紅の軌跡 第19話
かつて、地球衛星軌道上には多数の勢力の偵察衛星が天駆けていたが、現在では偵察衛星を飛ばしている勢力の数は激減していた。なぜなら、地球侵攻作戦オペレーション・ウロボロスの開始にあたって、ザフトが軌道上における衛星を軒並みスペースデブリあるいは大気圏内における流れ星へと変え、その存在を抹消していたからである。
そして、オペレーション・スピットブレイクの発動によりザフト地上軍が編成されてからは、自らが排除したその後に、ザフトが新たに設置した偵察衛星が軌道を巡っている。
もちろん、地球連合を構成する各国が、継続的に自国の情報を取られるのを黙ってみているはずもなく、ザフトが設置した偵察衛星も地球連合の宇宙艦隊によって次々と撃墜されていた。いわば、双方による衛星の設置と撃墜のいたちごっこがしばらく続いていたのである。
しかしながら、地球連合の主要な宇宙艦隊の大半が大ダメージを受けたあとはその均衡が破れ、地球衛星軌道を巡る偵察衛星の数は、ザフトのものがその大半を占めていた。
地球連合も衛星破壊を完全に諦めたわけではなく、月−地球間の資源輸送船団の護衛部隊がすれ違ったザフトの衛星を撃墜するという行為を繰り返し行っており、衛星の消耗戦が終結を迎えたわけではなかった。
それでも、地球連合に撃墜される衛星が限定的になったため、ザフト側の衛星はわりと長期間にわたって生き延びることができるようになっていた。
なお、この時期の偵察衛星は、当初から撃墜されることを前提に大量に投入された量産型の偵察衛星であるので、軌道上にいる軍艦ほどには優れた偵察能力は持っていない。
旧世紀の冷戦時代などは、相手国内の情報を得る有力な手段として惜しげもなく最新技術が投入された偵察衛星だが、現在は、敵方に鹵獲されることも十分ありえるため、画像情報を取得する光学式/電子カメラと熱源分布をキャッチする赤外線センサーを中心としたごく一般的な技術しか用いられていない。
偵察衛星を構成する部品も、基本的にプラントにおける民生品でまかなわれており、非常にコストパフォーマンスに優れた代物になっている。
もっとも、民生品といってもあくまでプラントの持つ技術の上での民生品である。その精度や完成度(この場合は光学式カメラの分解能などの性能)は、地上で作られた民生品とはわけが違う。なぜなら、プラントやヘリオポリスなどその他のコロニーが位置するラグランジュポイントは、地球自身が持つ天然のバリアの外にあるからである。
地球という星が多種多様な生命を生み出す遠因ともなった天然のバリア、すなわち大気圏は、高い順に外気圏、熱圏、中間圏、成層圏 そして対流圏と幾重にも重なり合っている。最下層の対流圏は地表から20km上空までの領域で、ほとんどの気象現象はここで発生する。上空約50〜600kmには荷電粒子の層(電離層)がある。さらに、その外側である上空約1000km〜1万kmあたりにかけてバンアレン帯と呼ばれる磁気圏が存在する。この磁気圏は、生命にとって非常に危険な荷電粒子を含む太陽風や宇宙線を防ぐ傘の役割を果している。
だが、これらの外にあるラグランジュポイントに浮かぶプラントのコロニーは、その恩恵にあずかることはできず、直接その危険な太陽風や宇宙線を始終、浴びることになる。
特に太陽フレアなどが活発化した時などは、尋常でない威力の太陽風が押し寄せる。その影響は、対電磁波防御が施されていないあらゆる電子機器を破壊するほどの力を持っている(このような環境下にあったからこそグングニールのような兵器を実用化した可能性は高いと思われる。プラントでは全ての電子機器に対電磁波防御を施すのが常識であったが、地球では常識の埒外であったのだから。)
そんな機械にとって極限の状況ともいえる宇宙空間で生産された民生品が、大気圏内というゆりかごの中で作られた民生品と同じレベルであるはずがないのは自明の理である。
かつて、プラントからの工業製品がプラント理事国に繁栄をもたらした理由のひとつがこの異常なまでに精度と完成度の高いにあることがよくわかると思う。
それを裏付けるのがプラントと地球連合の基礎科学や応用科学などを始めとした技術レベルの格差である。
基本的にプラントと地球連合の科学技術のレベルの差は、プラントの第一陣、後のアプリリウス市を構成する10基のコロニーが完成したC.E40年代後半以降、じりじりとその差を広げ、C.E70年の時点ではその格差は相当なものになっていた。
その理由はひどく簡単で、旧世紀の20世紀末の日本と米国の自動車産業と同じく努力することを怠ったものが脱落したというに過ぎない。
マネーゲームにうつつを抜かし、技術革新を怠り凋落した米国の自動車産業は、米国とは対照的に世界を席巻しつつあった日本の生産技術を米国の自動車メーカーが取り入れることにより再生することができたが、緊張状態にあったプラント理事国がプラントの生産技術の導入などをスムーズに行えるはずもない。
当時の米国以上に技術革新を怠り、プラントからもたらされるエネルギーと工業資源を湯水のごとく使う生活に慣れていたプラント理事国が、その理事国の理不尽ともいえる要求に対応するために切磋琢磨を繰り返していたプラントに大きく差を開けられていたことは驚くにはあたらない。
