第十八話 3つ巴の戦闘
「情報だと、ここを連邦の秘密部隊が通ると言う事だが・・・」
マフ・マクトミンは呟きながら、周囲を見渡す。
「とても信じられんな。ここの大陸の地球の勢力は、全て壊滅させたはずなのだが」
「はあ・・・しかし、傍受した情報ですと、ペンタゴナのレジスタンスが絡んでいるらしいですし・・・」
部下の返答に、マクトミンは苦い顔になり、
「レジスタンス・・・あの、ダバ・マイロード一味か。ペンタゴナから姿を消したと思えば、こんな所にまで逃れているとはな」
そう呟いた時、レーダーが近づいて来る車両を捉えた。
「来たか!?」
「いえ、これは・・・戦闘車両です! 現地のレジスタンスだと思われます!!」
「―――見つけた!! 街を焼いたのは、あいつらか!?」
「カガリ、アフメド! だめだ、戻れ!!」
敵HMを発見し、アフメドは更にバギーを加速させ、サイーブのバギーを追い越した。
サイーブはバギーの上から叫んで制止しようとしたが、アフメドはそれを笑い飛ばし、
「こないだ、あいつらのHMを倒したのは誰だ、え? 俺達だろ! ロンド・ベル隊の力がなくともやれるさ!!」
「あん時は、連中は砂漠にまだ慣れてなかった! それで、罠にもあっさり掛かったんだ!! 今回は、仕掛けもないし、
連中も砂漠に慣れちまってる!! 戻るんだ、アフメド!!」
サイーブは自分達の力のほどをわきまえていた。
以前―――サイーブ達は知らなかったが、B級の―――HMを倒せたのは、近くに仕掛けてあった罠と、まだ相手が地形に慣れていない時期、
さらに敵の意表をつくという戦法、この全てが重なった結果であり、僥倖と言ってもいい。
正規軍である連中が、あの後何かの対策を取らずにいる訳はなく、正面から戦えば敵う筈もない。
だが、若いアフメドは、敵に煮え湯を飲ませた事によって、有頂天になっていた。
「サイーブ! あんたは何時から臆病者になったんだ!?」
揶揄するように叫び返し、助手席のカガリも、
「仕掛けがなくとも、戦い方は幾らでもある!」
手にしたランチャーを持ち上げてみせる。
「そういう事!!」
サイーブは唇をぐっと噛み、更に引き離される前に後部座席にいるキサカに呼びかけた。
「―――キサカ!」
彼は、サイーブの方に視線を向けて、『解っている』と言う様に黙って頷いた。
先行していた車両が、グライアの機影を捉えると肩に担いだランチャーを発射した。
軽い音共にミサイルが放たれ、グライアの頭部に命中する。
センサーが破損したのか、グライアの動きが一瞬止まる。
続けざま、別の車両がグライアの足の間を通り抜けながら、脚の関節部に向けてランチャーを放ち、別の角度から他の車両も
一斉にランチャーを放つと、堪らずグライアは膝を着いた。
「やった!!」
「あの妙な機体を狙え!! 恐らく、隊長機だ!!」
全車両が、マクトミンのアトールVを狙いを定めるが、彼等の攻撃が届く事はなかった。
バッシュ2機が一斉にスロウランサーを放ち、バギーを撃ち抜き、多くの砂柱を上げる。
「うわあああっ!!」
難を逃れた車両も、他のバッシュが放ったSマインの爆風に巻き込まれ転倒、炎上していく。
「くそ!!」
2台のバギーが、バッシュを狙いランチャーを放つが、ビクともしない。
その彼等を狙うかのように、バッシュは前に踏み込んでくる。
バギーは咄嗟に左右に散開しようとしたが、遅すぎた。
バッシュは武器を使う事をせず、右足を振りぬきバギーを2台とも蹴り飛ばした。
「何を考えているのだ、こいつ等は? ペンタゴナのレジスタンス共でも、こんな戦力差で戦いを挑んでは来なかったぞ?」
レジスタンスが、機動兵器が1つも使っていない事を半ば呆れながらマクトミンは呟く。
何時までも構っていられるか、というかの様にマクトミンはパワーランチャーを放った。
直線状にいたバギーが、ビームの熱により爆発を起こし、乗っている男達は一瞬にして火に包まれ、直撃を受けた者は屍すら残らなかった。
砂丘に登り、スコープで戦局を眺めていたガウルンは半眼で呟いた。
「あ〜あ、一方的だな」
「当たり前だ。あんな装備で、どうこう出来る相手だったら連邦もザフトも苦労はしてないさ」
隣りで同じくスコープを手にしたバルトフェルドが応える。
「しかし、早いとこ『本命』が来てくれねえと、『餌』が喰いつかされちまうな」
「餌・・・? まさか・・・ガウルン!!」
ガウルンの言葉に、バルトフェルドは全て納得がいった。
ガウルンが何故、独断で行動し街を焼いたか、この都合の良いとしかいえないタイミングで、レジスタンスとポセイダル軍が鉢合わせたか。
全て、この男が仕組んだ事なのだと。
「クックックッ・・・そう睨むなよ。ただ、連中に情報を流しただけなんだからよ。『連邦の秘密部隊が通る』ってな」
「秘密部隊・・・? ロンド・ベル隊か!?」
ダコスタの言葉に、ニヤニヤしながらガウルンは頷き、
「そうだ。あのレジスタンスにロンド・ベル隊のガンダムがあったろ? なら、連中はレジスタンスと協力関係を持つと踏んでな。
こうすりゃ、ロンド・ベル隊が救援に来るからな」
「―――ガウルン。何が狙いだ? レジスタンスを叩くだけならば、お前はこんな真似はしないだろう?」
バルトフェルドはガウルンの方を向き、問いかけた。
「あのポセイダル軍って連中の戦力を測るのが目的だな。相手がロンド・ベル隊なら、上手く行けば隊長の1人も倒せるだろうからな」
(まあ、本当は『あのガキ』から『ポセイダル軍の機体のデータ・・・別に詳しくなくてもいいのを取ってくれ』って言われてんだけどな)
内心で本当の事を呟き、再び戦場に目を戻した。
マクトミンがパワーランチャーを放ったのが引き金だったのか、他の機体もパワーランチャーを使って攻撃をしていた。
ビームの熱は高く、MSやPTの様に紙一重で避けても生身をさらけ出している彼等にとっては死を意味していた。
例え直撃を免れても、ビームの熱で身体を焼かれ、バギーが熱に耐え切れず爆発を起こす。
直撃を受ければ、屍はおろか骨さえ残らない。
そして、また1発のパワーランチャーがバギーを貫いた。
「ジャアフル! アヒド―――!!」
サイーブの悲痛な叫びが響く。
「くそぉ!!」
アフメドがハンドルを切り、別のバギーと共にバッシュに迫った。
パワーランチャーを構えるタイミングを見計らい、左右に分かれると一斉にミサイルを放った。
ミサイルが命中すると、そのまま走り去ろうとする。
爆発でバッシュが一瞬動きを止めたが、その後、時を移さず反応した。
これまで黙っていたキサカが唐突に叫んだ。
「―――飛び降りろ!!」
言うが早いか助手席のカガリを片手で抱え、高速で走るバギーからキサカは勢い良く身を躍らせる。
「え・・・!?」
アフメドはその理由が解らず、キサカ達の方を目で追い、すぐさま視線を戻した。
その僅かな間―――常に前に目を向けていれば、彼も気付いたかもしれない。
アトールVと先程のバッシュがこちらに向けて、スロウランサーを発射していた事に。
多くのスロウランサーがバギーを―――アフメドを貫いた。
キサカに抱かれ、砂地に転がり落ちたカガリが、目をはった。
「―――アフメド・・・!」
運転席に座ったまま、ハンドルにもたれピクリとも動かない少年の姿が目に映る。
