紅の軌跡 第1話



・・・おい。
ちょっと待て。
どういうことだ、これは?

現在、俺の頭の中はクエスチョンマークがタンゴでワルツを踊っている。
何、意味がわからん?
心配するな、俺もわからん。

まあ、それはともかく!

信じたくない思いでもう一度、鏡を見る。
だが、そこに映るのは先ほどと同じ・・・

「はあっ、どう見ても・・・
パトリック・ザラだよなあ・・・」

そう、そこに映っているのはいろんなところで叩かれまくっている種ガンの小粒な敵、ナイスミドルのパトリックさんなのであった。

「・・・・・まずは状況確認から始めるか?」

とりあえず、自分?の記憶をはんすうしてみる。
すると2つの記憶があることがわかった。

ひとつは当然この俺、高城 司のこれまでの人生の記憶。
もうひとつは、パトリック・ザラの記憶だ。

しかも、自分の記憶は結構曖昧な箇所が多々あるのに(写真記憶の持ち主でもなければ当然のことだ)、パトリックの記憶はまるでデータベースの中かネットワークマトリクスを覗いたように整然としかも色褪せることなく存在する。
コーディネイターって全員こうなのかね?それとも今の状況が状況だからこうなっているのかな?

それはともかく、どうも俺はパトリックに憑依(?)したような状態にあるらしい。
じゃなきゃ、臨場感満点の夢とか。

まあ、仮にこれが夢でも今の俺には現実としか感じられないのがネックなんだよなあ。
ほっぺたをつねると痛いし。

でも、これだけしっかりとした記憶があれば、とりあえずこの世界でも何とか怪しまれずに立ち回れるだろう。しかも、身体能力や思考能力はコーディネーターのものなんだし。
そう、やけに身体は軽いし頭の回転は速く感じるんだよ。個々にコーディネイトされたレベルの違いはあるんだろうけど、コーディネイトされた身体って凄いねえ。

とまあ、感心ばかりもしていられないんだが。

それにしても・・・
さっきまで部屋のPCで220.earthさんの青の軌跡を読んでいたはずなのにな(苦笑)
それが、全く正反対の立場の状況で現実化するとは、Benさんのイベント召還人生が感染したのだろうか?

・・・なんか今、人として踏み越えてはならない一線を超えてしまったような気が。


#にしても感染するのか、あれ?
#もしそうだったら・・・すんごく恐ろしいぞ、おい?
#とすれば、感染者の筆頭は・・・代理人!?!?


閑話休題。

さて、これからどうするかな?

こうなった原因もわからない以上、当分の間は今の状況が続くと考えたほうが無難だし、あんまり考えたくはないが、へたをすると残りの一生全てってパターンもあり得るし。

とすると、今後はパトリック・ザラとして生きていかなきゃならないわけだが・・・・・今は、テレビ本編でいうとどのあたりだ?

・・・ふーん、今はオペレーション・スピットブレイクの数日前、キラとアスランが死闘を演じ、原作の中でも評価の高かった戦闘シーンが終わっているあたりか。

で、既にキラはラクスのところにいるみたいだな。

うーん、俺個人としてはプラントが勝とうが負けようが別にどうなろうと知ったこっちゃないんだけど、パトリック・ザラは、やっぱり負けたら戦犯として引きずりだされそうだな。
仮に引きずりだされなくてもろくなことにはならなさそうだ。

で、俺はパトリックに憑依っつうか同化しているようなものだから・・・

はっきり言って痛いのや辛いのはイヤだし、死ぬなんて論外だ!

とすれば、やっぱり歴史を変えないとやばい。
少なくとも敗北は防がねば・・・
じゃないと、テレビ本編のように味方に撃たれる可能性も出てきてしまうし。

幸いというべきか、今この時は歴史を変更するのに有利な、極めて大きな分岐点にあたる。
テレビ本編でのアラスカにおけるザフトの大損害、それを簡単に防ぐことができる。

どうするのかって?

答えは簡単。
当初の計画通り、パナマ侵攻を行うだけさ。

アラスカ侵攻の機密保持をよほど重視していたのか、パナマ侵攻作戦の計画は丁寧に余すところなくきっちりと仕上がっている。
そうでなければ、ザフトの地上戦力の過半を投入する大侵攻作戦なんだから、事前準備や兵站構築に齟齬(そご)がでてしまうしね。
まあ、クルーゼによってアラスカ侵攻の情報がだだ漏れだったみたいだから機密保持は意味がなかったんだけど。

そんでもって、判断を下すには基本に立ち返ってみるべきかな?

