第四話 船出
『X-105ストライク、応答せよ』
『キラ!どこだ!?』
通信機はさっきから2人の呼びかけが続いている。
コックピットの中ではキラのせわしない呼吸音だけが聞こえていた。
(ヘリオポリスが・・・)
ついさっきまでキラが踏みしめていた大地のほとんどが、バラバラに四散し宇宙空間を漂っていた。
目の前を見覚えのある店の看板が横切り、その向こう側に大きく固まっている区画が見えた。
そこは頑丈に後から造られた鉱山部だった。
(どうして・・・)
思えばあの鉱山部でこのMSを操縦してから全てがおかしくなってきたような気がしてきた。
あの時、このMSの操縦に割り込まなければ・・・、マリューの言葉を聞かずに少し遠めのシェルターに逃げ込んでいれば・・・
避難経路から外れて走っていく、名前も知らない女の子を追わなければ・・・
そこまで考えるとキラは自己嫌悪に陥り、頭を振った。
(考えてもしょうがない事だ、今ぼくは友達を守るために自分の意思でこれに乗っているんだ。それを他人の所為に状況の所為にしてはいけないんだ)
『・・・X-105ストライク!聞こえるか!応答しろ!!』
通信機の女性の声の方に焦りが混じっていた。
『キラ・ヤマト!聞こえているなら、無事なら返事をしろ!!』
自分の名前を呼ばれ、思考を中断した。アークエンジェルで会った士官ナタルの声だった。
「あ、はい・・・こちら・・・キラです」
通信機のスイッチを入れ答える。ナタルが、ふぅ と安堵の息を吐くのが聞こえた。
『無事、だな?』
「はい」
『近くに、ウラキ少尉のガンダムはいないか?』
『いえ、大丈夫です。今こちらでも発見しました』
コウが通信に割り込んでくると、ストライクのモニターにステイメンが映りこちらに向かってくる。
『ウラキ少尉、こちらの位置はわかるな?ストライクの誘導を頼みます』
ナタルはそう告げると通信を切った。
「キラ、動けるか?無理ならこのまま引っ張っていくけど・・・」
「はい・・・」
キラはレバーを握りなおした。両親の安否が気になるが、無事に避難してくれただろうと思うしかない。
発進しようとした時、電子音がコックピットに響き、モニターに何かが表示された。
「コウさん・・・これって・・・?」
「救難信号だ・・・どこからだ?・・・・・・・・『あった!』」
キラとコウが同時に見つけた漂流物は、円筒型の細長い救難ボートだった。
「さて、これからどうする?」
フラガが火器管制システムの席からマリューの方に向き直りながら聞く。
マリューが思案顔になると、バニングがアドバイスを言う。
「艦長、ザフト艦の動きを確認した方が・・・」
「ええ、そうですね。・・・どう?」
アドバイスを受け、レーダーを担当していた士官に聞くが答えは冴えなかった。
「だめですね・・・残骸の中にはまだ熱を持つものが多く、熱探知が効きません。
しかも先の戦闘で散布されたミノフキー粒子の影響でレーダーも使い物になりません」
「敵さんもこっちと同じ状況だろうな」
フラガが気休めになる事を言う。
「・・・今、攻撃を受けたならこちらに勝ち目はほとんどありません」
「確かにな。こちらの戦力はストライク、アルトアイゼン、ステイメン、ジム・キャノンU・・・ボロボロのメビウス・ゼロの5機のみ。
俺達の機体はパーツがない為に修理不可の状態だしな・・・」
マリューの言葉を受け、バニングが現在の戦力を確認していく。
「最大戦速で振り切れないか?かなりの高速艦なんだろ、こいつは?」
フラガの提案にバニングは首を振る。
「最初に出撃する際、高速艦のナスカ級が確認されている。振り切れるかどうかわからんな」
「オイ!そんな事は許可してないぞ!!」
突然、ナタルが通信機越しに怒鳴った。
「どうしたの?」
マリューがナタルの方を向き聞く。
「キラ・ヤマトとウラキ少尉が救難ボートを回収してきました」
「推進部が壊れて漂流していたんですよ!?」
『今この艦は戦闘中だ、そんな余裕はない』
「そんな!このまま放り出せとでも言うんですか!?避難したヘリオポリスの市民が乗っているのに!!」
『すぐに救援隊が来る!そんな事よりこちらの方を優先させろ!』
黙って二人の言い争いを聞いていたコウがストライクに接触回線を開いた。
「・・・オレの調子に合わせてくれ・・・アークエンジェル?通信が良く聞こえませんが・・・」
『ウラキ少尉!なにをふざけている!?』
ナタルの怒鳴り声を聞き流し、コウはキラに聞き返す。
「キラ、通信の状況が悪いみたいなんだ。そっちで試してみてくれないか?」
「え?はい!・・・・・・こっちも調子が悪いですね」
『キラ・ヤマト!なにを言っている!?ついさっきまで通信していた・・・・・・プチッ』
「じゃあ、仕方がないな。これより現場の判断により回収した救難ボートを受け入れます」
「・・・コウさん、いいんですか?こんな事をして?」
「ロンド・ベルではこういう事を良くやる連中がいるんだ・・・まさか自分がやるとは思わなかったけど。
それに、俺達軍人は民間人を守るのが義務だからね。放り出すわけにはいかないよ」
「ウラキ少尉!キラ・ヤマト!応答しろ!!」
ナタルが二人を呼び出そうとするが、返事が返ってこない。
「・・・いいわ、許可します」
マリューがため息をついてから言うと、ナタルはマリューの方を睨みつけた。