もっとも、さすがにC.E60年代になってきな臭さが漂うようになってくると、プラント理事国も自らの技術レベルがプラントに比して明らかに遅れをとっていることを認識し、大慌てで技術レベルを向上させることに本格的に取り組み始めたが、20年近く技術革新をおざなりにしてきたつけは、そう簡単に埋められるものではなかった。
その具体的な例のひとつとして、プラントからの工業製品、より正確には工作機械を手に入れられなくなったプラント理事国の工業生産におけるクリアランスはかなり悪化する傾向にあった(陸戦兵器や大気圏内航空機ならばともかく、宇宙空間における使用を前提としたMSでありながら、対EMP防御が施されていなかった初期量産型のストライクダガーなどその最たる例と言えるだろう。プラントの兵器開発部門や製造部門の担当者からしてみれば地球連合軍の正気を疑うような光景であったに違いない。)
もちろん、月からの輸入をかろうじて維持していたため全ての工作機械が止まるというような製造責任者の顔色を真っ青にするような事態に陥ったわけではなかったが、一部の交換部品が不足したことにより停止した工作機械を地球製のものに変えたところ、以前よりも質の低下した製品が出来てくるというようなことは日常茶飯事であった。あきらかにプラント製の工作機械を投入できていたころよりも操業効率が低下してしまっているのだ。
なお、操業効率が低下してしまったもうひとつの理由には、C.E50年代終わりごろから開戦直前まで、地上のコーディネイター達がブルーコスモスを始めとするナチュラルの迫害を恐れて、プラントに続々と脱出してしまったことが上げられる。
ブルーコスモスが例え何といおうとも、極一部の例外を除きコーディネイターはナチュラルに比して圧倒的な能力差を誇る。
そして、優秀な人材をどれほど有するかで組織としての能力が左右されるのは古今東西変わりはない。にもかかわらず、ヒステリーじみた反応により、地上のコーディネイターの大半、それも数百万人を優に超える膨大な人数の有能な人材を、地球連合を構成する各国は失ってしまった。
その後に残されたものは、コーディネイターを追放したというナチュラル達の精神的な満足感と、優秀な人材を多数失い、空洞化・形骸化が著しく促進され、がたがたになってしまった各種組織だけだった。
コーディネイター達は、例え迫害されていたとしてもその能力の高さから地位は低くとも組織の重要な役割を果たしていたケースが多く、それをゴッソリ引き抜かれれば、組織が機能不全を起こし始めることは想像に難くない。
はっきりといおう。砲火を交える事のみが、戦いという訳ではない。
兵糧攻めも、相手を弱体化させるための調略も、立派な兵法の一つである。
それをあろうことか、地球連合(当時はまだ存在していないが)は、自ら率先して調略されるべき人間をプラントに対して提供するという言語道断な行為に走っていたのである。
対して、少ない人口を補充することができたばかりか、地上の様々な技術、ノウハウに秀でた人材を得ることのできたプラントの拡大は如何ばかりであったろう。
何より地上の自然現象や風土に精通した人材を多数得たことは、後のオペレーション・ウロボロスに非常に貢献することとなった。プラント内で育ったイザーク・ジュールやディアッカ・エルスマンが、アークエンジェルを追って地上に降下した際に、自然現象について様々に文句をたれていたが、同時に自然現象に翻弄されていたことは記憶に新しい。
もしも、ザフトを構成する兵員達全てがイザークやディアッカのようなプラント育ちであったならば、地上におけるあの電撃的な勝利は、初めて出会う様々な自然現象に翻弄され、極めて困難であったろうことは想像できるだろう。地球出身のザフト兵がいて、初めてあれほどの戦果を上げることができたのだ。
また、それだけではなく、それまでプラント理事国によって禁止されていたためネックとなっていた農耕プラントの開発を始めとする農業関連のスキルの取得や各種分野の活性化にも地球を脱出したコーディネイター達は一役買っている。このことについては、まさに地球連合様様としかいいようがない。
まあ、地球連合の愚かさはともかくとして、クリアランスが悪化し操業効率の低下に見舞われた地球連合各国は、それでも、20年以上にわたってプラントから搾り取った大量の資金と資源、そしてコーディネイターに伍する知能を持つ極々少数のナチュラル達というマンパワーを最大限に投入することにより、一部の分野については技術レベルの明らかな向上という恩恵を得ることができた。
そのうちのいくつかがプラントの評議会議員たちの心胆を寒からしめたGAT−Xシリーズに結実していたのは実に興味深い。
旧世紀、冷戦下のソ連と米国の間に似たような状況(このころのソ連の情報機関は如何にして米国の最先端技術を盗むかが重要な役目のひとつであった)が何度か発生しているのを見るにあたり、科学技術レベルの劣るほうが軍事的技術により早く結実させるのは歴史の皮肉というべきなのだろうか?
