外はまだ薄暗く、夜明けの途中であった。
もったいぶる様に顔を出す陽が微かに木々を照らし、その輪郭を大地へと浮かび上がらせていく。
風になびかれゆらゆらと横に揺れる影が、微かに上下に揺れ始めた。
オーブ諸島は火山活動が活発とは言え、地震とは大きく異なる揺れだった。
しかもその震源は動いている。
その震源の足元から、声が響く。
指示に従って、目の前で開いた巨大な鉄の扉へと歩みを進める二つの影。
一つは男。その手には鞘に収めた太刀が握られている。
キッとした眼差しで扉の向こう側から続く、奈落のような穴へと視線をやっていた。
そして後から続いたもう一つの影も太刀を持っていた。
しかし男と比べその様子は滑稽だ。
折角の刀を杖代わりにして、よれよれと老人か落ち武者の如く蛇行していた。
しかし頼りなさは感じ無い。寧ろ恐怖だ。
ビル程もある巨体が倒れ込んだら、先の無線を発したバギーも男も一巻の終わりだからだ。
男がそう短く答えている間に、巨大な影は扉の向こうへと消えた。
そこは穴ではなく、大型のエレベーターとして機能していた。
地下へとどんどん進み、次に扉が開いた時には広大な工場区へと繋がっていた。
満足げに頷く男に、先程バギーから指示を発していた女性技師は溜息をついた。
“また始まった”、しかも伝染(うつ)っていると。
何かに気が付いたのか、巨大な影が次のブロックを指差す。
そこに見えた光景は、先程ギリアムという男が見ていた物と同じ……白いMSが何体もメンテナンスベッドに固定されている。
シャツにタンクトップという、とてもじゃないが姫君とは思えない出で立ちのカガリが現われる。
拡声器からの声が割れる程の叫びだった。
それほどまでに精悍かつ、力強い光景だったが……彼女にとっては全てが遅い以上、憎しみをぶつける対象でしかない。
コクピットから出てうろたえているのは、まだ少女だった。
それを見て女性技師は一層罪悪感を増す。
ひょっとしたらこの後間に合ったとしても……手遅れかもしれないのだから。
自分のやっていることは無意味なのではと、彼女は気負う。
腫れた頬に手をやりながら、カガリが当てつけのように言う。
しかしフレイは黙って首を振る。
自らがウズミ前首長よりも忠誠を誓う男を思い出し、複雑な表情をするエリカ。
こんな若いのにこれでは、彼女の未来はどうなってしまうのだろうか、と。
一向は更に下層のフロアへと移動した。
どうやらそこは試験場のようで、強化ガラスの下は円形状のフィールドとなっており、既に三機のM1が待機していた。
場違いな黄色い声にゼンガーは眉をひそめる。
が、側のフレイの事を考えるとそれもありかと考え直す。
基本的に地球製のMSはザフトのMSと異なり、適性があれば誰でも乗れるような設計を目指している。
老若男女問わず、自由意志での参加を促す為の理想的コンセプトだが、現実は適性判定が厳しく巧くは行っていない。
だからこそ、適性がある者は子供であろうが何であろうが歓迎される。
それがナチュラルの厳しい状況であった。
いかにカガリに権威が無いか証明するようなやり取りだった。
また逆に、己の地位に関係なく多くの人間と気安く出来る長所も、垣間見せていたが。
フレイは割と真剣だったが、さらっと流される。
面白く無い事は確かだったが、今は三機のM1によるデモに目を移していた。
……が、暫くすると欠伸すら出そうになって来た。動きが遅すぎ、蝿でもいれば普通に止まるぐらいなのだ。
まだトールの方が早いと、フレイは愕然となり、呆れた。
そして思わずこうも口にする。
一斉に批難の声を浴び、たじろぐフレイ。
彼女達はアークエンジェルからここモルゲンレーテまで、伍式を操作していたのがフレイだと知らないのだ。
助けを求めてゼンガーの方へと目を向けるが、ゼンガーは視線で“自分でどうするか決めろ”と訴えていた。
ゼンガーの前で恥をかくだけでなく、顔に泥を塗るような真似したらどうしようと悩みはした。