「本艦は、まだ戦闘中です!避難民の受け入れなど・・・」
反論するナタルからバニングはインカムを取り上げコウ達に通信を繋ぐ。
「ウラキ、キラ、今ハッチを開く。そこで避難民の受け入れ作業をするぞ」
「バニング大尉!!」
驚きと非難の声を上げるナタルにバニングは冷静に言い放つ。
「バジルール少尉、確かに今この艦は戦闘中で余裕がない。だが、こんな状況だろうと我々軍人の責務、
民間人を守ることを放り出してはならないとオレは思うのだがな」
バニングの言葉にナタルは顔をしかめた。
バニングの言葉は軍人として正しい発言ではある、だが代々軍の高級官僚の家庭で育ったナタルはそれは建前であり、
軍人は軍を守るために機能すると教えられてきたので納得が出来なかった。
「それに、こんな所で時間をとりたくはないの」
マリューの言葉を受けて渋々とナタルは頷く。
「艦長がそうおっしゃるのでしたら従います」
「さて、話を戻してもいいか?」
フラガが三人に話しかけてくる。
「この艦の進路なんだが、本来なら月基地を目指すべきなんだろうが・・・」
「ほぼ確実に追撃を受けるか、戦闘になりますね。艦長、私は“アルテミス”への寄港を具申致します」
フラガの言葉に続きナタルが意見を言う。
「“アルテミス”?『傘』のアルテミスの事か?」
フラガが聞き返すとナタルは無言で頷いた。
連邦軍が復興作業と平行して建設した宇宙要塞である。
攻撃設備は目を張る者はないが、要塞全体を包んでしまう大規模なエネルギーシールド、通称“アルテミスの傘”は
どんな攻撃でも貫けないをうたい文句にしている。
正面ディスプレイに周辺の宙域図が映し出された。
「あそこは現在の本艦の位置から、もっともとりやすい位置のある友軍です」
「でも、ストライクもこの艦も公式発表どころか、友軍の認識コードを持たない状況よ?」
「物資の搬入もままならず発進し、さらに避難民まで受け入れた我々には早急に補給も必要です」
マリューに多少の嫌味をこめてナタルは言う。
マリューは嫌味に気付かなかったのか、聞き流したように表情を変えずに考えている。
このまま戦闘がなかったとしても、月までに物資が足りなくなる事は目に見えている。
ナタルは言葉をついだ。
「事情はあちらにも理解してもらえると思います。現状は極力戦闘を避け、アルテミスで補給を受け、
その上で月基地に連絡を取るのがもっとも現実的な策かと思いますが・・・」
「・・・ちょっと待ってくれ」
今まで黙って宙域図を見ていたバニングが声を上げる。
「バニング大尉、なにか?」
「バジルール少尉、君は“チューリップ”の位置を考えているのか?」
“チューリップ”とは謎の異星人木星蜥蜴が送り込んできたもので、この中から無数の無人戦艦、無人機動兵器が出現する。
これ4つから出てきた敵戦力で、火星の防衛にあたっていた連邦艦隊は全滅し、その時火星にいた元ロンド・ベル隊の
破嵐万丈、竜崎一矢及び火星入居者、バーム星人たちと連絡が取れなくなってしまったのだ。
そして、それを救出にむかった民間の戦艦『機動戦艦ナデシコ』も火星で消息を断ち、8ヶ月が過ぎていた。
バニングの質問にナタルは頷くと、図にチューリップを意味するであろう黒い三角形があちこちに表示される。
「はい、表示してはいませんでしたが、ここからアルテミスまではチューリップは一つもありません」
「・・・バジルール少尉、チューリップの情報を最後に聞いたのはいつだ?」
バニングの質問の意図が理解できなかったが、ナタルは律儀に答える。
「ヘリオポリスへ入る前ですから、4日ほど前になりますが・・・なにか?」
「ならば、知らなくても仕方がないか。オレが最後に確認したのは2日前だ、その時聞いたチューリップの位置はこうなっていた」
キーを叩き、図中のチューリップを動かしていく。
バニングが操作を終えると、アークエンジェルが取るはずだったアルテミスとの進路上に3つのチューリップが出現した。
『なっ!?』
図を見てマリューとナタルが声を上げて驚く。
「・・・そういえば、確認すんの忘れてた・・・」
フラガが頬をかきながら呟く。
「情報に多少タイム・ラグがあると思うが、2日前でこれだ。最悪これより増えている可能性があり、よくても1つは存在している可能性が高い」
「・・・バニング大尉は何か策をお考えですか?」
ナタルが聞くとバニングは頷いた。
「ああ。図を見てくれればわかると思うが、アルテミスとの進路上にチューリップが集中した事によりこの宙域のチューリップが無くなった」
バニングがチューリップがいない所に指をさしながら言う。
「幸い、こっちはロンデニオン、ロンド・ベル隊の本拠地の方向だ。アルテミスよりは遠いがいけない距離ではないだろう」
「ロンデニオンに寄港するというのですか?」
ナタルの言葉にバニングは頷く。
「そうだ。あそこでならオレ達の機体の修理も出来るし、補給も可能だ。それに避難民を降ろす事も可能だ。一応軍事コロニーではないのでな」
「しかし、距離が問題ですよ?この距離を何事もなくいけるとは思えません」
ナタルの考えにフラガは頷きながらも言い返す。
「だな、だけどさアルテミスに向かえば確実にチューリップからワンサカ出てくる蜥蜴、最悪クルーゼ隊との挟み撃ちになるぜ?
