紅の軌跡 第29話

 

 

 

 

 ホテルの透き通ったガラス窓の向こうに、澄みきった青い空を背後に従えながら上昇していくシャトルの姿が見える。

 マスドライバーから打ち出されたアメノミハシラ行きの機体が、銀翼を陽光にきらめかせ蒼空を駆け上がっていく。

 その天を切り裂く翼の下では、別の翼が赤道連合に向けて飛んでいく。それも1機だけではなく、周囲を見渡せば蒼空のあちらこちらに飛行機雲をたなびかせながら多数の機体が飛んでいるのが見える。

 それらの機体には、オーブ政府の通達により国内にいた赤道連合や大洋州連合、そして侵攻してくる相手である東アジア共和国やユーラシア連邦、そして大西洋連邦の国籍を持つものたちが搭乗しているのだろう。

 オーブ国内の空港はいずこも常にない混雑を見せている。通常の運行便だけでは、国外退去を求める人員をさばききれない可能性があると判断した各航空会社が次々とチャーター便を増発しているためだ。

 そんなにぎわっている中をまた1機、シャトルが蒼空へと飛んでいく。

 その様子を背景に室内には静かに音声が流れている。

 「・・・政府は引き続き地球連合に働きかけを続けているとの発表ですが、既に大規模な艦隊がオーブ近海に迫りつつある状態での交渉は極めて困難なものにならざるを得ないと見込まれています。

  そのため、オーブ国防軍は全面的な戦闘を視野に入れた展開を開始しており、国内各所にて様々な混乱が発生しているとの情報が入っています。

  では、現場からの中継です・・・・・・」

 つけっぱなしのテレビから流れているのは、オーブ政府の臨時発表についてコメントするニュース番組のキャスターのコメントだった。

 そして、そんなニュースに合わせるかのように街中では、リニアガンタンクを載せたタンクトランスポーターや対空ミサイル車両、装輪装甲車をはじめとする高機動車両など、さまざまな軍事車両が走り回り、見るからに物騒な気配を漂わせている。

 街路から人の姿が消え失せたわけではないのだが、歩行者たちは皆、足早に歩き去り、つい先日までの南国の楽園と言う雰囲気は欠片も残されていない。

 

 そんな慌しい世界を写し取る巨大な一枚ガラスを背景に、そしてニュース番組から流れるキャスターの声をBGMに、二人の女性がオロファト有数の高級ホテルの一室で向かい合って座っている。

 コーカソイド系とモンゴロイド系の違いはあれど、どちらも怜悧かつシャープな雰囲気を携えた、理知的な美しさを有する女性たちだ。その顔に蕩けるような微笑が浮かべていれば、それだけで多数の男たちを虜にできるであろう。だが、男性諸氏にとっては残念なことに両者に浮かんでいる表情はオーブの国情を反映してか、相当に厳しいものだった。

 「・・・オーブも思い切った決断を下したようですね」

 それまでの沈黙を破るように片方がぽつりというように言う。

 そこには、現在の状況に対してどのような感情を含んでいるかは聞き取れず、実験室で化学の分析の結果を淡々と学生たちに述べる博士のような、ただ事実だけを伝えただけという風に聞こえる。

 その言に応じるように

 「祖国を守るために躊躇などしてはおれぬでしょう。

  なにしろ、相手は強欲極まりない大西洋連邦を主力とする連合軍ですから」

 「形だけ戦って降伏するという手段もあると思いますが?」

 「自分でも信じていないことを、他人に信じさせることなど困難極まりないと思いますが、如何でしょうタエコ?」

 「確かに。仰るとおりですね、アイリーン」

 澄ました顔で言ってくるアイリーン・カナーバに対し、ユーラシア連邦、その中の日本を中心とした地域に基盤を持つツグモ・グループ、その大番頭を努めるタエコ・ヤスダは苦笑を浮かべる。まあ、互いに分かりきったことを言い交わしているのだからそれも無理はないが。

 「もっとも、オーブが戦争に踏み切る算段をつけたおかげで我がグループの輸送ルートは大きな難問を抱え込んだのですから、この程度の愚痴は聞いていただきたいところです」

 「それはこちらも同様ですわ。オーブルートと赤道連合ルート、日本地域へ至るルートの内、片方が使えなくなるのは少々難儀な状態です」

 「とは言っても、状況はもはやどうにもならないのは明白です。

  ニュースでも言っている様に交渉による解決の見込みはほぼゼロと見るべきでしょう」

 「そうですね。可能性はないと判断してもやむを得ないでしょう。

  ならば予定通り、今後の物資のやり取りは残った赤道連合を経由を強化するということでよろしいですね」

 「はい。オーブを経由するルートは、仮に現在のオーブ政府が生き残ったとしても戦後の混乱で当面使うことは難しくなるでしょう。

  となれば、残されたルートを可能な限り強化しておきませんと」

 「今後の交易に支障をきたすことになりますね」

 プラントとプラント理事国は戦争状態にあるはずなのに、平気で交易の話を進める二人。

 もっとも、そのことで彼女らを責める者がいるとしたら、それは経済と言うものの本質を理解していない人間であることを自ら暴露しているようなものだろう。

 人間の歴史の中で、経済こそがありとあらゆる主義主張を超えて人を結びつけるものであることは既に明白となっている。まあもっとも、それを表立って主張するものはほとんどおらず、何かしらの建前をかざすのが一般的なのも事実だが。

 実際のところ戦争中の敵対国の物資のやり取りなぞ珍しくもない。方法も古来より基本部分は全く変わらず、戦争当事国間に中立国を初めとした第三国を挟むという、ただそれだけである。

 むろん、兵器転用が可能な工業製品の輸出入には様々な規制が旧世紀の時代からかけられるようになっているが、所詮はお役所仕事。海千山千の商売人たちがその規制の網の目を潜り抜ける方法を次から次へと生み出し、後手後手に回るのが常識となっているのは知ってのとおりである。

 そんな中で、ツグモ・グループは会長の意向もあって巨大企業グループの正道を歩む良心的な存在であるのだが、明らかに地球連合側に理がない状況では、それも程度問題であり、こうしてリョーコ・ツグモ会長の懐刀と呼ばれるタエコ・ヤスダがわざわざオーブまで出張ってきているのだ。

 「赤道連合向けの工作機械の輸出は順調でしたから、増便の手配もなかなかにやっかいです。

  ここのところは装甲版に用いる鋼材の輸出も伸びていましたし、その上、台湾がザフトに制圧されているおかげで最短航路を取ることもできません。

  しかも、オーブ船籍の貨物船も今後は使えなくなるのですから頭が痛いですわ」

 「赤道連合を理事国側に押しやらないために、通商破壊は専ら北太平洋を中心に行っているはずですけど?」

 「それでも戦場のすぐそばを平気で航行するような度胸の据わった船長と乗組員を有する会社はそうはありませんわ」

 「それは、そうでしょうね」

 彼女たちの話の意味するところ、それはプラント製の最先端の工作機械を用いなくとも、プラント理事国の企業が生産する工作機械で、科学技術の発展が遅れている国の工業力を向上させるには十分であるということだ。

 中枢部となる量子コンピュータなど、どうしても小型高性能である必要がある物品はプラントから調達し、他の部分を国内生産または地上の他国生産品を輸入するという方法は現実的な解として十分に選択肢となり得る。

 プラントは、最先端の科学技術と生産設備を持つ自己完結した存在であり、地球上の先進諸国が生産できるモノでプラントで生産できないものはなく、むしろそれを軽く上回るモノを製造できるのがプラントだと言える。

 ただ、プラントが存在するラグランジュ・ポイントと地球との間には平均して約38万キロの真空と、大気圏突入という厄介な代物が控えている。

 そのため、かさばるものの輸出は、場合によっては他の地球上に存在する国家よりもコストが掛かってしまうケースがあるのだ。ならば、手っ取り早い方法を選択することは理解できる。いや、赤道連合や、今は戦乱に巻き込まれようとしているオーブなどプラント理事国でない国家が、地図上において交戦国の間に存在するという地理的条件を考慮すればむしろ当然というべきかもしれない。

 「大陸の沿岸鉄道を使うのは現実的ではありませんし、今から運輸部門から無数の悲鳴が聞こえてきそうです」

 「やはり、相当な無茶を要求されているのですか?」

 「ええ。もともと生き残りのためにやむを得ず選択した国家の統合ですもの。

  しかも中心となった国が国ですから、たかだか半世紀程度でどうなるようなものではありませんわ」

 「確かに」

 苦笑交じりに同意するアイリーン。

 彼女も、国家の離散集合に関しては過去の歴史を見れば掃いて捨てるほど様々な事例が転がっていることを知っている。日本地域が再度の独立を狙っていたとしても特に不思議はないと判断できる。いや、むしろ東アジア共和国が分裂するのであれば、それを率先して後押しすべき立場に彼女はいると言えるだろう。

 ただ、敵対国があまり露骨に動けば逆効果になるケースも多々あるため、実際に介入するとなればそのさじ加減が難しい。

 「もっともそのおかげで我々としては貴重な貿易相手を手に入れることができたのですから、感謝すべきなのでしょうね」

 「生き残りのために統合、ならばその理由が消滅すれば、再び分離する時が来てもおかしくありません。

  そして、ありとあらゆる場合に備えておくのは商売人として当然のことですわ」

 「商人の鏡と申し上げるべきでしょうか」

 微笑みと共にやんわりとオブラートに包むような言い様で応対するアイリーン。

 物騒な台詞を開陳しているタエコが、今すぐにどうこうという話をしているわけでないことは双方が承知の上。

 なのでそれ以上突っ込んだ話は出ることはなく、いったんその話は終わる。

 もっとも、今後もプラント外交の表看板を背負っているアイリーンに安息の日々は当分訪れそうにないことだけは明らかだったが。

 

