ファントムネタバレっす。
未プレイだと訳解らんので注意。




























米国 ロサンゼルス

郊外のとある邸宅




「マグワイア様。派遣部隊の第一陣が横須賀に到着し、現地の調査員と合流したそうです」
「そうか……では直ちに追撃に入る様に伝えろ。如何なる手段を持ってしてもあの2人を屠れ」

豪奢な執務室のソファに座ったまま、男は入り口に立っている男に告げた。

貴族風のシックな衣装に身を包み、色の薄いプラチナの髪を長く伸ばしている怜悧な顔立ちの男。
男の名はレイモンド・マグワイア。犯罪結社の統合組織『インフェルノ』を実質的に1人で取り仕切る南米の麻薬王である。

「かしこまりました。その様に伝えます」
「うむ」

黒服の男が退室した後、マグワイアは表情を苛立ちで歪めた。
手にしたパイプに刺さっているタバコの煙が、主人と共に動きを変える。

(しかし、暗殺者1人とその弟子如きを2年かけても始末出来んとはな)

実に腹立たしい。
表情こそ眉間に皺を寄せた程度だが、マグワイアの腸は煮えくり返っている。

(このまま奴等を逃がしたとなれば、我がインフェルノの名折れだ)

彼等の追跡に参加したメンバーで、返り討ちにされた人数は既に二桁に上がっていた。
その中には現地で雇ったならず者や裏稼業者も含まれている。
全てがインフェルノの損害とは言えないが、プライドの高い麻薬王にとっては充分な屈辱だろう。
幾ら凄腕とは言え、年端もいかない子供を連れた暗殺者1人を未だに抹殺する事が出来ていないのだから。

西海岸の犯罪組織の大半を取り込み、東海岸にすら影響を及ぼしている大組織インフェルノともあろう存在が、たかが2名の逃亡者を始末出来ていない。しかも、奴等を追い始めてから2年も経過しているのにだ。
北米に覇を唱えんとしているマグワイアとしては、これ程目障りで胸糞の悪い事は無い。

「逃がしはせんぞ。例えファントムと呼ばれた貴様でも、インフェルノを裏切った報いは受けさせる。そう、あのクロウディア・マッキェネンの様に」

ギリ、と手に持ったパイプが白い手袋に強く握られ、鈍い悲鳴を上げる。
マグワイアは窓の外、己が裏から取り仕切っているロサンゼルスの街を眺めながら、誰とも無く呟いた。
























  Phantom of inferno

  
アナザーストーリー   『闘走者達』























日本 東海道


1台のハマーが、片側三車線の公道上を法定速度ぴったりで走行していた。
荷台と後部座席にアウトドア用のクーラーやバックが幾つも積み込んである。
ちょっと見た感じでは、これからキャンプにでも行く様に見えるだろう。

だが、解る人が見れば理解できた筈だ。
何気に外観がやや無骨で、シャーシや車体が分厚くなっているのを。

実際、そのハマーには車体全体に追加装甲が施され、小銃弾程度なら車内に入り込む事は無くなっている。
車窓やタイヤも防弾仕様に入れ替えられ、まるで戦地に派遣された軍用車両の様な有様だ。


「なぁキャル」
「なーに、玲二ぃ」

その運転席では一組の男女、吾妻玲二とキャル・ディヴェンスが語らっていた。

玲二は見た感じ20歳前後。顔立ちはそこそこで中背中腰、何処にでも居そうな日本青年。
それ程上質ではない青い背広をノーネクタイで着崩している。

かたやキャルの方は派手だ。
ポニーテイルにして纏めてある豊かな金髪。少しだけ挑発的に吊り上った大きな碧眼。
僅かにソバカスが残ってはいるものの、『美女』への階段を進んでいる事を着実に物語っている大人びた顔立ちと白い肌。
年齢こそ十代半ばと思われるのだが、街中を歩けば大抵の男が振り返る程の美少女だったのである。

カップルとしては、かなり変わっている方だろう。
しかし、常人では気付かない、平和ボケの日本人なら尚気付かないだろうが、この2人には共通点が有った。

時折見せる視線の鋭さと、その瞳の奥に宿っている昏い光。
それこそ、尋常ではない人生の修羅場を潜った者しか発する事の出来ない目の輝きを秘めていた。

「帰国して一週間経つが……日本はどんな感じだ?」
「んー、なんか退屈な感じだね〜。買い物するとやたらと高いし、ハンバーガーの肉は薄いし」

助手席で雑誌を読んでいたキャルが、玲二をちらりと見て呟く様に言う。

「まぁ、そうかもしれないな」

相棒兼恋人のストレートな答えに苦笑しながら玲二は目を細める。
随分とキャルも成長したものだと。

黒いワイシャツと薄手のジャンパーを内側から大きく押し上げる双丘と、ぴっちりとしたジーンズに包まれた肉付きの良い太股。 たった2年と少しで、あのこましゃくれた小娘がよくもまぁこれだけ育ったものである。
その辺は夜毎行われる玲二との共同作業が遠因でもあるのだが、それはそれでどうでもよろしい。

何よりも変わったのは、外観よりも中身だ。

躰の方は寝てても勝手に育つ。だが、精神は経験しなければ育たない。
その点、キャルはここ2年間で、大いに経験し成長した……裏社会を駆け抜ける事によって。

玲二とコンビでインフェルノの追っ手を退け、フリーのヒットマンとして生きて来たのだ。
結局、玲二は暗殺業から足を洗う事は出来なかった。それどころか、キャルが暗殺者になるのを止める事が出来なかった。

それに関して玲二がどう思おうが、キャル自身は微塵も後悔していない。
そうしなければ今頃2人とも野たれ死んでいたか、インフェルノの追っ手に殺されていたのは確実。

何よりも、キャル本人が暗殺者になる事を望んでいた。
この世界に居る限り、彼女は玲二と同じ場所に居られるから。
キャルにとって、玲二は自分の全てだ。彼についていく為なら、世でいう常識や倫理等迷わず捨てて行くだろう。