その地球連合製と比較して明らかに高い性能を持つ偵察衛星は、その役目を果たし、自らの創造主に貴重な情報を届けることに成功したわけである。
もっとも、ザフトが完全な制宙権を得られるのであれば、最新技術を投入したさらに高性能の偵察衛星を軌道上に投入できるのだが、いかんせん、ザフトのもつ制宙権は限定的なものでしかなかった。
人類が宇宙に出てかなりの年月が過ぎているが、それでも宇宙の広大さにはまるで変化がない。
地球圏と呼ばれるごく限定的な空間に関しても、今の人類からしてみれば非常に広大なものと言わざるを得なかった。
今次大戦の中盤戦が終了した後、地球連合に残されたのは月周辺の空域を始めとする、宇宙空間における軍事拠点を中心とした極々限定的な空間とかろうじて維持することに成功していた輸送路周辺の空間でしかなかった。
だが同時に、地球連合の宇宙艦隊を撃退したザフトは、残りの空間、そのすべてを掌握するだけの戦力などもってはいなかった。
寡兵を持って地球連合軍の大軍を撃破したザフトにもそれ相応の被害が出ており、また、もともと戦略拠点以外の場所に多数の兵士を配置できるほどの人的資源を保持していない。
よってそこには戦力の真空地帯が存在することとなったのである。
それゆえ、アークエンジェル追撃戦の際、第8艦隊先遣隊がわずか3隻で、ほいほいと自らの制宙権外を航行してのけるのである。
もしも、クルーゼ隊の執拗な追撃がなかったとしたら、第8艦隊先遣隊は無事その役目を全うしていたことだろう。
ようするに、人口問題の点からも多数の有人観測拠点を地球軌道上に設置することなど、夢のまた夢であることを承知していたザフトは、多数の偵察衛星を軌道上に設置することで、その代替手段としたわけで、その元気に働いている偵察衛星群のなかのアフリカ・ヨーロッパ方面を監視している一群が、ユーラシア連邦軍及び東アジア共和国を主軸とした陸上部隊の移動をキャッチした次第、というわけである。
ヨーロッパ・アフリカ方面における地球連合軍の予想をはるかに上回る早期の攻勢開始・・・
それは、すくなからずザフトに混乱をもたらし、更なる情報の収集とこれまでに集めた情報の再調査/解析が大車輪のごとく行われていた。
「敵の侵攻目的について、情報部からの連絡は?
事前の情報と比較して変更はないと考えてよいのか?」
「はっ、再度の解析の結果、ビクトリア基地奪還を目的としていることに現時点で変更はないものと推定されるとのことです。」
そういいながら、参謀本部の解析結果をパトリック正面のモニターに表示させる。
偵察衛星がアフリカ方面における地球連合軍の攻勢開始の兆候を捕らえてから既に数時間が経過していた。
統合作戦本部地下では、北米西岸から出航した大西洋連邦を主力とする洋上艦隊をトレースし続ける者たちと、アフリカ方面のユーラシア連邦を中心とした地上軍の動向を解析するものたち、そしてさらに攻勢に出る部隊がいないか監視を強化するものたちの主に三つに別れ、いまだ収まらぬ喧騒の中で動き回っていた。
同時にアフリカ方面軍を統括するヴァシュタール隊長には既に警報が出され、アフリカ方面軍全軍が警戒レベルを上昇させ戦闘態勢に移りつつあった。
「戦闘準備完了には、未だ若干の時間が必要と思われるものの、一両日中には攻勢を開始すると思われる、か。
同時二正面作戦を展開するつもりか、連合は・・・」
現在判明している連合軍のアフリカ反攻作戦の情報を読み進めていくうち、パトリックの表情が厳しいものとなり、読み終わった後、傍らの情報参謀に鋭い視線を飛ばす。
「これまでの敵情分析では、地球連合のアフリカ反攻作戦が実施されるのは3週間から一ヶ月後と予想されていたはず。
にもかかわらず、彼らは行動を開始した。
開始した以上、少なくとも敗退するつもりはあるまい。」
これまでに得ていたザフトの偵察情報では、ユーラシア連邦を主力とするアフリカ反攻軍に配備されたMSの数は400機を越えており、さらにそれを支援するリニアガンタンク部隊を中心とした機甲師団及び戦闘機と爆撃機をバランスよく揃えた航空兵力も膨大なものであった。
比較的明るい材料としては、戦争初期の熟練兵の損耗を回復できておらず、反攻軍全体で見た場合、その練度はそれほど高くないという点であった。とはいえ、新兵を大量に徴兵し、損害の増大に目をつぶる代わりに一部熟練兵の温存を図った結果、MS部隊にはそれなりの練度を持った兵士が配属されている模様だ。
さらに、ザフトが把握していた敵戦力が地球連合の反攻戦力の全力ということはありえない(敵の全容を把握することは中世と現代といったような隔絶した科学技術の差がなければ不可能である。いかにプラントと地球連合の間に技術格差があるとはいえそこまでのものではないのだ)。
それほどの規模の軍団の動きを見誤っていたのであるのだから、事は重大であることはたとえ子供でもわかる。
「行動を開始できるだけの戦力及び物資を蓄積していたのを十分に把握できなかったとは、諜報部は何をしていた?」
そう追求するパトリックの視線は氷点下の南極のように冷たい。
その視線が突き刺さることに耐えるように参謀が報告を続ける。
「申し訳ございません。主にユーラシア連邦の情報機関による欺瞞情報に一杯食わされたようです。
また、オーブ製と思われる対衛星ジャマーが多数使用されていたと思われ、全容の把握を妨げられた模様です。」