 その後も様々な件について二人の交渉は続いていく。

 「連合の反撃に合わせてザフトへの大規模な補給船団が用立てられた影響で、そちらに回す物資を取り揃えるのに以前にもまして時間が掛かることは申し訳なく思っております」

 「しょうがありませんわ。

  正直申しますと、こちらも、ここまで強引に大西洋連邦がことに及ぶなど予想の範囲外でしたので我がグループの対応も少々遅れ気味なのです」

 「それだけ大西洋連邦も追い詰められているということでしょうね。

  月の資源の搬入も通商破壊戦で激減しているでしょうし、備蓄も相当食い潰しているはずですから」

 地球連合の双璧たる大西洋連邦が持つ巨大な工業力も、その原料となる資材が搬入されなければ宝の持ち腐れに過ぎない。

 パナマ陥落後、著しく活発化しているザフト宇宙軍の通商破壊部隊の襲撃によって月−地球間のラインはほとんど遮断されたも同然であり、なおかつ地上においてもパナマ運河が使用できなくなっているとあれば、大西洋連邦首脳陣の焦りも募る一方だろう。

 「ただ、ザラ議長は今回の大西洋連邦の行動をある程度読んでいたようですが」

 「そうなのですか?」

 さらりと髪をかきあげながら言うアイリーンに対して、タエコがやや首をかしげながら問う。

 「まあ、ひょっとしたら議長の子飼いの工作員が地球連合各国首脳部に忍び込んでいるのやもしれませんね」

 というアイリーンが続けた言葉は、彼女にとって冗談としても少々笑えないものであった。

 「少々きついご冗談ですわね」

 そんな風に笑いに紛らわそうとするタエコに対し、アイリーンは真剣な表情をタエコに向けたまま言葉を重ねる。

 「冗談であれば面白いのですが、あいにくそうとは思えないことが多いのです」

 「・・・どうやら、ザラ議長は前任者であるクライン議長にも増して切れるお方のようですわね」

 「そうですね。ええ、得難い議長なのでしょう。

  実際、議長が交代した後の施政および戦争指導は文句のつけようがありませんし、パナマ攻略以後のザフトの戦力シフトも、さらには我々クライン派を初めとする自らの派閥以外の人員の使い方にも問題らしい問題は見当たりません。

  まさしく、見事の一言でしか表しようがありません」

 「なるほど、それほどまでのものですか。

  ですが、プラントとしては戦争という非常時にそれだけの才幹を持つ指導者を得たことは良いことではありませんか?」

 「まあ、確かにそうなのですが」

 タエコの指摘に微笑を浮かべると、アイリーンは卓上のカップを取り口に運ぶ。

 そして、それまでの真剣な表情を崩し苦笑を浮かべながら言う。

 「その優秀極まりない議長のおかげで私もあちこち振り回されっぱなしなのですよ。

  プラントと地球を行ったり来たり、地球上の各国を右から左、上から下へと動き回るのはなかなかに重労働なのです」

 「それはそれは大変ですこと。

  ですが、それだけ貴方に対する議長の期待が大きいということではありませんの?」

 「光栄なのは確かですが、こうもあごで扱き使われると少々恨みたくなるものではありませんか?」

 「それはまあ、そうかもしれませんね」

 しみじみと言うアイリーンに、頷きを返すタエコ。

 双方、組織の代表者としてのギブアンドテイクの関係と、個人的な友人関係を共存させている両者だけに、この程度の愚痴をこぼすのは珍しくない。

 ただ、今回の彼女の愚痴は本当に簡単なものでしかなかったようだ。その前の台詞に幾らかの危惧が含まれていたようだが、アイリーン・カナーバも己の職責をしっかりと認識しているということだろう。

 「そうそう、チャーター便の確保に協力してもらったことには改めて礼を言っておきます」

 アイリーンが忘れないうちにとばかりにタエコに向かって礼の言葉を言う。

 「いえ、こちらも会長とご夫君の将来のためという目的がございますので」

 「たとえ別に目的があろうとも、ヤマト航空の旅客機をチャーターできたおかげで、オーブ在住のコーディネイターたちの避難が順調に進んだことは事実です。

  ですから、感謝の意を表すのは当然です」

 「まったく、義理堅いですね。まあ、貴方らしいと言えば、貴方らしいですが。

  ではいずれ、アイリーンにご協力頂く時が来た際に、利子をつけて返却してもらえば助かります」

 「わかりました。このことは間違いなく覚えておきます。

  機会があれば、可能な限り便宜を図らせてもらいますので楽しみにしておいて下さい」

 「その時はよろしくお願いします」

 そういって、アイリーン・カナーバに対しツグモ・グループの大番頭であるタエコ・ヤスダは頭を下げる。

 むろん、双方とも互いの胸の内は承知の上である。

 あるいは、世の中には友情と組織としての利益を共存させることに対して批判するものもいるかもしれない。だが動機がどうあれ、結果として得られるもの、残るものに違いはない。だからこそ、このようなやり取りがなされるのだと考えるべきなのだろう。

 話に一区切りがついた二人はこれからのことを話し合う。

 「それで、タエコはこの後どうなされる予定なのです?」

 「赤道連合に向かいます。

  今後のことを考えると赤道連合支社には梃入れが不可欠となりますから、最低限、下見はしておく必要がありますので」

 「なるほど、それもそうですね」

 「そういうアイリーンの脱出の手はずはどのようになっているのです?

  もしも貴方のような大物がこのような場所にいるとブルーコスモスに知られたら、ダース単位でテロリスト予備軍が襲ってくるでしょう?」

 タエコの指摘は事実であろう。

 アイリーンはプラント最高評議会議員を務めるほどの大物だ。そんな人物が地上にいることをブルーコスモスが知ったならば、何としてもその命を奪うため形振りかまないであろうことは容易に予想できる。タエコの指摘するダース単位のテロリストという予想は、むしろ可愛いものといえるかもしれないほどだ。

 だが、アイリーンはそ知らぬ顔でこう返す。

 「あら、そういう貴方もこうしていることがばれたら、危険性という点ではそれほど変わらなくなのではないかしら?」

 「確かに仰るとおりかもしれません。

  ただ、あんな視野狭窄を起こしている連中に易々と気付かれるほどうかつではないつもりですけどね」

 こちらもふてぶてしく返すが、確かにタエコもこんなプラントの大物と取引していることに気づかれたら、ブルーコスモスの襲撃対象になることは必然だろう。タエコが地球連合内において大きな影響力を持つ巨大経済グループの重要人物であるという事実も、彼らの行動に変化はないはずだ。

 そう、狂信者たちに理屈は通用しない。

 もしも通用するのならプラントを破壊するような行動をとるはずがない。昨今の地球圏の経済・鉱工業がどれほどプラントに依存していたかを考えもせず、ただコーディネイターの排斥だけを追求するその姿勢に、いったいどんな説得力を見ろというのであろうか?

 だが、そんなタエコにたしなめるような視線を向けてくるアイリーンに

 「ただし、向こうの財閥を甘く見るつもりもありませんが」

 一言、静かに付け加える。

 その言い切る姿勢に躊躇いはない。

 生き残るために躊躇するつもりはなく、油断など欠片もするつもりはない。

 アイリーンに返された鋭い視線にはそのような意味を込めてられているかのようだ。

 その視線を受けながらふっと、アイリーンも不敵な笑みを浮かべる。

 お互い、会合を持つ度に心の片隅ではもう次は会うことができない可能性があることは承知している。

 それでも、自らの目指す目的のため引くつもりは一切ないこともよく承知していた。そのことを改めて確認した思いなのだろう。

 だから、アイリーンは自分の脱出方法に話を戻す。

 「私は、軍がオーブ周辺海域の事前工作に出していたボズゴロフ級の1隻をまわしてくれました。

  ぎりぎりまでオーブ本土で粘ってから、それに便乗して脱出することになるでしょう。

  いかにごり押しの連合軍といえど、オーブ本島を完全に包囲することは不可能でしょうしね」

 それとなく次の行き先が提示される。といってもそれほど難しい問題ではない。

 ボズゴロフ級に乗船するということはカーペンタリア基地にそのまま直行すると考えてよい。ならば、かの地で大洋州連合の上層部と何らかの交渉を持つであろうことが洞察できる。

 「なるほど。まあ釈迦に説法かもしれませんが引き際だけは誤らないようにして下さい。

  つまらないことで友人を失うようなことは避けたいですから」

 友人としての真摯な心根がおよそ6割、巨大経済グループの責任者としての下心が約4割という微妙な心情のブレンドで忠告するタエコ。

 先のやり取りではないが、やはり危険度ではアイリーンの方が上なのは事実。ゆえに、その手腕に信頼を置いていても心配することは止まらない。そこにたとえ下心がミックスされていたとしてもだ。

