くす。
「何をやってるの!アスラン!!」
隠れて弾装していたザフト兵が叫びつつ駆け寄り、二人を撃とうとするのを見て
「やめろ!リム!」
思わず声を上げた。
その声に驚きリムと呼ばれたザフト兵は立ち止った。
その隙を突いて女性兵士が負傷した肩を庇いつつ銃を構えた。
それに気付いたアスランとリムはその場から飛びのく。
呆然とするキラは女に体当たりされ、彼女もろともMSの中へ転がり込む。
「シートの後ろに!」
女は指示し、システムを立ち上げ始めた。
「私にだって・・・動かすくらい・・・」
計器に光が入りブゥン・・・と駆動音が高まっていく。
モニターに光が入り外の風景を映し出した。
横のモニターの中を一瞬、赤いパイロットスーツの二人がよぎりもう1体のMSに向かうのが見えた。
(なんでアスランがザフトなんかに・・・?)
キラは優しかった親友がザフトにいることを信じられず呆然としていた。
そのキラの目にモニターに浮かんだ文字が飛び込んでくる。
とっさにキラは頭文字だけ読み取っていた。
「ガ・・・ン・ダム?」
この地球圏で有名なMSと同じ名前だったことにキラは驚く。
「この機体はガンダムタイプのMSだったんですか!?」
キラは必死に機体を立たそうとしている女に聞くが
「これは最高機密なの・・・あまり関わらない方がいいわよ・・・」
と 質問は聞かないと言う内容の返事が返ってきただけだった。
「リム!こっちだ」
キラ達がMSに乗り込むのを見てアスランは残った1機を奪うためリムに声をかけた。
リムはやや納得のいかない顔をしながらアスランの声に応えた。
MSに乗り込んだ時 リムはアスランに詰め寄った。
「どういうつもりよアスラン!何であの時止めたの!止めなければもう1機奪えたのに!!」
いきなり怒鳴られて驚くアスランに気づかず言葉を続ける。
「私の援護を拒否したのもそうだけど、何でその前に動きを止めるのよ!?貴方ならナチュラルの二人くらい殺れるでしょ!?」
蒼い目を鋭くしアスランの答えを待つリム。
「・・・キラがいたんだ・・・」
その答えにリムはハッとする。
「キラって・・・キラ・ヤマトの事?貴方が前に話した幼年学校からの親友だったて言う・・・」
アスランとしては,キラの事は誰にも話したくは無かったのだがこの前リムに昔のことをしつこく聞かれつい話してしまったのだ。
アスランはリムと婚約者の『彼女』には頭が上がらなかった。
「でも・・・待ってよ。何で彼がここにいるのよ?彼も・・・」
「すまないが・・・そろそろ退いてくれないか・・・?」
さらに質問しようとするリムを遮って退くように言うアスラン。
まるでこれ以上聞かないでくれと言うように・・・
それを察し何も言わずにリムは後ろへと移った。
アスラン達が乗ったMSは爆発する工場“モルゲンレーテ”を後にした。
ヘリオポリスの周辺宙域でも戦闘は行われていた。
アスラン達が『G』を奪うための敵戦力の陽動を目的だったが戦力の差が大きく、残った連邦軍機は
ムウ・ラ・フラガのメビウス・ゼロ、アルビオン隊から配属されたばかりのバニング大尉率いるMS小隊だけだった。
ザフト軍はMSジンを4機失ったもののあと12機ジンが残っていた。
「あれだけいたMAが全滅かよ・・・」
モンシアが味方MAからのビーコンがなくなったのを見てぼやく。
「何機か中に入られてしまいましたね・・・」
アデルが戦闘開始直後にコロニーへ突入したMSの事を言う。
「後を追ったキョウスケが間に合えばいいんだがな・・・」
「大丈夫ですって大尉。中にはウラキの奴とキースもいるんです。何とかなりますよ」
ベイトはジム・カスタムのライフルをジンに向かって撃ちながら言った時、