しかし時には危険を冒さなければ何も変わらないと、フレイは覚悟を決めた。
あのキラでさえ、危険を顧みずカガリを救出するという“手柄”を立てたのだ。
やれないでどうするか。
……だが前のように無理は出来ない。自分に何が出来て何が無理なのか、よく吟味しつつフレイは試験場へと向かっていった。
その姿が消えた後、ゼンガーは背後に現われた人影に語りかける。
ゼンガーは試験場に現われたもう一機のアストレイを見下ろしたまま、キラの返答を聞いた。
しかしそれ以上の追求はせず、まずキラの言い分を聞く。
フレイの駆るM1が、相変わらず八極拳の様にのろくさした動きのM1に肉迫する。
が、そのまま通り越して壁に激突した。ふらふらしつつももう一度立ち上がり、再び向かっていく。
ヘリオポリスは言うまでも無く、アルテミスの事もキラには耳に入っていた。
そして第8艦隊、何よりも自分自身……MSという圧倒的な力に関わった者は、総じて破滅が待っている。
災いを呼び寄せる呪いと言っていい代物に、進んで係わり合いにはなりたくなかったのだ。
確かに伍式もそうだと、キラは納得する部分があった。
焦土と化したタッシルの街で、何もかもがゼロどころかマイナスの状況での復興は、辛いものだ。
それを本来、敵を屠る為の巨大な腕で容易に片をつけてしまったトールの伍式……。
その働きにはキラのみならず、タッシルで生きる全ての人々が感謝している。
またカガリ発見も、MSの機動力が無ければ恐らく果たせなかっただろう。
……しかしそれを遥かに越える悪行を、MSは行ってきたのだ。
日常を壊し、友を殺し……そんなものの完成度を高める為に何故手を貸さなければならないのか?
遠まわしに明けの砂漠を示した言葉に、キラは露骨に嫌悪の表情を浮かべる。
しかし振り向いたゼンガーの真摯な視線を前に、それを改める。
今のは誰を嘲るのでもなく……ゼンガーが自らを責めていた事に気付いたのだ。
下界ではM1が只一機、忙しなく動いている。
パンチを繰り出しても外れ、蹴りを入れようものならすっ転ぶ有様だったが……既に二機程地に沈めているのは流石だった。
ふいにゼンガーは視線を逸らし、キラもつられてそちらを見る。
思わぬフレイの奮戦に目を丸くしているエリカに対し、したり顔で笑っているカガリが映った。
それに大いに付き合わされただけに、キラはただ頷く。
否定できなかった。
先日も、ナビゲーションモジュールを破壊されていた状況で、やり過ごせば良いものを輸送機に仕掛け、あの大騒ぎだ。
ゼンガーを始めとした、アークエンジェルのクルーの尽力が無ければ……彼女はあそこで終わっていた。
改めて考えても背筋が凍りそうだった。
一体何の為にここまで戦ったのか……何の為に血を見たのか……全てが無意味になっていたかもしれないのだ。
言い終わる前にゼンガーの叫びが遮った。
それは失い難い者を失った故の、慟哭であった。
キラもその言葉の意味する事を察し、唇を噛んだ。
ゼンガーは間に合わなかったのだ……そして既に十字架を背負っているのだと。
……幸いにもこのやり取りは誰も気が付かなかった。
試験場で拳を上げて高らかに勝利を謳うM1に、視線が集中していたから。
翌日……空が紫色に染まりつつある時頃。
地熱エネルギーは環境を汚さず、またそれによって加熱された海水が多くの海産物を育んでいる。
オーブでも漁業は行われているが、矢張り釣りは朝方の方が当たりが大きい。
とある入り江でも二人の釣り人が糸を垂らしていたが、彼らが陸に上げようとしているのはある意味かなりの大物だった。
海面に大きな影が四つ……現われたかと思えばその身を起こし、釣り人へと歩んでいく。
だが釣り人は笑みすら浮かべ、陸に上がろうとする影に手を差し伸べた。
ウエットスーツに身を包んだククルは、キャップを脱いで髪を振りほどいた。
纏まっていた銀髪が絹のように輝く様は、霞む水面(みなも)にも映って実に幻想的だった。