 「ありがとう。得がたい友人の真摯な忠告と受け止めておきます」

 そのことを理解した上で、タエコの言葉を真正面から受け止めるアイリーン。

 二人の間にほんのりと優しい時間が流れる。

 「では、そろそろ行くとしましょうか」

 「そうですね。お互いに時間に追われる身ですし」

 お互い忙しい身。得難い時間も長くは続かない。

 「では、後ほどの連絡は赤道連合の例の拠点を経由して行います。

  また、急ぎの用件については以前に伺った場所でということでよろしいですか?」

 「ええ。それでお願いします。

  そうそう。可能であれば、その際にコーンズ財閥のクレオパトラ会長とも繋ぎが取れれば、双方にとって時間の節約にもなりますから検討して頂けませんか?」

 「そうですね。リョウコ会長の方から先方に話を通して頂くよう手配しましょう。

  ただ、ご存知のようにブルーコスモスの台頭でコーンズもそれなりに打撃を受けています。

  ですから、そうそう時間を取ることはできないかもしれません」

 「つくづく彼らは度し難いですね。

  まあ、できればということでお願いします」

 「わかりました。では、次にお会いするまでご壮健で」

 「そちらこそ」

 立ち上がり握手とともにそう挨拶を交わす。

 それを見て会談の終わりを悟ったのか、控えの間に退いていた護衛の者たちがそれぞれの主の下へ歩み寄り、護衛に適した位置へと控える。

 そして最後に軽く一礼すると二人とも随行を率いてあっさりとその部屋から去っていった。

 

 

 

 二人が去り、静けさのみ漂う部屋の窓の向こうに、新たなシャトルが飛び立っていくのが見える。

 蒼穹を天へのきざはしを駆け抜けるかのようにまっしぐらに上っていくその姿は、誰もが何かしらの感動を覚えるだろう。

 そして、そのシャトルの発進した場所に眼を凝らせば、サファイアブルーの海面をいく筋もの波頭が押し寄せてくる中を、長大なレールが一直線に沖へと向かって走っている。そびえ立つ巨大な鉄骨のジャングルは、順々に押し寄せる波をケーキを切り分けるかのように裂いているようだ。

 地球上に存在する数少ないマスドライバーのひとつであり、オーブ連合首長国が有する宇宙への窓口でもあるカグヤ島の宇宙港ターミナルは、いつもの閑散とした雰囲気はどこに行ったとばかりに、多数の人間でごった返していた。

 もっとも、広大無辺なターミナルゆえ増加した人間の行き交いをまかなうスペースは十分にある。

 ただ、宇宙開発が軌道に乗ってからは、人間よりもアメノミハシラや既に崩壊したヘリオポリス向けの物資のやり取りが中心となっていただけに、普段からターミナルに勤めている従業員たちの目からすれば、非常にたくさんの人間が集まっているように見えるだろうし、尚且つ昼夜を問わずシャトルが次々と発着し、集まった人々を飲み込んでいっているにもかかわらず、一向に減った様子は見えないこともそれに拍車をかけているだろう。

 

 サハクの人狩りによって集められた者たち。

 親族にコーディネイターがおり、自主的にアメノミハシラへの避難を選んだ者たち。

 多数の人員を受け入れるアメノミハシラを運営するための要員たち。

 そして、マスドライバー施設を地球連合の特殊部隊から守るために配備された完全装備の兵士たち。

 

 ターミナルに存在している大半の人間がそのいずれかに相当する。もっとも、最後の種類の人間は残りの種類の人間とは完全に異なるイレギュラーな存在であり、今が平時でないことをまざまざと感じさせるものであるが。

 それはともかく、今まさにロビーに入ってきた一組の家族も、そのうちのアメノミハシラへの避難を選択した者たちだった。

 「お母さん。私たちあれに乗るの?」

 「ええ、そうよ。あのシャトルが私たちを空の向こうに連れて行ってくれるの」

 「そうなんだ〜♪」

 両親とその子供たちが歩みを進めつつ、ロビーの壁の一面を占有しているガラス越しに、眩しい陽光の中を離着陸を繰り返すシャトルを見ながら話している。

 母親と会話をしている女の子は10を少し超えたかといったあたり、そしてそれに付き従う男の子は10代半ばの歳に見受けられる。

 「マユとシンはシャトルに乗るのは初めてだったな」

 「うん!だからとっても楽しみなんだ!」

 父であるタクマ・アスカの言葉に、マユ・アスカが振り向きながら本当に嬉しそうに答える。

 その回答にタクマもそして兄であるシン・アスカも、同じように笑みを浮かべる。

 そんな男たちが浮かべた表情に、ん?と不思議そうな表情を浮かべるも、マユの興味は直ぐに周囲へと戻ったのか、再び物珍しげにあちこちに視線をやりながら歩む娘の様子に

 「マユ。ちゃんと前を向いて歩かないと転びますよ」

 「大丈夫だよ、お母さん」

 母であるミサキ・アスカがやんわりと注意する。が、「はーい」と返事だけ元気よく返し、実際はそんな言葉などどこ吹く風とばかりに、好奇心を満たすことに夢中になっているマユ。

 その様子には、今度は両親とシンの顔にも苦笑が浮かぶ。

 アスカ一家は余裕を持って家を出たので、彼らが乗るシャトルの出発時刻までもうしばらく時間がある。そのため、タクマはミサキ共々マユの好奇心に付き合いながらのんびりと歩いていた。すると

 「あら?もしかして、アスカさん?」

 と背後から声が掛けられた。

 誰だ?

 そう思いながらくるりと振り返ると、一組の親子連れが彼の眼に入る。二十代後半と思しき男女と五歳ほどの男の子だ。

 そのうちの女性は彼の見知った顔、社のラインからすれば直接の上司ではないが、俯瞰的には間違いなく彼の上司にあたる人間だった。だから

 「これは、シモンズ主任。おはようございます」

 と丁寧に挨拶の言葉を送る。

 彼女からいきなり声を掛けられたことで少々驚いたが、タクマにとってこの場にエリカ・シモンズがいること事態は何ら驚くべきことではない。

 それゆえ

 「シモンズ主任のアメノミハシラ行きは今日だったんですか」

 と既に決まりきった事柄を尋ねるようにそう声を掛ける。

 その様子に少し困ったような表情を浮かべながら

 「あら、やっぱり噂になっているかしら?」

 「ええ。あのロンド・ミナ・サハク様が直々に人狩、おっと、ヘッドハンティングに乗り出したことは社内では、知らない人間の方が少ないと思いますよ」

 「あらまあ・・・」

 頬に手をやりながらエリカは「ふうっ」と大きくため息をつく。

 まあ、若くしてオーブにおけるMS開発の第一人者の地位にいる彼女には、それなりの軋轢もあるだろう。そんなところへ火に油を注ぐがごとく、上層部直々の引き抜き行為をされては厄介どころの話ではないだろうなと内心で思いながら彼女を見やる。

 彼の視線の先でもうひとつ大きなため息をついたエリカは、この場では開き直ることにしたのかにっこりとしながら彼の家族を紹介してほしいと頼んできた。

 ひょっとするとアメノミハシラでも近所になるかもしれないなと思いつつ、先のほうに行っていたマユを呼び戻すと、シモンズ一家に全員を紹介する。

 「こっちが家内のミサキです」

 「ミサキ・アスカです。主人がお世話になっております」

 ミサキは丁寧に頭を下げる。これまでに何度か社内の才媛として自宅で話していたのを覚えていたのだろうか。シモンズ夫妻も頭を下げるのを見て、今度は子供たちを紹介する。

 「長男のシン、そして長女のマユです」

 「こんにちわ、マユ・アスカです」

 「初めまして、シン・アスカです」

 頭を下げながらも元気よく挨拶をするマユと母と同様に丁寧な口調で挨拶するシン。

 それに対し、シモンズ夫妻もそれぞれ自己紹介を返す。そしてエリカは自らの傍らにへばりついてもじもじしている息子の背をぽんと叩く。

 「リョウタ。ご挨拶なさい」

 「・・・リョウタ・シモンズです」

 少し小さな声で、ぺこりと頭を下げる様子に、何か彼女の心の琴線に触れたものがあったのか、マユが目を輝かせながら前に出てリョウタの紅葉のような手をきゅっと握る。

 「うん。私はマユ・アスカ。よろしくね」

 「よろしく」

 ちょっとおどおどしながらも、はにかんで挨拶をするリョウタはどうやらマユのつぼを突いたようだ。

 いつもはお兄ちゃんであるシンに甘えることの多いマユだが、自分より小さい子の相手をするというシチュエーションがどうやら思いのほか気に入ったらしい。

 そのためか、やや口早にこれからのことをリョウタに尋ねる。

 「ねえ、リョウタくんもシャトルに乗るの?」

 「うん。そうだよ、お姉ちゃん」

 (お姉ちゃん・・・)

 じーんと妙に心に響く感動を内心で味わいながら、更に質問を重ねるマユ。

 「それで、何時のシャトルなの?」

 「えーと、お母さん。僕たち何時のシャトルに乗るの」

 横に立つ母親の方を見上げながら確認するリョウタ。

 そんな二人の様子に笑みを浮かべながらエリカが応じる。

 「11時出発のシャトルよ」

 「わあ。じゃあ私たちと一緒だね」

 満面の笑みを浮かべてマユが喜びの声を上げる。

 それにつられたのかリョウタの顔にも朗らかな笑みが浮かんでくる。

 「ねえねえ、リョウタくん。一緒にいこうよ」

 リョウタの左手をマユが元気よく掴み、引っ張っていこうとする。

 引きずられつつ、どうしようと少し困ったようにエリカを見るリョウタだったが

 「ぶつからない様に周りに気をつけていくのよ」

 という母の言葉と柔らかい笑顔に見送られて、マユと共に駆け出していく。

 直ぐに興味あるものを見つけたのか、あっちからこっちへ、こっちからあっちへと二人ではしゃぎながら走り回る。子供というものは日常の何気ないものにも、大人は考え付かない何らかの楽しみを見出すものであるということを改めて感じさせる風景だ。

 そんな子供たちの後を大人たちは話をしつつ、ゆっくりとついていく。

 「アメノミハシラでの主任の役目は、やはり宇宙用MSの改良ですか」

 「ええ。ミナ様も私におっしゃっていたけれど、ザフトが新たに量産を始めたゲイツというMSは相当なものらしいの」

 「いくら主任でも一人で全ての作業をされるわけではないでしょう?

