オーブ軍のカグヤ撤退から、沖合いで様子を窺っていた連合軍に動きがあった。
 マスドライバーが今回最大の目標だけに、迂闊に大戦力は動かせない。
 かと言って少数の部隊を動かしたところで敵うとは思えない……ならば取ってくる手段は限られていた為、ウズミらも覚悟は出来ていた。
 あの三体のMSが、襲来する事を。


「レーダーに機影じゃ! MSじゃな」


 ここに居るにはやや不相当な老齢の男。
 実は彼はオーブ首長の中でも最高齢のマイリだった。彼のみならず、ウズミを筆頭に残っているのは皆高齢なオーブの重鎮であり、若い人間はもうキラとカガリしかいない。


「ラミアス殿、発進を」

〈了解しました……あの、少佐の行方はご存知ですか?〉


 先の戦闘では一度たりとも姿を見せなかったゼンガーを、気遣うようなマリューの声。
 それに対しククルが素早く応える。


〈発進は私が援護する。奴の事だ、未だここに留まり成すべき事を成そうとしている〉

〈解ったわ……それで、クサナギは?〉

「直に出す! すまん!!」


 クサナギの発進準備が遅れているのは、間違いなくカガリの為だった。
 キラも必死であるが、それ以上にウズミも真摯だ。


「お父様……」

「お前は何時までぐずぐずしておる!! 早く行かぬか!!」


 しかしカガリはテコでも動きそうに無い。
 そうしているうちにアークエンジェルはバスターを乗せ無事飛翔。
 襲来したあの三機のXナンバーも、マガルガの牽制によってマスドライバーから引き離されている。
 ここに来て業を煮やしたウズミは、カガリの手を引いた。


「お父様っ!! 嫌です! お父様が残るなら……」

「我らには我らの役目、お前にはお前の役目がある!」

「でも……!!」



 余りに悲惨な別れを側で見守り、キラは胸が痛む。
 もっと力があれば……もっと聡明であれば、この悲劇は避けられたのだろうか。
 ……無理かもしれない、と今度は冷静にキラは思う。
 人は必ず死ぬ。生まれた順に……それが普通の幸せであり、戦いに身をおく身では解らない。
 師とすら言っても良い、傭兵である女性の言葉……それを踏まえても、この別れは正常ではない。異常で、残酷。
 だが……こうして想いを継がせる事も、泣き喚いて抵抗する事も、惜しむ様に撫でる事も……言葉で別れを伝える事も出来なかった、かつて淡い想いがあったあの少女に比べれば……。
 でも彼女は、それ故に戦いに身を置いて、只の幸せから遠ざかってしまった……それを、カガリに味あわせて良い物なのか。


「……ウズミ首長!」


 クサナギのハッチに辿り着き、待機していたキサカにカガリが押し付けられた時、遂にキラは叫んでいた。


「貴方はオーブの人間である以前に、カガリのお父さんじゃないですか!! その責任はどうするんです!!」

「キラ……!」
 


 カガリもキサカも、唐突な事に目を見開いていたが、何故かウズミは穏やかだ。


「……親がやるべき事は、愛を注ぐ事……そして何より、その子の未来を守る事だ……我々が築き上げた未来はこうして終わる。だがそこから生まれた“そなたら”こそが、我らが希望……」

「……え」


 ウズミが取り出した一枚の写真には、一人の女性に抱きかかえられた二人の幼子の姿が。
 受け取ったキラが何気なく裏返すと、そこには……。
 


「!!!」

「“きょうだい”もいる……カガリ、父とは別れるがお前は一人ではないのだ」

「え、な……!!」

「そなたの父“で”……幸せであったよ……」


 そこに綴られたたった一文。
 それを見て唖然としていたキラは、いつの間にかキサカに引き込まれ、ハッチが閉じた時点で我に返った。


「お父さまぁぁぁぁぁ!!!」


 そしてカガリの嗚咽で、覚醒する。
 この一文には、彼女と自分の十六年分の深い意味が……隠されているのだ。


「……!! 待って、待って下さいよ!!! 僕にも、カガリにも何も……!!」


 しかしレールの上を滑り出したクサナギからは、只ウズミの姿は小さくなるばかりだった。  
 







「……見損ないましたよ、ウズミ=ナラ=アスハ」


 その背後に影が立っていた。
 ウズミが眉一つ動かさず、平然としている事からも……部外者である筈は無かったが、異質だ。


「貴方はあそこで行くべきだった。家族の大切さを理解できぬ者が、国を治める事など……彼女がメンデルの生き残りであるから、父であった訳では無いでしょう?! ならば何故躊躇う事を」

