「こんなものを我々に提示して……」


 アークエンジェル出港直後、キサカはとある男に呼び出され、一方的な情報提供を受けていた。
 それは、オーブ国内に潜伏しているザフト・連合両軍の工作員の所在についてだった。
 潜伏場所や暗号の内容まで詳細に列挙されており、元々人口も少なく、逃げ場も少ない島国オーブでは、脱出する以外逃げ場は無い。


「我々はあくまで中庸。どちらにも良い顔をしてはならない」
 


 先日から行方が解らなくなっているという、不審な釣り人の事がキサカに浮かぶ。


「48時間だ。その間にケリがつかなければ……私達が本格的に動く」

「……何故その様な情報を私に流すのです」



 キサカが対峙している仮面の“人物”は、捉え所の無い部分が多すぎた。
 モルゲンレーテの中核メンバーとして突如頭角を現し、陰に日向に、オーブの内政にさえ干渉している。オーブ五首長の一つ、サハク家との繋がりも噂されている。
 アスハ家に近いキサカとは、実質対立している勢力なのだ。


「オーブ陸軍第21特殊空挺部隊所属、レドニル=キサカ一佐。私も一人の人間だ……なるべく血を見る事は避けたいのだよ」


 詭弁だとキサカは嫌悪する。
 今までこの仮面の“人物”が関わったであろう、数々の所業を知るだけに。
 そしてそれは即座に証明された。


「従う者には繁栄を約束するが……これを良しとせぬ者、歯向かう者、犯そうとする。そんな……」


 まるで言葉を舌で転がしているかの様だ。
 そして選び抜かれた言葉は……。


武神装攻ゼンダム其八 奴らに絶望を



 本来の獲物とされるべき存在と、オーブそのものを運命付けるものであった。







 一方……。


「ちょっと! どう言う事なの?!」


 久方ぶりにアークエンジェルへと戻ったフレイに待っていたのは、到底承服できない人事だった。
 


「大丈夫! まかせて!!」


 スカイグラスパー二号機の前で、フレイはトール相手に揉めていた。
 隣でマードックも難しい顔をしており、一度決定したものの納得はしていない様だった。
 ……スカイグラスパーの正式な戦力化と、そのパイロットがトールである事に。


「貴方、実戦経験は結局無かったでしょう?!」

「シミュレーターはやったって!」


 事実、トールがこなしていたシミュレーション上の飛行時間は、相当な物であった。
 シフト外の休息中にも休む事無く、それこそ一心不乱に……。
 


「……まあ、支援だけだしそれ程問題は無いでしょ」

「フラガ少佐っ!」


 ガリガリと頭をかいているフラガに詰め寄るフレイだったが、突如真顔になって耳打ちされた。
 


「……少なく共、今の嬢ちゃんよりかはマシだ。余裕消えてるぞ?」

「……!!」



 鋭い指摘に言葉に詰まるフレイ。
 原因は他でもない……あの女に他ならなかった。
 今飛び出してしまうと、とてもじゃないが支援だけでは我慢がならない。
 機体をぶつけてでも止めたいと切に思い始めていたのだ……フレイは。 


「こういう事になったんだしさ。俺も頑張らなきゃ。フレイも、色々大変だけどさ……知ってるか? サイは軍事関係の事、今凄い勉強している」

「サイが?」

「だって俺達軍人になったんだもん。自分で志願したんだもんなあ」


 しっかりとした口調のトールを前に、フレイは戸惑う。
 確かに……少なく共オーブの三人よりも遥かに覚悟は出来ている。技量だって、申し分無いだろう……。
 しかしそれを、あの女を前にして振るう事が出来るのであろうか? ゼンガーが本気になり、自分でも身動きが取れぬほどの圧倒感を持つ……。
 そんなものと戦う羽目になったのは成り行きと言うよりかは……自分が言い出した事。
 フレイは自責を感じ、それ以上は何も言わなかった。


「護らないとな、みんな」


 ……しかしフレイは勘違いをしていた。
 トールだけはフレイと同じく、自らの意志で、誰に続くでもなく“志願”している事を。
 それは出発直前、ブリッジからちらりと見えた幼女と……決して無関係では無かったのだ。
 