「バニング大尉!あれは!」
フラガがコロニーから出て行くMSの機影のことをバニングに知らせた。
ザフトの戦艦ローラシア級に向かって行くいくつかの機影、それは秘密裏に開発されていたはずの機体Xナンバーズだった。
「まさか・・・またガンダムを奪われるとはな・・・」
バニングは苦い言葉を吐き出した。
追おうとしても残ったジンがそれをさせる筈も無く、残ったジンは帰艦しようとする味方を援護するべく攻撃を激しくしてきた。
「ジン4機大破!」
ヴェサリウスの艦橋でラウ・ル・クルーゼはその報告に眉を上げた。
「馬鹿な!何でこんな戦闘でそれだけの被害がでるんだ!」
この部隊は精鋭中の精鋭であるエースパイロットばかりで構成されている。
中立コロニーへの攻撃でMS4機も失う事など有り得ないはずなのだ。
だがクルーゼは何かに気づくと ふっ と笑った。
「どうやら五月蝿いハエが飛んでいるようだな・・・」
「は?」
意味も解らず聞き返すアデスに告げる。
「私も出る。シグーを用意しろ」
『ヘリオポリス全土にレベル8の避難命令が発令されました。住民は速やかに最寄のシェルターに・・・』
政府広報のアナウンスがコロニー内に響き渡る。
アスランが奪取したMSが、爆発するモルゲンレーテから飛び出してくる。奪い損ねた最後の1機も続いて飛び出してきた。
(キラ・・・なんでお前がここにいる・・・)
工場で見た顔は確かにキラだった。だが今それを確かめる術は無い・・・。
あちらに通信を送る訳にもいかないし・・・
あれこれと考えていたら、残された製造工場やパーツを破壊していたジンから通信が入った。
「よくやった、アスラン!」
モニターに映ったのはミゲルだ。辛そうにしているアスランに代わってリムが通信に応える
「ごめん!失敗しちゃったわ。あっちには連邦の仕官が乗ってるの」
「なに!?だからお前が行くのは反対だったんだ!!」
「あら、よく言うわね~。私よりも白兵戦が弱くて、MSの操縦も下手のくせに!」
「ぐっ・・・」
今回のMS奪取の担当は部隊のトップ5があたるものだった。
彼女はその5人の中に楽に入れるだけの実力を持っていたのだ。
「二人とも止めるんだ!」
激しい罵り合いになる前にアスランが止める。
モニターの中でミゲルが激昂する。
「えーい!ならアノ機体は俺が捕獲する。お前達は先に帰艦しろ!」
「あっ!パイロット達は殺さないようにしてね。」
リムがミゲルに言う。さっきとは違う真剣な顔で。その表情にミゲルが、言葉にアスランが驚く。
「なぜだ!?機体さえ手に入ればパイロットに用は無いだろう!」
「あっちに乗ってる士官は『大尉』って呼ばれてたわ。状況からしてたぶん技術士官だと思うのよねぇ~」
「・・・わかったよ。技術士官なら何かの役に立つかも知れないからな」
ミゲルは、面白く無さそうな顔をして通信を切った。
ふぅ・・・と息をつくリムにアスランが、
「すまない・・・」
と 礼を言うがリムは気にした風も無く言う。
「礼を言われる事はして無いわよ。キラ君の事を言ってもどうしようも無いし、言ったら言ったで
面倒な事になりそうだし・・・それより帰艦しましょう」
「しかしキラが・・・」
アスランが食い下がって来たのでリムはこめかみを痙攣させながら一気にまくし立てる。
「あのねぇ・・・、心配なのは解るけどここにいてもどうしようも無いでしょう!?
ミゲル君には殺すなって言ってあるんだから捕獲が成功すれば艦で逢えるわよ!
それに、万が一ミゲル君が失敗すれば絶対に生きているんだからね!
わかった!?私達がここに居ても邪魔なの!意味が無いの!わかったんならさっさと帰艦する!