だからこそ、玲二はキャルを受け入れ共に居る。
玲二にとっても、彼女は何よりも尊い存在だから。

住んでいたロフトが爆破され、キャルが死んだと思った瞬間。
あの時に味わった絶望感と虚無。玲二にとってこれを上回る恐怖は無かった。

護りたいと思ったエレンを護る事が出来ず、同じ想いを抱いたキャルも護れずに失うのかと。
あんな思いは、あんな己の死にも勝る絶望は2度と味わいたくない。
ならば、例え血に塗れた道でも共に歩もうと、玲二はそう決めたのだ。



「玲二、あれって桜だよね?」
「ああ、あれは八重桜だ」

道路沿いを数百メートルに渡って染め上げている八重桜。
まだ八分咲きというところだが、これはこれで美しい。

「ワシントンのポトマック川とかでも見たけど……日本の桜も結構綺麗だね」
「ああ綺麗だろ? そういえば、昔はよく友達や家族と花見に行ったな……」

何気なく呟いた自分の言葉に、少しだけ眉を顰める。
胸の奥がチクリと痛む。玲二は咳払いをして、心の奥で疼いた寂寥感を追い払った。

「ごめん、思い出させちゃったかな……」

少しだけキャルの言葉に謝意が混じり、目が上目遣いになった。
自身の両親や故郷に関しては忌むべき感情しか持たないキャルとは違い、玲二にとっては家族や故郷は愛すべき存在である。 だが帰国をしても、玲二は故郷や家族の元に訪れたり、様子を見に行ったりはしなかった。

今更、日常とは一線を越えた世界に身を置いた自分が戻ったところで、家族に災いしかもたらせない。
今尚インフェルノは玲二達を殺そうと躍起になっているのだ。
万が一、家族や知人を巻き込む事になったら、悔やんでも悔やみきれない。

ならばこそ。玲二は日本には帰っても、キャルが望む観光地を廻るだけで自分の知る場所へは寄り付こうともしなかった。
彼にとっては、今の感覚では違和感を感じる程平穏なこの国の空気を吸えるだけでも幸せなのかもしれない。

「大丈夫だよ。少し……感傷的になってしまっただけだ」

安心させる様にキャルに笑い掛け、玲二は再びハンドルに向き直り側に置いてあった缶コーヒーを飲み干す。
無理やり流し込んだ珈琲は、缶コーヒー特有の甘ったるい味付けの筈なのに何故か苦く感じた。

その仕草にやきもきとしていたキャルは、ポンと手を叩くと玲二に向かってニパッと笑う。

「ね、玲二。そろそろ私にも運転させてよ〜」
「駄目だ」

場の雰囲気を誤魔化す様に言ったキャルの一言を即座に突っぱねる。
帰国直後に都内で右車線を全速走行し、玲二に間違いを指摘され左車線へと移る際に盛大なドリフトをかまして車線変更するという偉業をキャルが成し遂げて以来、運転の一切は玲二が行っている。
アメリカではともかく、日本で彼女がハンドルを握る事はもう無いだろう。

「むー、アタシってそんな信用無いかなぁ」
「お前な……信用有る無しの問題じゃないだろ?」

キャルの無謀な行動に、頭を抱えたり青筋立てて説教するのも玲二の日常である。
とは言え、ある意味異常とも言える程キャルは学習能力が高く器用だ。
1度やった失敗は2度と犯さないだろう……趣味や性癖の範囲を除けばだが。

「ぶーぶー、玲二おーぼー」

膨れっ面で助手席から抗議するキャルをあえて無視し、玲二は煙草を吸おうと背広のポケットに手を伸ばした。
と、その時。

「ん……?」

後ろから1台の車が徐々にスピードを上げながら、ゆっくりと車線を変更して近づいてくる。
その開いた窓からぬっと男の手が出て来たかと思うと、キャルの席、つまり窓の開いている助手席に何かを投げ込む。

「お?」

キャルは、男の投げ込んだ物をぱしっと受け止める。
オリーブ色の丸い物体。M67手榴弾だった。

「玲二。お友達みたい」
「そうか」

キャルは手にした手榴弾を、飛んで来た方へとひょいと投げ返す。
同時に玲二はギアチェンジを行うと、アクセルを深々と踏み込んだ。

直後に背後で爆音。

「うっひゃー」
「帰国早々熱烈なお出迎えか。嬉しくて涙が出そうだ」

見事にパイナップル・カウンターを喰らった投擲者が、車ごと車道にひっくり返るのがミラー越しに見えた。
と、同時にその車体を避ける様にして3台の黒塗りベンツが、全速スピードで此方に迫って来る。

「なんで帰国がバレたんだろうね?」
「関東一円を牛耳る梧桐組がインフェルノに参入しているからな、俺達にとっては日本も安全じゃないって事さ」
「じゃ、あの連中は梧桐組?」
「いや、インフェルノの粛清部隊だろ。公道で手榴弾をいきなり投げ付けるなんてやり方は、やくざの流儀じゃない」
「インフェルノの連中かぁ。じゃ気合入れて鏖にした方がいいね」
「そうしてくれ。生きて帰られると後々厄介だからな」
「りょーかいっ」

晴れやかに言い放つと、キャルは後部座席へといそいそと潜り込んで行く。
玲二は懐に入っていたラッキー○トライク・ウルトラライトを1本引き抜き、火を付ける。

「さてと……運転手は」 ぐんぐんと迫る追跡車をミラーごしに睨み、ハンドルを大きく切る。
一瞬先までハマーが居た車道に銃弾の雨が突き刺さり、運悪く射線上に居た車輌の何台かが巻き込まれた。

「運転がお仕事!」

三車線ある車線を一気に二つ横切り、一番右端に移動する。
2台が同じ様に車線を移動し、残りの1台は先行して先回りをしようとしていた。

どうやら挟み撃ちにするつもりらしく、各々の車窓からSMGや拳銃を手にした男達が身を乗り出して構える。 「キャル、準備はいいか」
「後もうちょい!」
「急げ、敵さん随分と気合が入っているぞ」
「解ってるって!」