  開発部からは他にもアメノミハシラへ異動する人はいないのですか」

 「そちらは今現在アメノミハシラにいるメンバーに協力してもらう予定になっているの。

  それに改修設計だけなら独力で仕上げる自信もあるしね」

 「さすがですね」

 「あら。アスカさんの仕事振りは私も何度か聞いていますわ。

  よろしければ、向こうでの作業を手伝って欲しいくらいです」

 「恐縮です」

 会話を交わしているのは基本的に顔見知りであるエリカとタクマであったが、ところどころで互いの伴侶に声を掛けつつそれなりに話は弾んでいる。

 大人たちにくっついているシンは、その話を流れ聞きつつマユとリョウタが迷子になったりしないようにずっと視線でその後を追い続けている。シスコンの気があるとはいえ、非常にできたお兄ちゃんである。

 だが、あまりにもあちこち動き回る年少二人組に危機感を触発されたのか、やがてシンも大人たちのそばを離れ、マユとリョウタの後を追いかけるようになっていく。そして、兄が来たことに安心したのかマユの弾けっぷりも上昇し、リョウタと共にきゃっきゃっと歓声を上げながら動き回っている。

 そんな大人3人と子供3人のそれぞれのグループが動くスピードにはかなりの違いはあったが、初めて訪れる宇宙港の物珍しさに盛大に蛇行を繰り返している子供たちの進むスピードは直線移動距離に換算してみれば、それほどでもないのでちょうどいい具合といえるだろう。

 やがて、そうこうしているうちにそれなりに時間が経過し、

 「まもなく11:00発アメノミハシラ行きシャトルへの搭乗を開始します。

  ご搭乗されるお客様は、発着場入り口までお進み下さい」

 とアナウンスが流れ、それに聞き入る形で上のほうを見た大人たちが時計を一瞥すると「では行きましょう」と声を掛けて方向をやや変えて動き出す。

 そんな大人たちの先を子供たち、具体的には小さい順に二人が走りながら、もう一人の年長の子供は彼らを追いかけて進んでいく。

 「マユ、シン。そろそろ時間ですよ。戻っていらっしゃい」

 「はーい」

 聞き分けよく、そう返事が返ると共にあちこち飛び回っていたマユとリョウタが二人仲良くこちらに向かって駆けてくる。その後ろをシンもすたすたとついて来る。その表情にはさすがにほっとしたものが浮かんでいたが。

 

 

 マユとリョウタは、それぞれ母親と手をつなぎ、搭乗口へと歩んでいく。

 二人とも物珍しげに周囲を見渡すことを止めることはなかったが、その後は特に何事も起こることなく、奥に向かって4機ほどのシャトルが並んでいる駐機場の通路をたどり、自分たちが乗るシャトルの搭乗口へとたどり着く。

 搭乗チケットの確認も滞りなく終了し、そのまま彼らはボーディングブリッジを経てシャトル内部に入る。

 その途端、マユがシンとリョウタの手をつかみぐいぐいと前に進み始めた。

 「お兄ちゃん、リョウタ君。早く早く!」

 「う、うん」

 「待てよ。慌てなくても大丈夫だよ」

 「いいから早く!」

 明るい笑顔を見せながら自分達の席へと向かう妹の姿に、苦笑を浮かべながらも従う兄。リョウタも同様にマユに引っ張られながら進んでいく。彼の顔にも楽しそうな表情が浮かんでいる。

 「マユ、シャトルの中で走るのは止めなさい。

  誰かにぶつかったりしたら大変だろう」

 「はーい」

 ぱたぱたと軽い足音を立てながら走り去る兄妹に、タクマが歩みを止めずに後ろから注意の声を上げる。

 返事と共に突進スピードを落とすマユに対して、穏やかな笑みを浮かべているミサキのほうは特に咎める様子もない。

 どうやら、マユがこのように活発に動き回るのはいつものことのようだ。それゆえ、両親もきちんと注意はするものの特に心配するような様子を見せないのだろう。

 「えっと、マユの席は・・・」

 きょろきょろと周りを見回しながら歩いていく少女。

 すでに掴んでいた手は離しているが、シンはしょうがないなあといった雰囲気を漂わせながら、リョウタはマユ同様に物珍しげに周囲を見ながら、少女の直ぐ後についていく。

 「あった!ここ、ここだよ、お兄ちゃん」

 「わかった、わかったよ、マユ」

 チケットと同じナンバーの席を見つけたマユ・アスカが、兄であるシン・アスカに飛び切りの笑顔を見せながら振り返る。

 そんな無邪気な妹の様子にこちらは苦笑を浮かべながら応じるシン。

 そして、クルリと振り返ると両親に向かって呼びかける。

 「父さん、母さん。席はここみたい」

 「わかった」

 両親は特に急ぐ様子もなく歩いてくる。

 再び、妹のほうを向いたシンの視界に

 「私の席、通路側だ・・・」

 自分のチケットと席のナンバーを見比べたマユが、しょぼんと落ち込んだ様子で呟く様が映った。

 ちょっとしたことで一喜一憂する妹にシンは手を伸ばし頭を撫でる。

 そしてそのまま、手に持っていた母から渡されたチケットを確認する。

 家族で4枚のチケットを適当に渡されただけであったが、シンのチケットは窓際の席だった。

 「お兄ちゃん、いいなあ」

 兄のチケットを確認したマユが羨ましそうに言う。

 10歳になったばかりの少女にとっては、初めての宇宙旅行で何としても窓際の席をゲットしたかったということなのだろう。

 そんな妹の様子に笑みを浮かべながら手に持ったチケットを差し出し、彼女が喜ぶであろうことを言う。

 「代わってやろうか、マユ?」

 「えっ!いいの?お兄ちゃん?」

 「ああ、いいよ。楽しみにしてたんだろう」

 「わあ、ありがとう」

 満面の笑顔を浮かべつつ、大好きな兄に抱きつきながらお礼の言葉を言うマユ。ひょっとしたら妹のほうにもブラコンの気があるのかもしれない。

 突然抱きつかれたシンのほうはわずかに顔を赤くしながら妹を抱きとめている。

 「あらあら、甘えん坊さんね、マユは」

 「マユ、甘えん坊じゃないもん」

 ちょうどその時、席までたどり着いたミサキに笑われたマユが、シンに抱きついたまま頬を膨らませながら文句を言う。

 「そんな風にお兄ちゃんに抱きついていて、甘えん坊じゃないのかい?」

 タクマも、笑いながら尋ねてくる。

 「もう、お父さんまで。知らない」

 頬を膨らませたまま、シンを引っ張って窓際の席までずんずんと進んでいく。そして、そのままポンと飛び乗るように一番窓際の席に座る。

 必然的に引っ張られていたシンはもつれ込むようにその隣の席へと座ることになる。

 だが、直ぐに発進するわけでないことに気づいたマユは、きょろきょろと辺りを見回し、

 「ねえ。ちょっと見てきてもいい?」

 と、今度は機体内の探検に出かけようとする。

 さすがに、間もなく発進することが分かっている両親は渋ったものの、発進するまでに帰ってくると約束したマユに押し切られ、結果、マユはパタパタと乗り込んでくる人間を避けながら前の方に歩み去っていく。

 それを座ったまま見送ったシンは、しばし沈黙したのち、父親の方を向き声を掛けた。

 「ねえ、父さん」

 「うん?何だシン?」

 何やら沈んだような声音に「おや?」という表情を浮かべながらタクマが応じる。

 「・・・もうすぐ大西洋連邦が攻めてくるんだよね?

  オーブは、大丈夫かな?」

 「そうだな・・・」

 なるほどそういうことか。そう思いながらタクマは考える。

 彼の息子シン・アスカは聡明な子供である。

 少々妹であるマユを大事にしすぎる気があるかも知れないが、親の贔屓目を抜かしてみても、どこへ出してもはばかることのない自慢の息子だとタクマは自信を持って断言できる。

 そんな息子が放った深いものを含んだ問い掛けに、何とか安心できるような言葉を返したかった。

 だが、考えれば考えるほど何も言う事ができない。

 オーブ軍が迎撃準備に全力を挙げてきたことはこれまでに視聴した様々なニュースから知っているし、モルゲンレーテの社員としてこれまでにオノゴロ島から送り出された戦力の一端を直接、垣間見てもきた。

 心情としては、「大丈夫だ。きっと軍が守ってくれるさ」と断言したい。

 けれども、相手の主力は地球連合の双璧の片翼たる大西洋連邦である。その強大さは押して知るべし。一年以上にわたってザフトと激闘を繰り広げてきていながら、オーブに押し寄せるその膨大な戦力を鑑みてもその底力は空恐ろしいものがある。