「アフメド―――ッ!!」
バッシュがこちらに注意を向けるが、その気を逸らす様に、サイーブが放った砲弾が肩に当たった。
「キサカ!!」
サイーブの声にキサカは頷き、呆然として動かないカガリを引きずって走る。
サイーブはバズーカを構え、カガリ達から注意を逸らそうとしたが、バッシュは既にパワーランチャーを構えていた。
「ちっくしょう!!」
歯軋りをして、最後を覚悟した時―――、一条のビームが飛来し、バッシュのビームコートに阻まれる。
しかし、同時に放たれた高出力のビームが、バッシュのビームコートごと頭部を撃ち抜いた。
カガリがはっと我に返り、空を見上げる。
砂丘から顔を出した太陽に照らされ、飛び来るリ・ガズィとその上に乗る白い機体―――エルガイム、
そして、共に飛ぶトリコロールカラーの機体―――ストライクが鮮やかに目に焼きついた。
「―――ロンド・ベル隊!!」
「―――弾かれた!?」
ビームライフルが弾かれた事に、キラは少し驚いた。
「気をつけてください! A級HMにはビームコートが標準装備されています!!」
「了解した。 ストライクは格闘戦を主体にするんだ。通常のビームライフルでは効果が薄そうだからな」
「解りました!」
ダバ、アムロのアドバイスに頷き、キラはビームサーベルを抜き放った。
「間に合わなかったか・・・まさか、ポセイダル軍と戦闘してるとはな」
アムロは炎上しているレジスタンスのバギーを見下ろし、苦々しく呟く。
リ・ガズィの上に乗っているダバが、アトールVを見つけ声を上げた。
「あれは、アトールV!? マフ・マクトミンか!!」
ダバはリ・ガズィから飛び降り、アトールVを狙いパワーランチャーを連射する。
「ンフフフフフ・・・こいつ等つるんでやがる・・・・地球の軍とつるんでやがる・・・」
マクトミンは不気味に笑いながら、パワーランチャーを回避し、パワーランチャーを撃ち返した。
エルガイムはシールドで防ぐと、ランサーを抜き放ち、アトールVに斬りかかった。
「マフ・マクトミン!! 街を焼いたのもお前達か!?」
「街? 何の事だね?」
ロングスピアでランサーを受け止めながら、マクトミンは首を傾げた。
「惚けるな!! この先にある街が焼き討ちされた!! お前達、ポセイダル軍ならやりかねない事だ!!」
反対側に刃を発生させ斬り返すが、ロングスピアを反転させ受け止める。
「惚けてなどいない。第一、何故、私達がそれを惚けなくてはならない?」
ランサーを弾き、一度距離を取る。
「・・・本当にやっていないのか?」
「そうだとも。やったとしても、とぼける必要がないな。将来的にレジスタンスを叩く事にはなっているのだからな」
マクトミンはスロウランサーを放つと、再びエルガイムとの距離を詰めていった。
エルガイムを下ろしたアムロは、そのまま上空からバッシュにビームキャノンを放つ。
しかし、ビームコートに阻まれダメージを与えられず、バッシュはそのままリ・ガズィにエネルギーボンバーを撃ち返した。
「ちぃ! やはり大気中では、ビームキャノン程度で突き破れないか!!」
エネルギーボンバーを回避し、機体を反転させると今度はメガビームキャノンを放つ。
今度はビームコートを突き破れたが、咄嗟にシールドを構えられ致命傷には到らない。
だが、それでも右腕の肩から先を吹き飛ばし、続けて放った2射目が胴体を貫いた。
2機のバッシュがエネルギーボンバーを放つが、アムロは機体をバレルロールさせエネルギー球の間をすり抜けながら、ミサイルを放った。
ミサイルの直撃を受け、体勢を崩した所にストライクが接近し、2機のバッシュを2つに断つ。
そこを狙い、バッシュとグライアがパワーランチャーを放つが、キラはシールドで防ぎ、ビームライフルを撃ち返した。
グライアは胴体を貫かれ爆発するが、バッシュはビームコートに守られ無傷だった。
「くそ、ソードストライカーで来るべきだったか・・・?」
主武装のビームライフルが通用しない事に、キラは歯噛みして呟くが、視界の端に映るカガリを見て首を振る。
(いや、それだと間に合わなかったか・・・3種類のパックの中で、一番足が速いのはエールだし・・・)
バッシュは更にスロウランサーを放ってきたが、キラは全てを切り払い、そのまま距離を詰めた。
振り下ろされるビームサーベルを、バッシュはセイバーで受け止めるが、横から放たれたメガビームキャノンに貫かれた。
「キラ、こっちは俺が引き受ける! ダバの援護を頼む!!」
アムロはグライアのパワーランチャーを回避しながら、キラに指示を出す。
「解りました!!」
アムロが撃ち返したミサイルが、2機のグライアを破壊するの後目で確認し、キラはダバの方へと向かった。
放たれたスロウランサーをダバは回避するが、そこを読まれロングスピアがを突かれる。
ダバは咄嗟に後ろに下がり、回避するとそのままパワーランチャーを連射する。
「ぬっ!?」
アトールXが足を止め、その間にエルガイムが体勢を整えようとしたが、
「ダバ、右!!」
「しまった・・・!」
そこを狙らっていたのか、別の角度にいたバッシュがパワーランチャーを放ってきた。
エルガイムのビームコートを貫き直撃し、体勢が崩れた。
「もらったよ、ダバ・マイロード!」
マクトミンがトドメのパワーランチャーを放つが、目の前に飛び出してきたストライクのシールドによって防がれた。
「大丈夫ですか、ダバさん!!」
牽制のビームライフルを連射し、キラが声をかけた。
「キラ君! すまない!」
ダバはエルガイムの体勢を立て直し、バッシュに向けてパワーランチャーを撃ち返した。
マクトミンはビームライフルを回避し、ストライクの姿―――主に頭部―――を確認すると、眉を跳ね上げた。
「あの機体・・・確か、この星で最高の性能を持つとされている―――『ガンダム』タイプか!?」
キリマンジャロ基地に残されていたデータを思い出し、マクトミンは警戒しながらストライクに斬りかかった。
「来るっ!?」
ロングスピアをシールドで受け止め、逸らし、ビームサーベルを横薙ぎにするが、機体を半身下がらせ回避しながらスロウランサーを撃ち返した。
咄嗟に右に跳び、スロウランサーを回避するがアトールXが追いつき、フロッガーを繰り出してきた。
「ビームロッドか!?」
キラはギリギリで回避し、そのまま胴体を蹴り飛ばそうとした時、フロッガーが三つ又に分かれた。
「なっ!?」
「んふふふ・・・甘いのだよ!」
新たに発生したフロッガーが肩口に当たり、装甲が解け出し、コックピットに警告音が鳴り響く。
いくらPS装甲といっても万能ではなく、ビーム系に対しての防御力は他のMSと大差はない。
完全に焼き斬られる前に、キラは頭部バルカンを放ちアトールXの動きを止めると、ストライクを下がらせる。
「今だ!!」
動きが止まった所に、ダバがセイバーで斬りかかって行くが、アトールXの背中に装備されている盾―――サーカスバインダーが動き、
エルガイムを狙いパワーランチャーを放った。
「くっ!」
咄嗟にシールドで防ぐが、その間にアトールXが向き直り、ロングスピアでシールドごとエルガイムを突き刺そうとする。
「この!!」
しかし、背後からストライクがビームサーベルで斬りかかって来ると、狙いをストライクに変えロングスピアを投げつけた。
