世界は1つの危機に直面していた。
それは逃れようのない真実。
だが、絶望という闇が充満するこの世界で、唯一運命に立ち向かう者達が居た。
人々は口を揃えて彼等をこう呼ぶ。
Action戦隊 アフレンジャー
日本のどこかに存在すると言われる、Action村。
普段から人々が行き来し、賑わいを見せる場所。
ここはつい最近まで平和だった。そう、つい最近まで。
「…う~ん…疲れた」
Action村のほぼ中央に位置するAction村役場で、1人の男がパソコンを眺めながら苦い顔をしている。
そのディスプレイに映し出されるのは、最近各地で多発している事件の詳細記事だ。
「連日連夜の出動だからな…あいつ等も俺もヘロヘロのボロボロ…ボランティアもつらい…」
天井を見上げ、上で寝ているであろう、仲間達を思う。
彼は仲間たちをまとめるリーダーとして、日々胃炎に悩まされている。
「幾ら変身しても、中身は生身の人間だもんな…」
イスの背もたれに身体を預け、溜息をつく。
ギイッと年代モノのイスがきしむ。それは、彼の体重に悲鳴を上げているようにも聞こえた。
「いや、お前はどっちかというと、既に人間の枠を超えていると思うぞ?」
「………おい」
背後からかけられた容赦ないツッコミに、恨みがましい目で答える。
その視線の先には、漢字二文字が異様にデカくプリントされているTシャツと、それを着こなす男が居た。
「なんだ、心配してやってるのに」
「今の言葉のどこに、心配という成分が含まれているんだ?」
「詳しくは栄養分析表を参照のこと」
「それでカロリーが0だったらどうしてくれる?」
「ダイエットに最適じゃないか」
よくわからない会話が延々と続く。
しかし、そのボケとツッコミが繰り返される部屋に、突如として非情を知らせるアラーム鳴り響く。
2人は顔を見合わせ、即座に上で寝ているはずの3人に非常事態を知らせた。
「…その前に、その格好はなんとかならないのか?」
「アホ。Tシャツオンリーは、男の正しい寝巻きスタイルだろうが」
「世界でただ1人の考えだと思うぞ…」
アクション村郊外――
ここでは、ある集会が開かれていた。
その場に集められた数百にも上る人間に向かい、1人の男が声を張り上げる。
「聞け、若人諸君! 私はメイドさんが好きだ! 大好きだ!
そのメイドさんがどのような所属であれ、私はメイドさんが好きだ!
この地上で出会える、ありとあらゆるメイドさんが大好きだ!
だから2次元だろうが、3次元だろうが、その境であろうが、関係ない! どれでも愛することが出来る!
メイドさんと昼下がりに2人っきりでお茶会をしながら、夕飯のメニューで話を弾ませる…心が踊らないか?
鼻歌まじりに洗濯物を干し、それを何気に手伝うご主人様を見つめ、頬を赤らめる…心が澄み切らないか?
パタパタと廊下を走り、ご主人様に『コラッ』と叱られ、ペロッと舌を出しておどける…心で感動の鐘が鳴らないか?
お風呂掃除をする為に、スカートをまくり上げ、白い脚が見え、更にふとももが見えそうで見えないギリギリ感…心が最高と訴えていないか?
頼んだはずの物を忘れてしまう、ちょっぴりドジな一面を見せ、目を潤ませる…心で絶頂を覚えないか?
そしてなによりメイド服は至上の物。もし、メイドさんがメイド服を脱いでしまったら…心に木枯らしが吹かないか?
そうだ! 私は…いや私達がメイドさんを、純情で可憐で華やかなメイドさんを所望する!
同志諸君。私につき従うメイド萌え同志諸君! 君達はメイドさんに何を見出す?
年下か? 年上か? おっとりさんか? むっつりタイプか? ドジっ娘か? 厳しさの中に優しさか?