 だからタクマは、自信を持って「心配ない」と請け負うことがどうしてもできない。

 それでも息子には応えたい。

 そんなふうに夫が内心唸っているのを眺めていたミサキは、どうにも話が進みそうにないと見て取るとひとつ苦笑を浮かべ、それから静かに声を掛けた。

 「ねえ、シン」

 「なに、母さん?」

 それまで父タクマに向けていた視線を?というように母に向けるシン。

 その視線を真っ向から受け止めて彼女は告げる。

 「シン、信じましょう。

  私たちは無事オーブに帰ってこれると」

 「母さん?」

 未だに息子の問い掛けを真剣に考え込んでいる夫をよそに、母は息子へと話し続ける。

 「オーブを襲おうとしている災難に、オーブに住む誰もが今、自分にできることを精一杯がんばっているわ。

  それは貴方も知っているでしょう?」

 「うん。知ってる」

 「それでも、先のことは誰にもわからない。

  きっと、それはウズミ様やミナ様、カガリ様にもわからないはずよ」

 「・・・・・・」

 静かに、穏やかに語る母の言葉をじっと聴いているシン。

 「もちろん私にもわからないわ。

  だって、努力が必ず報われるなら世界は今このようになってはいないもの」

 「・・・・・・」

 「それでも、希望を信じて皆は頑張っている。

  なら、私たちにできることは彼らを信じること。そして、決して諦めないこと」

 「信じる・・・諦めない・・・」

 「そう。私たちは必ずオーブに帰ってくる。

  そう自身に誓うことだけなら私にも、そして貴方にもできるでしょう?」

 「自身に誓う・・・」

 「誓いを守って諦めなければ、いつかオーブに帰ってくることができる。

  今はそれだけで十分よ。だって貴方はまだまだ子供なのだから」

 母の言葉がじんわりと浸透してくるのを感じるシン。

 あるいは、聡い少年であったシンは無意識のうちに安全圏に避難しようとしている自分に、ネガティブな意識を持ちつつあったのかもしれない。

 友人たちを残して自分だけが逃げていいのだろうか?と。

 その意識が完全に消えることはない。自分だけがこの地を去ろうとしていることはまぎれもない事実なのだから。

 だがそれでも必ずオーブに、故郷に帰る。

 そう強く決意することで、これまでにない想いが改めて生まれてくるような気がする。

 「そうだね。うん、そうだ。

  わかったよ、母さん。僕はきっとオーブに帰ってくる」

 「そうね」

 力強くそう頷くシンを、母は優しい表情で見守っている。

 ・・・その隣では、途中から母子の会話に気づき口を挟むことができなかった父が、しょぼんとした表情を浮かべている。何やら「私はいらない父親なのか」といった愚痴が聞こえてきそうだが、むろん幻聴だろう。

 

 そこへ、機体内の探検から戻ってきたマユが家族の間に漂っていた雰囲気をその元気な声音で破る。

 「ただいまー!

  アレ?ねえねえ、どうかしたの?」

 「いや。どうもしないよ」

 「えー、お兄ちゃんだけお父さんとお母さんと仲良くお話してずるいよ」

 「ずるいって・・・あのなあ・・・

  そもそも、シャトル探検に出たのはマユだろう?」

 「それでも、ずるいものはずるいの」

 ぷうと頬を膨らませるマユと、思わず片手で顔を覆う息子の様子に両親も微苦笑を浮かべる。そんな彼らからは間近に迫った戦乱に悩んだ様子はうかがえない。あるいは、マユの言動はアスカ一家の清涼剤の役目を担っている、と言えるのかもしれない。

 そんなアスカ一家の様子を眺めながらエリカも苦笑を浮かべている。

 だが、シンはともかく、リョウタやマユといった幼い子供たちにとっては今の事態も日常の延長でしかないのだろう。実際、平和に暮らしてきた幼い子供たちに現在の世界情勢を理解しろと言っても、それは土台無理と言うものだ。

 だがそれは、決して悪いことではない。

 そのような日常を守ること。それこそが自分がMSを開発した目的のひとつ。そしてそのMSを用いる軍人たちの役目であり国防軍の存在意義なのだから。

 エリカは頭の片隅でそう思う。

 そしてエリカは、軍が己が役目を忠実に果たそうとしているのを知っている。

 今回の脱出劇が比較的スムーズに進んでいるのも、事前に軍が運用可能なシャトルを増やしていたからである。

 また、軍に所属するコーディネイターの家族を地球連合の侵攻がほぼ確実となった段階で事前にアメノミハシラに疎開させていたことも混雑の緩和に一役買っている。他国の旅客機をチャーターし、効率的に赤道連合へ送り出していることにも軍はタッチしている。

 そのような地道な努力の結果、数十万人規模の大避難を限られた時間で成し遂げる。それだけでも軍の役目のひとつは果たされたと言ってもいいのではないだろうか。

 むろん軍が行った活動の対象は、国外に避難する者たちだけではない。

 早期にシェルターへの生活物資の搬入を初めとする稼動準備を行い、そして今現在、シェルターへ避難する市民たちの誘導、戦術・戦略上の要衝となりうる地域からの集団疎開など、一般市民の保護にも全力を挙げている。

 そう、オーブ軍は平時から戦時へと移ろいゆく中での存在意義を、今、十全に発揮している。

 願わくば、戦闘が開始されてからもその意義を果たして欲しいものだ。

 

 そんなことをつらつらとエリカが考えているうちに思ったよりも時間が経過していたらしい。

 シャトルの内部には次々と人が乗り込んで、ほぼ満員の状態になっていた。がやがやと言葉にならない音が周囲に満ちている。

 それを鋭く切り裂くかのようにアナウンスが流れる。

 「当シャトルはまもなく出発します。

  座席にご着席の上、係員の指示に従ってシートベルトをお締め下さい」

 放送と共に制服を身に纏った係員たちが、順番に一人一人シートベルトの着用状況を確認していく。てきぱきと必要最小限の動きで作業を進めるその様子はまさにプロフェッショナルと言えた。

 やがて確認が終わり、係員たちが所定の場所に引き上げると、再びアナウンスが流れた。

 「当シャトルはこれより発進準備に入ります。ご搭乗の皆様、安全のため今一度シートベルトをご確認下さい」

 アナウンスと共に低い機械音がかすかに聞こえてくる。ボーディングブリッジを切り離したのだ。

 そのまま、シャトルはかすかな振動と共に発射位置へと移動していく。窓の向こうの昇降場が徐々に遠ざかっていく。

 やがて、再びかすかな機械音と共に振動が止まる。電磁レールに接続されたのだ。

 そしてすべての準備は整う。

 「長らくお待たせ致しました。当シャトルはこれより発進致します」

 そうアナウンスが流れた次の瞬間、かすかに身体が揺れ、その後にゆっくりと全体を押されるような感覚が襲ってくる。シャトルが電磁レール上で加速を開始したのだ。

 もっとも、加速はそれほど強く感じるほどではない。幼い子供たちが平気な顔をしてシャトルに乗っているように、加速の割合に対してかかるGは低減されている。本編においても、ウズミに別れを告げられたカガリが、ハッチのところでずっと宇宙港を見続けていたことからもそれは理解してもらえるだろう。

 加速によるかすかな振動とGが続く中、

 「僕は必ずオーブに帰ってくる」

 そっと両親にも聞こえないくらいに、だがひどく力の篭った声で呟いたシン・アスカはぎゅっと強く拳を握る。

 それは彼自身の誓い。決して破られることのない誓いだった。

 これまでに出発していった便と同様に、アスカ一家とシモンズ一家を乗せたシャトルは、南国の陽光の下、主翼を煌めかせながら天空へと駆け上っていった。

 

 

 

 

 

 同時刻、オノゴロ島の地下深く、何重もの装甲板に守られた司令部は静かさとは無縁の喧騒に包まれていた。

 一方の壁面を覆い尽くす巨大なスクリーンにオーブ全土の模式図が表示され、現在展開中のオーブ軍の様子が全てマーキングされつつある。

 ひっきりなしに入る連絡にオペレーター達は、既に指示済で自分達で判断できるものはその場で対応し、上の指示を仰ぐため別のところに回す必要のあるものは即座に転送を行っている。

 本土防衛戦。これあるを予想して、事前に多くの計画が練られ様々な準備と訓練が催されてきたものの、実際に現実になってみると、やはりマーフィーの法則はこの時代でも健在らしく、予想外の事象があっちでぽろぽろ、こっちでぽろぽろと雨後のたけのこのように発生し、悪化した状況の連絡やそれに伴う変更指示を求める声、それに応える上官の命令が飛び交っている。

 軍隊に取って、戦争に備えることと実際にそれを行うことは永遠に別物ということなのかもしれない。

 そして、もちろん忙しいのはオペレーターたちなどの下っ端だけではない。

 士官は士官の、佐官は佐官の、そして将官は将官の役割に応じて五里霧中の情勢を分析し、十者十様の会合を持ち、多種多様な命令を下している。

 今現在、オーブ軍人の誰もが暇と言う言葉とは世界で最も遠く離れた世界を現出させている。

 そんな緊迫した情勢の中、司令官のひとりとして国家の方針を定める会議の後、司令部に直行したカガリ・ユラ・アスハを初めとするものたちも同様に戦闘準備に追われていた。

 現在はブリーフィングルーム内のオーブ本島と周辺諸島の簡易図が写し出されたスクリーンを前に、近代戦において最重要となる航空戦力についての確認が行われている。

 もっとも、政府の方針は既に示され、軍としての戦略も既に練られていた計画に沿って進んでいる。その大きな流れの中にアドリブで新しい流れを追加する必要は現時点では一切ない。