「私達の取る道は決まっていたよ……初めから」


 やけに静かで、眠る溶岩の如き熱の篭った声に、男は……ギリアムは眉をひそめた。


「……古い血を……“バラル”に汚染された我らの血を絶やさねば、あの子らの未来は無い……!」


 ギリアムの視線は已然厳しい。だが静かに仮面を被ると、ギリアム、いやアポロンは一礼して踵を返す。
 


「放たれた種子が……希望(エルピス)たれば良いのですが」


 最後の一言は予知でも、何でも無い。
 彼の中にある、純然たる願いそのものであった。 
 





「結局意思は変わらぬ……と言う訳だな」


 マスドライバー施設から去ろうとするアポロンに、待ち構えていた赤眼鏡の男が問い掛ける。



「……? トロンベはどうした」

「ああ、あれは元々預かりものだ。本来の乗り手が本来の役目を果す為に使う」

「……今更右腕を返せと言われても困るぞ」

「世話を頼んだ愛馬を持ち帰りに来ただけだ。例えるなら、2歳馬のサラブレッドを」


 温和な笑みを浮かべていた赤眼鏡の男の目が、すうっと細まり、再度尋ねる。


「……まだやるつもりか」

「ゼンガーやウズミのやり方でも良いだろう。だがそれでは甘い……それが失敗した時の保険は、必要だ」


 アポロンは眉一つ動かさず去って行く。
 残念そうに赤眼鏡の男は見送ると、先程の余韻も残さず走り出す。


「ならば私は駆け抜けるのみだ……友と共にな」






 


 マスドライバーに走る電流は、マガルガからも見えた。
 その様はまるで、天に昇る橋……しかしククルには、それが自分の為に伸びているとはどうしても思えなかった。
 延ばされた道をひた駆ける、白い弾丸。
 これが食い込む先は、ひょっとすればプラントやもしれぬのだ。覚悟していたとは言え、複雑な想いがある。


「……残念だが、共に行く事は難しいな」



 三機のXナンバーは執拗に襲い来る。
 ここでクサナギに近付こうものならば共に果てる事は明白だった。誰かを道連れにしてまで危険な賭けをする程、ククルは無謀では無い。
 既に彼女の中ではオーブ離脱後の脱出プランが組み立てられつつある。
 ビクトリアやジブラルタルの古参の人間ならば、ククルの事情を解して宇宙に上げてくれるだろうし、パトリックの特命の意味は大きい。
 だがクルーゼが何か先手を打つ前に、動く必要がある……等と考えていたその時、何かが見えた。
 常人ならば単なる空気の揺らぎ程度にしか感じられなかっただろう。
 しかし周囲の空気の流れが明らかに異なる上、波際が不自然に跳ね上がっている。
 三機も早い段階でそれを察知したようで、軸上から退避した途端熱線が迸った。


「ゴットフリート……!!」
 


 収束火線砲特有の、プラズマ対流がマガルガのセンサーに捉えられる。
 射源は不明、と言うより高速で移動している節が有るが姿が見えない。
 ……いや、荒れる海原にはしっかりと影は映っている。
 それはとても歪な姿。
 肥大した右腕に反し、全体のシルエットはスマートであり、柔らかさすら感じられそうな曲を持ち合わせている。
 もっともそれは、見る者が見れば未だ逝き切る事が敵わぬ亡霊の様にも見えただろう……特に、ククルには。


〈行って下さい!!〉


 こんな声まで聞こえてくるのだから末期だ。
 ぼやけた像はいよいよ強みを増して彼女の眼前に顕わになりそうだった。
 


〈僕はまた……貴女を苦しめたくは無いんです!〉


 聞こえない筈の言葉、伝わらなかった願い……。
 それは今でも同じ。目の前の影は……未だ幻でしかない。


「……死に損ないが生を言う」


 もっとも、虚ろであるのはククルも同じなのだ。
 形無き者ども同士、語ることは珍しくも何とも無い。


〈……い?! いやあの……〉

「それとも何か。私がここに居ると目ざわりか? 土で眠るそなたの安息を乱した事、其れほどまでに不快であったか?」

〈そんな、誤解ですって、僕は……〉


 マガルガはこの間に加速途中のクサナギに張り付いていた。
 しかし体制は整うどころか乱れている。背部のリフターを分離したかと思えば、見えない影に切りかかろうとしたフォビドゥンに激突させ、先んじてその歪みを掬わせた。
  