返事と同時に後部座席上にあるムーンルーフが開き、キャルが顔を出した。
そしてルーフの端にある金具に、これまた車内から持ち出したMG3を設置し250発ベルトリンクを装填。

「悪いけど、今は玲二の帰郷中なんでね」

既に敵方は撃ち始めている。その銃撃の中、キャルは金色の髪を大きくなびかせながらMG3のストックを抱え込む。
ニマッと小悪魔的笑いを浮かべ、後ろから迫る2台の内左側に狙いを定め。

「道を空けて貰うよ!!」

応戦の銃弾が飛び交う中、驚異的な射撃能力を持ってキャルはベンツに猛烈な集中射撃を開始した。
たちまちフロントガラスが真っ白になり、車体がふら付き始める。
如何に防弾ガラスと言えど、毎分1300発という高発射速度で撃ち出される7.92mmの嵐に耐えれる訳ではない。
これが装甲車や装輪戦車なら耐え切れただろうが、悲しいかな所詮武装ベンツである。

「あればっ!」

耐え切れなくなったフロントガラスが破れた瞬間、車内は流れ込んで来た気流と銃弾に蹂躙される。
給弾の為にキャルが射撃を止めた時、砕けたミラーガラスのベンツの中で既に原型を留めない程破壊された運転手と助手席の男が、仲良くポンプのように鮮血を噴きだしていた。
乗員が全滅したベンツはたちまち速度を落として、戦列から落伍していく。

「いっちょ上がりっと♪ ……わ、たたたっ!」

ガッツポーズを取った彼女に、右側のベンツからSMGの集中攻撃が浴びせられる。
慌てて姿勢を低くしつつも、キャルは足元に転がっている予備のベルトリンクに手を伸ばしながら怒鳴った。

「取り敢えず1台片付けたよ〜!」
「解った。そのまま、後ろの奴等を牽制しててくれ」

ベンツからの攻撃を避けながらMG3に装弾しつつ、キャルは近くによって来たバイクと先行したベンツを目の端に捉えている。 そしてステアーAUGを持ったライダーが、巧みに一般車輌の間を縫い走りながら、こちらを窺っているのも視界に入っていた。

「玲二! 右からバイクが来る!」
「解っている!」

玲二の視線にも、ステアーを撃っているバイクの運転手の姿がはっきりと見えた。
ベンツからも攻撃が始まっており、フロントガラスやボンネットを銃弾が何発も掠め跳んでいく。
玲二は左手でハンドルを維持しつつ、右手を運転席脇に置いてある茶色い紙袋に突っ込んだ。

彼が紙袋から取り出したもの。
それはベルギーFN社製のP-90 PROJECT90、ソフトタイプのボディーアーマー程度なら紙の様に撃ち抜く凶悪兵器だ。
法執行機関以外への販売が禁じられているこのSMGが、何故玲二の手に渡ったのかは非常に謎である。

「俺はステアーの坂だ! お命頂だ   
「五月蝿い! 三下は黙っていろ!」

ステアーを乱射するバイク目掛けてP-90を掃射。
初速715m/秒の5.7×28専用弾が、燃料タンクに見事命中し爆発。

「お、俺の愛車が〜!!」

宙を舞いながら叫ぶライダーの魂の台詞は、直ぐに後方へと流れていく。

「運転手は迎撃もお仕事っ!」

2本目のウルトラライトを口に挟みながら、玲二はハンドルを両手で握り直す。
上ではベルトリンクの装填が終ったのか、再びMG3の咆哮が唸り始めた。

が、2台目は思ったよりもしぶとかった。
今度は相手もムーンルーフのキャルに攻撃を集中している為、なかなか簡単には制圧出来ない。
しかも、巧みに対向車を背後にとったり、追い抜く一般車の間を抜けたりする。

「くそっ」

一旦射撃を止め、ベンツが隠れている方を睨んで舌打ちするキャル。
破天荒を地で行っている彼女も、故意に民間人を巻き込むのは玲二にきつく止められている。なので撃てない。

「早いトコ、後ろの奴等を片付けなきゃいけないのに!」

そう、敵はキャルが攻撃しているベンツだけではない。
やや先行し、こちら目掛けて銃撃をしてくるもう1台のベンツも居るのだ。
キャルが後ろに居るベンツをなかなか潰せないでいるのは、先行して挟撃して来るこのベンツが一因でもあった。

「キャルは後ろに集中しろ。前は俺が牽制しておく」

再びP-90を片手撃ちしながら、玲二がキャルに指示を出す。
直後、ベンツのガンナーの躰を5.7mm専用弾が撃ち抜き、車内へと落とした。 防弾チョッキを着ていた様だが、通常の9mm弾や5.56mmではなく高初速の5.7×28専用弾を前にしたら意味は無い。

背後からの脅威が一時的に薄れたのを機に、キャルのMG3は武装ベンツに対して猛攻を開始。

最初の2秒は猛烈な勢いでアスファルトとガードレールの破片を宙を舞わせた。
3秒目からベンツを捕らえ、5秒目には車体と運悪く顔を出していたガンナーを引き裂く。
7秒目には運転席部分を朱に染め、9秒目にはエンジンを爆発させて車体そのものを宙に舞わせた。

「2台目あがりっ!」

威勢のいい声でキャルは叫び、3台目に意識を向けた。
ムーンルーフの金具を動かしてMG3を動かし、3台目に攻撃を始める。
だが、MG3の咆哮は僅か1.2秒で止まった。
弾切れである。

「ちっ……あと少しなのに、弾切れかよ!」

そう、キャルは2台目を潰した時点で殆どベルトリンクの弾を使い果たしていたのだ。
分隊支援火器としてバルカン砲に匹敵する高発射速度を誇るMG3を、馬鹿みたいに撃ちまくっていれば直ぐに弾切れになる。
弾の切れた銃器を投げ捨てるのと撃ちまくるのが三度の飯よりも好きな彼女の性癖が、赤裸々に出た結果と言えよう。