 ゆえに、この場で行われているのは、陸海空三軍の状況認識の刷り合わせと計画に対して実際の状況がどこまで進んでいるかの最終確認であった。

 カガリが傍らの参謀に尋ねる。

 「航空戦力退避用の非常用滑走路は、先日の報告の後に変化はないか?」

 「はい。その後の関係各所の努力により、さらに二島に臨時滑走路の構築と補給パッケージの展開を行いました」

 「むっ?どの辺りだ?地図に出してくれ」

 「こちらになります」

 ヤラファス島を中心とした拡大マップが投影され、新たに設けられた拠点が鮮やかな光を放っている。

 「そうか。各員の努力には頭の下がる思いだ。

  関係各所には私の名で感謝の連絡を入れておいてくれ」

 「かしこまりました」

 オーブは武装中立を国是としてきた関係上、国土の様々な部分に将来発生しうる戦争に備えた施設を相当数作ってきた。

 治において乱を忘れず。

 真に残念ながら今のオーブ国民の多くはその志を忘れ、戦乱の中の安寧に溺れてしまっている。だが、幸いなことに過去の非常時に備えてきた蓄積は十分利用可能な状態にあった。その構築と維持整備に予算を割いてきた歴代の首長たちは、旧世紀のスイスやスウェーデンなどをはじめとする過去の武装中立国の事例に習ったというわけであろう。

 他人の経験を自らのものとし、これを活用する。

 それこそが優れた政治家が行う、治世の真髄といえる。

 過去、もっとも多くの代表首長を輩出してきたアスハ家は、その家風に優れた政治家を生む出す土壌を有しているのかもしれない。また、オーブ軍人が、アスハ家に深い信頼を寄せ、敬愛を捧げるのも、そうした長い長い積み重ねがあってのことと言えるかもしれない。

 そして、そんな過去の蓄積のひとつが、オーブ全土に散らばる非常用滑走路であった。

 ちなみに、非常用滑走路は正式な基地が持つそれに匹敵する長さを持つものは極少なく、大半が半分から数分の一と著しく短いものとなっている。しかしながら、旧世紀の戦闘機と比較してコズミック・イラの戦闘機はいずれも短距離離陸能力に優れているため何ら問題はない。仮に大型の重戦闘機がフル装備で通常離陸を行う場合でも最大で400m〜500mの直線距離があれば離着陸が可能だ。さらに着陸を考慮せず離陸だけなら短いものであれば100〜200mで運用することができる。

 そしてオーブ本島と離島を結ぶ海上道路は、採算上の問題から地形上の特別な理由がなければ直線になりやすいため、ある程度の強度を上げることや耐熱処理などのコスト上昇を勘案すれば、かなりの距離をあらかじめ非常用滑走路としての区間として設置しておくことができる。

 ただ、一時的に緊急避難として着陸、その後離陸するだけならともかく、戦闘行動を継続するには燃料タンク、弾薬庫、交換部品倉庫、駐機場、整備工場など一定の設備が必要となる。

 さすがにそれら全ての設備を非常時に備えて用意するなど、それこそ無尽蔵の予算がなければ不可能なため、固定式の設備はあまり用意されていない。代わりに機動的に運用でき、場合によっては分解整備すら可能な、大型重トレーラーに必要な物資と設備一式を搭載した航空機補給パッケージを多数用意することで対応するスタンスを取ってきた。

 ただ、一ヶ月近い時間をかけて稼動状態に持っていった非常用滑走路の数は相当な数になっており、全ての箇所に十全な補給/整備体制を整えられたわけではない。いやむしろ、弾薬と燃料の補給しか行えない最低限の機能しか持たない滑走路のほうが多いだろう。

 それでも、航空機は必ず地上に戻らなければならないのだから、豊富に着陸の選択肢があることは継戦能力という観点から見れば非常に重要な要素となる。

 また、非常用滑走路も何度も繰り返し使用すれば、敵に探知され、優先攻撃目標と化すことは眼に見えている。従って、一定量の補給を行った後は、砲兵部隊がカウンターバッテリーに備えて陣地転換を行うように、補給整備部隊も他の非常用滑走路へと移動することになっている。

 さらに、非常用滑走路が設けられているのは陸上だけではない。

 実のところオーブ本島の北部には未だ活動中の火山があり、基地の建設や居住施設の建造には向いていない。まあもっとも、その火山のおかげでオーブは豊富な地熱発電を行えるのだから差し引きプラスマイナスゼロといったところか。

 ただ、使える面積が多くないということは、より多くの居住面積を得るために建物は高層化し、そして更なる使用可能な空間を求めて膨大な地下施設が建設されと同時に海上都市の建設も行われるだろうことは想像に難くない。

 「メガフロートへの物資搬入の進み具合はどうか?」

 「はい。問題ありません。

  全拠点で予定通りの物資が搬入されているとの報告を受けています。

  もともと大規模災害などの際に拠点として活動できるよう、一定量の物資は備えることが法律で義務付けられていたため、陸上よりも速やかに体制が整いました。

  全体の様子はこのようになります」

 そう言って参謀が手元のパネルを操作すると、非常用滑走路に関する準備状況を記した一覧がサブスクリーンに表示される。

 メインスクリーンでは、地図上で非常用滑走路があるポイント光っている。

 準備が整っていない拠点はイエローで、大きく遅れているところはレッドで表示されるようになっているが、レッドの箇所は数えるほどしかなく、大半が準備がグリーンとなっている。

 それを確認しながらカガリは周囲を見渡しつつ言う。

 「連合軍が繰り出してくる航空戦力は我がオーブのそれを上回る。

  従って、オーブ本島北部の制空権は連合軍に取られるとアナリストたちは予測しているし、シミュレーションの結果も同様だ」

 自らに言い聞かせるように、淡々と既に判明している事実を並べるカガリ。

 「戦闘初期は相手にポイントを取られるが、中盤以降は対空ミサイル部隊による敵制空権の妨害が中心となり、中部は一進一退からややこちらに分が悪いぐらい、南部は制空権の維持は可能と見られている。

  この分析結果に間違いはないな?」

 情報参謀の方を見ながら確認する。

 「はい。その後の情報を追加しても変化はありません」

 「うん。本来、軍事常識から考えれば劣勢である我々が先制すべきなのだが、叔父上はそれを許されていない。

  ゆえに、ファーストアタックは連合側によって行われる」

 苦い表情を浮かべつつ、カガリが言う。

 このことは既に何度も話し合われたことだが、再度確認のためにカガリは続ける。

 「むろん、叔父上もいたずらに軍の手足を縛るつもりはないとのことだ。

  だが、オーブ防衛戦終了後の政治的環境を有利にする為に、最初の一発は確実に連合軍に撃たせなければならないともおっしゃっている。従って、当初は完全な迎撃のみを行うことになる」

 いつの世も先に手を出したほうが世間から悪く見られることは変わらない。スケールこそ違え、それはただのケンカも、はたまた国家による戦争も同じである。

 とはいえ、電子兵器の発達は、科学技術の劣る側に常に暗闇の中で突然不意打ちを受ける状態を強いる、ファーストルック・ファーストキルを時代の趨勢にして久しい。

 そんな中、Nジャマーによって電子兵器がその効力を低下させているとは言いながらも、先制攻撃を認めないとはオーブ国家元首ホムラは、あえて火中の栗を拾いにいったということであろうか。

 それは、勝利した時のリターンは大きいとはいえ、相当に危険なことでもある。

 そして当然のことながら、この場にいる高級軍人たちもホムラの意図していることはきちんと伝えられている。でなければ指揮官のモチベーションの低下を招きかねないからだ。

 だが、カガリは

 「正直、叔父上にはこの方針を撤回して頂きたかったのだが・・・」

 と少しばかり俯きながら言う。

 オーブ国土をむざむざと傷つけさせざるを得ない状況は、彼女にとっても苦痛なのだろう。

 そんな彼女に対して、端然と佇んでいたソガ一佐が言う。

 「カガリ様。

  戦後を見据えた方針を示してくださる方の下であれば、我々は安心して戦うことができます。

  それに、ホムラ代表がこのような方針を示されたのも、我が軍が連合軍の攻撃を防げると信じてのことと自分は考えます。

  また自分たちも軍の奮闘の結果を、ホムラ代表が必ず活かしてくれるものと信じております。

  ならば、あとは与えられた状況下で全力を尽くすのが我らの役目です」

 「お前たち・・・・・・」

 周囲の者たちが同意するように深く頷いているのを、少しばかり瞳を潤ませながら見渡すカガリ。

 そのままわずかの間沈黙し、ぐっと目元を拭うと、真剣な表情に戻った彼女は

 「わかった。お前たちの献身に感謝する」

 そう言って、じつに艶のある敬礼をした。

 ざっと、音を立てて周囲の者たちも答礼する。

 今、この場にいる者たちの心は確実にひとつだった。

 

 そんなこんなで彼らの士気は天井知らずに上がっていたが、戦闘前の最終確認を途中で止めるわけにもいかない。

 よって、航空戦力についての確認が終わると、今度は洋上に配置する艦隊戦力についての確認がなされている。

 「各艦隊は島影の多いオーブ南方から西にかけて展開する。

  戦闘初期の交戦は可能な限りこれを避け、戦力の維持に努めてもらう」

 「当初の迎撃は陸軍と空軍の役目というわけですな」

 「ああ。先にも言ったように、叔父上からは絶対にこちらから先に手を出してはならないと厳命を受けている。

  オーブ国内に展開する陸軍や最初は迎撃に徹する空軍と違って、海上での戦闘が一番最初に始まってはオーブの立場が少しばかりやっかいなことになるとのことだからな」

 少々無念そうにカガリは言う。

 ヤラファス島はソロモン諸島に属する。

 世界地図を思い浮かべてもらえばわかるとがソロモン諸島そのものが左上から右下へ湾曲するように存在する。

 そのため、上空から見下ろすとオーブ西方から南方にかけては大小を問わず無数の島々が存在しているが、その逆に、ヤラファス島の東方から北方にかけてはかなり島影が少なくなるのだ。