これでも解らないって言うんなら、貴方をドツキ倒して私が操縦するわよ!?」
「わっ・・わかったよ」
このままでは本当にドツキ倒されそうなので、アスランはMSを飛び立たせた。
アスラン達が乗ったMSはしっかりと着地出来ていたが、キラ達の方は違っていた。
着地した途端、機体が大きく傾き キラは倒れないようにシートの背にしがみついた。
女性兵士が懸命にレバーやスロットルを調整している。
それでもMSの動きはかなりぎこちない。
モニターに映った映像にキラは唖然とした。
日常の風景が無残に破壊され、消火システムが追いつかないのか街中のあちこちから黒煙が上がっていた。
画面の端に映った人影を見て、キラはぎょっとして身を乗り出した。
「サイ!?トール!・・・ミリアリア!・・・タスクも!」
瓦礫の間を縫うように走ってたのはゼミの仲間達だ。
彼らも退避シェルターが見つけられなかったのか。
その時アスランが乗ったMSが飛び立ち、隣にいたジンがマシンガンを発砲し足下にクレーターを穿つ。
「しまった・・・!」
とっさに避けようとするが失敗し機体が大きく傾き尻餅をつく。
「うわっ!」
勢いが余って、シートに座った女性兵士の胸に頭から突っ込んでしまった。
「下がってなさい!死にたいの!?」
「す、すみません・・・!?右!」
キラが言った方に目をやると、別のジンがこちらにバズーカを発射してきた。
思わずミゲルは叫んだ。
「余計な事をするな、馬鹿野郎!こいつは捕獲するんだぞ!!」
(PS装甲が間に合わない・・・)
女性兵士とキラはやられると覚悟し、思わず目を背けた。
一方、コウとキースは自分達の機体がメンテナンスされている倉庫に着いたところだった。
「コウ・・・」
倉庫内に人の気配があるのを感じ、キースがコウに問いかける。
「シッ!・・・3人か・・・なにか話してるな?」
コウは開いている入り口からそっと覗き込み、会話を聞き取る
「これってロンド・ベルの機体だよな?なんでここにあるんだ?」
「もう、動けない機体だからスクラップにするんだろうぜ」
「おい、そんな鉄くずよりこのコンテナを開けてみようぜ」
彼等は倉庫内を物色していく。
どうやら、命令を無視して私欲を満たそうとする連中のようだ。
会話を聞いてキースが、
「どうする?仕掛けるか?」
と 聞いてくるが、コウは首を振る。
「相手はコーディネーターだ、隙を突かないと勝てない。少し様子を見よう」
キースは頷き銃をいつでも撃てるように安全装置を外した。
3人はコンテナのロックを外そうとパネルを操作している。
『・・・パスコードが違います』
機械的な音声が響く。
「だーっ!なんなんだよ!このロックは!・・・オイ!クラッキングはどうだ!」
「・・・だめだ!該当するプロテクトはありませんってでるだけだ!」
「本当にナチュラルの造ったセキュリティかよ・・・これでどうだ!」
2人がかりでクラッキングしていたうちの1人が、新しいクラッキングプログラムを入力した途端
コンテナから警報が鳴り出した。
『緊急警報、緊急警報、自爆コードが発動しました。本機はこれより自爆します。』
『なにぃぃぃ!!!』
3人の絶叫が倉庫内に響く。
『自爆5秒前』
『はやっ!』
『5、4、3・・・』
「しかも早口かよ!」
「言ってる場合か!逃げるぞ!」
倉庫内の混乱はコウ達のも聞こえていた。
「キース!仕掛けるぞ!」
「いいっ!?でも自爆するって・・・」
「大丈夫だって、いくぞ!」
「ああもうっ!こうなりゃヤケだ!」
倉庫内に踏み込むと、3人に向かって一斉に発砲した。
その場で銃撃戦になれば結果は変わっていたであろうが、イレギュラー的な事件が起こり3人は
正常に状況を判断できずに、その場から離れる事を選択したのだ。
反撃一つも出来ずに銃弾に倒される。
彼等3人が最後に聞いたのは、おどけた男の声で『冗談だよ、自爆するわけが無いだろう?』だった。
