時間は深夜。場所は学校。別にキモ試しをしにきたわけでもなく、怪談話の検証にきたわけでもない。
ただ、変身し、魔法を使い、暴れるジュエルシードを封印しにきただけ。
「はあ〜〜」
「なのは。お疲れ様」
ジュエルシードの発生には規則性が無い。時間も場所もバラバラで、発生したらすぐに現場に向かわないといけない。
警察官並にハードな仕事だ。
今日のジュエルシードもいきなりだった。晩御飯を終え、お風呂を終え、ベットに入って一日を終わろうとしたとたんの出来事。
気を抜いた直後の仕事のため、精神的な疲れは通常以上であった。
「ユーノ君。後何個だっけ?」
「今ので五個目だからあと十六個だよ。」
魔法とめぐり合って一週間。それはユーノとめぐり合ってからの日数で。ジュエルシード捜索の日にちでもある。
なのはは昼間は学校通っているため、夕方や夜にユーノと一緒に街を探索、ジュエルシードの気配を探し周った。
蒔いた努力は実り、一週間で五つものジュエルシードを収穫できた。
ただ、努力は体力と引き換えとなり、一週間の探索はなのはから相当の体力を奪う事になった。
「うう。やっと家についた〜」
帰り道、右にふらふら、左にふらふら。まるで酔っ払いの中年、ぐるぐるバッドの挑戦者、目隠し人間のような動き。
夜中の住宅街は車も人も滅多にいないので、轢かれる事も、心配して声をかけられることもなかったのは幸いだった。
門を潜り抜けたなのはは玄関を無視して庭を迂回。自身の部屋に面した壁の前で歩を止める。
「レイジングハート。お願い。」
「スタンドバイ レディ。セットアップ」
杖を展開し、魔法を使い、自身の部屋まで飛翔。窓ガラスをあけ部屋に入る。鍵はかかっていない。
家族には、なのはは大人しく寝ている事になっているので、窓から外に出たからだ。
「ううう。眠たいよ」
部屋に入るなり、なのはは服を脱ぎ始める。外着のまま寝ると怪しまれるからだ。
上着を脱ぎ。スカートを外す。疲れのため動きが散漫になる。
なのはの、ほっそりした足はむき出しの状態になる。まだ十歳の肌は穢れを知らず、白桃をイメージさせられる。
そんな姿を晒して平然としているのも、部屋に異性の人間がいなからだらろう。
ここはなのはの家で、なのはの部屋。部屋にはなのはの私物だけで、例外としてもフェレットが一匹いるだけだから。
そう、顔を真っ赤にして慌てふためくフェレットが一匹。
「おやすみユーノ君。」
寝巻きに着替え終えたなのはは、ベッドに倒れこむ。睡眠についたのは、すぐだった。
「試合凄かったね。すずか」
「うん、私胸がどきどきしちゃったよ。」
日曜の午後なのはは友達のアリサ、すずかと一緒に喫茶翠屋の屋外テーブルでお茶会を楽しんでいた。
「ドリブルでビュッビュッ!!って人をかわしてさ、最後にズバってシュート。カッコよかったな〜」
なのはの父親、高町士郎がオーナー兼コーチをする、翠屋JFCのサッカーは、河川敷で桜台JFCと試合をした。
休日の午前だったため、なのは達は応援に駆けつけていた。
「うん、うん。それにゴールキーパーの子も凄かったよね。ジャンプしてボールをキャッチしたりしてたもん。」
「にゃはは。ぴゅーってジャンプしてさ。まるでバレーボールの選手みたいだったよね」
「翠屋JFCって強いよね。きっとなのはちゃんお父さんの教え方が上手いんだよ。」
「にゃはは。お父さんてはスポーツは大好きだからさ。熱のこもった指導をしてるいたいなんだよ」
「だから強いのね。私もサッカー教えてもらおうかな」
三人の会話は盛り上がって、盛り上がって、盛り上がり続ける。
少年サッカーはプロに比べれば、技術面などでは劣るが、TVの画面とは違う臨場感が二人を酔わせているのだろう。
言葉のマシンガンのごとく三人は話つづける。
「アリサちゃん、すずかちゃん。今日は応援に来てくれてありがとう。楽しんでくれたかな?」
士郎が見せの中から出てきた。
今は喫茶翠屋の店長の時間のため、エプロン姿だ。
さっきまでは翠屋JFCのコーチだったためジャージ姿。家に帰れば恭也、美由紀の鍛錬のため胴着。何も用事が無いときは私服。
こういうのを衣装もちというのだろうか?それとも多重生活人間とでもいうのだろうか?