「・・・後ほど、原因と問題点のレポートを提出するよう責任者に伝達しろ。
それまで、責任問題については先送りする。」
「かしこまりました。」
ザフトの諜報機関が、地球連合に嵌められるのはこれが初めてではない。狡猾さと経験に裏打ちされた欺瞞情報には、コーディネイターといえども経験不足のエージェントが何度も踊らされている。
もっとも、度重なる失態をそのままにしておけるほどコーディネイターの矜持も低いものではなく、ザフトの諜報機関も着実に組織の最適化と経験の蓄積を進めていた。
それゆえに、パトリックは戦略的に大きな問題となりかねない事柄にもかかわらず、その場での処罰を避けたのである。
今すぐに処罰を下し、諜報組織の指揮系統に一時的な空白を作るよりも、雪辱の機会を与え、それを持って更なる諜報機関自身の向上がなされたほうがはるかに効率がよい。そういった判断のもとに下された指示だった。これも議長の持つ主導権が確立されているからこそできる荒業といえよう。
それに、今回の失態の一部にはパトリック自身のものも間接的に含まれていた。
なぜなら、ラウ・ル・クルーゼを機械的間接的な手段(クルーゼがアクセスした情報のログの解析や監視カメラの映像の事後確認等の方法で監視することをパトリックは指示していた。むろん最終話付近で見せたニュータイプばりの雷走りを警戒してのことである。仮にクルーゼがニュータイプであったとしても直接の監視でなければ察知されないとの予測から行ったことであった)で監視しているパトリック直属のものから、地球連合へアフリカ方面軍の情報が流れた形跡があるとの報告があったにもかかわらず、それを重要視せずに太平洋方面に注力していたためである。
なぜパトリックは報告を軽視するような真似をしたのか?
それはパトリックがクルーゼのことをMSパイロットあるいは戦隊指揮官しては評価していたが、策謀家としてはそれほど高く評価はしていなかったからである。
実際、テレビ本編でクルーゼの行った手法は情報漏洩が主であり、しかもその漏洩の方法も、フレイを救難ポッドに入れて戦闘宙域に放り出したりと、決して確実性の高い方法を用いていたとは、とてもではないがいえないものだったことも影響している。
まあ手段の不確実性はおいておくとして、むろん、戦争においてもっとも重要なものは情報と兵站であることは周知のことであり、勘所を押さえた情報漏洩は軍に致命的な被害をもたらすことはパトリックも承知している。
だが、それは情報の漏洩源が秘匿されている間だけ有効なものである。
現時点で情報が漏れる穴が判明している以上、どの程度の情報がいつ渡ったのかおおよその見当がつく。
であるならば、それを逆用した方法を用いることを考えるべきであった。
すなわち、情報漏洩を利用した罠の設置である。
そう、パトリックはクルーゼを利用してパナマ攻略の時と同様に再び地球連合軍を罠に嵌めることをもくろんでいたのである。この辺り、狐と狸の化かしあい的な雰囲気があるが、策謀家同士の暗闘とは大概そのようなものだろう。
ただ、注意しておかねばならないのはパトリックはクルーゼからの情報漏洩にそれほど大きな期待はかけていなかったということである。先のパナマ攻略戦の影響により地球連合軍はクルーゼからの情報には疑問の目を向けるであろうことは明確であったからだ。
だが、同時に他のルートからもそれを裏付ける情報が入れば話は別である。
よって、クルーゼを利用した情報漏洩以外にもパトリックはいくつかの手を打ち、地球連合軍をアフリカ方面に引きずり込もうと努力していた。
それもこれも全ては地球連合が総力を挙げてオーブに侵攻してくるという状況を可能な限り防ぐためである。
プラントの指導者パトリック・ザラ、彼は地球連合の持つ物量という力にいまだ恐怖の念を持っていたのである。
パトリックは戦いの女神が持つ天秤がプラント側に傾きつつある現状でも、地球連合に対し全く油断していなかった(本編で核兵器乱れ撃ちの終盤戦を知っている以上、油断のしようもないとは思うが)。
大西洋連邦で極秘裏に生まれ出でたパトリック・ザラは、ナチュラルの権力者たちが持つ暗黒面をいやというほど見せられており、また、経験を積んだナチュラルの古狸どもがどれほど強欲でどれほど手強いかはプラント独立のための地下活動を行っているときにいやというほど学んでいる。
また、戦闘そのものに関しても、アフリカ大陸北部エルアラメインの戦闘で、月下の狂犬モーガン・シュバリエが証明して見せたように、既存の兵器でも使いようによってはMS部隊を圧倒することも可能なのだ。であるならば、地球連合を構成する各国に大量に残存する既存兵器を縦横無尽に駆使する戦闘指揮官が現れたならば一体どのようなことになるか・・・
パトリックの脳裏の一部は常にその事態が現実化した際への備えを模索している。まあ四六時中そのことばかり考えているわけでもないし、また議長権限でプロジェクトチームを設け現実化する可能性の高い事態について検討を進めさせてもいる(もっとも、かの月下の狂犬ほどの戦闘指揮官がそうそう地球連合軍に残っているはずもないのだが)。
そして、現状そのプロジェクトチームの中でもっとも可能性が高いと判断されているのが、単純な物量によるローラー作戦なのである。
実際、ある程度似た状況として旧世紀の第二次世界大戦における独ソ戦が参考になっている。ドイツ軍の質をソ連軍の量が打ち破ったものとして。