「この位なら!!」
ロングスピアをあっさり回避し、そのまま距離を詰めようとしたが、
「キラ君! 避けろ!!」
「えっ・・・?」
ダバの言葉に意味が解らず、キラは思わず聞き返した時、背後から衝撃が襲った。
「なんだ・・・!」
キラが背後を見ると、先程回避した筈のロングスピアが戻り、その切っ先からビームを放ったのだ。
「な・・・まさか、サイコミュ!?」
真っ先に頭に浮かんだのは、アムロのνガンダムに搭載されているフィンファンネルの様な、サイコミュ兵器だった。
再び放たれたビームを回避し、頭部バルカンで撃ち落そうとするがロングスピアはそのままアトールXの手に戻る。
「いや、あの機体にアムロ少佐の機体みたいなものは搭載されていない。あれは、リモートコントロールで動いているんだ」
トリプルフロッガーを回避し、一度距離をとったダバがキラに教える。
「じゃあ、アムロ少佐のフィンファンネルみたいな事は出来ないんですね?」
横から放たれたバッシュのパワーランチャーをシールドで防ぎながら、ダバに確認する。
「ああ。だけど、バッシュの数の多さもあって、厄介なのには変わりないな」
バッシュが放ったエネルギーボンバーを回避しながら、ダバは周りに目をやり言う。
マクトミンが引き連れている戦力は、キリマンジャロ攻略の際から引き連れている部隊であり、その殆どがA級HMバッシュで構成されていた。
兵士の錬度も高く、今のアムロ達3機に対して、まだ20機近くが残っている状態だ。
1機のバッシュがランサーを抜き放ち、ストライクに斬りかかり、後方から別のバッシュがスロウランサー放つ。
「くっ・・・!」
キラはスロウランサーとバッシュに向けて、ビームライフルを連射する。
スロウランサーは撃ち落されるが、バッシュはビームコートでビームを弾きながらストライクに接近していく。
バッシュはランサーを振り下ろすが、ストライクは機体を回転させ回避し、その勢いを利用しビームライフルの銃床で
バッシュの側頭部を殴り飛ばした。
その時、別の角度にいたバッシュがエネルギーボンバーを放ってきたが、今の一撃で体勢の崩れたバッシュを
そちらに蹴り飛ばして壁にして防ぐ。
壁にされたバッシュの爆炎が生じ、攻撃してきたバッシュの視界を遮る。
それでバッシュのパイロットからは見えなかった―――爆炎に紛れて、ストライクが一本のアーマーシュナイダーを投げた事に。
爆炎を突っ切ったアーマーシュナイダーは、バッシュの頭部のやや下―――HMのコックピットに深々と突き刺さった。
動きが止まった所を狙い、2機のバッシュが前後からパワーランチャーとエネルギーボンバーを放つ。
キラはその場から離れようとペダルを踏み込むんだが、バーニアからは何の反応もない。
「作動しない!? まさか・・・さっきの一撃が原因か!?」
先程、ロングスピアが放った背後からの攻撃がエールストライカーのバーニアに損傷を与えており、吹かす事が出来ない。
(前からのパワーランチャーはシールドで防げるけど、もう片方は―――)
バッシュのエネルギーボンバーをダバは回避するが、その先にアトールXが回り込みロングスピアを横に薙ぐ。
「くっ!」
セイバーでロングスピアを受け止めるが、至近距離でサーカスバインダーが動き、パワーランチャーを放とうとする。
それに気付いたダバは、横に跳び距離をとろうとしたが三又フロッガーで追い討ちをかけてきた。
回避しきれずシールドで防ぐが、淵の部分が斬り割かれる。
「なんとぉ、やるっ!」
どうにか距離を取る事は出来たが、状況は好転していない。
キラもアムロも1対多数の戦いを強いられており、部隊構成が殆どビームコートを装備されているA級HMの事もあってビームが主武装の
MSではそう簡単には突破して、ダバの援護に迎えなかった。
「さて、覚悟は良いかね?」
マクトミンが周囲の機体に一斉攻撃を命じようとした時―――サッシュがアトールXの背中に直撃した。
「なにっ!?」
「させないよ! マフ・マクトミン!!」
「レッシィ!!」
ダバがサッシュの飛んで来た方を見ると、カルバリーテンプルの他にロンド・ベル隊の機体が見えた。
レッシィ達もアムロ達と同時に出撃をしたのだが、足が速い機体と重量が比較的軽いエルガイムをリ・ガズィに乗せて先行させた為、
他の機体の到着が今になってしまっていた。
続けて放たれたステイメンのロングライフルが、1機のバッシュを貫く。
「遅れてすまない、ダバ!」
「なんだ? あの変な機体は?」
「見かけに騙されるんじゃないよ! 見た目は兎も角、13人衆でもかなりの実力者だからね」
レッシィはキースに返しながら、アトールXに斬りかかって行った。
「―――悪いな・・・邪魔をする・・・!」
ストライクの後ろにアルトが割って入り、飛来したエネルギーボンバーを全て受ける。
「ダメージの割に揺れるな・・・!」
計器類に目をやりながら、キョウスケは呟くと、そのままバッシュに接近させ、
「二度目はない・・・!」
ステークを叩き込み、バッシュは後方に吹き飛ばされ爆発した。
パワーランチャーを放ったバッシュは、ストライクとアルトをまとめて落とそうとバスターランチャーを構えたが、
「アイアンカッター!!」
飛来したアイアンカッターが両腕ごとエネルギーチューブを切断し、行き場をなくしたエネルギーが暴走しバッシュは爆発した。
「キョウスケさん! 甲児さん!!」
「すまん、遅くなった」
「アルトが重かったからな。途中で何度か、マジンガーが落ちそうになったぜ」
足が遅いアルトを、マジンガーZが背に乗せここまで来たのだが、あまりの重さに想像以上にスピードが出なかったのだ。
「・・・残りは15、6機という所か。一気に蹴散らすぞ」
「はい!!」
キラはバーニアが作動しないエールストライカーパックをパージし、残った1本のアーマーシュナイダーを手に取った。
ロンド・ベル隊が到着した事によって、状況は一変した。
「いくぜ、相棒・・・!!」
3機のバッシュがパワーランチャーを連射するが、デスサイズヘルはIフィールドを展開し、回避行動をとらずに突っ込んで行く。
「斬って・・・!」
目の前のバッシュを袈裟懸けに斬り割き、
「斬って・・・!!」
振り下ろしたビームシザースを回転させ、片手で横に一閃し右手にいるバッシュを2つに断ち、
「斬りまくるぜ!!」
そのまま両手に持ち変えると、機体を回転させるような勢いで左に斬りかえし、その方向にいたバッシュも2つに斬り割いた。
バッシュのエネルギーボンバーを、ヘビーアームズはジャンプして回避し、機体を回転させ着地すると、全ての火気を開いた。
「・・・ターゲットは全てロックした」
そして、機体中に装備された弾丸、ミサイルがバッシュ達に襲い掛かる。
回避行動を取るが、逃げる所全てに弾丸が、ミサイルが降り注ぎ、被弾し破壊されていく。
そのミサイルや弾丸の雨をかいくぐり、カトルのサンドロックが次々とバッシュを斬り割いていく。
その光景を目にしたマクトミンは、呆然と呟いた。
「馬鹿な・・・! この僅かな間に状況が一変するだと・・!?」
先程まで20機も残っていたバッシュが、このわずかの間に残り6機になっていた。
「そこっ!!」
呆然としている僅かな隙を突き、レッシィがパワーランチャーを放ち、アトールXの肩に命中する。