「も〜この役立たず〜」

銃身交換を前に弾切れとなったMG3に反省よりも先に悪態を付きつつ、キャルは再び車内へと躰を滑り込ませた。
荷台に積んでいた複数のバックには様々な小火器、クーラーには爆薬とアモ缶がぎっしりと詰まっている。
その中からお気に入りのショットガン、SPAS12を取り出しライフルドスラッグをリロードしていく。

出来ればアンチマテリアルライフルのバーレットM95でもぶっ放して一気に勝負を付けたい所だが、運悪くパーツ単位まで分解してトランクに収納してある状態だ。 敵の猛攻はキャルがバーレットを組み立てるまでの時間を、許してはくれないだろう。
玲二が運転にほぼ専念している以上敵に反撃出来るのは彼女だけだし、幾らこのハマーが重装甲でも攻撃を受け続ければ何時綻びが出来るか解らない。だから今直ぐ使える武器で、少しでも早く敵を排除した方が得策なのだ。

「うっし、準備かんりょっ!」

ガスオペレーテッドの自動装填では無く手動ポンプアクションでSPAS12に初弾装填。これはキャルの拘りである。
ちなみに、2丁のストック無しSPAS12を両手で維持し、ダブルアサルトを敢行しようとして腕の筋肉を傷めた事があるのは、キャル本人と説教しながら手当てを行った玲二だけの秘密だ。

「玲二、一気に勝負決めるよ!」
「応!」

ついでにガンベルトとベストを装着したキャルが腰周りにスラッグ弾をぶら提げながら、ムーンルーフではなく左側の窓に近寄る。 タイミングを合わせてベンツにスラッグ弾を撃ち込もうとしたその時。

「待てキャル!」
「何……きゃっ!」

前からだけでなく、後ろからも撃たれた。
鼻先を銃弾が掠め、キャルは僅かに乗り出していた体を素早く引っ込める。
銃弾が飛んできた方向を見た時、彼女は目を丸く開いて閉口した。

「あんなのまで寄越すの……大袈裟よね」

やや呆れた様に、キャルは呻く。
彼女の目線先には、猛スピードで接近してくる1台の巨大デコトラの姿があった。
運転手は黒服姿の巨漢で、隣の助手席に座っている男は窓から身を乗り出しアサルトライフルを撃っている。
更に荷台部分には数人のガンナーが乗っており、各々の銃をハマー目掛けて乱射していた。

「うわっ!」
「くっ……!」

勢い良く突進して来たデコトラとベンツにハマーが挟まれた。
ギシギシと車体が軋み、摩り合わせた装甲が激しい金切り音を立てる。
ベンツとデコトラに挟まれた車体に、追い討ちとばかりに銃弾が降り注ぐ。

「ひぁ!」

キャルが思いの他、可愛らしい悲鳴を上げながらムーンルーフのドアを慌てて閉じる。
屋根に多数の銃弾が当たっては跳ね返り、敵の攻撃の凄まじさを金属音で訴えていた。

こういう時のキャルの声って、ベットの中に居る時と同じ位艶っぽい……。
体当たりを仕掛けて来たベンツに車体をぶつけ返しながら、玲二は全然場違いな考えを巡らせていた。
だが、躰と本能の方は冷静に事態へと対処していく。ベンツの攻撃を回避し、尚且つデコトラの体当たりを避けるべくハンドルを切り続ける。

既に思考ではなく、積み重ねられた実戦によって磨かれた勘と『本能』で玲二は戦っている。
玲二がいわゆるそこらの『腕っこき』よりも戦闘力がずば抜けているのは、その点が優れているからだろう。

「キャル! ベンツのフロントに1発かましてくれ!」
「了解!」

左右のミラー、バックミラーに絶え間なく視線を送りながら状況を把握。
ベンツのフロントガラス目掛けてキャルがSPAS12を1発発射し、角度が浅くて突き破れなかったものの一条のひびが入った。

「おらっ!」

ベンツの運転手が僅かに怯んだ隙をついて、ハンドルをベンツ側に思いっきり切る玲二。
鈍いショックと共に、体当たりを受けたベンツが一車線横に追いやられる。

「今だ、キャル!」
「あいよっ!」


射撃が止んだ瞬間にムーンルーフを再び開けたキャルが、荷台のガンナーに向かってSPAS12を連射する。
熊撃ち用のスラッグ弾を喉元と右肩に受けたガンナーは、悲鳴を上げる暇すらなく。
吹き飛んだ右腕と頭部の一部が、倒れ始めた胴体よりも先に荷台の床へと落下する。

敵の攻撃が1人分減ったのを幸いにスラッグ弾を3発分、デコトラの過給機部分に撃ち込む。
しかし、

「くっそ〜!」

幾らかは損傷を与えたものの、それでもデコトラの動きは変わらない。
過給機の周りが鉄製のフレームで補強されていて、スラッグ弾が奥まで貫通しないのである。
予想以上にタフなデコトラに、SPAS12に新しいスラッグ弾をリロードしながらキャルは呻く。

「玲二。過給機周りは堅くてやっつけるのに時間がかかりそうだよ」
「そうか……奴等も同じ事考えて対策立ててるってわけだな」

新しく弾倉を入れ替えたP-90をガンスピン1つで構え直し、玲二は眉間に皺を寄せ呻いた。
巨大な車両の弱点である過給機を突くのは基本でもあるが、同時に敵がそれに対する防御策を練るのも当然だろう。

「キャル、デコトラはカールグスタフで仕留めろ」
「無理! 奥の方にバラして収納したから直ぐには使えないよっ」
「ちっ……しまった!」

帰国時に荷物を降ろす際、キャルは重火器の大半をばらしてハマーに収納していた。
しかし、彼女が取った『重火器は分解して奥にしまう』という収納方法は決して間違った選択ではない。