 電子兵器が長足の進歩を成し始めてから一世紀以上が経過したが、未だ物質を透過して遠距離の相手を捕捉する策敵手段は実用化されていない。

 ゆえに、この島々は使いようによっては大きな無形の戦力になる。

 そして、この地の利を使わないようでは、軍務に携わるものであれば大馬鹿者と言われても反論できない。

 むろんオーブの軍人たちは馬鹿ではなく、島々を敵の策敵手段の妨害装置として十二分に活用するよう計画は練られている。だからこそ、この艦隊配備指示なのである。

 このあたりのことは、短期集中教育期間中にカガリの頭にいやというほどに叩き込まれた知識であり、何も見ずに暗唱できるほどであった。考える前に動き出す、動のタイプのカガリにしてみれば、座学はある種の拷問であったろうが、地図を見てすぐさま頭にそのことが思い浮かぶほど見事に血となり肉となっているわけだから、カガリに教えた者たちの感慨もひとしおであろう。

 「政府の方針が長期持久と定まった以上、海上戦力の早期消耗は避けなければならない。

  祖国が蹂躙されている時に、何も出来ないという無力感を感じる乗員たち、あるいは積極的な反撃を唱える者たちが出てくるとは思うが、祖国防衛の出番は必ず回ってくる。

  それまでは、空軍と陸軍を信じて歯を食いしばって堪えて欲しい」

 「心得ております。オーブ海軍に一時の感情を抑制できぬ愚か者はおりません。お任せください」

 ソガ一佐がカガリに対し、力強く請け負う。

 「ああ。頼りにさせてもらうぞ」

 ここ一ヶ月ばかり、ずっと顔を突き合わせてきた彼らに対するカガリの信頼は非常に厚いものである。もっとも、彼らが国民を守る防人として常にプロフェッショナルたらんと、常に研鑽を磨いてきたのを眼にしてきたのだから、それもある意味当然と言える。

 そんな信頼を態度で見せるカガリ対し、ソガ一佐は「ただ」と言葉をつなげる。

 「自国の防衛に他国の戦力、それも同盟すら結んでいない国の戦力を当てにせざるを得ないことに、オーブを守る軍人として忸怩たる想いですが」

 「!?」

 咄嗟に言葉に詰まるカガリ。

 彼女自身もそのことに関しては、相当にもやもやとしたものを感じているのだ。

 だから、諭す言葉も少しばかり力のないものになってしまう。

 「・・・敵の敵は味方。

  そう割り切るしかないだろうな」

 「カガリ様は、割り切れたのですか?」

 そう問い返された瞬間、それまで猪突猛進娘の頭の中で頑張っていた、もともと丈夫でない何かがぷつんと切れる音がカガリには聞こえた。そして次の瞬間

 「そんなもの・・・」

 そこで一呼吸溜めると

 「割り切れるはずがないだろう!

  何で連合とプラントの戦争に巻き込まれるのに、片方の戦力をあてにしなければならないんだ!

  それに、何だあの連合の理屈は!盗人猛々しいにもほどがあるぞ!

  そんなにも自分の思い通りにしたいのなら、いっそのこと、他人のものは俺のものとでも言えばいいんだ!」

 そう怒涛のごとく思いっきり言い放っていた。

 ビリビリと部屋中に響き渡るカガリの叫びに対して、一瞬、呆気にとられたように間が空く。

 だが次の瞬間、どっと周囲の軍人たちから爆笑が起こった。

 自分のあまりの叫び声に、自分でもちょっと大人げなかったかなと思っているところへ、周囲から遠慮のない笑い声を浴びせられたことに顔を赤らめながら「そんなに笑うことはないだろう!」と再び怒声を上げながら、苦虫を大量に噛み潰したような渋い表情でカガリがぶすくれる。

 そのまましばらく笑いが続き、キサカが「いいガス抜きになったな」と声を掛けたあたりでようやくそれが収まる。

 その様子をずっとほっぺたを膨らせたまま眺めていたカガリは、ふと内心を省みる。

 

 公的に人を使う立場に就いて、改めて父であるウズミの凄さというものを理解することになったとカガリは思う。

 

 寄せられる信頼に応えているのだろうかという不安。

 自らの下した判断が正しいのかという疑心。

 死地に赴く兵士たちへ命令を出すことへの躊躇。

 

 その全てがカガリの精神をぎりぎりと締め上げ、同時にごりごりと削り落としていく。

 今もこの場に立っていられるのは、直属に回されたキサカを初めとする周囲の人間の手厚い補佐のおかげとしかいいようがない。

 本当に、彼らにはいくら感謝しても到底追いつくものではない。

 だがだからこそ、こんなところで折れるわけには、立ち止まるわけには、負けるわけにはいかない。

 彼らの助力に報いるためにも、オーブは何としても守ってみせる!

 自らの心中で誓いも新たにすると、念入りに地形図を眺め、ここ一ヶ月ほどでもっとも整備された戦力について確認する。

 ざっと見る限りそれらは、いずれも所定の位置についているようだ。

 「ミサイル艇は、予定通り分散配備が完了しているようだな」

 「はい。本島各所及び周辺諸島への分散配備は問題なく完了しております。

  命令があり次第、直ちに全力攻撃が可能です」

 有人及び無人を示すマーキングがされたミサイル艇部隊が、広い範囲に渡って配備されているのを再度確認し、カガリは頷く。

 ミサイル艇は基本的に沿岸海軍に付随するものというべきだが、使いようによっては十分に外洋海軍(ブルーウォーター・ネイビー)に対抗できることは戦史でも証明されており、物量において劣勢のオーブ海軍にとっては貴重な迎撃戦力のひとつとなっている。

 ただ、展開した全ての戦力が敵に対して投入できるかといえば、そうではない。だからカガリはその点についても確認する。

 「現時点におけるミサイル艇部隊の戦闘開始までの損害見積もりはどれほどだ?」

 「はい。敵の攻撃による戦闘初期の損耗率は、おおよそ20%と見積もられています。

  ただし、連合がこちらの想定以上に索敵及び掃討に力を注いだ場合、損耗率は更に上昇するものと思われます」

 「それに関しては、こちらはせいぜい嫌がらせの攻撃を多くするぐらいでほとんど打てる手はないのだろう?」

 既にわかっていることを確認するようにカガリが聞く。

 「はい。おっしゃる通りです」

 「ならば、他にできることに眼を向けよう。

  私はここしばらく、時間は有限だということを骨の髄まで教え込まれたからな」

 苦々しい表情でつぶやいたカガリに、周囲のものは再び笑い声を上げる。むろん、カガリが最近まで徹底的なスパルタ教育を施されてきたこと知ってのことである。

 笑われたカガリは先に大笑いされたことで開き直ったのか「ふん。好きなだけ笑えばいいさ」とぶつぶつ言いながらも、その他の戦力の配備状況を周囲の人間の助言を得ながら丹念に確認していく。

 その様子をかつての猪突猛進するばかりだった彼女の姿を知るものが見たら、驚きに眼を見張ることだろう。

 オーブの獅子の娘、カガリ・ユラ・アスハはわずかな期間で大きな成長を遂げつつあると。

 「ふむ。地対艦ミサイル部隊のカモフラージュ状況も問題ないな」

 「はい。ある程度、時間的な余裕があったのが幸いでした。

  連合軍の攻撃で発生する損耗率も数%程度と見込まれます」

 機甲部隊、歩兵部隊、砲部隊兵、各種ミサイル部隊、補給・衛生部隊など陸上戦力についても一通り確認したカガリは最後にそう感想を述べた。

 隠し場所が海に面した場所という制限が掛からざるを得ないミサイル艇に対して、陸上戦力の維持の見込みに関しては、おおよそ一ヶ月近くにわたって構築されてきた各種陣地の見事な偽装もあって極めて良好といえるだろう。

 それでも、もし開戦前の地球連合の偵察衛星網が生きていたら、陣地構築する前と後での違いを容易く把握されてしまう可能性が高かったはずだ。

 しかし、オーブにとって幸いなことに、ザフトの攻撃により衛星網が壊滅状況にある。ゆえに、地球連合軍にはその恩恵は与えられることはない。また、衛星網の代替手段として行っている、領海外を高高度で飛行させた偵察機による観測では十分な情報を集めることは物理的に無理だ。従って、工兵部隊によって丹精込めて作られた偽装陣地は戦力維持に存分に威力を発揮してくれることだろう。

 ただ、いくら準備する時間がそれなりに取れたとしても、戦争に直面するにあたっての問題が全て解決するはずもない。

 カガリたちの話はそこへと進んでいく。

 「すると、やはり長期戦となった場合にネックとなるのは電力か」

 「はい。連合がこちらの電力網を破壊しようと試みるのは100%確実です。

  現在までに打った手段では、地熱発電所からオロファトへの送電設備を完全に守りきるのは不可能と判断されています。

  楽観は一切排除し、現状の電力網は戦闘開始直後に寸断されるものと考えておくべきかと」

 参謀はオーブ本土に張り巡らされている電力網をスクリーンに表示しながら、そう冷静に指摘する。

 カガリもそれについては同感であり、頷くよりほかない。

 20世紀後半以降の戦争では、電力ネットワークが攻撃の最優先目標の一つとなって久しい。

 その理由は明白だ。何せ、高度文明社会は電気がなければ何もできないのだから。

 言い換えてみれば、電気は近代社会の動脈であり神経でもあるといえよう。

 となれば、それが破壊されれば患った人間同様、半身不随になるのは自明の理。

 事実、過去の戦史を振り返ってみれば、発電所・変電所をはじめとする施設が集中的に攻撃を受けている。

 そして今回の地球連合軍によるオーブ侵攻においても、電力施設攻撃用のブラックアウト爆弾でオーブ国内の電力網に大きな打撃を受けることはまず間違いないと予想されているのは聞いての通りである。