「ぬっ!」
バランスを崩しながらも、パワーランチャーを撃ち返そうとした時、警告音が鳴り響いた。
「上からか!?」
咄嗟にサーカスバインダーを動かし、パワーランチャーを放つが、命中する直前にその機体が2つに分かれた。
「なに!?」
「おおおおっ!!」
2つに分かれた―――BWSから分離したリ・ガズィが、ビームサーベルを抜き放ちそのままサーカスバインダーを斬りおとした。
アムロは返す刀で胴体を狙うが、マクトミンが一瞬早く機体を下がらせ回避する。
しかし、そこを狙いエルガイムが更に踏み込み右腕を肩から斬り落とした。
「くっ!! 情報以上の戦力だ!! 撤退する!!」
残った全機―――残りが3機までになっていたが―――に指示を出し、残ったスロウランサー全てを発射し足止めをすると、
マクトミン達はその場から退いて行った。
「ほう・・・」
「流石・・・」
戦闘を見ていたバルトフェルドとガウルンは、感嘆の息をついてスコープを下ろした。
「お前の予想が当たったな?」
「まあな。あの戦艦だけなら兎も角、ロンド・ベル隊もいるなら動く可能性が高いと踏んでたからな」
バルトフェルドの問いかけに、『なんて事はない』という様にガウルンが返す。
ガウルンの言葉を聞くと、バルトフェルドは再び戦場―――否、ストライクとリ・ガズィに目をやる。
最強のパイロットの1人であるアムロ・レイ―――地球圏最強の部隊であるロンド・ベル隊―――そして、その中でも遜色ない動きを見せる
新型機『ストライク』―――彼等の戦闘能力をもっと知りたい。そして―――あのストライクで戦っている者の事を。
先日の戦闘では、あのパイロットは戦いながらMSのOSをいじっていた。
それほどのプログラミング能力、アムロ・レイと同じ様に艦砲を撃ち落すほどの射撃の精度―――それほどの腕を持ちながら、
素人の様な戦いを見せる事もある連邦のパイロット・・・気になる。
そこまで思考を進めると、バルトフェルドは無線を手に取り、
「カーウッド、代われ」
『はっ!?』
「ヒュウ・・・やる気だな?」
無線から虚をつかれ、聞き返すパイロットの言葉が耳に入り、隣りではガウルンが感心して口笛を吹いていた。
「バクゥの操縦を代われと言っている。聞こえているか?」
『はっ、聞こえています! ですが・・・』
ダコスタが驚いて『隊長!』と声を上げるが、ガウルンがチョークスリーパーをかけ黙らせる。
「ちっとは上官を信用しなきゃ駄目だぜ? あっさり殺されるぞ?」
口元に鋭い笑みを浮かべて、ダコスタの耳元で冗談を言う様な口調で囁く。
ダコスタは何とか振り解こうとするが、完全に入っており技を解けない。
ガウルンが力加減をしているので窒息こそしないが、僅かに力を込めれば窒息どころか、首の骨を折られる事を彼は察した。
それを察したのか、バルトフェルドは振り向きもせず―――しかし、鋭い口調で、
「ガウルン―――放せ」
「―――へっ、そうマジになんなよ」
彼を窘めると、ガウルンは最後に笑みを浮かべてからダコスタを解放する。
『隊長・・・? なにか?』
「いや、何でもない。今度、一杯奢ってやるから代わってくれ」
カーウッドのの問いかけを軽く流し、バルトフェルドは彼を口説く。
『・・・じゃ、アルコールの入っているのでお願いします』
以前、隊長自慢のブレンドコーヒー試作2号―――本人も『失敗したか?』と呟いた物―――を飲まされた事のあるパイロットは渋々答えた。
未だに非難の眼差しをしているダコスタに向かって、彼はニヤリと笑ってみせる。
「撃ち合って見ないと解らない事もあるんでね―――参加希望者は付いて来い!」
「退いたか・・・生存者の救助を急げ!」
「!? アムロさん! 新たに敵機が接近してきます!!」
比較的通信、索敵能力が高いサンドロックが接近してくる敵機―――12機のバクゥを捉えた。
それとほぼ同時にバクゥの放ったミサイルが飛来してくる。
全機がその場から飛び退き回避、追尾してくるミサイルを撃ち落した。
「いい具合にバラけたな。俺と他2機でストライクをやる! 他の連中の相手は任せたぞ!!」
バルトフェルドは全機に指示を出すと、そのままストライクに向けて加速していった。
バクゥが連射したミサイルをストライクは回避し、ジャンプすると敵機もそれを追って飛び上がってきた。
勢いをつけて蹴りつけようとバクゥが迫ってくるが、それを狙い頭部バルカンをメインカメラに向けて放つ。
視界を塞がれ、一瞬ストライクを見失う。
その間にストライクのバーニアを吹かせ、バクゥの上を取るとそのままアーマーシュナイダーを背中に突き刺そうとする。
「―――もらった!!」
しかしその直前、機体に横殴りの衝撃が襲った。
「・・・っ!?」
右側面から放たれたミサイルが着弾し、キラが慌ててそちらに向いた時、間を置かずに背後から別のバクゥに蹴り飛ばされた。
「くそ、後ろに!!」
キラが機体を立て直している間に、3機は合流し編隊を組むように横に並んで高速で突っ込んで来る。
避けきれず跳ね飛ばされ、キラは衝撃に呻く。
頭を振って顔を上げると、モニター一面にミサイルが迫っていた。
「くっ・・・!」
頭に1発が命中し、メインカメラは潰れなかったものの爆煙とノイズで視界が一瞬ふさがれる。
その隙をついて1機のバクゥが眼前に躍り出た。
「うわああっ!!」
咄嗟に頭部バルカンを撃つが、その時には勢いの付いた蹴りを胸部に受けていた。
急激にかかるGに鎖骨が軋むが、痛みを堪えバーニアを吹かして地面に激突するのを避ける。
しかし、上空にいるバクゥの射撃からは逃げられず、容赦なくミサイルを撃ち込まれる。
「キラ!!」
アムロがレールガンを回避し、ストライクの援護に回ろうとした時、
「!? アムロさん、地下から多数の所属不明機の反応が!!」
「地下、だって!?」
カトルの報告にコウが思わず聞き返すと、次々と謎の機体が現れた。
「あれは・・・MSなのか・・・?」
戦場を見ていたダコスタが信じられないという顔で呟く。
ガウルンはスコープから目を離し、珍しく渋い顔つきになっていた。
(あれは、デスアーミーだな・・・って事は、近くに『アレ』がいるか、居たって事だな。
『連中』の情報部は、この大陸にはいないって抜かしてたな・・・まあ、当てにはしてなかったが・・・)
ガウルンは一つ息を吐くと、近くにいたASのパイロットにこっそりと耳打ちをする。
「焼夷弾、まだ余ってたな? 俺が合図をしたら、ありったけの焼夷弾を戦場に撃ち込め・・・通用はしないと思うが、『虎』が退く手伝いにはなる」
その言葉に、パイロットは眉を顰めた。
「手伝い・・・ですか? 『上』からはばれない内に、『虎』を始末しろと・・・」
「まだ仕事が終ってないんだよ。今『虎』に死なれちまうと、『仕事』そのものが出来なくなるぜ?」
その言葉に、他のパイロットは呆れたような顔になり、
「まだ終ってなかったのか? チャンスは何度もあった筈だが・・・? 期限が長いからといって、何時までも・・・」
「オイ、口には気を付けな」
パイロットの苦言を遮り、ガウルンの銃がわき腹に押し付けられる。
「今回の任務で『上』から仲間を殺すなと言われちゃいるが、俺にとっては如何でもいいんだぜ?