「今日はお呼ばれありがとうございます。とても楽しかったです」
「翠屋JFCの試合をみさせてもらって感動しました。」
純度100%。まじりっけなしの純粋さで、アリサとすずかは答える。10歳の子供は歯に衣をきせない。
感じたことを素直に、率直に、無変換に、相手に伝える事が出来る。それが正しい事かどうかは別としてだ。
「アリサちゃん、すずかちゃんありがとう。僕はお店の仕事があるから、お相手はできないけど、ゆっくりしていってよ。」
喫茶翠屋はオフィスやデパートにかこまれ、人の通りが多い。立地条件がいいのだ。
それに加え、店の質も高い。味のおいしさもさることながら、店内はヨーロッパの面持ちがあり、品がよい。そして安い。
高校生のお小遣いでも十分に楽しめる。
これだけの好条件がそろい。今は日曜の昼。
お店の客入りが確変モードに入り、次から次へと対応に追われる。
士郎が外に出たのもアリサ、すずかへの挨拶だけでなく。外のテーブル清掃も兼ねての行動だった。
「じゃあ、なのはとユーノと仲良くしてあげてね。」
親の決まり文句。誰もが口にする言葉を残して士郎は業務に戻る。
「そういえばユーノは、なのはの家の家族になったのよね。」
「きゅう?」
「フェレットって猫や犬とはまた違った可愛さがあるよね。」
すずかがユーノを抱きかかける。すずかは猫愛好家。アリサが犬愛好家。二人とも家に数え切れない猫、犬を飼っている。
「きゅきゅうう。きゅう。」
「こら。暴れないの落っこちちゃうぞ。」
ユーノはおなかをさすられ、すずかの腕の中で暴れる。すずかは気持ちいいと思って続け。ユーノは恥ずかしさで一杯だ。
(ユーノ君も大変だな。 えっ!?)
軽くユーノへ心配したなのはは、違和感を感じた。視界の端に蒼い点が見え、感覚になにかが引っかかる。
(今のは?)
最初に思ったのはジュエルシード。
けど気配が微々すぎる。気配を感じたといえば、感じたレベルで。勘違いといえば、勘違いといえる状況。
迷ったなのはは、勘違いと判断した。最近ジュエルシードばかりに相手にしすぎたから、思い違えたんだろう。と結論着けた。
その判断には幾ばくかの甘えが含まれており、後で悔やむことになる。
なのはは家に帰ってから、もう一眠りする予定だった。応援で早起きしたため、睡眠時間が十分には取れなかったからだ。
日曜の午後は予定が無い。時間に空きがあるのなら、ジュエルシード探索に出かけるのが、最近の日課となっていたが。
疲労が溜まったなのはに、無理をさせたくない気持ちから、ユーノは休息を提案した。
だが、それは何事も起きない事、が前提であって、何事かが起きれば予定は破棄される。
ジュエルシードはいつ、どこで発生するか分からない。
だから、なのはが睡眠に入った数分後にだって発生する事がある。
それは理屈の上では存在するが、確立の上ではとても小さい。
その小さな確立を引き当てるのは、幸運か、はたまた不運か、どっちになるのだろう。
「ひどい。」
「なのは。あのビルの上に移動しよう。」
「うっうん。」
街は樹に侵食されていた。それもたったの一本の樹に。
根という根は、街のあちこちを掘り返し、地盤に深い傷をあたえ。
枝という枝は、街の隅々まで張り巡らされ、人ほどもある葉が街から光を奪っている。
なのはとユーノは街の外のビル。あたりを見渡すことのできる高い場所に移った。
「なんで、こんなに樹が大きくなっているの?」
「誰かが想いを込めて発動させたんだ。ジュエルシードは思いをかけた時、もっとも強く発動するんだ。」
「想いをこめて・・・」