「フラガ少佐、トール。出撃だ」


 そうしている内に、パイロットスーツに身を包んだゼンガーが、カタパルトデッキに現われた。
 トール達は目を丸くしていたが、フレイは厳しい表情で問う。


「来るのね……」

「領海を出れば、奴らは来るぞ」



 はたして、その直後に警報が鳴り響いた。


 





〈出撃する! 今日こそ大天使を冥府魔道に堕とそうぞ!!〉


 ボズゴロフ級からマガルガが飛び出し、それに続くかのように収納状態のグゥルが射出される。
 空中で展開したグゥルに乗ったマガルガは、他の三機が同様に準備が整うまで待たなかった。
 まるで矢の様に、一直線にアークエンジェルへと向かっていった。


「時間は無い! 雑魚には目もくれるな、大天使だけを狙え!」


 続いて戦闘体制に入ったイザークが、ディアッカとニコルに檄を飛ばす。
 ククルが行った今、暫定的な司令塔は彼だ。


〈今のお前には、ゼンガーのオッサンも有象無象の一つって?〉

「上手くいこうがしくじろうが、生き残れれば相手が出来る! お楽しみは後回しだ!!」


 ゼンガーにはククルが当たる以上、必ずアークエンジェルからは引き剥がされる筈だ。
 その間に撃沈できれば素晴らしいが、それが果たされなかった場合でも伍式とは相対できる。
 ……何せ伍式は飛翔能力が弱い。相手がこちら側を撃退できなかった場合、置き去りにされる可能性は大なのだ。
  


「解ってるなニコル。邪魔はするな。あれの相手はククルに任せておけばいい」

〈……〉


 返事は無い。
 イザークは暫くそのままにしておいたが、射程圏内に入るまでそう時間は無く、ディアッカが口を出す。


〈おい!〉

〈……そうやって、またあの人を切り捨てて、見捨てて……僕らは一体何やってるんですか?!〉


 突如聞こえて来た上ずった声に、ディアッカはうろたえる。
 しかしイザークは声に微かな嘲りを浮かべ、ニコルに答えた。


「何勘違いしている。切り捨てられたのは俺らだ。ゼンガー相手“では”使えないからな」

〈……!〉

「奴はスタンドプレーしか出来ないんじゃない……集団戦において各個の繋がりを計画的に分断し、相手を孤立させて自らのペースに持っていく……しかも相手が多ければ多いほど、その時間的感覚は短くなる。素人から見れば正に一騎当千の働きをしているように見えるだろうがな」


 アフリカ戦線での嵐の様な伍式の攻勢を目の当たりにした、イザークなりの分析だった。
 乱戦状態であれだけの数のバクゥを難なく、次々となぎ倒していくのだ。
 連携を阻止し、一体一体確実に致命傷を与える事で……嫌でも目に焼きつくだろうが、それを冷静に見つめる事が出来る者は少ない。
 余りに圧倒的な事象に対し……人は理解を捨ててしまう事が多いのだ。イザークは数少ない例外になろうとしている。


「だが……ククルやバルトフェルド隊長といった、“同類”には意味が無い。全ての意識を一人に集中しなければ、勝てないだろう」

〈じゃあその隙を……〉

「つくづくお前は臆病者だなニコル! 神経が研ぎ澄まされているのは奴だけではない……ククルもだ! 敵である奴ならば奇襲もある程度は考えているだろうが……俺達を信じたククルはどうなる?! 内心“微か”に失望するだけだろうが……その“微か”が命取りになるぞ、あれ相手ではな」


 アフリカ戦線でも、ラゴゥとの戦闘が開始された途端快進撃がピタリと止んでしまった。
 両機共性能が特化した特別機であり、目立つ。
 それでなくとも挙動が他のMSと一線を駕しており、他の兵では動きについていけないばかりか、巻き添えを食らい逆に足を引っ張る事になる。
 だからアークエンジェルも、ザフトアフリカ方面軍も、両者の戦いに手を出さなかった。
 武人同士の戦いだと、余計な気を回せる余裕等……戦場には無い。


