ラクスの保護の為、ヴェサリウスはアークエンジェル追尾を断念した。
 だがその後任は合流したガモフに引き継がれる事となり、アークエンジェルの危機は相変わらず拭われていない。


「……確かに月艦隊との合流前に、足付きに追いつく事は出来ますが……これではこちらが月艦隊の射程に入るまで十分程しかありませんよ?」

「十分はあるって事だろ」


 あくまでイザークは攻撃を諦めていなかったが、冒険と無謀を履き違える事はしなかった。
 例えXナンバーが圧倒的な性能を持っていたとして、艦隊レベルの敵を相手に単機での戦闘は不可能に近い。
 彼らに与えられたチャンスは極僅かでしか無かった。

「十分しか無いのか、十分はあるのか……それは考え方って事さ。俺は十分もあるのにそのままあいつを見送るなんて御免だな」

「同感だ。奇襲の成否はその実働時間で決まるもんじゃない」


 ディアッカもそれに同調するが、ニコルの表情はまだ暗い。


「……四人全員でかかって十分持たなかった相手に、何をしろと……」


「何!? あれはククルが邪魔を……!」


 声を荒げるイザークの肩を、ディアッカが軽く叩く。
 その表情は軽薄だが、何かを考えているようだった。


「ま、あの大天使の剣相手にはそうだろうがな……大天使様そのものは脆いさ。十分もいらない。五分、いや三分ありゃあいい」

「ディアッカの言う通りだ、ニコル。ヴェサリウスは直戻ってくる。それまでに足付きは俺達で沈める……」


 あくまで武勲に拘るイザークに、ニコルはがっくりとなった。
 ニコルは薄々勘付いていた。
 あの男、ゼンガー=ゾンボルトが勢いだけで倒せる存在では決して無い事を。
 ライバルを引き離したいという、見え見えの野心だけでどうこうできる相手ではないとも。


「わかりました……」


 ……しかし拒んでも状況は好転しない。
 せめてこの、先走る仲間をどうにかして死なせない様頑張るしかない……。
 一刻も早くククルが戻る事を願いつつ、ニコルは渋々頷くしかなかった。   



「またせんそうよーっ!」


 イザークらの動きは早くもアークエンジェル側に察知されていた。
 先の先遣隊の全滅から、アークエンジェルの緊張状態はずっと継続しており、今度は素早い対応が可能となった。
 警報が鳴り響く中で無邪気に通路を駆ける幼女は、同じく格納庫へ向かっていたゼンガーとぶつかってしまう。

“トン”


「む、大丈夫か」

「あ! あの時のおいちゃん!!」


 こけそうになった幼女を両手で支えたゼンガーだったが、この幼女と以前食堂で会っていた事を思い出した。
 あれから大分落ち着いたようだが油断は出来ない。この小さな温もりが続くか終わるか、自らの働きににかかっている事を考えると自然と気が引き締まった。


「案ずるな、必ず奴らから守ってみせる」

「本当?」

「本当だ」


 目線を下げて幼女と並ぶゼンガー。
 ともすれば威圧しがちな長身なだけに、その行動だけで幼女は安らぎを感じていた。


「へへ……何かお父さんみたい!」

「これでも二十代だぞ、俺は」


 とは言うが、ゼンガー限りなく三十路に近かった。
 自らの発言に苦笑しつつ、ゼンガーは幼女に手を振られながら駆け出した。


「……駄目よ、それは……」


 そんな様子を冷ややかな笑みを溢しつつ見守るフレイ。
 その声もどうも調子が外れているように、虚ろだった。


「だって少佐は私の……」


「ゼンガーはみんなを守るよ」


 背後からの声に肩を震わすフレイ。
 ゆっくりと振り返ると、そこには笑顔を湛えたイルイの姿が。
 フレイの発する異様な空気の中にあって、明らかに異質な反応だった。


「今のゼンガーは大天使の剣、大天使に関わる全ての人を、ゼンガーは全てを賭けて守ってくれる。でもゼンガーはそれで終わらない。終わっちゃいけない。だから誰もゼンガーを縛っちゃいけない。今は……ね」