嵩張り、尚且つ目立つ重火器をそのままハマーに積んだら警察に見咎められ易いし、何よりも荷物の搭載量がかなり制限される。 日本では極力目立つ行動はしない事を前提にして装備を収納し、護身用のSMGや拳銃だけを取り易い場所へと置いたのだ。

それが現状では仇となっているのだが、キャルにそう指示を出したのは玲二でもある為、彼に彼女を責める事は出来ない。
だからこそ玲二は責任問題云々よりも、頭の中に入っている対装甲用装備のリストを引っ張り出してキャルに問う。

「M203タイプ付きのM16は!」
「サンタ=マデリアでサンチェス一味をぶっ潰した時に壊れちゃったじゃない! ……壊したの、アタシだけど
「あっ……そうか。ならMK2は!?」
「玲二ならともかくアタシの腕力じゃ扱えない!」
「……糞っ! HKグレネードを持ってくれば良かったか!」

ごそごそと忙しなくバックの中を漁りながら、キャルは玲二の問いに答えた。
出てくるのはアサルトライフルや拳銃、それらに使われるマガジンやカートばかり。
肝心の重火器は荷台の出口の方に置いてある上にばらしてある為、取り出すのに時間がかかるから期待するだけ無駄である。

(くそ、幾ら数が多いとはいえ、雑魚相手に追い込まれるとはな……!)

様々な要因が重なり、2人は窮地に立たされていた。
しかし、それは追跡班にもいえる話である。

序盤で主戦力であるベンツ2台をあっさりと潰された挙句、来る筈の増援がまだ来ていない。
マグワイアの『特命』を受けている以上、失敗したら只では済まされないのは確実なので損害が出ようが退くに退けない。

最強の暗殺者達を前にしてがむしゃらな攻撃を仕掛ける他に、彼らが取れる行動は無いのだ。
……やがて、キャルの反撃と玲二の運転の所為でなかなか決着が着かないのに業を煮やしたのか。

「退いた……?」

執拗に追い縋って来ていたベンツが、ハマーから離れて車線を変更する。
急にベンツがハマーから離れたのを玲二が疑問に思った瞬間。
相手が後退した理由を視覚的に理解したキャルが、いかり隊長風に叫んだ。

「玲二! 後ろ後ろ!」
「ちっ!」

バックミラーを見た玲二は舌打ちしながら、ハンドルを勢い良く切った。
何故なら、大型デコトラの荷台最後部から、M72型66mm対戦車ロケット砲を構えてこちらを狙っている男が1人。
ハマーが回避行動を取るのと同時に、ロケット砲を発射した。

「ぬわっ!」

対戦車ロケットがハマー目掛けて放たれ、車体の脇の道路に着弾し爆発。
間一髪直撃は免れたものの、車体が浮きかけキャルが危うく放り出されそうになる。

「うっひゃー!」

ムーンルーフから身体が半分以上外に飛び出しかけるが、MG3のストックを握る事で姿勢を保つ。
万が一落ちれば、130km強の速度で走っている車体から路面に叩きつけられた挙句、後続車にペチャンコにされるだろう。
キャルは素早く反動をつけると、一気にムーンルーフへと飛び込んだ。

「あーもうっ」

髪が思いっきり乱れてしまった事に腹を立てつつ、キャルは荷台に居るガンナーを睨みつけ。 姿勢を崩した際に手放してしまったSPAS12を拾い上げてデコトラに応戦しながら、バックショットの音に負けない声を張り上げる。


「玲二、少しスピードを落として!」
「何をする気だ!?」

再び荷物を漁りながら後部座席からデコトラの様子を窺い、キャルが叫ぶのを玲二は聞いた。
後部座席脇の窓からSPAS12でスラッグ弾を車体に数発追加で撃ち込んでいたが、重装甲に改造してあるのか未だに攻撃の手が緩まない。

「確か、ここら辺に……あった!」

そして、キャルはようやくバックの中からデコトラを仕留める武器を見つけ出していた。
先程玲二が挙げた兵器の威力には及ばないが、デコトラに致命傷を与えるには充分な装備。

「ショットガンじゃ埒明かないから、これで仕留める!」

弾切れのSPAS12を荷台に放り、バックから取り出したシュツルム・ピストルにグレネード榴弾を装填。
ついでにバックから転がり落ちていた柄付き手榴弾2本をガンベルトに挟み込み、MP5Kを空いている右手で握り締めた。

「玲二、あっちがスピードを落としてきたら、直ぐスピードを上げて」

と言ってシュツルム・ピストルでデコトラの一部を指し示す。
キャルの真意を悟った玲二は、何も言わずに少しだけスピードを落とした。

こちらの動きを見て、デコトラとベンツが同じ様に速度を落として再び挟もうと下がって来る。
背後を取らせないつもりの様だが、それこそキャルの思惑の内だった。

「玲二、全速!」
「了解!」

キャルの合図と共に、玲二はアクセルを一気に押し込む。
速度を落としていたデコトラの横を、勢い良くハマーが追い越していく。
相手も慌てて速度を上げ始めたものの、その時にはハマーは理想的な位置に付いていた。

玲二がP-90を撃って挟撃しようとしたベンツを牽制し、一時的にベンツからの攻撃を遠ざける。
そしてキャルは、与えられたチャンスを逃さない。

「邪魔だから静かにしてなっ!」

左手に持っていたMP5Kを荷台に向けて薙ぎ払う様に掃射し、ガンナーの頭を引っ込めさせた後。
MP5Kを下のシートに落とし、シュツルム・ピストルを両手で構えた。
そう、車体同士の位置がずれて来ていたデコトラの運転席の横、助手席の丁度真横に狙いを定め。
彼女はジャック・ニコルソン張りの悪魔的狂笑と共に引き金を引く。