もっとも、似ているといってもごく表面的な事柄だけで、その戦争内容には大きく異なるものが多々あり(人口とか生産力とか領土とか同盟国とか)、あくまで参考情報でしかないのであるが。
それでも、一箇所の戦場に雲霞のごとく地球連合軍が投入される状態は、ザフトにとってはなはだ面白くない事態を引き起こすと予想されており、パトリックが地球連合軍をアフリカ方面に引きつけようと努力しているのもその分析結果に基づいている。
兵力の劣るほうが、敵を分断し各個撃破を図るのは古来よりの戦闘の常識であるから、諜報部もパトリックの意に応えようと努力を傾注している。パトリックが、諜報部の失態をすぐさま追求しなかった背景にはそのようなことも含まれていた。
だが今回は、諜報部自身の失態もあったが、クルーゼの情報がまずい具合に地球連合軍を動かしたと考えるべきだな。奴を自由にさせすぎたか・・・?
そう内心で自省するパトリック。
オペレーション・スピットブレイク成功後の通商破壊戦の強化、大西洋連邦及びユーラシア連邦への衛星軌道からの恐怖爆撃、いずれも地球連合を構成する各国を対応に奔走させ、その共同活動を阻害することを目的のひとつとして含んでおり、結果としてユーラシア連邦と東アジア共和国がアフリカ方面に進出してきたのは望むところであったが、時期的に少々まずいものがあった。
なぜなら、ザフト地上軍のアフリカ方面軍、具体的にはジブラルタル基地とビクトリア基地への臨時増援が間に合わない可能性が高いからである(先にビクトリア基地向けに出発している輸送船団はグングニールの輸送をその主任務としているため、増援部隊はあまり積んでいない)。
ザフトは、オペレーション・スピットブレイク終了後、太平洋方面をアフリカ方面より重視して準備を進めてきた。そのため、輸送船のローテーションもそれに添った形で組まれている。
プラントが保有する輸送船の絶対数そのものは、地球連合を上回っている。
その理由は、戦前のプラント理事国に対する厳しいノルマを達成するために一連の大型輸送船を次々と建造せざるを得なかったからというものであるが、同時に、その多数建造された輸送船が、L5にあるプラント本土とザフト地上軍の補給線を支え、さらに、友好国への資源輸出と食料輸入を維持してきたのも事実である。
仮に輸送船の数が不足するようであれば、ザフトはオペレーション・ウロボロスの発動すらままならなかったであろう。なぜなら、近代以降の戦争においては兵站の崩壊=戦争の敗北と同義なのだから。
そういった意味では、地球連合は自らの敵を自らの手で鍛え上げていたともいえる。戦争が悲劇と喜劇の集合体だとはいえ、なかなかに笑ってすごせるような問題ではない。
だが、地球に対する軌道上からの爆撃に加え、通商破壊に携わっているハンター部隊に対する補給、ザフト地上軍への通常の部隊補充と武器弾薬等の補給、友好国への資源輸出と食料輸入、さらにコピー生産したストライクダガーの友好国への供給と輸送船団は大車輪のごとく働きまくっている。
さらにカーペンタリア基地への臨時の増援部隊が、ボズゴロフ級潜水母艦という大物を輸送していったのに加え、ここ最近は地上における各宇宙港に配備するためのグングニールの輸送も行っている。そのうえ、外惑星向けコロニー航行船の準備にもそれなりの輸送船が必要となっている。そして極めつけは、宇宙における新たなる攻勢作戦の準備が多量の輸送船を必要としていた。
そのため、ジブラルタル基地への通常の補充部隊の輸送には支障はなかったものの、アフリカ方面への臨時の増援部隊の輸送が遅れていたのである。
まあ、プラント本土での主力MSへの機種改変及び現行機種の高性能化、試作MSの実戦投入など、様々にマンパワーを要する事柄が集中していたこともそれなりに影響していたのであるが。
「閣下。」
「エザリア、状況の把握はもう大丈夫か?」
「はい。一通りのことは理解しています。」
パトリックの隣のブースに腰掛け、モニターを起動したエザリアは、パトリック同様より詳細な情報に目を通しつつ応答している。
一度、この地下司令部に顔を出し、概略を把握したエザリアは、地球連合軍のアフリカ方面進軍に伴う混乱が発生した時点でここを抜け、他の片付けねばならない作業を進めてから再び戻ってきている。
国防委員長であるパトリックがそこにある以上、よほどのことがない限り問題は発生しないと見切った上での行動だろうが、さすがは評議会議員に選ばれるだけの決断力と行動力を持った女性であった。
「太平洋方面は、多少の齟齬が発生しているがほぼ計画通りに進んでいるといってよい。が、アフリカ方面は少々まずいことになっている。」
「ですが、致命的なものではないでしょう。
閣下の強い要望により、先のジブラルタル基地への補充時に精鋭部隊の増援が行われています。」
「まあ、保険の意味合いが強かったのだが、こうも早々に使うことになるのは少々気に入らん。」
やや顔をしかめつつパトリックは言う。
「スピットブレイク後にアフリカに移動した部隊も多数、敵の攻撃に備えることができます。
悲観的になる必要はないのではないでしょうか?」
「それはそうなのだが・・・
できれば、いま少しジブラルタルへのてこ入れを行っておきたかった。」
アラスカ本部で戦力を消耗しなかったことが、ユーラシア連邦にとってプラスに働いたと考えるべきか?