ロンデニオンの方は距離があるが、蜥蜴と遭遇する確立は極端に低いんだ。もし仮に敵と遭遇しても、そう多い数が出てくるわけじゃない
成功の確率的には、あんまし変わんないと思うがね。まっ、決めるのは艦長さんなんだけどな」
フラガは言い終えるとマリューを見て改めて聞く。
「さっ、どうするラミアス艦長?今言った通り成功の確立はどっちも大して変わらない。
片方は近いが無数に出てくる蜥蜴とクルーゼ隊の挟み撃ちになる可能性があるルート。
もう一つは少し遠くて、無数の蜥蜴にこそ遭わないだろうが、少数の蜥蜴の部隊又は他のザフトの部隊に遭うかも知れず、
やはりクルーゼ隊と挟み撃ちになりえないルート・・・どっちを選んだって艦長に従うよ」
マリューは下を向いて少し考えてから答えた。
「・・・本艦はこれよりロンデニオンへ向かいます
確立がほぼ同じならば、目的地にたどり着いた時の避難民の安全を考慮しての決断です・・・何か異論はありますか?」
最後の問いかけはナタルに対してのものだった。
「いえ、ありません、艦長」
ナタルは敬礼をし答える。
先程のように納得いかないと言う顔はしていなかった。
「デコイ用意!発射と同時にロンデニオンに航路修正のためメインエンジンの噴射を開始する」
マリューが指示を出しブリッジがあわただしくなる。
「艦長、デコイの発射コースは自分に任せてもらえませんか?」
ナタルがマリューに進言する。
「なにか、考えがあるの?」
「はい、うまくいけばかなりの時間を稼げるはずです」
「・・・わかったわ。任せるわよ、バジルール少尉」
マリューが許可を出すと、ナタルは席に着きパネルを操作し始める。
「ロンデニオンまでの、サイレントランニング・・・およそ半日ってとこか」
フラガが呟きバニングはそれに頷きながら言う。
「あとは、運しだいだな」
マリューは二人の会話を聞きながら号令を発した。
「デコイ発射!メインエンジン噴射!艦ロンデニオンへの航路修正!」
キラがストライクから降りようとすると、通路からトリィが飛んできた。
トリィは、一瞬キラの肩に止まるがすぐに飛び立ち、そのまま下で避難民の身元照会をしているモンシア達の方へと向かっていった。
「あ、トリィ!」
モンシア達の邪魔をしては悪いと思い、キラはトリィの後を追いストライクから飛び降りた。
『トリィ、トリィ』
トリィの鳴き声に気付いたのか、今ボートから出てきた一人の少女がキラの方を向く。
少女の顔に気付いてキラは驚き、空中で止まろうとする。
キラの顔に少女も気付くと、驚きと歓喜の声をあげボートを蹴るとキラの方へ飛んできた。
「あー!あなた、サイの友達の・・・キラ・ヤマト!?」
「フレイ・アルスター!?このボートに乗っていたのか!?」
キラはフレイに抱きつかれ顔を赤くした。
そんなキラの様子に気付かずに、フレイが次々と質問をしてくる。
「ねえ、一体何があったの?ヘリオポリスは?私、友達とはぐれちゃって・・・とっても心細かったわ!なんであなたがこの艦に、
MSに乗っているの?サイは?サイ・アーガイルは一緒なの!?」
「あ〜えーと・・・」
一度に聞かれ、どこから答えたらいいかと考えていると、モンシア達を手伝っていたキョウスケが二人に気付き話しかけてきた。
「キラ、知り合いなのか?」
「あ、はい。同じ学園の生徒です」
「そうか、なら身元照会はしなくても大丈夫だな。・・・すまないが、名前だけは名乗ってくれないか?」
キョウスケは、キラに抱きついたままのフレイに聞いた。
「あ、はい。フレイ・アルスターです」
フレイが名乗るとキョウスケは名簿に名前を書き込む。
「OKだ・・・キラ、後で話がある、ストライクの件でだ。とりあえず彼女を友人達の所に連れて行ってやれ」
「わかりました」
「それと、二人ともいつまでもくっついていない方がいい・・・モンシア中尉が凄い目つきで睨んでいるぞ・・・」
キョウスケに言われ、キラとフレイは慌てて離れた。
「このような事態になろうとは・・・」
ヴェサリウスのブリッジでは、いまだ動揺のさめないアデスがヘリオポリスがあった宙域を見つめていた。
アデスは一つ息を吐き、自分を落ち着かせるとクルーゼを振り返って見た。
「いかがされます?中立国のコロニーを破壊したとなれば、評議会も・・・」
「連邦の新型兵器を製造していたコロニーのどこが中立だ?」
クルーゼは迷いも後悔もせずに言い放つ。
「住民のほとんどは脱出している。問題はないさ・・・血のバレンタインにくらべればな」
アデスは言葉をのみ、また外に目をやった。
(確かに、ユニウスセブンに比べれば大した事はない・・・だが、あの惨劇と比べられるような事を我々はしてしまったのだぞ?