「それがジュエルシードの恐ろしい理由の一つなんだ。」
(あの時感じた感覚は間違いじゃなかったんだ)
なのはの中が重くなる。体の中、心と言われる部分に後悔が圧力をかける。
気づいていた。感覚はしたし、喫茶翠屋にいたひとの誰かという事も予想がついた。
けれど、思い込みと、楽な選択を選んでしまった。その事が心を重くする。
「ユーノ君。どうすればいいの?」
「なのは?」
「こういうとき、どうやって対処すればいいの?」
「あ〜。うん。元になった核を見つけ出す事。そして近づいて封印すればいいよ。」
「みつけだせばいいんだね。」
「」
「リリカル、マジカル。最悪の根源を見つけて。」
レイジングハートから光の粒が放出される。光の粒は働きありのように、移動し、女王のもとに情報を送る。
(喫茶翠屋、違う。公園、違う。幼稚園、違う。小学校、違う。中学校、違う。高校、違う。
神社、違う。病院、違う。警察署、違う。消防署、違う。スーパー、違う。団地、違う。住宅街、違う。
違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。
違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。
そうじゃない。それではない。こっちも違う。あっちも違う。目的の物じゃない。探してるのではない。ジュエルシードは)
「みつけた。」
「本当、なのは?」
「うん。すぐ封印にする。」
「それは無理だよ。さっきも言ったけど近づいてからじゃないと封印は」
「できるよ。大丈夫。レイジングハート。」
「シューティングモード、セットアップ。」
レイジングハートの姿が変わる。杖の長さは一回り長くなり、先端部分の形状が変化する。
今までの丸型から鋭い形へ。変形したレイジングハートは狙撃銃を思わせる。
狙ったものは外さない。どんなモノにも命中させる。
「ええええええええええい。」
レイジングハートから光が射出される。
光は一直線に進む。進むべき道は間違えない。目的地にのみ向かう。
「リリカル。マジカル。ジュエルシードシリアルI封印。」
光の量が爆発的に増える。光の筋は流れる星のように美しく、その存在感は肉食獣のごとき威圧感がある。
放たれた光はジュエルシードに直撃する。まったくのズレもなく命中。
数秒の間、光にさらされ、その活動は停止した。
「封印完了。お疲れ様レイジングハート」
レイジングハートを解除、なのはは元の小学三年生に戻る。
「なのはもお疲れ様。今回は大変だったね。」
ジュエルシードに関する事件では、最大規模の被害だった。街のあちこちが壊れている。
とくに根っこによって掘り返された道路は深刻だ。コンクリートは自然の力強さには勝てなかった。
「ユーノ君。」
「どうしたんの、なのは?」
「私なんとなく分かっていたんだ。ジュエルシードの場所。けど勘違いだと思った。
けれど、違った。ジュエルシードはすぐ近くにあって、みすみす見逃しちゃった。そのせいで街は・・・」
「そんな顔しないで、なのは。」
日ごろが明るい生活のため、悲痛な顔を見るのが痛ましすぎる。
「ユーノ君。私、ジュエルシード集める。ユーノ君の手伝いとかじゃなくて、私自身の意思で集める。」
頑張っている自信はあった。けど、それだけ。自己満足で終わらせないために、なのはは自分の意思でジュエルシードを集める事にした。
感想
花粉がきつい。
代理人の感想
・・・・・うーん。
自分で書いて読み返してます?
自分で読んで面白いと思えます?
そこらへんの視点が決定的に欠けてるような。