コウは、3人の死体を見下ろしていた。
「・・・すまない・・・手加減をする訳にはいかなかったんだ・・・」
コウ達は連邦の軍人ではあるが、その身体レベルは高いとは言いがたかった。
ロンド・ベルの一部の人間(竜崎一矢やゼンガー少佐)のように高い戦闘力を持っていれば手加減
して彼等を抑える事が出来たかもしれない。
だが、相手がコーディネーターだ。MS戦でなければコウが手加減して戦えるものでは無い
「・・・ブラフだったんだな・・・自爆って」
キースがコンテナを見ながら言う。
コウは自分の機体に向かいながら、
「キョウスケから話は聞いていたからね・・・」
と、だけ言うとハッチを開ける。
「キース、急ごう。敵の狙いは恐らくXナンバーだ」
キースを急かすとコウはさっさとGP-03ステイメンへと乗り込んだ。
「おい、待てよコウ!」
キースは自分の機体、ジムキャノンⅡへと走っていった。
「・・・悪いな・・・邪魔をする・・・!」
突然通信が入り、キラ達の機体の前に別の青い機体が飛び込んで来た。
弾頭が直撃するがその機体は損傷らしい損傷は無かった。
そしてバズーカを撃ってきたジンに向かって飛び出していった。
ジンは距離を取ろうするが、青い機体の踏み込みの速度が速くあっという間に肉迫される。
青い機体の右腕から杭のような物が出てくる。そして・・・
「どんな装甲だろうと・・・打ち貫くのみ・・・・!」
杭はジンの頭を貫き、青い機体はその場から後ろに飛び退く。
ジンのコックピットが開き、パイロットが脱出した途端、ジンは爆発した。
「なんて機体なの・・・バズーカの直撃を受けたのにああも動けるなんて・・・」
MSの中で女性兵士が唖然としていた。
PS装甲も無しにバズーカの直撃をくらったのだ、並みのMSやPTならば良くても戦闘不能に陥る。
「X-105・・・聞こえるか?」
青い機体から通信が入る。映し出されたパイロットは、無表情ではあるが
鋭い目をした青年だった。
はっ、として女性兵士が通信に応える。
「き、聞こえている。私は、第8艦隊所属マリュー・ラミアス大尉です。あなたは?」
「失礼した。自分は本日付でアークエンジェルに配備された、PTX-003C
『アルトアイゼン』のパイロット、キョウスケ・ナンブ少尉です」
「あなたが・・・アルト・・・MK-Ⅲのパイロット?」
そう言うと、マリューはアルトが保管されている区画に目をやり、
「まずいわ!あっちもザフトが襲撃している!このままではアルトまで・・・」
マリューは慌てるが、キョウスケは表情を変えずに言う。
「その心配は無い・・・。あのコンテナのロックをしたのは、カザハラ博士です・・・まともにやって解けるプロテクトをするわけがありません」
「えっ・・・?」
キョウスケに言われ、マリューは違う意味で不安になる。
(いったいどんなプロテクトをする人物なの・・・?)
「それより下がってください・・・ここはゲシュペンストでおさえる。残った1機を
ここで失う訳にはいかん・・・」
「わかったわ・・・なっ!嘘でしょ・・・!?」
マリューがこの場から離脱しようとした時、レーダーに反応があった。
「ナンブ少尉!」
「こちらでも確認した・・・ジン2機か・・・恐らく俺が追っていたジンだ別口から進入していたか」
「この機体でも援護くらいは・・・」
マリューが機体にPS装甲を展開させ、戦闘しようとするがキョウスケが押しとどめる。
「いえ・・・俺1機で何とかします。それに・・・分の悪い賭けは嫌いじゃない・・・」
そう言い残すと、ゲシュペンストはジンに向かって飛び出していった。
ミゲルは自分が見ている光景が信じられなかった。
(馬鹿な・・・何故あの機体は動けるんだ・・・?直撃だったんだぞ?
それにあの動きは何だ?俺達よりも速く動けるのか?あの機体は!)
ミゲルは味方が2機入ってきたのに気付くと、
「お前達は青い機体を攻撃しろ!侮るなよ奴はジン1機を一撃で撃破したからな!