「私は何も聞かんぞ? 死霊の囁きに耳を傾けていては冥府魔道に堕ちるからな」

〈なっ……〉

「呪うにせよ何にせよ……姿を見せよ!」


 それを聞いた影は、軽く舌打ちすると同時に、沈殿し固まりつつあった何かが溶け出していた。


〈貴女って、人は……!〉


 それは愚痴であったり、顔を滴る二筋の汗だったりと、姿を変えて外へと溢れ出す。
 それは墨の如く歪みに落ちると、瞬く間に広がっていく黒き色。
 何かが埋め合わされようとする中、泡沫で過ぎなかった彼の姿も、いよいよ夕日に晒される。
 闇に沈む事があっても、光を前に去る事は……矢張り出来なかったのだ。


「来い! 全てはそこからだ、ニコル!!」

〈……!!!〉


 黒い影、ブリッツがリフターを蹴った。
 瞬発的に加速を得たブリッツは延ばされたマガルガの手を取る。
 重く、飽くほど巨大な大砲である右腕とは違い、手に取る左腕は華奢であった。
 それは影の主が未だ失わない、生者としての温もりも同じくそこに。


「トリガーを寄越せ!」


 フォビドゥンによってリフターが引き剥がされ、吹き飛び、翼を折り飛ばしつつ海を跳ねている時、既にククルは反撃と逃走の手筈を同時に整えている。
 マガルガは右腕でブリッツの腰部を抱きこみ、空いた左腕で可動式のトリガーを引き寄せた。
 突貫工事で無理矢理MSに携帯可能にした事が窺える、一見雑な作りではあったが、機能的には大成されている。
 こうしたイレギュラーな使用にも柔軟に対応可能なアームとグリップの電力コネクターの存在は、本来は不可能な第二射を行う事を可能にする。
 


〈あ、やっべ〉


 いち早くその動きを察知したオルガが、サブフライトシステム代わりに乗っかっていたレイダーを蹴る。
 何の説明ナシの唐突な行動を前に、レイダーは失速し海面に激突する。その直下、直上を熱量が駆け抜けていき、同時に寄る辺無き者達が、地球と言う揺り篭を駆け足で脱していった。






 それを見届けた安堵の溜息が、オノゴロ、カグヤ全域で広がった。
 全てを滅ぼし尽くす苛烈な溜息だ。オーブ軍、モルゲンレーテの軍事に関するありとあらゆるデータが、全て消える。
 それは古き血も例外ではなかった……カグヤに残った人間で、ウズミを含め生き残った者は誰も居ない。


〈……ま、いいんだけどさ。人類みんなの遺産は残ったからさあ……後で壊すけど〉


 フォビドゥンの鎌の柄尻が、マスドライバーの一点に突き刺さっていた。
 ……自爆用コード受信機だ。
 マスドライバー程の超巨大建造物を一気に爆破するには、アナログな点火装置では不安が残る。
 しかしニュートロンジャマーの影響でそれほど電波に頼る事も出来ず、幾らかの中継点が存在したのだ。
 これらの位置は巧妙に隠されており、人力であろうがMSであろうが、発見と無力化は不可能に近い。
 それを一撃で、まるで初めから解り切った事かの様に、やってのける彼らは“神懸っていた”。
 


〈俺らを出し抜くなんて、甘ーい……〉

〈直に追いついてミンチだ! 追撃!!〉

〈……〉


 軍事施設とデータ諸々は確かに惜しいものの、本命たるマスドライバーのほぼ無傷での確保はそれを補って有り余る。
 だがオルガがそれが逆に不安だった。上手すぎる話だと。
 この不条理に、専横に。あの噂の剣が何も感じぬ訳が無い。
 あの巫女があそこまで拘り、求める者……ゼンガー=ゾンボルトが。