手足が動かず、ジワジワと太陽で焼かれていく感触、味わいたいか?」
言葉ではなく、目から放たれる殺気にパイロットは怯え、青い顔で首を振る。
「ASの中で待機してろ。 合図を見逃すなよ」
最後にそう言い放つと、ガウルンはパイロットを解放し、再び戦場に目を戻した。
「あれは・・・MSか!?」
「ちょ、ちょっと待てよ!? なんで未来世界でもないのに、地中からMSが出て来るんだよ!?」
キョウスケの言葉に、キースが納得いかずに叫ぶ。
地中から現れたデスアーミーは、アムロ達とバクゥに目を向けると金棒型のビームライフルを放った。
「ちぃ! やはり敵か!!」
アムロがビームライフルを回避し、グレネードランチャーを撃ち返し破壊する。
バクゥ達も咄嗟に回避すると、そのままミサイル、レールガンを撃ち返し破壊する。
デスアーミーが金棒を振り上げ、グルンガスト改に殴りかかるが、左のソニックトンファーで腕を叩き壊され、
続けて振るれた右のソニックトンファーが頭を叩き割る。
「ロケットパーンチ!!」
マジンガーZのロケットパンチがデスアーミーを貫くが、その間に多くのデスアーミーが距離を詰めて来る。
「このっ! ドリルミサイル!!」
放たれた大量のミサイルが、次々とデスアーミーを破壊していくが、それ以上の数でデスアーミーは襲い掛かってくる。
「飛び散れっ・・・!!」
「ターゲット、ロック・・・」
キョウスケが広範囲にクレイモアを放ち、トロワも続いてダブルガトリングガン、ミサイルを放ち多くのデスアーミーを撃破する。
「だーっ、これじゃ、もうすぐ弾切れをおこす機体が出てくるぜ!?」
デュオがデスアーミーを切り裂きながら自棄になった様に叫ぶ。
デスアーミー達の戦闘力は大した事はなく、油断さえしなければそうそうやられはしない。
だが、数に物をいわせた物量戦を執っており、一度戦闘をしているロンド・ベル隊にはかなり厳しい戦いになっていた。
「確かに、このままじゃあ・・・」
カトルがデスアーミーを2つに断つと、アムロのリ・ガズィが―――ビームライフルのエネルギーが切れたのか―――
ライフルを投げ捨てて、ビームサーベルを抜き放つのが見えた。
少し離れた所で、3人の男女が戦場を見ていた。
「―――デスアーミーごときで苦戦するとは、ロンド・ベル隊も大した事はないな」
赤いハチマキをした男が戦場から目を離さずに言う。
「ドモン! そんな言い方はないでしょ!! それに、苦戦してるというよりも、弾薬が切れかけているからみたいだし」
「見た感じ、連戦になってるみたいだね・・・これでデスアーミーの人海戦術を取られたら嫌でもこうなるか・・・行くんでしょ、ドモン?」
赤いハチマキをした男―――ドモン・カッシュは『ああ』と短く頷き、
「レイン、ロンド・ベル隊の機体に連絡をつけてくれ―――敵と勘違いされて後ろから撃たれると厄介だ。行くぞ、アレンビー!!」
「うん!!」
アレンビーは頷き、ドモンと共に吼える。
『でろぉぉぉぉぉぉっ、ガンダァァァァァァム!!』
デスアーミーはキラ達の方にも4機現れていた。
「何で、地面からMSが・・・?」
いきなりの状況に、キラは驚いていたが、バルトフェルドは多少冷静だった。
「地中からMSね・・・MSのゾンビ版みたいな物かな? 隊形を乱すな、戦闘力その物はそう高くない。
バクゥの機動性を生かして戦えよ!」
バルトフェルドは全機に指示を出すと、再びストライクに仕掛けていく。
デスアーミー達のビームライフルを回避するが、その先を読まれ肉迫したバクゥに跳ね飛ばされる。
跳ね飛ばされた所に、デスアーミーが迫り金棒で殴りつけられる。
「このっ!!」
金棒が当たる前に機体をデスアーミーに近づけ、アーマーシュナイダーをモノアイに突き立てる。
その一撃で沈黙したデスアーミーを盾にし、続けて放たれたビームライフルを防ぐと、金棒を拾い殴りかかっていく。
MSと装備の接続端子が違うので、ビームライフルとしては使用出来ないが、単純に殴るだけなら―――即ち鈍器としてなら―――
関係なく使えると踏んでの行動だった。
ビームライフルを左右に回避し、デスアーミーに接近するとそのまま金棒で頭を殴り壊す。
デスアーミーが金棒で殴りかかってくるが、頭部バルカンを放ちながら距離を取る。
しかしその瞬間、バクゥのレールガンが直撃しストライクは体勢を崩しながら着地する。
バクゥ達もデスアーミーに攻撃されているが、持ち前の機動力を生かし、攻撃を回避しながらレールガンやミサイルを撃ち返し、
その合間をぬってストライクにも攻撃を仕掛けてくる。
キラもデスアーミーを攻撃しながらもバクゥに仕掛けるが、デスアーミーの攻撃を回避した所を狙われ、被弾を増やしていく。
結果的に連携攻撃を常に仕掛けられている様なものであり、これではこちらが息をつく暇もない。
いくらPS装甲で通常弾頭と打撃系の攻撃を防げると言っても限度があり、既にバッテリーがイエローに突入しようとしていた。
キラは焦りながらもレールガンを横に跳んで回避するが、運悪く金棒型ビームライフルを構えていたデスアーミーの正面に出てしまった。
「しまった!!」
慌ててバーニアを吹かそうとするが、タイミング的にもあちらの方が速い。
(やられる―――!?)