「な……何よそれ……」


 しかしイルイは微笑みを絶やさぬまま去っていく。
 呼び止めようにも、何故か威圧感に襲われたフレイは、動く事さえままならなかった……。



 


〈少佐、ザフトはローラシア級1、デュエル、バスター、ブリッツ!〉
 
「……合流間直だというのに攻勢を仕掛けるとは、焦ったか。恐れるな艦長!! このまま意地を押し通す!!」

〈元よりそのつもりです! 伍式、メビウス・ゼロ発進願います!!〉


 そのやりとりがブリッジクルーには大きな励みとなった。
 絶望的状況の連続においても、自信を失わない指揮官は非常に頼りになる。
 それが例え偽りのものであったとしてもだ。終始弱腰よりかは遥かにマシだった。
 マリューもその事を心得ていたが、ナタルにはそれがまだ無謀と紙一重に感じている。
 その微妙な空気の差を、ゼンガーの一声が見事に埋めていた。


〈イーゲルシュテルン作動、アンチビーム爆雷用意! 艦尾ミサイル全門セット!!〉
 


 これで在庫一掃と言わんばかりに、今まで以上に濃密な弾幕を展開するアークエンジェル。
 三機のXナンバーはそれを受けて散開したかに思われた。
 が、それはローラシア級ガモフからの射線を隠す行為であって、一発がアークエンジェルのラミネート装甲に命中する。
 すぐさまエネルギーを拡散していくが、そのスキにブリッツが迎撃を突破した。
 しかしその姿はすぐさま掻き消えてしまった……ミラージュコロイドを使用したのだ。

〈ブリッツをロスト!〉
 
〈アンチビーム爆雷! 対空榴散弾頭を!!〉

 トノムラの戸惑いの声を遮り、マリューがすぐさま指示を下した。
 何も無いと思われる空間に発射されたビームが、照らされた空間の微妙な歪みを見つけ出す。


〈ビーム角からブリッツの位置を測定!〉

〈榴散弾頭、てえっ!!〉


 ナタルの号令と共に放たれたミサイルが、歪み目掛けて殺到する。
 ミサイルの爆発が晴れると、そこにはミラージュコロイドを解除して位相転移装甲を起動させたブリッツの姿が。


〈誰が造ったと……〉


「思っている!!」

“ドガッ!!”


 一端後退しようと試みたブリッツだったが、全加速力をかけた伍式のショルダーチャージを受けて、アークエンジェルから大きく引き離された。  




〈うああああああっ?!〉


 そのままの勢いで、対艦刀でブリッツを切り裂かんとする伍式。
 ギリギリの所でバスターの援護が間に合い、何とか持ち直したが今度はディアッカが追われる事になった。


〈クソッ! やっぱククル抜きじゃ骨か?〉

「ふざけるなディアッカ!! 女一人抜けたぐらいで!!」


 では何故負ける? とはイザークは考えなかった。
 いや考えたくなかったのだ。自分達が弱いとはプライド抜きでも考えられない事だ。
 クルーゼ隊はエリート中のエリートが集結した特設部隊。一般のザフト兵を大きく引き離す戦果を上げて来た事は明らかなのだ。
 では答えは只一つ。目の前の敵、ナチュラルのゼンガー=ゾンボルトが自分達より強大だと言う事。コーディネーターでも有数の戦士である自分達よりも……。
 そんな事実は、全力で否定せねばならなかった。


〈……その慢心が命取りとなる!〉

「!!」


 コクピットに度々響いてきた、忘れもしない男の声にイザークは歯を軋ませる。


〈我はゼンガー=ゾンボルト。大天使の剣なり!! 最早ここに至って躊躇いはせぬ!!〉
 
〈い、今まで全力じゃ無かったのかよ!!〉

〈かつての俺は、このX−105に拘るが余り迷いがあった! 軍人としてこの機体を守る事が、俺の任務だったからだ! だが俺はそれを捨てる! 例え伍式が砕けようとも、貴様らから大天使の全てを守る!!〉