ニコルも思わず見とれてしまい、早く行けと後からイザークに蹴られていた。
……ククルはあの後、オーブから発せられた公式見解を全く信用せず、次の行動に移っていた。
それはアークエンジェルがオーブを離脱したと言うものだったが、ククルが与えたエンジンへの損傷はかなり深かった。自力航行はこれ以上無理な筈……。
飛び道具と違い、実体剣だろうがビーム刀だろうが、ある程度の手応えは感じるものなのだ。
MSに乗っている以上それは微々たる振動でしかなかったが、格闘戦に慣れている彼女は微妙な変化も逃さない。
手応えが浅いならばもう一撃加えねばならないが、その隙に殺られる事もある。
深い事を察知できなければ、推進剤等の爆発に巻き込まれ矢張り殺られる。
常に瀬戸際に自らを置いて戦っていた彼女ならではの鋭い感覚だった。
無論、他にも様々な諸要素を加え判断し……オーブに残っているとしか考えられないと結論付けたのだ。
現地の工作員との連絡事項もあった為、今ククルは二日遅れでオーブの地を踏んだ。
ちなみに態々クルーゼ隊を名乗ったのは、彼の名の方が通りが良いからだ。それに死人の名を部隊名にするのは縁起が悪いと、彼女が拒んだからでもある。
自らの上官に一層の謎を深めつつも、ククルらは工作員からモルゲンレーテ社の作業服と、偽造IDを受け取り別れた。
タイムリミットは日没まで。それまでに有益な情報を引き出さねばならなかった。
と、イザークに返しつつ、さも当然といった風にククルはファスナーに手をかけた。
咄嗟にディアッカの目を両手で覆うニコルだったが、視線は固定されている。
ディアッカもディアッカで、コーディネーターとしての握力全てを駆使してニコルの指を開き、その姿を垣間見て……。
二人揃って絶句した。
顕わになった彼女の背中は、決して綺麗な物では無かった。
傷だらけかつぼろぼろで、歳相応のものとはとても思えない。
いや、ザフトでもこれほどまで傷ついた戦士はまず居ないだろう……そうまでして彼女を戦いに駆り立てるものは何か。
ディアッカを開放したニコルは思わずあの男の事を思い出し、彼女以上に華奢で傷一つ無い自らの掌を握り締めた。
次の瞬間、ニコルとディアッカは上半身裸のイザークを茂みの中へと引きずっていく。
騒がしい一団から取り残されたククルは、一瞬呆気に取られていたが直に笑みを浮かべた。
だが幾分気が楽になったのは確かだった。今からぶつかる相手は途方も無く大きく、変に力を入れた所で敵う訳でもないのだ。
……彼女は確信していた。十中八九ここオノゴロ島にゼンガーは居ると。
アークエンジェル同様、伍式のオーバーホールも急ピッチで進んでいた。
何十人ものスタッフを動員して、ネジ一本に至るまで緻密に検査を繰り返しつつも、全身で並行作業を行う事で作業効率を飛躍的に高めている。
……ただ、それすらも嘲笑うかのような酷い有様であったが。
特に各所のモーターは焼き切れる寸前まで酷使されており、総交換するしか方法は無かった。
しかし全てを新品に換える以上、どうしてもレスポンスに問題が発生する。
その微妙な誤差を修正するのに難儀していたが、三日目にしてあっさり片が付いた。
キラが作業に加わったのである。
だがこれはあくまで、自分が損壊した伍式に責任を持っただけ。いわば償いなのだ。
これから先どうするかは……決めかねている。
コクピット内で作業している所で、無遠慮にカガリが声を掛けてきた。
一旦手を止めるとぎこちなく笑みを浮かべる。
まさかあれから一晩中、カガリの事を考えて一睡も出来なかったとは言える筈が無い。
……キラはゼンガーの言葉を重く受け止めていた。
確かにこのままでは、オーブに良い結果は訪れない。
弱ければ付入られるだろうし、強すぎると目を付けられ叩かれる。
中立とは理想としては立派だが、いざ実践するには大変な労力を有するのだと改めて知った。