なぜ、隊長はこうも冷静でいられるのだ・・・?)
「アデス、敵新造戦艦の位置はつかめるか?」
クルーゼの言葉にアデスは驚いた。
「まだ追うつもりですか?しかし先の戦闘でこちらのMSはリムのジンU1機しか・・・」
「あるじゃないか、『ガンダム』の名こそ付けられてはいないが、呼んでも差し支えの無いのが4機も」
「奪った4機のMSを全機投入するのですか?それでも、あちらにはロンド・ベル隊がいます。数の上では互角でも・・・」
「ふむ・・・」
アデスの考えも最もだと思い、クルーゼは顎に手を当てて考え込む。
先の戦闘では数はこちらが上だった。
しかし、その戦闘に参加したMSはリムのジンUを残し全滅、しかもミゲルという優秀なパイロットを失う事になった。
ロンド・ベルに仕掛ける場合は、数の上での優劣は関係ないのだ。
クルーゼが考えをまとめていると、通信兵から報告が入った。
「大型の熱量を感知!戦艦のものと思われます!コースを解析、これは・・・ロンデニオン、ロンド・ベルの本拠地!」
アデスは宙域図を開き、一言呟いた。
「目的地への距離がありますね・・・囮でしょうか?」
「そう考えるのが、妥当だろうが・・・どうも引っ掛かるな・・・」
アデスの言葉に同意しながらも、クルーゼは顔をしかめる。
「と、いいますと?」
クルーゼの言葉が気になり、アデスが聞き返してくる。
「囮を発射した方向だ。何故、ロンド・ベルの本拠地の方角に発射する?」
「は?」
「何故、向かうはずも無い方向に囮を発射する?向かうと見せるのが囮の役目だろう。
距離を考えると、この状況で取るべきコースではない事は誰の目にも明らかだ」
クルーゼの言葉にアデスも気がついたようだ。
「確かに・・・妙ですね」
「この状況で取るべきベストなコースは、此処、アルテミスだ」
クルーゼは図中のアルテミスを指差す。
「位置的にも取りやすい場所にあるしな。私なら月軌道に囮を発射し、敵の目を逸らしてからアルテミスに進路を取る。
何故、すぐ囮とわかる方向に発射した・・・の・・・か・・・
!アデス! 南雲准将に通信を繋げ!!」
突然のクルーゼの大声に、アデスは目を見開き驚く。
「南雲・・・准将・・・?木れ「急げ!!早くしなければ、奴らに逃げ込まれるぞ!!」
アデスの質問を大声でかき消し、クルーゼは続けて叫ぶ。
「まんまと奴らに騙される所だったよ!奴らの目的地はアルテミスでも、月でもない!ロンデニオンだ!!
囮をすぐに囮と気付かれる方向に発射する事により、その方向を我々の眼から離すことが奴らの目的だ!!
囮と同じ方向に進むと考える者はいないからな!!」
クルーゼの勢いに押され、アデスは急いで南雲准将に通信を繋ぐように指示する。
「しかし隊長、ミノフスキー粒子の影響で繋がるのに1、2時間程かかりますよ?