内心でそうひとりごちるパトリック。
本編では、一手にアラスカの防衛を引き受けることとなったユーラシア連邦は、サイクロプスの暴走によって、アラスカ基地に配備していたその全戦力を失い、その後のMS量産化でも遅れをとったことで大西洋連邦との主導権争いに敗れることとなった。
だが、今回は失われた戦力がそっくり無事に残っている。
艦船にして数十隻、航空機数百機、そして機甲戦力を多数含む数個師団の予備戦力は無視できるものではない(それほど史実のアラスカ基地壊滅で失われた戦力は大きかったのである。主要な戦力を失ったユーラシア連邦が大西洋連邦との主導権争いに敗れたのもむべなるかなといえよう。ちなみに比較対象として、21世紀初頭の当時は世界最強と言われた米国海軍の洋上戦闘艦艇の総数は約120隻であることが、参考になるだろう)。
しかも、アラスカ基地の防衛はどちらかといえば大西洋連邦が主体となって行うべきであるため(もともとは大西洋連邦の領土内にあるのだから当然である)、動かせる戦力は格段に史実よりも大きくなっているだろう。
そのことが、今回の動きの変化を生み出した可能性は否定できない。
しかも、ユーラシア連邦に対する軌道爆撃は、大西洋連邦に対する軌道爆撃よりもはるかに効果が薄かった。もともと、現在行われている軌道爆撃は目標を正確に定められず、また全てを吹き飛ばせるほどの大量の爆弾を落としているわけでもないため、敵国の産業中枢を焼き払う戦略爆撃とはまるで別物の恐怖爆撃、神経爆撃と呼ばれるカテゴリーの攻撃でしかない。
いうなれば嫌がらせの攻撃である。
それでも、大西洋連邦、正確には北米大陸においてある程度の効果が上がっていたのは、産業地帯周辺に着弾した爆撃より発生した火災による二次災害がその主たる原因だったのだ。
ところがユーラシア連邦では、それほど火災が延焼しない。なぜなら、意外に知られていないことだが、ユーラシア連邦の面積の大半を占めるユーラシア大陸北部は、非常に湖沼や河川が多く、予想外に湿気に満ちた土地なのである。北米大陸のように猛暑による乾燥など望むべくもないのだ。これでは、単純な面積で北米大陸の数倍を誇るユーラシア連邦に軌道上からの不正確というのもはなはだしい軌道爆撃で大きなダメージを与えることは難しい。
つまりは、史実に比較してユーラシア連邦はより強大な戦力を有していると判断できるのである。オペレーション・スピットブレイクの成功により、ザフトは史実にあった大損害を被ることなく大西洋連邦の戦力を削ることができたが、その恩恵はユーラシア連邦にはほとんど影響を与えていなかったのだ。
むろん、全く影響を及ぼしていないわけではない。海洋通商路の寸断はユーラシア連邦の経済にも無視できない影響を及ぼしている。だが、それはあくまで経済的な面が主体であり、実体としての戦力には影響は微々たる物でしかなかった。
そのことを今更ながらに感じ取るパトリック。今回のユーラシア連邦と東アジア共和国の動きは、明らかにパトリックの予想を上回っていたことを認めざるを得なかった。
だが、そのことはザフトにとって致命的なものとはいえなかった。なぜなら・・・
「地球連合軍をわざわざアフリカ方面に誘導するための一助として、戦略情勢要約の内容すら偽ったのでしょう?