「だったら望み通り砕けろぉ!!」


 しかしデュエルの放ったビームは無造作に伍式にかわされていく。
 イザークの戦意は完全に空回りしていた。


〈なめてくれちゃって!〉


 それを見たディアッカは、左右の砲をドッキングさせ超高速インパルスライフルに組替えた。
 その砲口からの熱線が横切るのを見て、伍式は左肩の装甲をおもむろに掴む。

〈むん!!〉


 只の突起物と思われたそれはビーム刃を発し、高速で回転しつつバスターに迫る。
 だが推進装置も何も無しで慣性だけで飛ぶそれは、いともあっさりかわされた。

〈ハッ! 間抜け!!〉

〈ディアッカ後ろです!!〉


 フォーメーションに再度復帰したニコルの警告は若干遅かった。
 真っ直ぐ虚空に消えるかと思われた突起物が突如方向転換し、狙った様にバスターの背後に迫っていたのだ。


〈舞い戻れ!! マイダスメッサー!!〉

“ザッ!!” 


 ドッキングしていたインパルスライフルが、ビームに引き裂かれ、爆発してしまう。
 これでバスターはその最大の火力を失った。


〈うおっ?!〉

「バカな!!」


〈これが現実だ……人間を、なめるなっ!!〉


 対艦刀を大きく振りかぶると、伍式は猛然とダッシュをかける。


「ぬおぁぁぁぁぁぁ!!」
 


 対するイザークもシールドを掲げ、背中のビームサーベルを抜き払った。
 アンチビームコーティングが施されたシールドなら、対艦刀の勢いを多少は殺せると考えたのだ。
 しかし運命……いやゼンガーは過酷だった。


〈そんな軟な防御で……俺の振りは止められはせん!〉


 突如伍式が刃を寝かせ、そのフレーム部を下に斬りかかった。
 いや斬りかかるというよりもそれは、叩くと言ったほうが正しい。


「峰打ち?!」

〈只の峰打ちと思うな!!〉


“グシャアッ!!!”


 ゼンガーの言う通り、デュエルのアンチビームシールドは対艦刀の振りによって無残にひしゃげ、くの字に折れ曲がった。
 衝撃を受けた左腕から激しいスパークが発生し、デュエルのバランスは大幅に崩される。
 


〈甘いっ!!〉

“ドコッ!”


 ガードが開いたデュエルのわき腹に、伍式のつま先が突き刺さった。
 小規模な爆発が腹部で発生し、決定的な損傷となったのかデュエルはその動きを止めた。



「イザークっ!!」


 大慌てでブリッツがデュエルを抱え、戦線からの離脱を開始した。
 バスターも主力火器を失った以上どうする事も出来ず、一目散に退却する。


「イザーク、大丈夫ですかイザーク!」

〈痛い……いたい、いたい……〉


 先程しかそれしか返って来ない事に、ニコルはどうしようも無い苛立ちと恐怖を感じていた。


〈十分……いらなかったな〉


 ディアッカの消沈した声が、更にニコルを惨めにさせる。
 ……そう、ガモフからの援護射撃から撤退まで四分を切っていたのだ。
 前は十分程度は持ったと言うにも関わらず……。
 つまり、自分達三人が束になっても、ククル一人分の働きすら出来ないという事だ。
 その事をイザークも知った筈……更に彼が追い詰められる事は間違いない。


『ククル……何故貴女は、あんなのと戦えるのですか?』


 今だこちらを視圧している伍式の姿を見て、ニコルはそれを振り払うよう首を振った。 
 





「さあ、帰る時が来たぞラクス」

『ハロハロククル!』

“パシッ”


 くるくる回りながら飛んできたハロをククルは片手で鷲掴みにすると、それをお手玉の様にして投げてやる。
 嬉しそうに耳をパタパタとさせるハロを見て、ラクスもふんわりとした笑顔を見せた。
  


「ハロがはしゃいでいますわ。久しぶりに遊んでもらえて楽しそう……」

「想いがこもれば、常世の如何なる物にも魂は宿る……こやつにもまた、アスランのお前に対する愛情が込められているのだろう」


 本人が聞いていれば赤面間違いなしのセリフをしらっと言ってのけるククル。
 ちなみに本人は、大事をとって後方に回される事となり連絡艇の準備をしている。
 ……だがククルは、後方に回すのは気遣い等ではなく、戦意高揚の種にする為だと見抜いていた。
 パトリック=ザラはそういう男なのだ……しかし例えそうであろうと、久しく離れていたラクスとアスランが共にいられるのは、それはそれで喜ばしい事だった。