 ちなみに、ブラックアウト爆弾は、20世紀の終わり頃から用いられるようになった兵器のひとつである。爆弾の中に電力施設攻撃用特殊目的子弾が多数内蔵されており、一定の高度で近接信管または時限信管によって弾体ケースが弾け、子弾を周囲にばら撒く。各子弾には減速用パラシュートが付いていて、充分に速度が低下した後、内部に巻き込まれている、炭素繊維などを初めとした高い伝導率を持つ素材でできた極細のテープの集まりを、漁業の「投網」か、歌舞伎の「蜘蛛の糸」のように放出する。

 放出された極細テープは非常に軽くかつ導電性が高いため、送電線や高圧遮断器、高圧トランスへの高圧線などに絡みつき、一斉にショートさせてしまう。

 その結果、目標となった施設は完全に機能を消失。電力供給は停止し、広域大停電が生起されるというわけだ。

 連合軍が通常兵器によってオーブの社会インフラに大ダメージを与えてしまっては、マスドライバーの掌握とは別にオーブの国力を対プラント戦に投入するという自身のもうひとつの目的が達成できなくなってしまう。

 オーブは、アメノミハシラや崩壊したヘリオポリスといった宇宙空間における大規模施設建造に国力を注力してきたが、その注ぎ込む国力の源泉となったのは南太平洋随一の港湾設備を基盤とした海洋立国政策であることは経済をかじったことのある者であれば誰でも知っている。

 そして、それはオーブが多数の接岸バースと広大な集積スペースと巨大な倉庫設備を有する港湾を持っていることを意味する。

 近代以降の戦争の勝敗は「補給によって決まる」ということが軍事上の常識とされている。むろん、それ以外の要素も決して無視できるものではないのだが、補給が極めて重要な要素であることを否定できるものはいない。

 となれば、オーブの持つそれらを利用できるか否かで、南太平洋における地球連合軍の活動状況が劇的に変わるであろうことも、誰の眼にも明らかと言えるだろう。

 それゆえに、許容可能な被害で比較的回復しやすいものの、一定時間においては致命的(指揮・通信系統が遮断されてしまう)なダメージを与えるブラックアウト爆弾は投入されないと考える軍人がいたとしたら、その者は即刻退役し、二度と軍務に関わるべきではないだろう。

 

 「ブラックアウト爆弾は確かに対処が厄介だ。

  だが、何も手を打てなかったというわけではない」

 不吉な予測を告げられても、カガリの眼からは光は消えていない。

 祖国を守ろうと全力を尽くしてきた彼らに彼女は全幅の信頼を置いている。そして、カガリの期待に彼らは応える。

 「波力発電、潮汐力発電、海洋温度差発電システムからの電力網は地下に迂回路を設けました。

  地熱発電所及び変電所が完全停止した場合でも、増設した大型バッテリーとの併用で、一週間という期間限定ですが通常の約4割を確保できます」

 「よし。それだけ確保できれば問題ないはずだな」

 「余裕でお釣りが出るでしょう」

 「増設バッテリー様様といったところだな」

 「仰るとおりかと」

 にやりとするカガリ。

 もっとも、バッテリーと一言で言っても、コズミック・イラの世紀におけるバッテリーと旧世紀のそれとは隔世の感があるほど能力に違いがある。

 でなければ、MSのような機動兵器をバッテリー駆動で実戦投入などできるものではない。

 コズミック・イラの世紀では発電システムは、石油・石炭などの資源の枯渇により火力発電が廃れ(植物から得られる油は他の産業に回っている)、原子力発電が主軸のひとつとして発展する一方、風力、水力、太陽光を初めとする自然エネルギー発電がもう一方の主軸として発達してきた。

 そして、自然エネルギー発電では安定した電力供給を実現するために、発生した電力をいったん蓄える必要があることは、コズミック・イラでも旧世紀でも違いはない。

 ただ、資源枯渇という現実から必要度が旧世紀とは段違いであったため、「必要は発明の母」ということわざの通り、蓄電関連資材の技術は急速に発展していくこととなる。

 そして、当然のことながらバッテリーの発達は当然のことながら軍事にも影響を及ぼした。

 先にも述べたように、電力ネットワークは侵攻する側の攻撃目標として真っ先に上げられてもおかしくないほどの重要性を持つ。

 それに対し防御側が、寸断された電力ネットワークが復旧するまでにバッテリーに蓄えた電力で戦闘を継続しようと考えるのは至極当然といえるだろう。

 ゆえに発生する、連合軍によるの電力ネットワークの破壊と施設部隊による電力ネットワークの復旧という、表には現れにくい、それでいて戦争を左右するかもしれない重要な競争。

 ただ、それには避けて通れない事柄があった。

 「破壊された施設の復旧には軍だけではなく、民間人の協力が必須となります」

 「できればそれは避けたいところだが・・・」

 カガリが渋い表情でそう言う。

 自身は民間人の立場で、さんざんゲリラ活動をしてきた過去があるが、そのあたりは良識が働くようだ。あるいはこれもスパルタ教育の成果か。

 「一応、最悪の事態に備えて準備だけは進めてある。既に電力会社からは人員の確保完了の報告を受けているし、復旧機材の用意もしてもらっている。

  施設が破損次第、駆けつけるための手筈は全て整えてあると言っていい。

  ただ、それでも民間人には戦場に出て欲しくないのだが・・・」

 「工兵部隊は、戦闘の他の局面で投入しなければなりません。

  電力施設の復旧に回すだけの余裕はとてもありません」

 「それは分かっている。分かっているんだ」

 参謀の事実を指摘する声に、苦虫を数十匹まとめて噛み潰したかのような表情をするカガリ。

 電力ネットワークの破壊と復旧という競争に負けないためには、事前にどれだけの準備が整えられるか、そしてそれらをきちんと運用できるかに掛かっている。ゆえに、復旧には電力施設のエキスパートを投入するのがベストであり、そのエキスパートは普段それを手掛けている民間人しかいないことはカガリも重々分かっている。

 ただ分かっているのはあくまで理性のほうだけで、カガリの感情は民間人に危険を強いることを良しとしないのだろう。

 しかし、どんなに不本意でも電力ネットワークの復旧には電力会社を初めとする企業の協力は不可欠な事実は変わらない。

 理詰めでキサカにも諭され、最終的には一時的に感情を封じ込めることで折れるカガリ。

 ただ、そのためか最後にこうこぼした。

 「それにしても、一ヶ月近い準備期間を得ることができたのは僥倖だったな」

 「はい。代替用のネットワークを整備する時間や復旧用お準備をする時間がかなり確保できましたから。

  もしこれが、連合の攻撃を直前まで察知することが出来なかったらと思うとぞっとします」

 カガリのしみじみとした台詞に、情報参謀のひとりがこれまたしみじみと応える。

 「そういう意味では早くから警鐘を鳴らしてくれたザフトに感謝しなければならないかもしれませんね」

 そう別の参謀が合いの手を入れるとカガリは嫌そうな顔をする。

 認めたくない事実を目の前に差し出されたのだから、無理もない。

 「そういう意味ではそうだな」

 しぶしぶとそれを認めるカガリだが

 「もっとも戦闘が終結した後に、何らかの見返りを要求される可能性があるかもしれないが」

 そう後に付け加えるのは、やはり相当現実を認めるのが悔しいのだろう。

 そんな上官を宥めるように、更に別の参謀が言う。

 「確かにその可能性はありますが、今は考えなくてもよろしいのでは?」

 「自分もそのように考えます」

 「ザフトの思惑を推測するだけの時間的人員的余裕もありませんし」

 次々と言葉が重ねられる。

 その様子にカガリもひとつ頷いて同意を示す。

 「そうだな。その通りだ。

  残された時間はそう多くはない。今は目の前のことに集中しよう」

 「「「「はい」」」」

 

 こうしてカガリたちはオーブに押し寄せんとする時代の荒波に抗するための努力を続ける。

 彼らの前には高く険しい道が続いている。それを承知の上で不退転の覚悟でもって前へと進んでいく。

 そして、彼らのその覚悟が問われる時まで残すところあと1日と迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき

 

 

 

 そんなわけでシン・アスカ救済編をお送りしました。

 無事、両親及び妹と脱出できたうちのシンは本編のようなやさぐれシンにはなる予定はないです(^^;

 そんなシンはシンじゃなーいという方もいらっしゃるでしょうが、ここはひとつ堪えて下さいませ。

 シンの両親の名前は調べても分からなかったので適当です。今後出てくるかも未定です。

 

 それにしても、無事年内に投稿できてよかったなあ。

 最近、ますます書くよりも読むほうが楽しくて(核爆)

 特に今まで知らなかった良作な二次創作を見つけた時は嬉しいものです。

 

 さて、オーブ攻防戦まであとちょっと。

 ぼちぼちと続きを書いていくとしましょう。次回で戦闘がはじまるかは微妙ですが。

 ・・・ちなみにその後のことは何も約束してないし、ばっくれても問題ないよね?

 

 

 







感想代理人プロフィール

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代理人の感想

幸せそうだなぁ(笑)。

このシンなら例えステラが目の前に現れても彼女よりは妹を取りそうだ(爆)。

そしてやたらに逞しい、というか頼りがいのあるカガリ。覚醒すると強いんだよなこやつ。

まぁ、いかに頼りがいがあってもオーブ軍だけで勝てるわきゃないんですが。

 

ところで安田さん、まだ独身ですか?(爆)






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