『オーブも、世界も……』


 その時、二度と空を見る事も無かろう、炎に消えた筈の愚者の声が聞こえた気がした。
 いいや、声だけではない。
 その決然たる意志、道に奉じる盲めいた覚悟……消え行く存在である筈なのに、寧ろ相乗したかのように膨れ上がる気配。


〈……!!!〉
 


 
 その意志は消えたのではない。継がれたのだと悟った時、オルガは勝ち誇るシャニを蹴飛ばして共に海にダイブする。
 刹那、轟音と共にマスドライバーの基礎部分が吹き飛んだ。
 重力に従い、宙にたゆたう暇も無く、連続して放たれる膨大なエネルギーがレールを溶かす。
 後に残ったのはスクラップにもならない灰の塊り……炎をちろちろと残しつつ海に降いでいく中、カラミティが浮上して陸地を見た。
 途端、ああやっぱりと手で顔を覆った……。


「貴様らの好きには……させん!!!!」


 爆誕した青き機神。
 今しがた消えた破滅と言う業火すら取り込んだかの如く、火力を惜しむ事無く行使していた。
 燃え残ったモルゲンレーテの施設を、文字通り灰塵にしていく様は悪魔の如き。
 それに触れようとする者、関わろうとする者はいなかった。いる訳が無い。
 暴虐とも言える壮大な火葬に誰が好んで巻き込まれようとするのか……。
  


「同胞達と共に、この世へ混乱や破壊をもたらす悪と戦い続ける……」


 それでも、炎の中に、破壊の中にあってもその存在は邪悪と言うよりかは、只純然であった。
 純然で有るが故に、迷いある者達には悪寒すら感じる眼界の光景。
 全身を蒼と紅の装甲に身を包んだ、強大な武士(もののふ)そのものが、更に吼える。
 










武神装攻ゼンダム
其拾壱「武神装攻、見参」


 






 赤熱しきった砲身が、畳まれる。
 周囲には最早炎しか無く、上を向いても炎が見える。
 立ち昇る、希望の灯火……。


「行けッ! 宇宙へ!!我らの次なる戦場へ!!」


 そこに自らの立ち位置があるかどうかは……これからの立ち回りで決まる。 
 畏れのスキを突くのは教導隊の常套手段とは言え、宇宙と、地上では違う。
 真空は何者も逃さない決戦場であり、逃げ場は無く、勝って帰るまで救いは無い。
 しかし地上はあくまで甘い。その足が生存を望む限りは、逃げるという選択すらも容認するのだ。
 余裕は油断を誘うと同時に安堵を呼ぶ物でもある。厳しい戦いをゼンガーは覚悟していた。


〈でぇ、アンタはサムライらしく討ち死にでもするか? そんな事は無いよなあ……アサルト1〉


 ……いや、例え鎧をうち捨てる羽目になったとしても、強大な殺意を前に怯まず、それこそ身一つで戦う者もいる。
 しかし勇気と蛮勇は異なるものであり、そんな命知らずで掟破りな者は大抵は力尽きている。
 だがそんな中でも、弾丸と死神に嫌われ三途の川の渡し金すら持ち合わせていない無謀な人間はいるものである。


〈中尉、そんな慇懃無礼な……申し訳ありません少佐、ご覧の通り変わらずでして〉

〈テメエ、いつからアタシに説教たれるほど偉くなりやがった?ちょっとハッチ開けろ。シメる〉

〈外気温が高すぎます! 空調がなかったら蒸し焼きですよ自分ら?!〉

「オクト1にオクト2か……変わらず元気な様だな」


 真紅に染められた二機のストライクダガーを前にして、ゼンガーは郷愁にかられていた。
 彼らは教導隊とは浅からず深い因縁を持つオクト小隊の生き残りである。
 度々共同戦線及び指導を行う事があったものの、良い意味で教導隊のやり方に染まらなかった。
 ともすれば濃すぎるそれらを抽出し、生かす事に成功した数少ない軍人である。
 だが同時に悲壮すら浮かべる。彼らは如何なる境遇であろうと折れる事は無い……ザフトでも地球軍でも無いオーブに対して、躊躇う事は無かっただろう。


〈よりにもよって、アタシ達を裏切るなんざ……どういうつもりだ、え!? 隊長さんよ!」

「……その答えは自分で見つけるがいい。俺を倒すことによってな」

〈ヘッ、裏切り者の末路はだいたい相場が決まってるからな〉

「ただの裏切り者ならば、な」


 増加装甲と各種調整により、完全より更に上の域に達している漸駄無。
 だがオーバーヒートにより殆どの兵装は使用できない。かつての通り、腰部ビームサーベルに手を伸ばそうとするゼンガー。
 