もし、奴らがアルテミスに向かっていたら・・・」
「そのために南雲准将に連絡を取らなくてはならない。私の予想通りに進路を取っているにしても奴ら、ロンド・ベルを相手にするのには
『あちら』の兵器を使わねばまた返り討ちにあう事になる」
クルーゼはそこまで言うと、踵返しブリッジを出て行こうとする。
「部屋に戻っている。通信が繋がったら私の部屋に回せ。・・・あと、アスランとリムを私の部屋に出頭するように命じておけ」
アスランは医務室から出ると、通路の向こう側から歩いてくるリムに気付いた。
「リム!」
「あ!アスラン!」
名前を呼ばれて、リムもアスランに気付く。
「・・・なんで医務室から出てくるの?」
「きみが原因だろ!!」
リムのあまりの発言にアスランは珍しく声を荒げる。
格納庫でもらったボディーブローの所為でアスランは動けずに、イザークやディアッカに先程までからかわれていた。
ニコルが注意しても二人は止めようとはせずに調子に乗るばかりだった。
「ったく! なんで俺がこいつのお守りをしなくちゃいけないんだ!!」
「イザーク、なんでそのお守りにオレも付き合わなくちゃならないんだ?」
「『バスター』のOS書き換えの作業をサボってたお前の所為だからだ! 本来ならお前とニコルでする事なんだぞ!!」
「あれぇ?リムはお前とイザークに頼んだんだよな?」
突然、ディアッカに話を振られるが耳を傾けていたニコルは平然と返事をした。
「ええ。僕等の内の一人じゃ心もとないんで二人で見張っていてくれ、と」
「ほらな? んじゃオレは関係ないな。リムの『お願い』に関わるとロクな事ないからな」
ディアッカが言いながら出て行こうとすると、イザークがニヤリと笑い隠していた録音機のスイッチを切った。
その音に気付き、ディアッカはゆっくりと振り返った。
「・・・なんのスイッチの音だ? イザーク・・・・?」
「・・・ふっ」
イザークは答えずに軽く笑ってから『再生』のボタンを押す。
『リムの『お願い』に関わるとロクな事ないからな』
さっきのディアッカの言葉がハッキリと録音されていた。
「これを聞いたリムはお前をどうするかな?・・・出て行くのなら止めないぞ?」
「だぁー!! お前はオレを殺す気なのか!? つーか、いつの間にそんな物用意していた!!」
「あの・・・ここは一応医務室ですから静かに・・・」
ニコルが注意をするが、二人は聞かずに言い争う。
「お前が残ればいい話だ。リムが戻り次第このブツは廃棄する・・・どうだ?」
「・・・ああ! もうわかったよ!! なんでオレがこんな事を・・・」
「リムの機嫌を損ね、その上で一撃でKOされて動けなくなったアスランが悪い!!」
イザークがアスランを指差し言い切る。
「そうだよな〜、一応アカデミー主席卒業生なんだから一撃KOは情けないよな〜」
ディアッカが笑いながら言う。
「まぁ、相手がリムじゃしょうがないかもしれないが、付き合いが長いのに機嫌を損ねるような事を言うなんて、なにを考えているんだ?」
イザークは呆れながら動けないアスランを見る。
ため息をついてディアッカが言う。
「何気ない事を言ったつもりなんだろうぜ本人は。女はその一言で傷つくのにな」
「・・・万年ナンパ失敗男がよく言うな」
「余計な事は言うなよ。まさか『彼女』にもそんな事を言ってるんじゃないんだろうな?」
「いくらアスランでも、そんな事を・・・いってる可能性が高いな・・・」
ディアッカにツッコミを入れながらも、その可能性を捨てきれない事に気付きイザークが呟く。
(そんな事言うわけ無いだろう!!)
アスランはそう叫びたかったが、リムに殴られた所の痛みが全然取れずまだ声を出せずにいた。
「もし、そうならプラント中の男を敵に回す事になるな」
笑いながら言うディアッカにイザークは爆笑しながらその可能性を否定する。
「はははははははっ!! それは無い!! そんな事になったら真っ先にリムに殺されるからな!!」
「あの・・・医務室ですから静かに・・・」
「うるせぇぞ! ガキ共!! クルーゼ隊だかなんだか知らねぇが
医務室で静かに出来ねぇんなら、
手前等全員後方送りにするぞ!!」
今まで黙って書類作成をしていた船医がメスを片手に持ちながらイザーク達に向かって叫ぶ。
『はい! すみませんでした!!』
三人は一斉に敬礼をしながら謝る。
「本当にそう思うならとっとと出て行け! こいつは俺が診ていてやるから」
「でも、僕等はリムに・・・」
ニコルは事情を説明しようとするが船医は手でそれを制し、
「事情は話を聞いていたからわかる。リムの嬢ちゃんには俺から話しておく。とっとと失せろ」
と、言い放つと同時にイザークとディアッカは医務室から出て行く。
「じゃあ、よろしくお願いします。アスラン、お大事に」
ニコルもそう言い残すと医務室から退室する。
「あ〜そうだった。忘れていたわゴメンゴメン」
リムは笑いながら謝る。
「先生の話ではナチュラルなら内臓破裂をしていたかもしれないって言うし」
アスランは医務室を退室する時に言われた言葉をそのまま伝える。
「無茶な事を言う貴方が悪いのよ」
悪びれもせずに言うリムを見てアスランはため息をついた。
「それはそうと・・・キラの方は?それに一緒に出たミゲルは?」
アスランの質問にリムは押し黙った。
「・・・ミゲル君は戦死したわ・・・コロニーの崩壊時に私をかばって・・・」
「ミゲルが!?」
「キラ君の方は・・・隊長にも報告するけど、報告しなくてもいい所だけ貴方に教えておくわね。
彼は連邦軍ではないわ、自分で言ってたし。あのMSに乗っているのは理由があるみたいよ。なんか、友達を守るためとか言ってたけど・・・」
「友達を・・・?」
「ねぇ、これは私の考えなんだけど・・・彼の友人達が人質に取られているんじゃないかしら?
キラ君が戦わないと友達を殺すって」
「なっ!? それは・・・」
アスランの否定の言葉を聞かずにまくし立てる。
「それはない・・・と言えないことも無いでしょう?
ティターンズがなくなったとは言え連邦軍の本質は何も変わってはいないのは誰もが知っている事よ。
なら民間人を人質に戦いを強要させる事くらいやりかないわ」
話を聞いてアスランはその可能性もある事に気付き、考えを張り巡らせた。
(キラは昔から騙されやすい性格をしていたからな・・・友達とか言ってキラを利用しているのか?