ならば、プラスの側面も考えておくべきです。
彼らはこちらの誘いに乗ったのですから。」
「そうだな。」
エザリアの言にうなづくパトリック。そう、地球連合軍がアフリカで反攻作戦に出ることそのものはザフトにとって、そしてパトリックにとって予定の行動なのであった。
なお、先にエザリアのいった戦略情勢要約とは、ザフト軍総司令部が週に一度、地球圏各地への高級指揮官向けて発信しているものである。内容は、今次大戦の軍事戦略的な概況を、各戦線ごとに過不足のない分量でまとめたものとなっている。
パトリックは、自らの身に不測の事態が発生する場合を考慮して、明かしてもそれほど自分には問題とならない秘密であるザフトからの情報漏洩の可能性を評議員を中心に伝えていた。むろん、自らの持つ史実で知った不十分な情報ではなく、諜報部に調べさせた納得のいくデータを中心に据えている。
キラ・ヤマトを匿っていたシーゲル・クラインを通して穏健派にはその情報を伝達させることで余計な摩擦は発生せずに済み、また急進派には信念のもと地球連合軍に所属する煌く凶星Jことジャン・キャリーをはじめとするコーディネイター等の情報と、それと同時に現在のプラントの持つモラルからすれば許されざる、コーディネイターにあるまじき欲によって内通するものの情報を与えていた。
この情報を受け取った評議員それぞれの反応は、憤然とするものもいたがおおむねはやはりいたかというものであった。
プラントの世界にも犯罪者がいる以上、同様に利に傾き同胞の命を売るやからがいても不思議ではないことを彼らも理解していたのであろう。
そして、パトリックが施した細工はアフリカ方面軍に所属するMSの数を実際よりも少ない数で戦略情勢要約に記載することで、おそらく行われているであろう情報漏洩によりアフリカ方面軍が弱体化していると錯覚させ、地球連合軍の攻勢をさそうというものだった。
オペレーション・スピットブレイク終了後、パナマ攻略のために集められた戦力は順次、ジブラルタル基地とカーペンタリア基地を中心に元の戦場に復帰していったが、その際、アフリカ方面に戻る戦力の数をごまかすことで今回の詐欺の種としたのである。その時点で砂漠の虎と呼ばれたアンドリュー・バルトフェルドを失った後、一手にザフト地上軍アフリカ方面軍を統括するヴァシュタール隊長には、詐欺の理由とそれがもたらすであろう未来の情景は説明済みである。
相手に嘘を嘘と見破らせない方法として古来より言われているものは、事実の中に嘘を潜り込ませるというものだが、この場合、ザフトのアフリカ方面軍が、オペレーション・スピットブレイクを成功させた反動で補給物資が欠乏しているという事実の中に、パナマ攻略戦から復帰したMSの数が少ないという嘘を潜り込ませたというわけである。
むろん、この詐欺はいつまでも続けられるものではなく、いづれは定期補充の数を操作し徐々に正確な数値へと近づける予定であったが、その必要もなく地球連合軍は餌に食いついたというべきだろう。情報漏洩以外にも様々な手段で攻勢を誘った効果といえる。いや、喰いついたというよりも彼ら自身の反攻作戦計画を後押ししたというのがより正確かもしれない。
もっとも、油断すれば餌を持つ腕ごと噛み砕かれる恐れがあることは承知されている。地球連合軍アフリカ反攻軍が揃えたであろう戦力は決して楽観視してよいものではないのだ。
「しかし、敵を騙すためとはいえ、実際にアフリカ方面軍の補給状態はあまり芳しくない状態に陥っている。これをこのまま放置するのはまずいな。
ヴァシュタール隊長が負けるとは思わんが、補給物資の量により戦術の幅を狭めることになるやもしれんからな。」
「ですが、議長もご存知のようにすぐに動かせる部隊はプラント本土防衛部隊以外にありませんが?」
「確かに、輸送船を調達できたとしても護衛にまわせる戦闘部隊が今しばらく活動できんな・・・」
互いに渋い表情をするパトリックとエザリア。
プラント本土防衛部隊には、ヤキンドゥーエ駐留部隊やMS教導隊を含めザフト宇宙軍の中でも精鋭部隊を多く含んでいる。しかし、何より、血のバレンタインの記憶が生々しく残っている現在、その精鋭部隊はプラント市民の安全を確保するための最終防衛ラインとして軽々しく動かせる戦力ではなかった。
「・・・やむを得ないか。プラント市民をいたずらに不安がらせるわけにもいくまい。
軌道上の制宙権を確保するための部隊を出撃させる時に輸送船団も同道させよう。」
「よろしいのですか?」
「ない袖は触れぬ。今、プラントで行われている作業は、いずれもプラントの今後にとって欠かすことの出来ないものばかりだ。
ヴァシュタール隊長には要らぬ苦労をしてもらうことになるがな。」
しばしの黙考の後、パトリックは決断した。
どちらにせよ、戦場の上空を確保するために戦力を動員しなければならないのだ。まさか、丸裸で輸送船を送るなどというわざわざ物資をどぶに捨てるようなまねをするわけにもいかない以上、多少の補給の遅れは我慢するしかない。なお、前線部隊が素直に我慢できるかどうかはこの場合、考慮に値しない。後方の判断を前線部隊が罵声と共に受け入れることになるのは、いつの時代でも変わらないのだから。
「ヴァシュタール隊長には私から直接、連絡を入れておこう。
戦略環境を整えるのに失敗したのは我ら評議会の過ちである以上、その程度のことはしておかねばな。」