「……しかし大丈夫か。色々慌しかったからな」

「わたくしは元気ですわ。あちらの船でも良くして下さいましたから」

「ゼンガーか」


 ラクスを引き渡す時に、ヘリオポリス以来改めて対面した男の顔を思い浮かべるククル。
 一寸の妥協も許さぬ厳しい表情が、不意にラクスとのやり取りを見て微かに崩れる顔を。


「ゼンガーさまはとても優しい方ですのね。そしてとても強い方……」


「強すぎる。私の隊は既に奴の手によって何人も殺されている」


 軍人でもない、無垢な少女の前で話すような話題では無いにも関わらずククルは言ってのけた。


「……貴女の強さも、あちら側にはそう映っていますよ?」

 ラクスは平然とククルの話題に乗って、更に意見すら述べている。
 その表情も、無垢では無く毅然とした意志が込められていた。


「解っている。だからこそ互いに求め、まみえねばなるまい……互いの犠牲を抑える為にな」


 ゼンガーとの戦いを必然的な物と捉えるククルの物言いに、ラクスは溜息をついた。


「ですが先程の邂逅で貴女が見せた微笑……心とは裏腹の行動に苦しんでいるように思えたのですが」


「本心から笑って戦争をする様になったら……おしまいだ」


 弄んでいたハロを返し議論を打ち切ると、ククルはラクスと共に格納庫へと向かった。
 


「クルーゼ隊長にも、色々とお世話をかけました」

「お身柄はラコーニが責任を持ってお送りするとの事です」


 見送りに来ていたクルーゼを見てククルは笑う。
 本来ヴェサリウスはラクス探索を目的としていたにも拘らず、第8艦隊先遣隊とアークエンジェルへの攻撃を優先してしまっている。
 偶然アークエンジェルに二人が居たから良い物の、成果を上げれぬまま、命令違反に加えジン二機を失ったとなればクルーゼの評価は急落しただろう。
 今回は完全に結果に助けられたのだ。
 ……しかしそんな事を一々恐れる男ではない事も、ククルは知っている。

「ヴェサリウスは追悼式典には戻られますの?」

「さあ……それはわかりかねます」


「……戦果も重要な事でしょうが、犠牲になる者の事もどうか、お忘れなきよう」


 そんな底が見えないクルーゼも、更に奥深いラクス相手には流石に翻弄されている。それが可笑しいのだ。


「肝に銘じておきましょう」


 そんな老成したやり取りを前にアスランは息を飲んでいた。
 かつての彼ならばオロオロと慌てるぐらいしただろうが、今は違う。
 注意深く二人の動向を見守っていたのだ。


「奴との出会い……お前にはプラスとなったようだな」


 静かにアスランに耳打ちするククルに、アスランは頷く。


「敵であるあの人の前ですら、ラクスはああも立ち回れたんだ……俺はもっとラクスを見るべきだった」

「まだ遅くは無い。あ奴の本心……お前ならば引き出す事も出来よう」


 連絡艇へアスランを軽く押し出すと、ククルは敬礼で二人を見送った。


「あの、やっぱり式典には間に合わないのか?」

「無理そうだな。私の代わりに祈っておいて欲しい……お前の母君にもよろしく頼む」

「ああ……」

「では、またお会いしましょうね、ククル」


 ラクスとククルの空間がハッチによって隔てられ、連絡艇がゆっくりとエアロックへと移動していく。
 ハッチの向こう側のラクスとアスランの笑顔が、ククルには遠く、だがとても大切な物に思えた……。





「しかしまあ、この艦一つとGの為に、ヘリオポリスを崩壊させ、アルテミスまでも壊滅させるとはな……」


 アークエンジェルは無事、第8艦隊との合流を果たしていた。
 数十隻の戦艦や駆逐艦に加え、300m級大型MA母艦“メネラオス”を旗艦とする大艦隊だ。
 現在はその合流に際して、今後の方針を決めるためにマリューらは会談中だった。 
 ……しかし本来、マリューらが艦隊司令がいるメネラオスに赴くのが筋であるにも関わらず、何故か先方からアークエンジェルに乗り込んできた。
 その理由がただ興味を惹かれたからと言うのは、艦隊司令としては茶目っ気に溢れる行動であった。