なら、その事をキラに気付かせてやれば・・・
いや、無理だな。あいつは誰にでも優しいから自分を利用した連中を憎んだり、見捨てたりする事が出来ないだろうし
じゃあ、どうすれば・・・)
「・・・考え中に悪いけど、隊長の部屋に着いたわよ?」
リムに呼ばれ思考を一時中断する。
「貴方、私の言った事を気にして考えていたの? あれは私の考えた仮定なんだから信憑性は無いわよ?」
「人を不安にさせるような事を言っといてそれかよ・・・」
アスランはため息をついて言いながらインターホンを押す。
「アスラン・ザラ、リム・フィア、出頭しました」
時間は戻って、二人が部屋に着く少し前。
『・・・久方ぶりだな、ラウ・ル・クルーゼ』
「ええ、ネルガルの新型機のデータを渡した時以来ですな。南雲准将」
音声のみではあるが通信が繋がり、南雲と呼ばれた男と挨拶を交わす。
『一体、何の用だ? 緊急だと貴様の部下は言っていたが・・・?』
「こちらは少し、厄介な事態になっていましてね」
クルーゼは、今の部隊の状況と追っている敵の事を話した。
『・・・ほう、ロンド・ベルと戦ったのか。しかし、クルーゼ隊がロンド・ベルの一部にそこまでやられるとは、噂以上だな奴等は」
「実際戦うまで信じられませんでしたよ。多少の戦略上の不利を覆せるという事に」
『それで、頼みとは何だ?』
「二つほどあります。一つ目はそのままアルテミス宙域に止まっていただきたい」
『この宙域に? しかしアルテミスはもうすぐ落ちるぞ?」
「私の予想が外れた時のためですよ。私が奴等の手に引っ掛かっていないと言い切れませんからな」
『わかった。こちらに来たならば新型機の餌食にしてやろう。もう一つはなんだ』
「もう一つは、近くを懲戒任務中の『カトンボ』を2隻ほどを奴等の予想進路上へ移動させてください」
『なるほど。挟撃するわけか・・・』
「こちらは6時間ほどで奴等に追いつきますが、カトンボのほうは?」
『5時間から5時間半といった所か・・・1時間から1時間半の時間差になるな』
「ロンド・ベル相手に1時間半も持ちますか?」
『貴様の話だと追っている艦には特機はいないからな。MS程度の火力では歪曲場を貫けん
やろうと思えば沈める事も可能だ』
「心強いですな。では」
クルーゼが通信を切ると同時に、
『アスラン・ザラ、リム・フィア、出頭しました』
「入りたまえ」
二人が入ってくると、アスランに問いかけた。
「先の戦闘に出撃する際、トラブルが起こりその中心となったのが君だと報告を受けたが・・・何があったのかね?
リムが中心ならいつもの事だが、あまりに君らしからぬ事だからね」
「・・・隊長、何気にひどい事いいますね・・・」
リムは呟くが二人に聞こえてないようだ。
「申し訳ありません・・・思いがけない事に動揺してしまい・・・」
アスランは機体奪取の時にあった事を俯きながら話した。
「――― 一度は帰艦したのですが、コロニーの様子が気になり出ようとしたら」
「私にKOされて、今まで動けなかった、と言う事です」
アスランの後を受けてリムがしめる。
「なるほど・・・戦争とは皮肉なものだな」
クルーゼは手を組む。
「動揺も致し方ない。仲の良い友人だったのだろう?」
「はい・・・一番の親友でした」
「わかった。そういう事なら次の出撃に君は外そう」
アスランは、はっとして顔をあげた。
「そんな相手に銃をむけられまい・・・。私としても部下に友人を殺す様な事をさせたくはない」
「いえ、隊長! それは!!」
アスランは首を振り反論するがクルーゼは言い続ける。
「彼が君の友人でも今は我々の敵だ。撃たねばこちらが撃たれる」
「キラは・・・あいつはナチュラルに利用されているんです!あいつ・・・優秀だけど、ぼうっとしていてお人好しだから、気付かずに・・・
それに、ひょっとしたらあいつのゆ・・・」
「はいはい。熱くならないの」
ドッ!!
いきなり、リムがアスランのわき腹にエルボーを当ててきた。
リムは手加減をしたが、いい所に当たったらしく喋れなくなった。
「・・・リム・・・私はアスランと話し中だったのだが・・・」
クルーゼはこめかみを押さえながらリムに注意をする。
「すいません・・・いい所に入っちゃったみたいね・・・」
言いながらアスランに肩を貸す。
(リム・・・何を・・・?)
アスランは喋ろうと口を動かすが、痛みの所為で声が出なかった。
「え〜と、アスランが何か話したいらしいので通訳しますね。
『私はキラを説得したいんです。コーディネーターなんだからこっちの言う事が判らないはずがありません
もし、聞き入れなければ私が撃ちます』
・・・だそうです」
(今喋ろうとした事と違う!!)
リムの発言に心の中で首を振るアスラン。
もし、この場で首を振ろうとしたら首の骨を折られかねない。
「ちなみに、『あの子』の婚約者にそんな事をさせたくないんで、撃つのは私になりますね」
リムが自分を指差しながら、笑って言う。
(なっ!? リム!!)