「お願いいたします。
それにしても、これほどの規模の戦闘でイニシアチブを地球連合に取られるのは初めてですね。」
「ああ、そのことも少々気に掛かっているが・・・。」
戦場において主導権の有無は兵力の大小と共に非常に重要な要素を占めている。過去の戦史において、少数の兵で大軍を破った場合のほとんどは、自らの持つイニシアチブをうまく活用したことがその理由となっている。
今次大戦において、これまでの戦争の主要な局面では、ザフトは常に攻撃側であったために戦術的なイニシアチブを常に維持していた。それを今回は、戦闘の初期とはいえ地球連合側に奪われることになる。そのことにエザリアとパトリックは多少の不安が胸中に湧き上がるのを止めることは出来なかった。
それは、いかに自軍の優秀さを知っているものであっても避けられないことであったろう。恐怖を知らぬという至高の安心感が許されるのは、母の腕の中で眠る赤子だけに許された特権であり、既にそこから巣立った以上、それは二度と許されることのない楽園に等しいのだから。
「・・・まあ、戦場については前線指揮官に任せるよりほかあるまい。
我らは我らですべきことを成すのみ。
まずは、実際に補給物資を現地に送り込めるのはいつ頃になるか確認しよう。」
「わかりました。」
真剣な顔でうなずきを交わす二人。
「それと太平洋方面に関しての工作を依頼したカナーバ議員の方はどうなっている?」
アフリカ方面以外にも押さえておくべき重要な点を確認しようとするパトリック。
例え重大事が起こったとはいえ、他の方面でも多数の事象が評議会議長の判断を待っていることに変わりはない。必要に応じて権限委託を行っているとはいえ、あまりの忙しさに自分が複数いたらと空想したりするのはこのような時であろう。
「アイリーンならば、すでに赤道連合との折衝を終えオーブ入りしています。おそらくはオーブ政府との交渉を始めたことでしょう。」
「それで赤道連合の返答は?」
「おおむねこちらの提示した条件を受け入れたとのことです。もっともそのために、更なるMSの供与(具体的にはコピー版ストライクダガー)を受け入れざるを得なかったようですが。」
やれやれというように首を振るエザリア。
「その程度の要求は受け入れてもさほど問題はなかろう。だが、さすがにシーゲルの盟友だけのことはあるな。これで懸念の一部が解消されるのであればカナーバ議員の有能さに感謝したいほどだ。
戦前からナチュラルとの外交交渉を取り仕切っていたのは穏健派だったため、強硬派には地球諸国の政財界との人脈が薄いからな。こういった時は彼らに依頼したほうが話がまとまりやすい。」
「我ら評議員はプラントを発展させるだけの能力を持っていると判断されたからこそ選ばれたのです。彼女とてその評議員の一員である以上、この程度のことは成し遂げてもらわねば困ります。」
エザリアはつい先ほどまで浮かべていた表情を至極当然といった表情に切り替えて言い切る。
そんな彼女に軽い苦笑を浮かべるパトリックであったが、同時にそんな気高い意志を露にするエザリアは美しいなと場違いな感想も内心抱いていた。
その後、緊迫した状況下にありながら、もくもくとデスクワークを片付けるプラント最高評議会議員たちの姿が見られたという。いつの時代においても、お偉いさんのすべきこととは書類相手の格闘ということだろうか・・・・・
あとがき
あれ・・・・・なんか変なフラグが立った?
気のせいだよな、うん。
前回より引き続き、忙しいという漢字は心を亡くすと書く意味をしみじみ実感する日々を送っております。
日付が変わる頃に帰宅する毎日はもういいっちゅうねん。
でも、まだ続くんだろうなあ・・・
>私ゃ過労で死んではそのたびに生き返っとんのかいw
いや、トップの文章や日記を見ている限り、あり得る話かなあ〜と思ったり(笑)
それにしても、最近、自身の身を切るようなトップ言葉が多いなあと感心しているのは内緒です。
さらに、誰がどう見ても天然という人材の管理人に対抗する代理人を呼ぶのに相応しい言葉を思いつかない自分がちょっといや(爆)
さて、種運命ですが・・・
こんなうんちくを語るような話を書いている私としては、ちょっと待ていと多々突っ込みたくなるようなシナリオなんで、もはや何とも(苦笑)
それでもちょこっと挙げるなら・・・
最近の量産型MSは装備もなしで大気圏突入ができるんだなあとか・・・
ジェネシスに再建した艦隊戦力の過半数とプトレマイオス基地を吹っ飛ばされた大西洋連邦がなんでそんなに元気なんだとか・・・
独立を回復してわずかしかたっていないはずのオーブが元気だなあとか・・・
コロニー落としを先にやられちゃったなあとか(核爆)
それでも見続けるんですけどね(苦笑)
この先、いったいどんなシナリオになるやら不安でもあり楽しみでもあるので、次回の投稿でも突っ込みたいと思います(笑)
ではでは、管理人さん、代理人さん、感想を下さった皆様、良いお年を!
代理人の感想
うーん。直接の戦闘より、こう言うあたりの描写を読んでたほうが面白いんだよなぁ、この手の小説w
これは私の嗜好なのか、それともそういうところがこの手の小説の肝というところなのか、うーむ。
>管理人に対抗する代理人
そうですねぇ。例えるならモーツァルトに嫉妬するサリエリの心境ですか?(爆死)