「隙を待つな。作れ! 俺らが大天使を落としさえすれば、奴とて黙ってはいない!」

〈……はい!〉


 静かで強い返答に、イザークは納得して頷いた。
 ただ……。


〈やらせませんよ……やらせは……!〉


 こんな言葉が聞こえてきたのだ。安心には程遠い状況であった。





「ECM最大強度! スモークディスチャージャー投射! 両舷煙幕放出!!」


 艦橋脇から放出された煙幕が船体を覆い、周囲は煙に包まれる。
 これで視界はゼロだが、今の戦艦は有視界戦闘等殆ど配慮に入れていない。センサーと、もう一つ……自在に飛び回る目が頼りだ。


〈わぁぁぁぁ!〉


 トールの悲鳴が艦橋まで聞こえたが、それ程状況は危なっかしく無い。
 発進直後のGにうろたえはしたものの、直後のデュエルからの攻撃を難なくかわす事に成功している。
 初出撃で、しかも生兵法しか学んでいないのだ……はっきり言って大金星だ。 
 


〈こちらスカイグラスパー! 聞こえるか?! 敵の座標と射撃データを送る!!〉


 喚くようにトールが報告する。
 航空機による高度からの偵察は、ニュートロンジャマーの影響と、制宙権喪失による軍事衛星無力化によって非常に重要な位置を占めていた。
 そして、正に“天の目”を得た大天使に、恐れる者は何も無い。 
 この煙の中で迷わず二本の光条を発し、何かを撃ち落した。


 
「……デュエル、バスターの機影消失! 撃退に成功!!」

〈やったぜ!〉


 ミリアリアも、トールも歓声を上げるが、マリューは厳しい表情で怒鳴った。


「フラガ少佐は?!」

〈はいよ〉


 飄々とした声を聞いた途端、マリューはほっと息をついた。
 


〈だが安心するのはまだ早い。さっきのは足場叩き落しただけだしな〉

「矢張り……」



 もう一撃、何処かから来る……とマリューは身構える。
 ナタルも考えを察し、すぐさま浮き足立った面々に睨みを効かす。
 何も先程の二機は、偶然射線軸上に居た訳では無い。
 フラガが囮を買って出ていたのだ。
 ……その方法とは何とも原始的なもので、対艦刀を除く全てのソードパックを装備して、敢えて煙幕内を飛び回っていたのだ。カガリの時とは逆である。
 煙幕内ではレーダーも視界も利かない為、不鮮明な外部画像に頼るしかないのだ。ソードパックそのものを伍式と見ても無理は無い。
 今回も上手く行ったと考えるか、それとも上手く行き過ぎているか……迷う事無くマリューは後者を選択した。
 ……後が無いのは、自分達だけではないのだ。
 マリューの懸念材料はもう一つ。
 先行して出撃したMS……マガルガの行方が全く知れない事だった。
 ブリッツもミラージュコロイドを展開しているのか、姿が見えない。
 両者共下手に攻撃して位置を知られるよりも、乾坤一擲のタイミングを計っているのか……。
    





 ククルはそこまで我慢強い性格でも無かった。
 早々とグゥルを投棄し、近くに浮かぶ群島で只ひたすら待っていたのだ。
 動かないのはエネルギー温存の為と、もう一つ……イザークらの“邪魔”をしない為であった。


〈お前も知ってのとおり、俺の戦いはお前の一撃によって幕を開けた。だから……決着は俺自身の手でつけなければならん〉


「……そなたに、感謝を」



 海上から、対艦刀一振りだけを握った伍式が上陸する。
 逆光に照らされたマガルガが、ビームサーベル一本でそれを迎える。
 他にどうもしない。
 双方、前に進み続け、幾度と無く交わった己が道……今度ばかりは、どちらかを押しのけなければ、先は無いだろう。
 ……相手がどう足掻いても、辿り着けない新たなる境地へ向かう者。
 それを過去と言う、確かな大地を持たない故に……それ程遠くへは飛び出す事等叶わないと蔑視し、例えどれだけ時を使おうと、自らの足で先を目指す者。 
 ところが。