白黒つける事は出来ず、灰色のままでなければならないのだ……真っ直ぐな彼女が、果たしてこの状態に耐えられるか。
馬鹿にされたかと思ったのか、カガリは口を尖らせていた。
慌てるキラだったがふと思い直し、真面目な顔で彼女に問う。
彼女の鳶色の目に対し視線をぶつけるキラ。
幾ら言葉で取り繕った所で、目に勝る説得力は無い……。
砂漠で過ごした経験とゼンガーとの邂逅が、理解への新たな選択肢を彼に与えていたのだ。
暫しの沈黙があった後、カガリは少し顔を固くし言葉を続ける。
その手段として頼ったのが、キラ達のゼミの教授だった。
あの時客人として赴き、ヘリオポリスの内部を探ろうとしていたに違いない。
国益とかそういう小難しい事は全く考えずに、只自らの“正義”に基づいて動いた。
ゼンガーが言うようにまだ幼いが、立派だった。
こんな彼女の真っ直ぐな部分に何処か惹かれているのだろうと、キラはいつの間にか分析していた。
今更何を、という感情がもたげ、変な気分になる。
真実全てが利になるとはキラは思っていない。
エリカ女史にしてもジュリらにしても、カガリの事を想うからこその沈黙だった筈……。
それに……ウズミ前首長は知らなかったからこそ、黙って責任を負って辞任したのではないのかともキラは推測する。
しかしこればかりはカガリに解れと言っても無理だろう。
親子と言うものには奇妙な愛憎が働き、客観的に物事を捉えられないものだ……かつての友もそうだったとキラは思い出す。
厳格で厳しい父親に対し、彼は脅えとも憎しみとも取れる態度を取っていたのを何度か見ている。
ウズミ前首長が娘を好きにやらせ、後で犯した失態を平手一つで片付けるのに対し、友の父、パトリックは友の全てを手の内に入れた上で、些細な失敗に対してもプレッシャーをかけていた。
これがどれだけ友の性格形成に影響していた事か……上手くやっているだろうかと今更ながら心配になるキラ。
ゼンガーはともかく、一体自分が彼女に対し何か出来たのかと戸惑う。
それでもカガリは挑むようにキラを見ていた。
余りに真っ直ぐすぎて、それを子供っぽいとか未熟とか、彼女にとってはマイナスのイメージが大きすぎる。
勿論、キラはそれを踏まえた上で彼女を見ていた。
解っていたからこそ……。
コツンと、ハッチ近辺を叩いておどけてみせるカガリ。
何も出来ず、ひたすら無力で役に立たないという思い込みが、一気に氷塊していくようにキラは感じた。
それほどまでに彼女の微笑みは破壊力があったのだ。
一瞬キラは目を落とし、一人頷くと再び向き直った。
その輝く表情を受け、キラは一層見てみたくなった。
彼女の創る未来を、目指すのもいいかと。
多少の無茶は覚悟の上。大体既に彼女の無茶には慣れているのだ……余程の事が無ければ、いや例え余程の事があっても乗り越えてみせる。
彼はこの時から、正義主義関係なくたった一人の少女に……己の力を生かす場所を見出す事が出来たのだ。
その頃フレイは、ゼンガーと共に行動していた。
昨日の摸擬戦の興奮冷め遣らぬうちに、彼から直接呼び出された。
重要な“任務”があるから街に出ると言われた時、かつて無い程の高揚感に襲われたものだ。
今サイ達は両親との面会中だ。中立国で故郷であっても、彼らに上陸休暇は許可されていない。
何せ公的には既にアークエンジェルは存在していないのだ、オーブには。
それをゼンガーが自分だけ、例外的に曲げてくれたのだ。例え目的が子供のお守とはいえ、有意義な時間であった。
……実はとある男が政府に圧力をかけ、捕らえたザフト工作員らを恫喝した結果だったが、そのような事は彼女も、ゼンガーさえも知らない。
フレイは背伸び気味のエルに、ウインドウを示しながら微笑む。
ヘリオポリス以来の日常が、微かに帰ってきたような錯覚を覚えていた。
しかしそれはもう雰囲気でしか無い。
今あえて御洒落をしよう等とは考える事が出来ない……こうして握っている小さな手を振り解いて、勝手に振舞う事が出来ない……。