キラが思わず目を瞑った瞬間―――1つのビームで出来たリングがデスアーミーを真っ二つにした。
「えっ・・・・?」
キラはリングが飛来した方に目を向けると―――言葉を失った。
あまりにも奇抜な格好の機体が目に映ったからだ。
「ガンダムが・・・スカートを履いている・・・?」
「くそ、弾切れだ・・・!!」
ステイメンのビームライフルもエネルギーが尽き、コウはビームサーベルを抜き放った。
「このゾンビもどきは、後半分ぐらいだが・・・」
「ああ・・・各機の弾薬が底を尽き始めてる・・・このままでは少々キツイな・・・」
甲児の言葉にトロワが静かに応える。
バクゥも最初はロンド・ベル隊に攻撃をしてはいたのだが、今は彼等も殆どデスアーミーの反撃に手を割いている。
「エルガイムとカルバリー、ディザートはまだパワーランチャーを撃てますが・・・」
「ちょっと、手数が違いすぎるね・・・」
ダバの言葉にレッシィが残ったデスアーミーに目をやり呻く。
その時―――1機のガンダムがデスアーミーの集団の中に飛び込び、
「必殺! ゴットスラッシュ・・・タイフーン!!」
両手に装備したビームサーベルを手にしたまま回転し、周囲にいたデスアーミー達を切り刻む。
回転が止まった時には、10機ものデスアーミーが破壊されていた。
回転が止まった所を狙い、近くにいたデスアーミーが金棒を振り下ろすが、腕で受け止めそのまま受け流し、体勢が崩れた所に
右の拳が叩き込まれ頭部を破壊される。
そのまま次のデスアーミーに接近し、ビームサーベルと拳、そして蹴りだけで次々と破壊していく。
「なんだ!? あのガンダムは!?」
「またガンダム!? あのMSっていっぱい種類があるの!?」
「あれは、MSではない。ガンダムファイト用のMFだ。ネオ・ジャパン代表、キング・オブ・ハートのドモン・カッシュのゴットガンダムだな」
ダバとアムの言葉にスラスラとキョウスケが応える。
「・・・詳しいですね?」
「・・・エクセレンが好きでな。付き合いで何回かガンダムファイトを見た事がある・・・」
キョウスケが淡々と答えた時、通信が入る。
『ロンド・ベル隊の皆さん、聞こえますか? 私達は・・・』
「―――レインさん!?」
通信機に飛び込んで来た声を聞き、ブリットが驚き声を上げた。
『ブリット君!? グルンガストに乗っているのって、あなただったの!?』
「・・・ブリット、知り合いなのか?」
レインの反応を聞き、アムロがブリットに問いかける。
「ええ。テスラ研にいた時、カザハラ博士と一緒に何度かあった事があるんで・・・」
『あの2機のガンダムは味方です。援護をお願いします』
「いや、デスアーミーはこっちで引き受ける!! あんた達はザフトの相手でもしているんだ!!」
レインの言葉を遮りドモンが一方的に告げると同時に、ゴットガンダムがデスアーミー達から少し距離を取った。
『ちょっと、ドモン!! そんな言い方・・・!!』
「下手にデスアーミーの周りに居ると、巻き込まれるぞ!!」
最後にドモンが告げると、ゴットガンダムの胸部が開き、シャッフルの紋章が輝きだした。
「まさか・・・『アレ』を放つつもりか!? アムロ少佐! その機体の周りから離れてください!!」
キョウスケの言葉にアムロだけでなく、甲児達も疑問符を浮かべる。
「キョウスケ、どういう事だ!?」
「デカイ手を場に出す言う事です!!」
「そこのガンダム! 大丈夫!?」
突如入って来た通信にキラは驚いたが、何とか返事を返す。
「え・・・あ、はい。ありがとうございます」
「戦闘が無理なら下がってて! これ位なら、アタシとノーベルガンダムだけで充分相手できる!!」
アレンビーは戻ってきたビームフープを受け取ると、今度は2つ同時に左右から投げつけた。
「おっと! これは、アイシャが見たら喜びそうな機体だな!!」
バルトフェルドはビームフープを避け、ノーベルガンダムに目をやりながら呟く。
回避されたビームフープは、そのまま2機のデスアーミーを破壊しする。
「回避した!? なら、これで勝負!!」
アレンビーはバクゥに向かって機体を加速させる。
バクゥはストライクの相手をした時の様に、横に編隊を組み、ノーベルガンダムに迫る。
「なっ!? 1機じゃ無理だ!! 援護しないと・・・!!」
キラは如何にかアレンビーを援護しようとするが、生憎手持ちの武装がない。
あるのは頭部バルカンと、1本のアーマーシュナイダー・・・と考えを巡らせた時、視界の端に何本も突き刺さったスロウランサーが映った。
「これなら・・・!!」
ゴットガンダムが黄金に輝きだし、両手を胸の前に構えた。
「いくぞ!! 流派! 東方不敗の名のもとに!! 俺のこの掌が真っ赤に燃える!
勝利を掴めと轟叫ぶ! ばぁぁぁくねつ! ゴットフィンガー!!」
ゴットガンダムの両手に膨大なエネルギーが発生する。
「この数値は・・・!?」
「・・・ウイングゼロのバスターライフルとほぼ同等の数値だ・・・」
数値を目にしたカトルとトロワが驚愕の表情で呟く。
「石破、天驚けぇぇぇん!!」
解き放たれた巨大なエネルギー球は、多くのデスアーミーを飲み込んでいき・・・その後には、デスアーミーの残骸のみが残されていた。
「たった一発で、あれだけの数を・・・!」
「キョウスケが言っていたのは、これの事だったのか・・・」
ダバ、甲児の言葉にキョウスケが頷き、
「ああ・・・流派、東方不敗が最終奥義『石破天驚拳』・・・直接見るのは、これが初めてだが・・・」
「これで、残るはバクゥだけだな・・・」
アムロがバクゥに目をやった時、バクゥ達は撤退を始め、それを援護するかの様に多くの焼夷弾が飛来し、炎がアムロ達の足を止めた。
時間は少し戻り、バクゥが撤退を始める少し前。
ノーベルガンダムは、バクゥの放ったミサイルを尽く回避しながら接近していく。
しかし、丁度回避を終えた所にバクゥが躍り出て強烈な蹴りを放たれる。
だが、蹴りが当たる前に、ノーベルガンダムは自ら体勢を崩しながらバクゥの腹を蹴り上げた。
バクゥの蹴りを回避は出来たが、体勢は完全に崩れており、続けて放たれたミサイルを回避する術がない。
(こりゃ、少し食らうか・・・?)
ダメージを最少に留めようと、アレンビーは両腕を構えた時、後方から飛来したスロウランサーがミサイルを撃ち落した。
「何っ!?」
新手かと思い、アレンビーが後ろを振り向くと、ストライクが地面に突き刺さったスロウランサーを抜いて、投げつけてる所が見えた。
その光景はバルトフェルドからも見えており、彼は半ば感心した様な笑みを浮かべていた。
「その場に残されていた、敵の武器を使うなんてね・・・普通は考えつかないぞ? まったく、奇妙なパイロットだ!!」
ノーベルガンダムの横を通り抜け、2機のバクゥがストライクに迫る。
「このっ! 行かせないよ!!」
アレンビーが後を追おうとするが、先程蹴り上げたバクゥが体勢を立て直し、ノーベルガンダムの足止めをする。
キラは迫るバクゥに残ったスロウランサーを投げつけ、自らも前に踏み出す。
バクゥはスロウランサーを左右に回避し、隊列が縦一列になると同時にストライクが間合いに入った。
先頭のバクゥがストライクに跳びかかるが、キラは寸での所で機体を跳躍させ回避する。
しかし、バルトフェルドはそこまで読んでおり、飛び上がったストライクの目の前に、彼のバクゥが跳びかかる。
「この状態ではそう多くの動きは取れまい! さて、どうする? 奇妙なパイロット君!!」
バルトフェルドの言う通り、今からバーニアを吹かしても間に合うような位置ではない。
しかし、キラは今しがた回避したバクゥの上に着地し、もう一度跳躍する。
「間に合え!!」
アスランと一緒に読んだ雑誌で、アムロが一年戦争時に取った戦術が紹介されていた事をキラは覚えており、それを咄嗟に真似た。
「前のバクゥを踏み台にした!? アムロ・レイの時のドムとは速さそのものが違うのにか!?」
更に上に行けたキラは、そのまま残ったアーマーシュナイダーをバクゥの前足の間接部に向けて投げつけた。
間接部にアーマーシュナイダーが突き刺さり、小規模な爆発が起こると前脚が脱落する。
「前脚がやられたか!! 今回はこれが限界だな、退くぞ!!」
バルトフェルドは全機に指示を出すと、戦場からの離脱を始めた。
「―――『大元』は出てこなかったか・・・まあ、今出てこられるとちっと困るが」
ガウルンは戦場を眺めながら頭を掻くとASのパイロットに指示を出した。
「狙わなくても構わねえ、撃ちまくれ。下手な鉄砲に当たるほど、間抜けな腕はしてない筈だからな」
去っていくバクゥを見送り、キラがシートにへたり込むとアムロから通信が入る。
『大丈夫か、キラ?』
「あ、はい。なんとか・・・なんなんですか、あの地面から出て来たMSは・・・?」
キラの問いかけにアムロは少し難しい顔になり、
『それは彼等が知っているみたいだが・・・』
「退いたか・・・聞こえるか、ドモン・カッシュ? 今の地中から出現したMSはなんだ・・・?」
キョウスケがゴットガンダムに通信を繋ぐが、ドモンは返事をしようとせず、
「デビルガンダムは出ず終いか・・・いくぞ、アレンビー、レイン」
「ちょっとドモン! ロンド・ベル隊の人達にも協力してもらった方が―――」
この場を立ち去ろうとするドモンを、レインが止める。
「ロンド・ベル隊と共に行動すれば、ザフトや他の勢力と戦わなくてはならなくなる。その間に、デビルガンダムに力を回復されれば、
また最初に戻ってしまう。俺達は早急にデビルガンダムと―――『あの男』の行方を捜さなくてはいけないんだ!!」
「でもさ、シャッフル同盟の使命は地球圏の平和の維持、防衛でしょ? ならロンド・ベル隊と一緒に行った方が・・・」
アレンビーも説得に加わるが、ドモンは聞く耳を持たず、
「ザフトや異星人、地下勢力など、デビルガンダムに比べればまだマシだ! あいつは地球そのものを滅ぼしかねないんだぞ!?