「……今更そなたが何者であろうと構いはせぬ!」

〈それはこちらとて同じ事! 推して参る!〉

「フッ、貴様の口上もそろそろ聞き飽きた。その対艦刀を墓標にしてやる!」



 両者そんな些細な事、早々と忘れていた。
 ……この先からは言葉は無かった。
 言葉よりも早く、躍動する衝撃(インパクト)の連続。
 まるでヤスリで削られていくかのように、群島の無骨な岩肌が削られていく。
 二人共不用意に跳躍はしない。
 その鋼鉄の足で踏み留まり、その反動すら機会として利用する。
 何より相手の一撃は深く、重い。その身一つだけでは受け止める事は叶わない。
 故に大地から力を逃し、また同時に力を得ている。電気的動力で蹴り上げられた足が躍動を生み、もしくはそのまま凶器となって相手に襲い掛かるのだ。
 ……この星の、大地を知らずに生まれ出た彼女もまた、その恩恵に預かっている。
 元来。この世界は平等に……誰にだって何でも与える物なのだ。


「……フ」


 突然、彼女に笑みがこぼれた。
 確かに機会は平等。だがそれを手にするか、しないかは己次第なのだ。


“ドォォォッ……!”

〈!〉


 接近している為、ノイズごしに微かな驚嘆もククルに響いていた。
 この様な地上戦でグゥルは邪魔だ。しかしそれを切り捨てるようでは、機会を捨てたも同然。
 それは勝ちを捨てる事にも繋がりかねない。
 だから、ククルは取っていた。相手の手をほんの僅か鈍らせる為の、カードとして。
 


〈まだ……諦めていないか!〉



 グゥルはアークエンジェル直前で爆散していた。
 あらかじめ航路を設定しておき、その時が来るまで高度を旋回させていたのだ。
 そして、頃合になった所で急降下させるという、時間差攻撃を狙ったのだ。
 もっともそれは簡単に阻まれたが。


「そうとも。そして我が仲間達は、貴様が思うほど呆気なくは無い」


“ドッ……!!”


 今度の衝撃音には、流石に伍式も視線を一瞬逸らした。
 アークエンジェルの船体下部の、翼に当たる部分からもうもうと立ち込める煙は煙幕ではない。
 深刻なダメージから来る火災からだった。


〈グッジョブ!〉

〈一矢は報いたぞ……!〉


 その直下にバスターとデュエルがいた。
 通常、グーンやゾノといった例外を除けば、MSは海上戦闘は不可能に近い。
 大半の武装が使用できないどころか、下手をすれば機体そのものが無力化され、沈む。
 だがXナンバーは過酷な環境下での運用を考慮に入れていた為、グゥルが撃破されても自力帰還が可能だったのだ。
 しかし今回ばかりはすごすご退散、という訳には行かなかった。
 デュエルがアサルトシュラウドの大推力を生かし、バスターを肩車するような形で一瞬だけ海上に出たのだ。
 海中からの脱出は果たせなかった物の、バスターの上半身は完全に水から出ていた。そこから可能な限り砲弾を叩き込むという荒業をやってのけていた。


〈!!〉

「掟破りが貴様だけの特権と、ゆめゆめ思わぬ事だ!!」


 そして光条が、マガルガの腹部から伸びた。
 ……580ミリ複列位相エネルギー砲、スキュラ。
 X−303がマガルガとして立ち上がってからこの方、一度たりとも使われなかった兵装……。
 何も拘って使わなかったのではない。使い所を、見極め続けていたのだ。
 そして今がその時……その破壊力を存分に示し、岩肌を沸騰させ、海を揺らし、ラミネート装甲をいとも容易く貫通しその翼をへし折った。
 彼女自身、気付いていなかったが……実は誰も切り捨てていなかったのだ。
 只彼らを、自らのもう一つの“腕”として、知らず知らずのうちに振るっていたのだ。





 ところがこれすらも、ゼンガーに何ら驚きを呼ばなかった。
 もっと火急的な危機が迫っている事を知ったからだ。


〈少佐! 横だ!!〉


 突如、何も無い筈の空間にトールのスカイグラスパーがミサイルを放った。
 マガルガとは程遠いその空間へと突き進んだミサイルは、程無くして大爆発を起こした。


「!!」

〈?!〉



 煙が晴れた向こう側から、ブリッツの姿が現われたのだ。
 ミラージュコロイドによって完全に姿を隠し、伍式を捉えるまで後一歩と言う所で大きな誤算があった。
 ……スキュラの放射光だ。
 大出力故に、周囲一帯を一瞬だけだが光が包み込んだ。
 その様子を上空からトールは眺めていたのだが……すぐさま違和感に気がついた。
 何も無い所に影があるのである。
 ……確かにミラージュコロイドは電磁波諸々を全て遮断し、レーダーには映らなくなる。
 しかし自然の原理に対しては無力であった。