俺はあの新型を捕獲する。手を出すなよ!!」
一方的に通信を送り、返事も聞かずに切ると突っ込んでくるゲシュペンストを上に跳んで回避する。
ステークをかわされ一瞬動きが止まる。
「ちぃ!逃さん!!」
ジンを追撃しようとキョウスケがバーニアを吹かそうとしたとき、2機のジンからの援護射撃が
ゲシュペンストに命中し、コックピット内に警報が響く。
「くっ・・・!装甲に甚大なダメージ・・・動力低下・・・先程のバズーカが原因か・・・」
キョウスケの乗っているゲシュペンストは、通常のに比べ装甲が厚くカスタマイズされている。
しかし、先程の砲撃で装甲は既に限界ぎりぎりまで痛んでいたのだ。
「脚部のサーボモーターも、もう限界か・・・。すまないラミアス大尉!1機に突破された!」
キョウスケは通信を送ると、さらに飛んでくる弾を避けようとするが
「!?民間人!」
ゲシュペンストのすぐ近くで、逃げ場を失っているキラの友人達を見つけるとその場で踏み止まり
彼等の壁となり、左腕に装備されている2連マシンキャノンを構える。
「射撃は苦手なんだがな・・・四の五の言ってはいられんか・・・」
『すまないラミアス大尉!1機に突破された!』
その通信を聞き、マリューは機体を下がらそうとするが間に合わず上空から振り落とされるジンのサーベルを
まともにもらってしまう。
「うわぁぁぁぁぁ!」
コックピットが激しく振動し、まだ体を固定してなかったキラは激しく揺さぶられる。
「しっかり摑まってって!『ストライク』にジンのサーベルは通用しないから!」
マリューはキラに言うと、ジンにむかって頭部バルカンの照準を合わせて、トリガーを引くが見当違いの方向に
弾が飛んでいく。
(この機体・・・まさか・・・)
キラが考えている所に、もう一太刀サーベルが叩き込まれ機体が後退する。
その時、キラは逃げ場を失いゲシュペンストに守られている友人達の姿を視界の端に捉えた。
さらに目の前にせまるサーベルを睨み付けると、マリューの手の上からレバーを握りそのまま引いた。
ストライクは身を沈めると、サーベルをかいくぐりそのまま体当たりをし、ジンが尻餅をつく。
唖然としている、マリューがハッと気づきとがめるように言う。
「きみ!―――」
しかし、キラは聞かずに言い返す。
「まだ人が居るんです!こんなものに乗ってるんなら、なんとかしてくださいよ!」
そのまま、キラは目をやろうとはせずに計器類をチェックしていく。
「・・・無茶苦茶だ!こんなお粗末なOSで、これだけの機体を動かそうなんて」
「ま、まだ全部終わってないのよ!しかたないでしょう!」
「―――どいてください!」
倒れたジンが起き上がろうとするのを睨みながら、キラが叫んだ。
「はやく!」
その声に、マリューは思わず腰を浮かし、そこに割り込むようにキラが座る。
シートの脇に備え付けてあるプログラム入力用のキーボードを引き出すと、すさまじい勢いで叩きはじめる。
「・・・キャラブレーション取りつつゼロ・モーメント・及びCPGを再設定・・・ちっ!なら擬似皮質の・・・」
ブツブツつぶやきながら、キラは猛然とMSのOSを書き換えていく。
起き上がったジンが、サーベルを構え突っ込んでくるのに気づき、トリガーとレバーを操作する。
バルカンが発射され今度は当たり、ひるんだ所に右ストレートを叩き込む。
予想だにしなかった反撃に、ジンはバランスを崩し再び倒れる。
その間にも、キラは常人ではありえない速さと正確さでキーを叩いていく。
「・・・運動ルーチン接続、システム、オンライン、ブーストラップ起動・・・」
ジンが上体を起こし、マシンガンを構えようとするのを見て、キラはペダルを踏み込んだ。
機体はすぐに反応し、高くジャンプする。
ジンがマシンガンを乱射しながら後を追う。
キラは、人がいなさそうな鉱山部を目指しながらスペックを呼び出す。
「他に、武器は・・・?アーマーシュナイダー・・・?これだけか!?」
ボタンを押すと、機体の両腰から2本の実剣型のナイフが射出される。
それをつかむと同時に着地し、ジンに向かって行く。
その動きは、先程までのとは比べ物にならないぐらい速い。
「こんなところで・・・!」