Dieダーイ!」

キャルの笑顔に見送られて飛んでいったM361小型榴弾は、助手席のドアに見事着弾。
HE弾の破片が破られたドアの穴から車内に降り注ぎ、デコトラの運的席部分は爆煙に包まれた。

運転手を失ったらしいデコトラは速度を落としていくが、キャルはまだ止まらない。
シュツルム・ピストルをホルスターに納めると、腰のガンベルトに挟んでいた柄付き手榴弾2本を抜き取り柄の底にある紐を引く。 そして、ガンナー達が居る荷台目掛けて放り込んだ……1秒置いた時間差攻撃で。

哀れなガンナー達の運命は逃げ場の無い荷台で爆死するか、飛び降りてアスファルトに叩きつけられるかのどちらかだった。
デコトラは運転席と荷台からぶすぶすと黒煙を噴き出しながら、みるみる遠ざかっていく。


一番厄介なデコトラを片付けた事で勢いづいたのか、残りのベンツを倒すのは早かった。
再装填したシュツルム・ピストルをしぶとく攻撃してくるベンツに向けて発射。

「うっさい! 付いて来るな〜!!」

1発で、ボンネットと窓ガラス全てが吹っ飛んだ。
激戦続きで逆上していたのか、キャルは腰にぶら提げていた2丁のS&W M5906を引き抜き既に虫の息だった運転手達に向けて撃ちまくる。

「うが〜!」

距離を置くと滅法効率の悪いネメシス撃ちだったが、面白い様に当たる当たる。
興奮状態でなかば野獣と化したキャルにとって、多少の効率の悪さなど屁でも無いのかもしれない。

「はぁ……はぁ……はぁ〜」

更に2マガジン分撃ち込み、ようやくキャルは撃つのを止めた。
殆ど無駄撃ちと言っても良い60発分の薬莢と4つマガジンが、ハマーの揺れに合わせて足元でちゃりちゃりと音を立てる。

件のベンツは道路脇に逸れてガードレールに激突し、爆発炎上している。
無論、全員アフロ死亡だ。

「あ〜しんどい。玲二ぃ〜疲れたよぉ……」

全ての敵を排除して気が抜けたのか、キャルは後部座席へとへたり込む。
過剰にアドレナリンが分泌した所為か、疲労が何時もより激しい。

「ご苦労様、キャル」

3本目のウルトラライトをポケットから引っ張り出しながら、玲二が労う様に声をかける。 あれだけの敵を1人で引き受けて撃退したのだから、戦闘中に見せた数々の問題行為を諌める事よりも感謝の気持ちの方が先んじた様だ。

「褒めてくれる? 玲二」
「ああ、キャルはよくやった」

玲二の褒め言葉を聞き、キャルは頬を赤く染める……硝煙で煤けていた為、解りづらかったが。
途端に元気になったキャルは玲二の躰に座席越しに手を回し、耳元で囁く。

「じゃあさ……キスしてもいい?」
「なぬっ!?」

キャルが軽口を叩いた直後、1機のヘリが海岸線の方からメインローターを振るわせて姿を見せた。
『○さひ新聞社』と尾翼にペイントされたヘリ。
しかしどう間違っても新聞社のヘリではないだろう。
新聞社のヘリには、スコープ装備のライフルを持ったスナイパーが乗っている訳がないのだから。

「武装ヘリまで持ち込むとはな……そんなに俺達を殺したいのか?」
「玲二……此処、日本だよね?」

度を越えた襲撃部隊の装備に2人は、恐れるよりも先に呆れた。
幾らインフェルノとはいえ、まさか日本でヘリを使った襲撃を行うとは。

取り敢えずキャルは迎え撃つ為に後部座席へと戻る……戻る前に玲二の頬にピンク色の唇を押し付けて。
生々しく頬にキスマークを浮かべた玲二も、ヘリとの相対距離を測りながらアクセルを全開にする。

「ったく、落ち着いていちゃつけないじゃないさ!」

思ったよりも、ヘリからの攻撃は厄介だった。
距離が近付くとガンナーがアサルトライフルを撃ちこみ、距離が離れると並行しながらスナイパーが狙撃して来るので非常に性質が悪い。しかも銃撃戦では優位とされる敵よりも高い位置を、ヘリの特性を生かして常に維持しているのだ。

ヘリが三次元の攻撃を行えるのに対し、車に乗っている玲人達は三車線の空間に行動が限定されている。
如何に2人が熟練でも、この状況は分が悪い。

かつ、玲二達には決着を急がねばならない事情があった。

一般の軍用車両と同じ様に、ハマーの上部装甲はそれ程頑丈ではない。
万が一後部荷台の武器弾薬にヘリからの攻撃が命中したら、車そのものが吹っ飛んでしまう。

キャルがドラグノフ狙撃銃を取り出して応戦するものの、揺れる車体と頻繁に変わる速度、そして距離のおかげでキャルの腕前を持ってしてもなかなかスナイパーに当たらない。

「クケー! 当たらない〜!!」

埒の明かない戦いに、キャルが意味不明な奇声を上げる。
彼女は狙撃等と相性が悪い。じっとしているのが嫌いな為、狙撃銃を持たせると100%の確率でアクティブスナイパーになる。

そもそも強力な火力とそれを最大限に発揮する射撃能力を持って敵を一気に殲滅するのがキャルの戦闘スタイルだ。
重火器やダブルアサルト等の制圧力に拘るのもその為である。
だからこそ、突撃戦や強襲戦にはめっぽう強いものの持久戦になると案外脆い部分を見せたりもする。

その点は玲二がサポートする事で今まで補っていたが、今は直接関与できないので如何ともし難い。
溜まっていた疲労も相乗して少しずつ荒くなっていく射撃精度に、キャルが苛立ちの声を吐きつつ弾倉を入れ替える。

「スティンガー持って来れば良かったよ!」
「そうだな、まさか日本でヘリとどんぱちやるとは思わなかったからな!」

輸送に嵩張る事と、日本で使う訳が無いと踏んだ為、スティンガーミサイルを持ってこなかった事を玲二とキャルは怨めしく思った。 というか、一介の暗殺者が何故そんなものを持っているのか?……まぁ、2年も逃亡生活を続ければ色々な事があったのだろう。