アスランは胸中で驚き叫ぶ。
「・・・わかった。これより敵艦を追う、接触はおよそ6時間後だ。それまで身体を休めておくといい」
「わかりました。失礼します」
クルーゼに退室を許可されると、アスランを背負ってリムは部屋を出て行った。
「私が・・・た・・・とは・・・少し・・・うな・・・」
退出する際、クルーゼの呟きが途切れ途切れに聞こえてきたがリムは気にしなかった。
「・・・ごめん、大丈夫だった?」
「・・・ああ、なんとかな・・・」
アスランを部屋に放り込み、さっきのエルボーの事を謝った。
「なんであんな事を?」
アスランが聞くとリムはキョトンとし、
「友達の血に塗られた手で、『あの子』を抱きしめたくは無いでしょう?」
「いや、それじゃなくてエルボーの事なんだが・・・」
リムにツッコミながらアスランはある事に気付いた。
『彼女』は友人を殺し、血に塗られた自分に微笑んでくれるのだろうか・・・と。
出来るだけその事は考えないようにしていると、リムが答えてきた。
「ああ。それは、貴方が私の話を鵜呑みにして、隊長に言おうとしたからよ」
「ちょっと待て! それが理由か!?」
呆れ半分、怒り半分でアスランが言い返す。
「そうよ!・・・それに」
いきなり真剣な顔になると、アスランの耳元で呟く。
「クルーゼ隊長をあまり信用しない方がいいわ・・・」
「!?」
リムの言葉にアスランは耳を疑った。
「自分にとっての重要な情報は極力隠すか誤魔化すか、した方がいいわ。
今回の様に自分と部隊、両方に重要な情報は、報告するかしないかは自分が選びたい方を選択しなさい。
出来るだけ後悔しないで済むほうをね・・・」
そう言うとリムは離れ部屋を出て行こうとする。
「・・・なぜ・・・そう思うんだ・・・?」
アスランは辛うじて声を出して聞く事が出来た。
「決まっているでしょう? 『乙女の勘』ってやつよ」
答えをはぐらかし、リムは部屋から退出した。
アークエンジェルが出発してから2時間・・・
敵に遭遇することなく、順調にロンデニオンに向け進路を取っていた。
「キラ・・・お前はそれでいいのか?」
キョウスケ達に呼ばれたキラは、ストライクで戦った事について質問されていた。
「確かに、今は少しでも戦力は欲しいけど・・・」
キースは何とかしてキラを説得しようとするが、断固として首を縦に振らなかった。
「本当は、僕は戦いたくはありません・・・でも、この艦には友達が、守りたい人達が乗っているんです。
その人達を守るためなら、僕は戦います。それだけの力を僕は持っていますから」
キラの言葉を聞いて、キョウスケが切り札になる事を話し出す。
「しかし、一度軍に関わってしまったら簡単には離れられないぞ?
アムロ少佐は一年戦争終戦時に退役届けを出したらしいが、拒否されたらしい。
しかも、きみはコーディネーターだ。その能力を軍に利用され最悪、軍内部のブルーコスモスに命を狙われかねん・・・」
キョウスケの言葉にキラは目を見開くが、決心は変わらなかった。
「それでも・・・僕は・・・!」
「・・・決心は固いようだね・・・」
ため息をついて、コウは説得を諦めた。
「コウ!キョウスケ、なんとかならないのかよ?」
キースがキョウスケを見るが、首を振りこちらも諦めたようだった。
「・・・仕方が無い。とりあえず、キラ達が艦から降りれる所まで力を貸してもらう・・・頼めるか?」
最初の方はコウ達に、最後の一言はキラに向けてキョウスケは話した。
三人は頷き、了解をした。
「じゃあ、俺達はバニング大尉に報告してくるから」
コウとキースが部屋の扉を開け、出て行こうとする。
「ウラキ少尉、バニング大尉達に、キラがコーディネーターだという事を隠すように、と命令を出してくれと頼んでくれ。
キラは少しでも休んでおくんだ。何時、敵の追撃が来るか分からんからな」
「はい。わかりました」
「わかった」
キョウスケの頼みを受け、コウが部屋から出るとすぐに一人の少女にぶつかった。
「キャッ!!」
「わっ!ゴ、ゴメン」
少女はそのまま後ろを向くと、振り返らずに走り去って行った。
キラが部屋から出ると、走り去る少女の後姿を見る事が辛うじて出来た。
(あれは・・・フレイ・・・?)