では質問。

Q.プラントの戦争目的は何か?

A.コーディネイターの生存権の確立。

うむ。これしかないでしょう。
難しく生存権なんていっているけど、ようは普通に生まれて、普通に暮らして、普通に死ねる、その権利を得る、ただそれだけのことだ。

ブルーコスモスによっていつ殺されるかわからない生活や、ちょっということ聞かないからっていきなり核攻撃を受けたりするのはごめんだからねえ。
人間、どのように生まれてくるかは選択できないんだし。

ナチュラルに生まれようがコーディネイターに生まれようが、幸せになるやつもいれば不幸になるやつもいる。人生の幸不幸を決定する確率の悪魔たるラプラスの魔の振るサイコロは、生まれなんぞ気にしない。それにもかかわらず、無理やり不幸を押し付けてくるような行為は断固として拒否する。

俺は幸福な人生を送ると決めているんでね!

・・・・・まあ、こうなった段階で少々予定していた人生のレールから、はずれているような気がしないでもないんだが。



それは置いておいて、次の質問だ。

Q.プラントの戦略目標は何か?

えー、これは結構難しいな。
テレビ本編のパトリックは、滅ぼさねば滅ぼされるとばかりにナチュラル殲滅戦を実行しようとしたけど、生き延びる為に必要であれば、容赦なく他民族を殲滅するのは為政者としては、間違った行動とはいえない。
過去の歴史をみれば、民族殲滅戦は何度も起きているから、「悪夢再び」というだけだし。

・・・・・まあ、規模が前代未聞だけど。

ただ、コーディネーターの最大の問題点である出生率の低下を考えると、ナチュラル殲滅は危険だ。
テレビでは、ラクスとの宣伝戦で科学者が新たな方法を見つけるために頑張っているからどうたらこうたらと言っていたけど、裏を返せば、まだ解決していないということを意味しているからな。
それはすなわち、第一世代コーディネーターを生んでくれるナチュラルを確保することが必要ということになるから殲滅戦は不許可となる。
少なくとも出生率の問題を解決するまでは。

そうすると、安心して暮らせる拠点を確保、これはまあ現状ではプラントしかないだろうし、それを守る防衛能力(これはザフト)も必要になる。そこまでいくとやっぱ最低限でも独立自治権は必要だろうし、最終的にはプラントをひとつの国家として認めさせるのが一番正攻法なのかなあ。

まあ、逃げるという手もあるけどね。

プラントはバイオスフィアであるコロニーの集まりだ。現時点では農業プラントの数が不足しているかもしれないが、戦争資源を回して新規に建設すれば何とかなるレベルの問題でしかない。
だから、はっきり言って地球圏から離れたところにある、太陽系内の別のラグランジュポイントに移動すれば、ナチュラルとの間に距離の壁という今の人類の技術では超えられない防壁を築くことができる。

実際、ヤキンドゥーエやボアズみたいな小惑星を利用した宇宙要塞があるんだから、アステロイドベルトに作業拠点は構築済というわけだし(拠点もなしにあんなもの運べるわけがない)、それなりの困難は伴うけど、検討に値するオプションだよな。

まあ、なかなか魅力的な逃げるというオプションは当面は置いておくとして、プラントの戦略目標は殲滅戦が不許可となった以上、次点として講和を狙うしかないか。それも最低でも対等以上の。
でも、ブルーコスモスって、環境保護団体や反捕鯨団体の過激派の延長線に位置していそうだから・・・・・・

うーん、やっかいだな。あまり考えたくないぞ。
あの手の連中って下手な犯罪者より性質(たち)が悪いからなあ。
思い込みに凝り固まった頭じゃ講和なんて絶対受け入れなさそうだし。

とすれば、力ずくで講和に持ち込むしかないと・・・やれやれ。

さて、次は当面の作戦だ。

まず、オペレーションスピットブレイクは先に述べた通り、当初予定に従いパナマに侵攻する。
テレビでは、戦力の8割が失われた後でありながら、グングニールを投入したとはいえ作戦目標であるマスドライバーの破壊に成功している。
そこに、あれだけの戦力を投入するのだから、おそらく失敗することはないだろう。
まあ、念のためグングニール投入の準備もしておくけどね。