〈おおよ。こちとらアラスカ帰り、そんじょそこらの裏切り者とは訳が違うぜ〉

「……何と」


 アラスカ戦における彼自身が把握する成果は、余りに少ないものである。
 大天使の剣であり、悪を断つ剣であるゼンガーは、その事について求める見返りは、殆ど無いからだ。
 しかしオクト1の様な生っ粋の戦士にとっては、脊髄反射的に助けて貰っても複雑な想いがある。
 彼女も真剣なのだ。自らの“筋”を通す事は自らの生き様にも繋がるのだから。


〈……レーツェルの旦那がアンタを待ってる。黄昏野郎が時間稼ぎしてるうちに、とっととずらかろうや〉
 


 だからこそ、第三勢力……シースの一員としてカグヤへ強行軍をするという危険な任務に、敢えて志願したのだ。
 返し切れない借りに対し、筋を通す為に。

  
















 オノゴロとカグヤは燃えていた。
 千切れ折れたマスドライバーを中心とし、煌々と光が溢れている。
 例え日が沈もうとも、理不尽に消えた炎の残り火を、少しでも絶やさぬ様に。
 その最期の瞬きを前に、躊躇し動けない者も居ればこれ幸いと動く者も居る。
 


 
〈たああああああ!〉

「っ!」


 白い死神相手に、夕日の如き存在感を持った西洋甲冑が、只一機奮闘していた。
 漆黒と光の狭間を言ったり来たりした、パイロットたるミゲル=アイマンにはある意味相応しいカラーであった。
 かつての英雄も今は昔。ヘリオポリスで敗退した後、奇跡的に生き残ったものの……パトリック=ザラによる巧妙な宣伝の格好のエサとして、彼は“死人”にされた。
 早急過ぎた対応は歪んだ応酬を生み、司法局の手からある傭兵の力を借りて逃れた彼は、同じ様に傭兵として食いつなぐ事しか出来なかったが……怪しげな赤眼鏡に見つかったのは運のツキとしか言い様が無い。
 とはいえ、尽きかけていた運を使い、家族と再会できるならば……そう思えるからこそ、ミゲルは戦っている。
 何時か帰れると信じられるならば……先を越されても文句は言わない。


「ニコルの奴も帰れたしな!! 俺だって多分、恐らく大丈夫!」


 一向に効果が無いマシンガンを放棄し、腰部にぶら下げた重斬刀を十字に合わせて鎌を抑え切った。とはいえいきなり罅割れが起こるのだから幸先は良くない。
 そろそろ離脱を試みたい所ではあったが、グゥルは撃破されてしまっている。
 ここから徒歩行軍で戻るのは“面倒ではある”、と余裕めいた思考をしているとき、突如横槍が入った。
 ビーム砲と思われる二本の線条が、フォビドゥンの偏向装甲上を撫でるようにして曲がる。
 そのスキを逃すほどミゲルは前の敵に執心では無いので、ビームが発せられた方向目掛けてひた走り、それに飛び乗った。
 ……翼を中程で折られ、揚力を失ったマガルガのリフターだ。
 本体からの遠隔操作を失い、最も近隣に存在する友軍機に回収を求めるべくプログラムされていた……と解するべきなのだろうが、この時ミゲルには、これがククルによる置き土産の様に思えた。


「あいつの大盤振る舞いぶりにも参るな……返しが怖いけど」


 一時的に制御をジンに移し、全速力で海域の離脱を試みるミゲル。
 翼が折れている為空は飛べぬものの、海上バイクの如く洋上すれすれを浮く事で高速移動を可能にはしていた。
 これを追い切れる程の余力はフォビドゥンの方には無く、ミゲルは先んじた仲間達を嬉しげに見上げつつ、帰還していった……。
   
  

 

 

代理人の感想

うおおおおおおおおおおっ!

つーか本気でスーパーロボットだ、ゼンダムっ!(爆)

武装の塊だけに、ある意味ダイゼンガーよりスーパーロボットっぽい(笑)!

そして後はただ一つ、斬艦刀!

いつ装備されるのかさてさてさて!