「だが彼らが“伍式”とこの艦だけでも守った事は、いずれ必ず我ら地球軍の利となる」


 副官であるホフマン大佐の苦言を制したこの人物は、そういう型破りな部分があった。
 第8艦隊司令ハルバートン提督……マリューやナタル、そしてゼンガーの上官であり、Xナンバー開発を推進した人物でもあった。
 


「アラスカはそうは思っていないようですが……」


「フン! 奴らに宇宙(そら)での戦いの何が解る! ラミアス大尉は私の意志を理解してくれていたのだ。問題にせねばならぬ事は何も無い!」


 きっぱりと言い切るハルバートン。
 地球連合軍において極めて希少な……そして異端とも言える潔白さと柔軟性を兼ね備えているこの人物を、マリューもゼンガーも個人として信頼していた。
 


「それで伍式の処遇はどうなるかね?」

「既にデータのバックアップは完了しました。本体とデータを分けても何ら問題はありません」


 ホフマンの質問にナタルが緊張した表情で答える。
 ザフトは奪って数時間でXナンバーの設計データの吸出しに成功していたが、マリューらは悪戦苦闘の末に先日ようやくその作業を完了させていたのだ。
 先のイザークらとの交戦時のゼンガーの言葉は、決して覚悟のみのものではなく、きちんと裏づけがあったのだ。
 その回答に概ね満足したという反応を返したホフマンに、マリューは更に続けた。


「……ですが、それもゼンガー少佐の力無くば果たせませんでした。使命とはいえ、その身をすり減らして戦いに身を投じてくれた少佐の判断に……私は任せるべきかと」
 
「艦長……」


 ホフマンのみならずゼンガーも驚いてマリューを見つめた。
 ゼンガーに視線を返したマリューの目には、心からの感謝の念が、篭っていた。


「うむ……少佐、君はネート博士の残した遺産、どう扱うかね?」


 厳粛なハルバートンの言葉に対し、ゼンガーもまた厳しい声で返した。


「……データはアークエンジェルでアラスカまで届けてもらうとして、伍式は月での解析を……私は第8艦隊への残留を希望します」

「残ってくれるのかねゼンガー少佐!」

「第8艦隊の錬度の低さは目に余るものがあります。元教導隊として戦力になるよう指導を行いたいと考えています」


 ホフマンの喜びの表情が一気に不快なものへと変わる。
 それが事実とは言え、面と向かって自身の艦隊を未熟者扱いされればそうもなる。
 だがハルバートンの表情は至って真剣だ。


「そう言ってくれると助かるよゼンガー少佐……ではGの開発に対し万全を期す為にも、今後は月とアラスカでの同時分析及び量産計画の構築を目標としよう」


 ハルバートンはマリューの目を見据え、続ける。

「ザフトは次々と新しい機体を投入してくるというのに、馬鹿な連中は利権がらみで、役にも立たん事ばかりに予算をつぎ込んでおる! 奴らは戦場でどれだけの兵が死んでいるか、数字でしか知らん!!」


 ハルバートンの憤りにマリューとゼンガーも同意する。
 ……組織と言う歯車に組み込まれれば、その中で“正義”を実現する事は非常に困難なのだ。
 自分にとって不条理な事でも、組織の“正義”としてそれを信じなければならない……。
 しかしそんな中で信じられる上官が一人居るだけで世界は変わるものだ。
 良き上官に恵まれた事に、マリューもゼンガーも感謝しつつ敬礼する。


「閣下のお心、しかとアラスカに届けます!」

「アーマー乗りの生き残りとしては、お断りできませんな」


 すると横でフラガも敬礼する。
 本来第七機動艦隊に属するフラガだが、乗りかかった船と言わんばかりにアークエンジェルへ残る事が決まっていた。
 ゼンガーが抜ける事の穴を少しでも埋めようという彼の心遣いが、今のマリューには心強かった。

 

 

 

代理人の感想

・・・・・・・・・・・・・・は、次回に。

何とはなしに書けませんなこりゃ。