どれでも構わない。君達が望むメイドさん。それは君達だけのメイドさんだ!」
『うおおおおおおお! ジーク・メイド! ジーク・メイド!』
「諸君! 我々は今こそ団結し、比類希なメイドさんを探しだす! そして、我等が願いをぶつけるのだ!」
『メ・イ・ド! メ・イ・ド! メ・イ・ド!』
「我々は僅か数百の一派にしか過ぎない…だが! 我々のメイド心は何よりも強い!
我々が力を合わせ、全力で当たれば、スクール水着だ、セーラー服だ、チャイナ服だなどといったモノに、
心奪われた輩の目を覚まさせることなど容易だ! さあ、今こそ団結し、まだ見ぬ同志に呼びかけよう!
メイドさんの声を! 匂いを! 姿を! そして心を! 奴等に見せ付けてやろう!
奴等は知らないだろう…この世には未知の領域が存在することを…それは何だ諸君!
『メーイードッ! メーイードッ! メーイードッ!』
「よし! 我等は今ここでご主人様となり、メイドさんを発掘する!
そして更なる高みを目指すのだ! その為ならば手段は問わない!
さあ行こう同志諸君! 世界を…いや、歴史をメイドさんで萌やし尽くしてやろう!」
『メイド万歳! メイド最高! メイドさん、カムヒアー!』
「だが、我々には1つの障害がある! そう、我々を卑下する輩達の事だ!
あろう事か、奴等は我々を妄想癖野郎だの、サディストだのとののしった! これは屈辱の極みである!
更に奴等は我々ご主人様とメイドさんの関係を引き裂こうとしている!
これは許されない! そう、これは罪! 罪である!
罪は罰をもって裁かなければならない! さあ同志諸君、武器を持て! 世界の安定の為に戦おうではないか!」
壇上で宣言した男に同意し、そこに集まった数百の人間は拳を突き上げ、雄叫びを上げた。
それぞれが鬼気迫る表情をし、目は野獣のようにギラついている。
『そうはさせないぞ!』
「む!? 誰だ!?」
突如として響き渡った声に、壇上の男は辺りを見渡す。
集まっていた男達にも、動揺の表情が見られる。
「話は聞かせてもらった。確かにメイドさんは素敵だ…だが! その心情を他人にぶつけ、巻き込もうとする考えは頂けない!」
「くっ…我々の理想を邪魔する気か! どこだ! 姿を表せ!」
壇上の男が、そう言ったのとほぼ同時に、集会に使われていた会場の入り口の扉が開く。
そこには5つの影があった。
「村人達の良き理解者と自負するリーダー! アフロレッド!」
「あえて言おう! ノリだけであると! アフロイエロー!」
「メイドのみにこだわる貴様等に未来は無い! アフロブルー!」
「メイド? 笑わせるな! 世界の広さを教えてやる! アフロピンク!」
「とりあえずネタになりそうだから参加! アフロブラック!」
『我等! Action戦隊アフレンジャー!』
『野望を打ち砕くため、ここに参上!』
ズドォォォォォン!
五色の爆発と共にキメポーズを取るド派手な5人組と、その頭上に掲げる5色のアフロ。
会場はシン…と静まりかえった。
「どうした、驚きで声も出ないか?」
アフロイエローが男達に呼びかけた次の瞬間――
『シャァァァァァァァッ!』
堰を切ったかのように、男たちは一斉にアフレンジャーに襲い掛かった。
戦闘態勢万全のところに現れたのだから、当然である。
グシャッ!
ゴギッ!
ベゴッ!
ズブッ!
バギャッ!