―――お前達がそう言うなら、俺は1人で行動する!!」
アレンビー達に背を向け、その場を去ろうとした時、
「甘いぞっ! ドモンッ!!」
鋭い男の声が響き渡った。
「!? 今度はなんだ!?」
甲児が辺りを見渡すと、少し離れた所に1機のガンダムが腕を組み立っていた。
「シュバルツ!? お前もこの大陸に来ていたのか!?」
黒いガンダム―――ガンダムシュピーゲルの肩に立つ男を見て、ドモンが吼える。
「・・・なんだい? あの怪しい格好の男は?」
「―――変態さん?」
レッシィとリリスが妙な者を見る目付きで、覆面を被った男―――シュバルツを見やる。
「・・・ネオ・ドイツ代表のシュバルツ・ブルーダーだ。しかし、ネオ・スウェーデン代表のアレンビー・ビアズリーもこの場にいると言う事は、
ガンダムファイター達は何かを追っているというのか・・・?」
キョウスケが簡単な説明をし、思い至った事を呟く。
キョウスケ達の会話に気付く事無く、2人は話を進める。
「ドモンよ! 例えデビルガンダムを倒しても、その時異星人や地下勢力に人類を滅ぼされては元も子もないのだぞ!!
デビルガンダムだけが、最大の地球の脅威と言う訳ではない!! それはお前も解っている筈だ!!」
自分も心の奥底で気付いていた事を突かれ、ドモンは僅かに詰まるが、何とか言い返す。
「ぐっ・・・! だが、デビルガンダムは今力を弱めている筈だ! ここでトドメを刺さなければ、事態はまた振り出しに戻ってしまう!!」
「そうだ! だが、だからこそロンド・ベル隊と共に行動するのだ!! それが、デビルガンダムを倒す一番の近道となる!!」
「どういう事・・・あっ! そうか!!」
シュバルツの言葉を一瞬理解できなかったが、レインは直ぐに察しがつき応える。
「ロンド・ベル隊には多くのMS、PT、スーパーロボットが所属しているわ! デビルガンダムがギアナ高地で負った傷を治すのに、
大量のエネルギーが必要になる! この大陸にデビルガンダムがいるなら、狙われる可能性が高いのは―――ロンド・ベル隊!!」
レインの言葉にシュバルツは満足そうに頷き、
「そうだ! それに、彼等と共に行動すればお前とほぼ互角の力量を持つ敵と相対する事もあるだろう。
今のお前では、あの男―――東方不敗には今一歩及ばん!!」
(ドモン・カッシュの師である東方不敗が敵だと・・・!? 一体なにが起こっている・・・?)
会話を聞いていたキョウスケが胸中で呟く。
「なんだと!? だが、ギアナ高地では・・・!!」
「あれは不意をつけたに過ぎん。正面から油断なく構えたあの男に、お前は勝てる自信はあるのか!?」
シュバルツの問いかけに、ドモンは押し黙った。
「解ったか? 彼等と共に行動し、心身ともに鍛えるのだ! また会おう、ドモン!!」
最後にそう告げると、ガンダムシュピーゲルは背景に溶け込むかの様に姿を消していった。
「―――アムロ少佐、レジスタンスの人達の救助をしなくては・・・」
全員が呆気に取られていたが、比較的免疫のあったキョウスケがアムロに進言する。
「あ、ああ。そうだったな」
「私達も手伝います。幸い、医療キットは多く持っていますから」
アムロの言葉に続いて、レインも応え全員が生存者の救助、手当てに当たる事になった。
生存者の救助、手当てはそう時間はかからなかった―――飛び出していった者の7割が死亡し、そのうち4割の遺体が回収不可―――
ビームの直撃で跡形も残らなかったからだ。
物言わぬ亡骸達と、幸運にも回収出来た遺品を前にサイーブ達が沈黙していた。
カガリの嗚咽が、その悲壮感を一層引き立たせている。
「―――死にたいのか? あまりにも無茶な事をして・・・!」
アムロは厳しい表情で低く言葉を放つ。
「こんな装備で正面から戦って、勝てると思っていたのか?」
「何だと!?」
途端にカガリが噛み付き、アムロの胸倉を掴む。
「止すんだ、カガリ!!」
近くにいたキラがカガリに制止の声をかけるが、彼女は気候ともせずそのまま片手を振って背後を指した。
「見ろ! 彼らにそう言えるのか!? みんな必死に戦った! 戦ってるんだ!! 大事な人を、大事な物を守るために必死で・・・」
「その気持ちは解るさ。俺達が戦う理由も同じだからな・・・だが、その為に戦い、死んでしまったらそれ以上は何も、誰も守れない」
アムロの言葉にカガリは目を見開く。
「何かを守る為に戦うのなら、自分も生き残れる程度の力を、そして力に溺れない強い『意思』を持たなくてはならない。
この両方の『力』を持たなくては・・・何も守り通す事は出来ない・・・お前達は自分達の力を見誤り、彼等はその力に溺れて倒れたんだ」
その言葉にカガリは崩れ落ち、肩を震わせた。
前は動ける全員―――自分達の全戦力―――が出撃し、周到に張った罠を使ってHMを1機だけだが倒せた。
あの時の事を思い出せば、HMの動きは鈍く明らかに砂漠に慣れていない、新兵の動きだった。
狙った相手が、運良く新兵、運良く砂漠に慣れていない・・・運良く罠にかかってくれたから倒せた。
最初のうちは、その事を全員が自覚していたはずだった―――だが何時の間にかそれが全て、自分達の力と思い上がり、
本当の実力を見誤ってしまったのだ。
ここに到ってカガリはようやく気付いた―――自分の過ちに。
「そんな・・・これじゃあ、みんなを・・・アフメドを死なせたのは・・・・」
力なく呟くとカガリは叫ぶようにして、喚いた。
こうなる前に気付けなかった自分、今更気付いた自分の愚かさ、そして・・・仲間を、友を死なせてしまった事を悔いての涙だった。
「カガリ・・・」
かける言葉が見つからず、キラは悲しい眼で彼女を見守る事しか出来なかった。
負傷者を収容し、アークエンジェルに戻ったアムロ達は、地中から出現したMSについて聞く為にドモン達をブリッジに上げていた。
「あれはデスアーミーと言って、デビルガンダムの自己増殖能力によって産み出された機体です」
レインの説明に、マリューが眉を顰めて聞き返す。
「デビルガンダム? 聞いた事のない名前のガンダムだけど・・・」
「順を追って話します。デビルガンダムは、もともとはアルティメットガンダムという、地球再生を目的とした自然回復のためのガンダムなんです」
「・・・わざわざ、ガンダムにする必要はあったのか?」
「ちょ、カチーナ中尉!!」
ボソリと呟いたカチーナを、ラッセルが慌てて口を塞ぐ。
「アルティメットガンダム・・・そうだわ、思い出した! それって、カッシュ博士が開発していた・・・!!」
「知っているんですか!?」
ラーダが思い出し、手を打つとナタルが聞き返してくる。
「ええ。一度、リン社長と博士にお会いした事があって、その時話に出てきましたから・・・確か、博士は