ひょっとしたら軍用ヘリにでも襲われて、スティンガーミサイルが必要な状況でも発生したのかもしれない。
逃亡者とは、過酷な身分なのである。

「キャル、大丈夫か!?」
「大丈夫! ……タイミングとコツが、解って来たから」

やがて、キャルの放つ銃弾がヘリの機体に当たり始める。
彼女から苛立ちと焦りがすうっと引いていく。スナイパーの銃撃が髪を数本払い、肩や二の腕を掠めていく状況でもキャルは集中して ヘリを狙っていた。

「もうちょい……もうちょい」

タイミングを取り、風を読みながら撃つ。
何度かヘリのスナイパーと撃ち合っている内に、キャルは徐々にこの射撃環境に慣れ始めた。
この辺、でたらめだと思う位の適正能力だがキャルは”そういう”少女なのである。

初めて握った銃をその日の間に手に馴染ませ、1度食べた料理の味を忠実に再現してみせる。
彼女自身自覚していない部分が多いが、キャルは間違い無く『天才』なのだ。

「もうちょい……もうちょい………いけ!」

何度かタイミングを計った後、引き金が引かれると同時にドラグノフが吠えた。
悲鳴と共にスナイパーがヘリから落ちかけ、固定してあったベルトで宙に止められる。
そしてそのまま鮮血を後方に撒き散らしながら、ヘリの側面をブラブラとぶら下がっていた。

「殺ったか!?」
「スナイパーは潰したけど、ヘリはまだ飛んでいる! パイロットを仕留めるから、真っ直ぐ走って!」

手にしたドラグノフのスコープを横にずらす。
スナイパーを撃たれて慌てているガンナー達を無視し、次にコクピットを狙おうとした瞬間。

「キャル、しゃがめ!」
「えっ……!」

反射的に躰を車内に沈めれたのは僥倖だったと言えよう。
後部シートまで身体の位置が落ちたと同時に、ハマーは後ろから思いっきりど突かれた。

「ぐぅっ!」

シートと座席の間をバインドし、一瞬息が詰まる。
更に荷台から転げ落ちて来たアーマーベストに圧し掛かられ、キャルはじたばたともがく。
シート一面に落ちていた薬莢が背中に食い込み、熱いやら痛いやらでキャルは必死に起き上がろうとした。

「あっちゃちゃちゃ!」
「大丈夫か!」
「あっつ〜大丈夫……とはいえないけど……何が起こったの?」
「デコトラだ、まだ奴が生きていた!」

アーマーを何とか押し退けてキャルが見たもの、それは先程撃退し減速して姿を消した筈のデコトラだった。
防弾ガラスが半分割れ跡形も無い運転席の向こう側で、運転手の巨漢が血塗れで壊れかけたハンドルを握っている。
助手席にはかつて『人間であった』肉塊が、血色アートを一面に降り注いでいた。

「畜生……まだ生きてやがったか!」
「何あれ! しぶと〜い」

キャルがやや引き攣った声で、デコトラを見た。
運転手が訳のわからない叫びを上げながら、またスピードを上げてくる。
既に狂っているのかもしれない。目付きが尋常ではなかった。

「良いから、くたばっていろ!」

真近に迫ったデコトラの運転席目掛けてドラグノフを撃つ。
見事銃弾は巨漢の眉間を撃ち抜き、男はばったりと前屈みに倒れた。

しかし、それがいけなかった。

「わ、わわわわわわ!」

倒れた瞬間にアクセルを踏んだのか、デコトラの車体が一気に前へと押し寄せて来た。

「ぐっ」

鈍い振動と同時に、ハマーは後ろからデコトラに押される形になった。

「このままじゃ潰されちゃうよ。玲二、車線を変更して!」
「無理だ……車体が動かない!」
「えっ……どうして!?」
「どうやら、接触した時にデコトラに引っ掛かってしまったみたいだ」

そう、玲二が幾らアクセルを踏もうとも速度がなかなか上がらなく、ハマーはデコトラに押されている状態だ。
こちらも全速で走ろうとするが、向こうのどこかに引っ掛けたらしく後輪が浮きかけて速度が出せない。
引っ掛かっているデコトラをどうにかしない限り、ハマーは自由に動く事もできないのだ。

「アタシ、後ろを見てくる!」

ドラグノフを置いてキャルはムーンルーフから這い出し、ハマーの屋根を歩き始めた。
目指すはデコトラとハマーの後部がかみ合っている場所。
どうにかして切り離さないとヘリから逃げる事すら出来ない。

「くっそ〜覚えてろよ!!」

ヘリからの銃弾が飛び交う中キャルは悪態をつきながらハマーの屋根を走り、デコトラとハマーの接触部分を覗き込む。

「あった!」

見つけた。
デコトラの砕けた前面フレームと、ぶちかましを喰らって歪んだハマーの部品の間。
ぶつかった際に、歪んだ部品と金具が絡み合ったのだろう。

(あれをどうにかしないといけないか……)

意を決してデコトラとハマーの間に躰を突っ込む。
足を踏み外したら次の瞬間にはデコトラに潰される危険な足場を伝いながら、キャルは目的の場所に辿り着いた。

しかし辿り着いたはいいものの、そこで問題が発生した。
思ったよりも噛み合ってる部品が硬いのである。

9mmパラベラム弾程度では、強化フレームを破壊するのは難しい。
柄付き手榴弾が1発残っているが、コレを使ったら間違い無くハマーまで爆発に巻き込まれる。
しかし、今持っている銃器は拳銃のS&W M5906しかない。今から別の武器を取りに行くのは時間が無いのでボツだ。