で、その後だけど、これは連合の出方によって変わってくるな。

ひとつは、テレビ本編通りオーブ侵攻作戦が発動された場合。

この場合、ザフトは問答無用でオーブに荷担する。オーブの中立なんて知ったこっちゃない。敵の敵は味方としてその戦力を有効活用させてもらう。
テレビでは、おそらくアラスカ侵攻作戦とパナマ侵攻作戦で行動可能な地上戦力を消耗しつくして、介入するだけの戦力がなかったんだろうけど、今回は十分に戦力が残る予定だから、対応可能のはずだ。
この一方的な共同作戦で、可能な限り連合の戦力を削る。ここで削った戦力は、そのままプラント侵攻戦力が削られることとイコールだからな。
ただ、アラスカが無事なせいで、連合の侵攻戦力も嵩上げされるかもしれない点が不安材料か。

もうひとつは、オーブ侵攻作戦が発動されなかった場合。

この場合、もうひとつのビクトリア宇宙港への侵攻があるだろうから、防御兵器として事前にグングニールをセットできる。まあ、パナマで使用していた場合、セットできる個数が減るかもしれないけど。
当然、連合にばれないようにセットして多大な戦果を稼ぐのを目指す。もっとも、ばれてもメリットはある。侵攻戦力全てにEMPパルス防御処置を施すにはかなりの手間がかかる。それだけ侵攻が遅くなるということだからね。
当然、宇宙港のマスドライバーには自爆装置をセット。例え防衛戦力が全滅しようともマスドライバーだけは破壊する。
そうすれば、地球と月との主補給線を遮断できる。
マスドライバーを使用しないで補給線を維持するには莫大なコストと手間が掛かるから、これも連合によるプラント本土への侵攻作戦発動までの時間稼ぎになるだろう。

そして、可能な限り時間を稼いだら最終兵器ジェネシスの出番だ。

第一射の前に、連合に対して降伏勧告を実施。
おそらく、黙殺または拒絶してくるだろうからテレビ本編通り月面プトレマイオスクレーターの連合軍基地を破壊する。
ジェネシスの威力を見せつけた上で、今度は連合を構成する国に対し、個別に講和交渉を実施する。
連合といっても北米大陸から中南米を勢力範囲とする大西洋連邦、ユーラシア大陸の西部と北部のヨーロッパ諸国を中心とするユーラシア連邦の双璧を筆頭に、東アジア共和国など複数の国の文字通り連合、すなわち寄せ集まりに過ぎない。
主導権争いは戦争中にもかかわらず日常茶飯事に行われているし、本編であったアルテミス要塞の出来事やユーラシア連邦の軍がサイクロプスで吹き飛ばされたのを見れば、分断は十分に可能という判断に誤りはないだろう。

そこからは、まあ、水面下の長い交渉になるだろうけどな。一応、強大な力を見せつけた上での降伏勧告の後の講和交渉という交渉テクニックも実施するし、それなりの成果は上がるでしょ。

もっとも、その間に宇宙で戦力を動かした場合は、ジェネシスで容赦なく焼き払うが。



とりあえず、おおざっぱだけど方針としてはこんなもんか。
あとは、臨機応変に計画に肉付けしていくしかなかろう。



さて、それでは俺の長いサバイバルゲームを始めるとしますか・・・・・




第2話




あとがき

お久しぶりです。鳥井南斗です。
いきなり、SEEDもの?を投稿しました。

これを読んでアレと思われた方、その通りです。
これは220.earthさんの「青の軌跡」を読んだ後にBen波を受信して完成したお話です。
正確にはearthさんへの感想メールに添付した感想物語だったんですが(笑)

その後、感想物語の容量が増えて「もったいないお化け」が怖くなった私は
earthさんに「紅の軌跡」という、いかにも「青の軌跡」のパチモンっぽい題名で
投稿する許可を頂き、こうしてお目見えする運びになりました。

行き当たりばったりで書いた、物語とも呼べないような代物なので突込みどころ満載でしょうが
まあ、笑って流して下さい。