『自己再生』、『自己増殖』、『自己進化』の三大理論を生み出してましたから、それをアルティメットガンダムに?」
ラーダの言葉にレインは頷き、
「ええ。地球の自然回復のためには、それだけのものが必要だという考えだったの」
「でも、どうしてそれがデビルガンダムに?」
アムロの問いかけに、レインは少し言いづらそうな顔になったが、どうにか答える。
「研究途中でキョウジさん、つまりドモンのお兄さん、キョウジ・カッシュがアルティメットガンダムを盗んで地球に逃げこんだんです。
その過程で暴走、デビルガンダムと化してしまったんです・・・」
「それを3人で・・・いや、シュバルツも入れるから、4人で追っていたという訳か・・・何時からだ?」
キョウスケがレインではなく、ドモンに話しかける。
「・・・元々は俺とレインだけで、今回のガンダムファイトが始まる直前から追っていた。
途中でアレンビーや他のシャッフル同盟の連中、そしてシュバルツが手を貸してくれる様になった」
ドモンの答えに、エクセレンが眉を跳ね上げ聞き返した。
「じゃあ、ガンダムファイトと平行して追っていたって事よね? 決勝予選リーグが終って、ガンダムファイトそのものが戦争の激化で
中止になったのが、半年ぐらい前・・・で、ガンダムファイトが始まったのが更に3ヶ月ぐらい前・・・これだけの期間があれば、
開発者の博士がなにかの対策を出せそうなんだけど・・・?」
「確かに・・・その博士は?」
カミーユがエクセレンの言葉に頷き、ドモンに問いかけるが、彼は辛そうに顔を顰めた。
「・・・なにかあったのか? 辛いのなら、言わなくていい」
アムロが気づかって言うが、ドモンはそれでも事実を吐き出す。
「・・・・・・永久冷凍刑にされた」
「デビルガンダムを地球に降ろしてしまった罪でか!? ・・・馬鹿な、そのために結局、どのような対応をとるべきか、
判る人がいない状況になっているんだぞ?」
キョウスケが信じられないという表情で叫び、アムロ達も同じ様な表情になっている。
「・・・これは軍の上層部の決定だ。ネオ・ジャパンのウルベ少佐も同じ事を言っていた・・・連中が出した父さんの釈放条件が、
ガンダムファイトに優勝する事、そしてデビルガンダムを破壊し、その証拠となる機体の1部を持ち帰る事だ」
「・・・なんとも、不可解な採決だな」
「ああ、もしかしたら、根が深い問題かもしれない・・・何となく嫌な感じはするな」
フラガの言葉に、アムロも重々しく頷く。
「ギアナ高地では後一歩の所まで追い詰める事が出来た。その時消耗したエネルギーを回復する為に、ロンド・ベル隊を狙ってくる筈だ。
奴を倒すまで、一緒に行動させてもらうぞ」
マリューを見据え、一方的にドモンが告げると、ナタルが異を唱えた。
「一方的に決めるな!! 我々は一刻も早く、アラスカに向かわなければならないんだぞ!」
「でも、その為に他の勢力、事件を無視して行くなんて出来ないわ・・・」
「―――アムロ少佐、如何しますか?」
マリューの言葉に少し苛立ち、ナタルはアムロに意見を求める。
「俺は賛成だ。 確かにアラスカに向かう事も大事だが、デビルガンダムの方も放っておける代物ではない様だからな」
「しかし・・・!」
アムロの言葉に、ナタルの反論の勢いがなくなる。
「オレもアムロ少佐に賛成だね。だって、キング・オブ・ハートが一緒に戦ってくれるんだぜ?
アレンビーの嬢ちゃんも結構強いし、かなりの戦力アップになると思うんだけどな?」
フラガもアムロと同じ意見を支持し、その根拠も的を得ている為、ナタルは何も言えなくなってしまった。
「わお! じゃあ、決まりね? アレンビーちゃん、後でノーベルガンダムに乗せてくれない? 『月に代わって〜』ってやってみたくて」
アレンビーはエクセレンの身体と自分の身体を見比べ、少しショックを受けた様な顔で呟いた。
「・・・アタシのファイティングスーツじゃ、サイズが合わないか・・・」
一方でエクセレンが『月に代わって〜』と言った瞬間、マリューが肩をピクッと振るわせる。
「・・・ラミアス艦長?」
「いえ、なんでもありません・・・」
アムロの言葉にマリューは慌てて首を振り、誤魔化した。
「ゴホン・・・艦長、艦の物資が―――特に、医療品や食料、水などを住民へ回した事で心許なくなってきましたが・・・」
ナタルが一つ咳払いをし、マリューに報告する。
「え? ええ、判っているわ。何処かで補給を受けないと・・・」
「その事だけどよ・・・ちょっと当てがあるぜ?」
マリューの言葉に、デュオが応える。
「当て・・・? 協力してくれる組織があるのか?」
フラガの問いかけに、トロワは首を振り、
「半分はあっている。バルマー戦役の時、俺達がロンド・ベル隊と合流する前や別行動時に使っていた手段を使う」
「・・・闇市場を使うと言う事か?」
カミーユがそう応えると、トロワは無言で頷く。
「ただ・・・その市場というか、取引の出来る場所が少々問題があるんです」
「問題・・・? この辺りにあるのは、タッシルとバナディーア位しか・・・まさか!?」
「ええ・・・バナディーアに直接行かないと、取引が出来ないんです」
地図を見て察しが着いたキラに、カトルは重々しく頷いた。
第十九話に続く
あとがき
作:遂に登場しました、人間外のガンダムファイターの方々が・・・更にキラの存在が薄くなる(爆)
MX同様に、最初からゴットガンダムで参戦になりました。原作の時間軸上の話だと、対シュバルツ戦の後という設定になります。
今回2人の見せ場が、戦闘シーンが少なかったですが次回辺りから活躍の場面が増えていく事になるかと思います。
・・・いや、だってキラごときで『師匠』の相手が務まる訳ないですし・・・アムロ達でも多少厳しいものがあるような・・・
―――こう考えて見ると、『師匠』って偉大なんですね〜
管理人の感想
コワレ1号さんからの投稿です。
いやぁ、とうとう出てきましたねぇ、ドモン・カッシュ!!
これから先、様々な理不尽な闘いを、キラの前に展開してくれるのでしょう!!(笑)
そして、ますます影が薄くなるキラ(苦笑)
説明役はキョウスケに取られ、ドッグファイトはアムロに取られ、目立ち度でははシュバルツに及ばず。
言うまでも無いですが、まだ登場すらしていない師匠の前では存在自体が霞んで見えます(苦笑)
ま、仕方が無いと言えば仕方が無いのですがねぇ
さて、そろそろ次回には戦争馬鹿も出てくるのかな?
何しろ、ガウルンに対抗出来る機体が、アレ位しかなさそうですしね。
・・・・・・・・・・・・・・・ゴットガンダムなら、理不尽にもフィールドごと貫きそうな気もしますが。