「サイ!! あの子が、キラがコーディネーターだって本当なの!?」
割り振られた部屋でサイ達が休んでいると、フレイが駆け戻ってきた。
「!? フレイ、その話はどこで・・・誰から聞いた・・・?」
サイが静かに問いただす。
「この艦の中を見学してたら、目の前の扉が開いて、中からキラ達の話し声が聞こえてきたの・・・それで隠れて話を聞いていたら、
『キラがコーディネーターだという事を隠すように』って言ってたわ・・・ねぇ! 本当なの!?」
フレイの話を聞いて、サイはすぐに誰が話していたか見当がついた。
(タイミングが、悪すぎだよ・・・キョウスケさん・・・)
サイは胸中でぼやいた。
「本当だ。でも、ザフトじゃない。キラがなんであろうと、俺達の仲間で友達だ」
ハッキリとサイが言い切る。
「でも・・・」
フレイが何か言いかけた時、部屋にキラが戻ってきた。
「・・・? みんな、どうかしたの?」
気まずい空気に気付かずキラ不思議そうな顔をして聞く。
「いや、別に・・・で、話は済んだのか? 何を話してきたんだ?」
トールがはぐらかし、話題を摩り替える。
「うん・・・さっきの戦闘についてだよ。あと、僕も戦う事になったから、休んでおけって言われたんだ」
キラの話を聞いて、全員に衝撃が走る。
「なんで、民間人のキラが戦わなくちゃいけないんだ!?」
みんなの気持ちを代弁するかのように、トールが叫ぶ。
「誰かに、無理矢理戦うように言われたの?」
ミリアリアが心配そうに尋ねてくるが、キラは首を振り、
「違うよ・・・僕が自分から言い出したんだ。みんなが降りるまでは、僕も戦うって・・・みんなを守りたいから・・・」
そう言い、奥のベットに向かおうとする。
「キラ!」
フレイが意を決して呼びとめる。
「あの・・・さっき、部屋で話していた事を立ち聞きしちゃって・・・それで、あなたに如何接していいか分からなくて・・・それで・・・逃げちゃって・・・」
「フレイ・・・気にしてないから大丈夫だよ」
優しく笑いながらフレイにキラは言った。
フレイは何かほっとしたような表情になり息をついた。
キラはそれを見てから、奥のベットに腰掛け目を閉じるとすぐに寝息を立て始めた。
「キラ・・・疲れてたんだな・・・」
トールがキラを見ながら心配そうに言うと、それまで黙っていたタスクがサイ達に真剣な表情で話しかけてきた。
「なぁ・・・俺達、キラに守ってもらってばっかでいいのか・・・?
確かに、キラはコーディネーターで俺達よりも身体能力とかは高いけど、万能じゃないんだ。
この人手が足りない状況のまま、キラに頼りっぱなしじゃあキラがつぶれちまうぞ」
「・・・そうだな」
サイが静かに語りだした。
「オレ達はMSやPT、スーパーロボットで戦う事は出来ないが、それ以外の方法でならキラを助け、艦を守る手伝いが出来る」
「まぁ・・・こんな状況だしな・・・」
「猫の手も借りたい状況って言うしね・・・」
サイの言葉にトールとミリアリアも頷く。
「じゃあ、とりあえず艦長さんかフラガさんに仕事はないかって、聞きに行くか」
タスクが言うと、トール達は部屋から出て行き、サイも続こうとするがフレイに呼び止められる。
「サイ! 私も、何かした方がいいの・・・?」
「いや・・・フレイは機械の操作とかは苦手だろう? キラを見ていてやってくれないか?
キラに用事がある人が来たら起こしてくれればいいから」
サイはそう言い残し、フレイの返事を待たずに部屋から出て行った。
「余裕だね〜サイ・・・」
「でも、チャンスだよ! キラ!!」
「・・・あれって、自覚して無いと思うけどな・・・」
「ゴメン、遅くなった・・・って、なに話してるんだ三人とも?」
「いや、別に何でも」×3
「出発してから7時間ね・・・敵の追撃は無い?」
「今の所は・・・!? レーダーに感あり! 前方接触まで15分の距離! 数2、パターン照合・・・『カトンボ』です!!」
ナタルの報告を受けて、ブリッジに緊張が走る。
「遭遇戦か・・・総員第一戦闘配備! ミノフスキー粒子、戦闘濃度散布! MS隊は出撃を!!」
マリューの指示を聞きながら、ナタルは別室でマニュアルを教えている士官を呼び出した。
「ノイマン曹長、敵襲だ。 志願してきた彼等をブリッジに上げろ。 CICを担当してもらう」
通信を切るとナタルは外をみながら思った。
(追われている我々を、足止めするかのようなタイミングで遭遇戦か・・・出来すぎていると思うのは考えすぎか?)
第五話に続く
あとがき
作:どうも、コワレ1号です
さて、今回の話でクルーゼが『ある所』に連絡をとっていましたね。以前書いた戦力の問題の答えは此処にあったのです。
・・・えっ? 『ある所』って、人名を見れば一発で解る・・・と?
気にしてはいけません。スパロボで、もろばれなのに顔を隠して話してるのと同じ演出です。(爆)
クルーゼと言えば、最後に妙な呟きをしていましたね?あの内容はもっと後になってから語られる事になります。
・・・なんか今回はザフト側の方が目立ってましたね・・・
当初の予定では、今回は○○○○○○と○○○○○○○と自称女教師のあの人が出てくるはずだったのに・・・
どこで、狂ったんだろう・・・?
管理人の感想
コワレ1号さんからの投稿です。
何だか早速暴走気味ですねぇ、フレイ嬢(苦笑)
でもアルテミスのあの親父は出て来ないんですか?
出番が段々ハーリー化しつつあるアスランに敬礼w