景気のイイ音が暫くの間、辺りに響いた。
数分後、その場にあったのは、ボロ雑巾と化した5色のヒーローのみ。
「…なあレッド」
「なんだイエロー…」
「演説が終わるまで待ったのは失敗じゃないのか?」
「それはブルーに言ってくれ…あの登場案はブルーのものだ」
「確かに俺の提案だ。ヒーローたるもの、ここで! という所でしか登場してはいけないと、Action規約第23章11部に記載されている」
「ブラック、俺は今始めて、そのアクション規約というのを知ったんだが…」
「ピンク、俺もだ。しかも23章かい…無駄に多いが、ネタとしてはそこそこだな」
天井を眺めながら5人は『次からは問答無用で押し入ってやる』と、ヒーローらしからぬ考えを同時に抱いていた。
その頃、Action村中央部――
「さあ同志諸君! 我等にもはや障害はない! 仲間を集い、メイドさんと出会いに行こうではないか!」
『おおーっ!』
既に暴徒と化したメイド同好会の面々は、それぞれご主人様となるため、一張羅に着替え準備万端。
これからメイドさんに遭遇する為か、興奮収まらぬといった感じで、先程よりも更に獣じみた雄叫びを上げた。
その光景を影からこそこそ見つめる10の瞳。そう、無事復活し、後を追いかけてきたアフレンジャーである。
「ピンク…本気でやるのか?」
「無論。もはや奴等に温情など必要なし。一気に葬る」
レッドに答えると同時に、ピンクは何かのボタンを押した。そして聞こえ始める地響きとも轟音とも取れる音、
メイド一派の足元が突如として揺れだしていた。
「な、なんだ!?」
誰かがそう言った次の瞬間――
バガンッ!!
地面が割れた。これでもかってくらいに割れた。何故か遥か遠くの山まで真っ二つだ。
勿論のこと、その割れ目に落ちてゆくメイド一派の皆さん。
それは見事といっていいほど、綺麗に全員がまっ逆さまに落下していった。
「見たか! これぞピンクの隠し奥義、思わぬところに落とし穴!」
「隠している意味はあるのか?」
「それ以前に、いつこんなもん作った?」
突っ込まずにはいられないブラック&イエロー。
その疑問に答えるがの如く、ピンクはブルーに顔を向ける。
「ブルー、Action規約にはなんて書いてある?」
「ん? あ~…アクション規約第39章18部、ヒーローの秘密は暴いてはならない」
「つまり詮索するなということか。つーか、さっきまでお前Action規約知らなかったじゃないか」
「挿絵に萌えたからな」
Action規約には、ページ毎に萌え絵が描かれているため、飽きずに全て読めるのだ。
その事に納得してしまう一同。だが、一時の安らぎも束の間。
地割れの底から、地獄の亡者よろしくといった感じで、唸り声とも取れる勝ち誇った男の声がアフレンジャーの耳に届いた。
「くくく…甘い、甘いぞアフレンジャー!」
「なに!? この声はさっきのメイド一派筆頭!」
「生きていたのか!?」
「バカな! あの割れ目は遥か下降、マグマがうねる所まであった筈なのに!」
「だからどうやって作った?」
「ブラック、もう突っ込むな。理不尽なのは誰もがわかってるから」
ブラックの呟きに、律儀に諭すブルー。
他の3人といえば、メイド一派筆頭の声に抗議の声を上げまくっている。
「非常識だぞ!」
「そうだ! 金返せ!」
「訴えられることも考えろよ!」
「ふふふ…ただのボケ集団かと思いきや、やってくれる…ならばこちらも本気を出そう!」
ズズズ…という地響きと共にソレはアフレンジャーの目の前に現れた。
「お約束か」
「ああ、お約束だ」
「いらんお約束だな」
「つーか、常識という言葉は無いのか?」
「だから突っ込むなって」
驚きはこの際、横に退けて、現れたソレを観察する。
アフレンジャーの目の前に現れたソレは、巨大化したメイド一派筆頭だった。
「ふはははは! 我等の結束を甘く見るな!」