ジンがマシンガンを乱射するが、それをことごとくかわし肉迫する。
「やめろぉぉぉぉぉ!」
アーマーシュナイダーが、ジンの首と腰に突き刺さり電気系統が火を噴く。
ジンのコックピットが開き、パイロットが脱出したのを見るとマリューが何かに気づき叫ぶ。
「!?離れて!早く!!」
『ストライク』が離れたその瞬間、ジンが爆発した。
(まさか・・・この子・・・)
もし、『ストライク』が完全に仕上がっていたか、キラがOSを書き換える現場を見なければマリューはキラの事を
ニュータイプだと思ったかもしれない。
しかし、『ストライク』は仕上がってなく、OSを凄まじい速さで書き換える現場を見てしまったマリューは一つの
事実に気づいてしまった。
(・・・この子は・・・コーディネーター・・・・)
その思考を最後に、傷の痛みに耐えかねマリューは気を失った。
第二話に続く
あとがき1・・・(いいわけ及び雑談の場とも言う)
作者(以下作):どうも、皆様始めまして作者ことコワレ1号です。
さて、私が書いた初の小説いかがでしたでしょうか。
あまりに駄文なんで恥ずかしいのですが、いくらか楽しめていただけたのなら幸いです。
読んで解ると思いますが、この小説の世界はガンダムSEEDの話を主軸にしています。
これプラスで『第2次SRWα』の後の世界と、時の流れの世界も入っております。
だから、タイトルがスパロボT(時の流れのT)なんです。
ちなみに、ナデシコの登場はもうちょっと後の方になります。
私としてはこの話がどこまで続くのか考えておりません。(爆)
とりあえずラストは考えてはいるんですけど、そこまで行くのにいどのくらいかかることやら・・・・
しばらくの間みなさん御付き合いください。
あとがき2(兵器及び矛盾(不明)点の説明)
作:さて、ここでは兵器や矛盾した点の説明を・・・ダダダッ←(遠くからの足音)
作:はっ!しまった!『説明おば・・・
プスッ!!チュゥゥゥゥ!!←(1回り大きく)
ぱたっ・・・・・
イネス(以下イ):さて・・・その先は言って御覧なさい?・・・動かないわね・・・ヤマダ君以外にはきつかったかしら?
イ:コホン、一応これナデシコ小説だから私が『説明』するわね。
「キョウスケの乗るゲシュペンストについて」
彼のことは説明しなくてもいいわね?・・・え?知らないって?そういう人はスパロボインパクトかOGをやりなさい
で、彼の機体はこの小説のオリジナル設定よ。苦情は作者にしてね・・・
機体名:量産型ゲシュペンストMK-Ⅱカスタム
原動力:プラズマ融合炉エンジン
武装:2連マシンキャノン プラズマステーク
備考:通常の量産タイプに比べ装甲が厚くされているが、機体軽量化のため武装が少なくされている。
それでも他のゲシュペンストより重いので脚部に多大な負担がかかる。
もともと、アルトのデータ収集用の機体であり上に書かれていること以外は他の量産タイプと変わりが無い。
「なんでNジャマー下でロンド・ベルのMSが動くのか」
イ:Nジャマーは核運動を抑制化する、というのはみんな知っているわね?
イ:ロンド・ベルのMSや一部のPTは核の力で動いてるのはみなさんのご承知のとうり。
イ:でも、話の中でバニング大尉達はそのMSを普通に動かしてるのよね・・・
イ:これはこの『ゲシッ!』(作者を蹴る音)馬鹿の間違いではないの
イ:「話に絡んでくる大切な要素であり、鋭い人なら参加作品(予定)を見れば察してくれるかも・・・」
イ:と言うのが作者の遺言よ・・・え?まだ生きてるって?
「あのタスクとリムは?」
タスクはOGやαに出た、あのタスク・シングウジよ。
リムの方は、Dのヒロインと名前が同じだけでオリジナルキャラよ。
設定によるとオーフェンのアザリーとコギーを足して2で割った性格で、ラクスの幼馴染らしいわ
「カザハラ博士って・・・」
イ:イルム中尉のお父さんね。詳しくはOG参照のこと。
イ:この小説では、愉快な性格に拍車が掛かっているようね・・・
イ:今回はこんなところね。
イ:次までにこのコーナーの正式名称を考えなきゃ・・・じゃあね
イネスが去りその場には死体っぽい物が残される・・・・