かつての自分はもう、随分遠くに行ってしまったのだなと、フレイは笑った。
自傷気味のそれは一方で、満足気なものではあった。
変えたのは彼、変わったのは自分……そして変わり続ける事を選んだのも自分自身。
誰に何を言われても、決断したのは自らの意志でだ。後悔は無いし惨めだとも思わない……。
ジョージ=アルスターの娘ではなく、今の彼女はフレイ=アルスターそのものとして立っていた。
予想よりも早くゼンガーはこちらに戻って来た。
イルイは人見知りが激しい為、ゼンガーの側から離れようとしていない。
人が多くいる街中が苦手な様で、きょろきょろして忙しない……未だ親が見つからないのだから不安なのはしょうがないが。
イルイがフレイを信頼していない訳では決して無いが、矢張りゼンガーと比べ安心感が桁外れなのだろう。
軽く嫉妬するものの、フレイはイルイがどれだけゼンガーを頼りにしているか理解している。
これからもずっと戦い続ける自分と違い、イルイとはここで別れるのだ。少しぐらいはいいかと妥協はする。
……妥協はするが譲りはしないが。
これで終わりかと消沈するが、少しでも外の空気を吸えただけでも……とフレイは考えていたが、そうでは無かった。
大真面目なゼンガーの顔に、きょとんとするフレイだったが、やがて破顔し笑い出す。
フレイは悪戯っぽい笑みを浮かべゼンガーと腕を組み、残った左手をエルへと差し伸べた。
そんな微笑ましい光景が繰り広げられた二ブロック先……平和な空気にどうも馴染めない一行が居た。
故郷を吹き飛ばされたククルの言葉だけに、他の三人には重い。
彼らと周囲の人々との格差は大きい。
平和を過信するが余り、緊張感が無いのだ、オーブの市民は。
きっとヘリオポリスも、第8艦隊の事も、モニターの向こう側の別世界としてしか考えていないのだろう。
……その別世界で命を賭してきた彼女らには、苛立ちすら覚える態度だった。
イザークもディアッカも疲れが出て来た。
早朝から今にかけて、足を棒にして歩き回ったが成果なし。
モルゲンレーテの制服も偽造IDもさして役には立たず、焦りだけを募らせて一旦工場区へと向かった。
疑念は既に渦巻いているのに、それを証明する術が無い……ククルにもそれは解っていたが、解決方法は無い。
その時、出し抜けに道路側から声が響いた。
外来者らしい四人組がこちらに声を掛けてきた。
モルゲンレーテの制服が余計な目を引いてしまったのだ。
表情を隠すようにして耳打ちしたイザークに対し、ククルはすぐさま行動に移る。
美しい外見とは裏腹の、何時も通り口調だったので思わず唖然となるイザーク達。
だがこれが彼女の“地”であって、下手に演技でもしようものなら逆に怪しまれるだろう。
……らしくない喋り方の彼女を見て、自分達が動揺してしまうかも知れない。
ククルも思わず突っ込みたくなるほど四人組は“変”だった。
声を掛けた長髪の男は、態度に似合わず眼光も鋭く立ち振る舞いも油断が無い。
隣の金のメッシュが入った男は只寡黙であったが、こちらに疑惑の視線を向けている。
連れている二人の少女の出で立ちはもっと異様だ。
やたらとフリルがついたドレスと大きなリボンが特徴的な少女に、ボーリング球程度の大きさの謎の発光球体を抱えた青髪の少女。
後者に至っては自らの身長以上もある太刀を背中に背負っており、全員合わせて大道芸人か何かとしか見えない。
誰がどう見ても、モルゲンレーテの関係者には見えないだろう。
ニコルの理性的な物言いにイザークは沈黙した。
それを見計らってククルが口を開いた。
呆気に取られるディアッカを尻目に、ククルは歩み出した。
ククルの視線は、一団と共に去る少女の背中に向けられていた。
その小さな身体に背負われた巨大なカタナは……紛れも無く、ヘリオポリスでまみえたゼンガーの物だったのだ。
代理人の感想
だ、誰だっ!?
うーむ、さっぱり判らん・・・・・(汗)。
まさか「龍虎王伝奇」の面子って事は・・・ないよなぁ。