「つまり合体したと?」
「いや、融合か?」
「人じゃねえな」
「巨大化した時点でそうだろ」
「極めると人は1つになれるのか…勉強になる」
いそいそと、新たな規約を書き込むブルー。
冷めまくっているアフレンジャーを見据え、メイド一派筆頭は巨大な足を上げ、アフレンジャーに照準を定める。
「死ね…!」
この時、5人の脳裏に今までの人生が走馬灯のように駆け巡った。
「…バイクのパーツが…」
「…燃え道が…」
「…萌え絵が…」
「…まだ、肉と紳士が…」
「…ネタ…」
『まだ…まだ、死ねない…!』
5人の心が1つとなり、5色のアフロが輝きだす。
その光は天に向かい駆け上がっていく。
「な、なんだ…!?」
足を下ろすことを忘れ、片足立ちのまま事の成り行きを見守ってしまう、お約束主義者の巨大化したメイド一派筆頭。
そして、5色の閃光が突き抜けた遥か上空から、ソレは舞い降りた。
『来い、アフロマキマシム!』
5色の光を背負い、表れた巨大アフロ。
アフンレジャーは5色の光と共にアフロマキシマムに吸い込まれる。
「こしゃくな…! 喰らえ、メイド萌えビーム!」
「アフロバリアー!」
アフロマキシマムのアフロ度が3割増しに増量し、ビームを拡散させた。
その光景に怯みを見せる、メイド一派筆頭。
『油断をしたのが貴様の命取りだ! 必殺・アフロストライク!』
アフロマキシマムのアフロ度が7割増しになり、アフロが急回転し始める。
そしてはじけ出す5色の光を掲げ、アフロマキシマムはメイド一派筆頭に突撃した。
「ぐおおおおおおお!?」
ぷみっ
可愛らしい音をかもし出し、必殺技が炸裂。
「む、無念…」
ズゴォォォォォン!
派手な爆発で跡形も無く消え去るメイド一派筆頭。
見事に危険な野望を阻止したアフレンジャー、そしてアフロマキシマム。
5人と1つのアフロは朝日を浴び、ちょっとちぢれた。
「さて、メイドグッズを回収するか」
「手伝うぞブラック」
「山分けだからなピンク」
「「「…止めんか」」」
こうして、アクション村から1つの野望が消え去った。
だが、彼等の戦いが終わったわけではない。
アフレンジャーの戦いはまだ続く。頑張れアフレンジャー! 負けるなアフレンジャー! アフロだアフレンジャー!
今日もアフロがモサッと揺れる。
後日――
「巫女同盟が現れたとの情報が!」
「「「「もういい」」」」
続いてたまるか!
あとがき…です。
あうあうあうあうあうあうあう…なんじゃこりゃなんじゃこりゃなんじゃこりゃー!
という訳で、アフレンジャーです。
ちなみに作中に登場した人は全て架空の人物です! そう受け止めてください! じゃないと刺されそうです!(汗)
…頼みますから、流してくださいね?
では、懇願する彼の∑でした。
あ、サブタイのアレは…まあ、シャレということで(笑)
ではナイツさんにならい、軽くオフレポ。
2/14
この日に備え、私はチョコレートを自作した。
そして、待ち受ける数々の試練!
三陸海岸の贈り物!
『シャア専用ザク』、『DOMサワー』、『GOUFサワー』、『連邦の白い奴』を出すメイド喫茶!
そこで旧千円札で支払いをしようとする風流さん!
同人ショップという甘い罠!
ボーイズラヴゲーム!それに動じない、EMPEPURさん、風流さん、H・Wizさん!
更に繰り広げられる、未知の領域ネタ&チョコ!
…精神力が限界デスヨ……
でも二次会で熱く語った、EMPEPURさんとエアリアルさんには同志の心を見出しました。
三次会のカラオケでは、ふじいさんと風流さんの独壇場。
私とナイツさんは気圧されるばかり…。無論、堕ちました。
夜が明ければ、心も…晴れやしない。朝一でラーメンをむさぼり帰宅。
そして、私の手元にあるのはナイツさんから提供された、ネタとなるべく存在する数々のモノ。
アア、楽しかったデス。次回は何時になることやら…。