「むんっ!」


 そこから先は殆ど反射的とも言える動きだった。
 位相転移装甲が使えない、ミラージュコロイド実行中にミサイルの直撃を受けたために、右腕の機能は完全に死んでいた。
 にも拘らず伍式は対艦刀を槍の如く投げつけ、その右腕を脱落させた。
 Xナンバーの危険性を良く知るからこそだ。基本的に全てのXナンバーは武装規格が統一されている。右腕で半固定されているブリッツのトリケロスが、左腕で使えないという道理は無い。


〈くっ!〉


 右腕の被害をもろともせず、ブリッツは左腕のグレイプニールを掲げ突っ込んでいく。
 だが右腕喪失によるダメージと、バランサー調整がままならないブリッツの動きでは、ストライカーパックどころか対艦刀すらない、身軽な伍式の前では脅威と成り得なかった。


“ガッッッ!!”


 それでも執念と言うべきか。
 身体ごとぶつけるような形でグレイプニールが伍式の右わき腹を掠った。
 だが……悲しいかなそこまでだった。


〈貴方のような人がいるからっ、いつまでもククルはっ……!!!〉


「……俺を倒した所で、何も変わらぬ」


“突!”


〈! かっ……あがっ……!!!〉


 いつの間にかブリッツの腹部には、アーマーシュナイダーが突き立てられていた。
 ……甘すぎたのだ。
 この機体は決してサムライではない。対艦刀が無くとも、必要とあらばこんな手段も取る。
 ……そして急ぎすぎた。
 その焦りが、彼を除く全ての仲間達の行動を、徒労に終わらせてしまったのだ。  
 だから彼が最後に聞いたであろう叫びには……。


〈ニコルっ! この……馬鹿者ォォォォォォォォ!!!!〉

 怒りの色が濃く滲み出ていた。それが誰に対してかは……ともかくとして。
 























 膝をつくような形で、ブリッツは取り残されていた。
 右腕は海中へと没し、何処かへと流れている……しかしそれ以外はさほど酷くは無い。
 ……コクピットに深々と突き刺さった、巨大なナイフにさえ目を向けなければ、今にも普通に動きそうだ。


「ニコル……こんなになっちまってよぉ……」



 戦闘終了直後だと言うのに、早々と現場には一機のジンがいた。
 ジャンク屋にしては無謀で、傭兵にしては熱心過ぎる……そしてザフト軍にしては行動が迅速過ぎた。
 カスタマイズされたオレンジのジンからは、既にパイロットが降り、ブリッツのコクピットを覗き込んでいた。
 機体同様、今にも動き出しそうだった。
 下半身が巨大な鉄の塊りに浸透されていなければ。
 色白な肌とふくよかな唇……そこから若干生々しい青さを取り払う事が出来たならば、確実に。
 だがそれは叶わない。何故なら……。


「……」

「!!! 」


 悲しみに暮れていた、金髪の青年の顔がみるみるうちに青くなっていった。
 ……自分は一体何を無為な事に時間を潰していたのかと!


〈無事だったようだな〉

「……! え、ええ! 機体も、その、無事とは程遠いですがパイロットも!」

〈私のトロンベを回す。それまで持たせろ……次に意識を失ったら終わりだぞ〉

 その言葉から、相手が機体よりもパイロットを優先する事を察し……ミゲル=アイマンは、今にも消えそうな灯火を、消させまいと必死に呼びかけた。 





 

 

代理人の感想

・・・・・・・・生きてたーっ!?

 

 

いや西川もといミゲルが生きてるのはいいとしても、

ニコル君どうにか生き残りましたか・・・・・。

取りあえずはホッと一息。

なんだか怪しい名前でも出てきましたが、取りあえずその事実だけで十分かなと。

 

 

時に、再登場のときは義手と義足をつけて「鋼のMS乗り」として復活ですか?

彼も結構「豆粒どちび」(推定150cm台。母親より背が低い)だし(爆)