「ちくしょ〜何か良い物が……」

苛立った様にガンベルトやベストのポケットを引っくり返すキャル。
と、ポーチに入れた手に何やら大きな感触が伝わって来た。

「お……?」

バーレットM95用の12.7mm機関砲弾が1発、ガンベルトのポーチに入っていた。
シュツルム・ピストルの榴弾を押し込んだ時に、紛れ込んだらしいその高速徹甲弾をキャルはじっと見詰め。

「………」

一瞬考えた後、問題の場所の隙間に機関砲弾を先端から挟み込み、軽く押して固定する。
そして自分は再びハマーの天井へと上がる。

「よっと……」

そして、挟んだ砲弾の尻にS&W M5906を向け、躊躇いも無くトリガーを引いた。

「熱っ!」

飛び散った爆煙と火花にキャルが叫び声を上げる。 爆発音と金属音が同時に響いたかと思うと、先程までがっちりとハマーを押さえていたデコトラのフレームが路面に勢い良く転がっていった。

「出来た! 玲二、離れたよ!」

キャルの掛け声と共に、玲二は車体を大きく左右に振る。
引っ掛かっていた金具とフレームが機関砲弾の暴発で取れた為、デコトラとハマーがようやく離れた。

「こんにゃろ〜2度と来るな〜!!」

遠ざかるデコトラの運転席に、キャルは引導とばかりに手榴弾を投げ込む。
そしてキャルがビッと中指を立てた瞬間に閃光が奔り、爆発した。

「ハッハ〜ざまーみろ○○○野郎!」

手榴弾が爆発したショックで燃料タンクに引火したのか。
盛大な火炎を撒き散らしながらデコトラは宙を舞い、路面に叩きつけられる。
歓声を上げるキャルは、一瞬まだ戦闘が終っていない事を忘れていた。

「キャル! 早くヘリを攻撃してくれ!!」

切羽詰った玲二の声に、我に返ったキャルはつられる様に空を見上げ、

「やばっ!」

キャルは見た。

ヘリコプターから身を乗り出した人物が、RPG-7を構えているのを。
あれの直撃を貰ったら、ハマーにどれだけ装甲が施されていようが意味は無い。
1発で車諸共火達磨にされてしまう。

(だったら    

屋根を走りムーンルーフから車内へダイブしたキャルは、座席に転がっていたVz83とMP5Kを引っ掴む。
掴んだと同時に躰のバネを最大限に利用し、再びルーフから顔を出し銃を構える。
それと同時に、ヘリから盛大な発射炎と火の尾が吹かれる。相手がRPG-7を発射したのだ。

「着弾する前に撃ち落すっ!!」

9mmと7.65mm弾、合計50発が空中を切り裂いて来るHE弾を迎え撃つ。
安定翼を開き、ハマーに300m/秒で迫るHE弾に1発の7.65mm弾が掠り     

爆発。

HE弾はハマーの150m手前で、爆発した。
爆発の衝撃波で少し車体がぐらついたが、目立った被害はない。

「やったあ……」

弾切れになったVz83とMP5Kを下の座席に放り投げながら、キャルは安堵の声を上げる。
と、その表情が驚愕に変わった。まるで信じられないモノを見たかの様に。

「もう少しでトンネルだ! それまで牽制してくれ!」
「玲二……」
「どうした!?」
「あれ……」
「?」

キャルの声につられて、玲二がヘリの方を見てみると。

メインローターが火花を散らして本体から離れて跳んで行く。
浮力を失ったローター部分から黒煙を吹き上げながら急激に高度を落としていく。
後ろに乗っていたガンナーが飛び降りたが、とても助かる高さではない。

2人の視界から消えたヘリは道路脇の河川に墜落し爆発炎上。黒い黒煙が盛大に上がった。
キャルと玲二は顔を合わせ、首を傾げる。

「なんで落ちたんだろうな……」
「流れ弾……の訳ないし、アタシが撃つ前に落とされたのは確実だし……ん〜?」

訳が解らない。実に不可解な状況だ。
だが、今の2人にとって重要なのは追っ手を全滅させ、警察の捜査網を掻い潜って逃げ切る事だ。
前の方は完了した、ならば後は全力で逃げる事に集中するのみ。

「まぁいい……キャル、残弾のチェックと装備の回収を急いでくれ」
「うん、解った」

尚も納得がいかない表情のキャルに指示を出し、4本目のウルトラライトを唇に挟みながら玲二は再びハンドルを握り直す。
今の玲二には、敵の追っ手が全滅した。この事実こそが重要なのであり、それで充分なのだ。

後は、キャルが消耗した火薬の補充費用と、ヒビが入った防弾ガラスや弾痕まみれの車体の補修費用が脳裏に浮かび。

「……やれやれだ」

何故か煙草が急に苦くなり、玲二はまだ半分残っているウルトラライトを苛立たしげに放り捨てた。















ヘリが撃墜された場所から600m離れた地点





国道の上に跨る寂れた高架道路の近くで。
バイクに跨った1人の少女が、手にした狙撃銃   PSG-1をそっと下ろして眼を細めていた。

(間に合った)

その少女、エレンは無事に走り続けるハマーを見て、ほんの少しだけ口の端を緩める。

(これなら、逃げ切れそうね……)

透き通る様な黒曜色の眼を静かに閉じ、短く神に祈りを奉げる。
もう一度眼を開いた時、ハマーは全速でトンネルの方へと走り去って行く最中で、やがて見えなくなった。

(しかし、玲二は本当に強くなった)

サイスの暗示と投薬によって、身も心も成長を止めてしまった自分とは違い、常に変わり続ける吾妻玲二。
かつての自分とは違い、己の意志で戦える玲二。単なる技量の問題では無い部分で、自分を上回る存在になった玲二。

(そんな貴方に……私は羨望し、嫉妬しているのかもしれない)

エレン自身、己の心中で渦巻いているモノをどうしたら良いか解らない。
主のサイスに捨てられ、玲二を殺すことも叶わず、彼女は只1人で世界を彷徨った。

ひたすらに孤独だった。
インフェルノにも、何処にも帰る場所さえない孤児。それがエレンだった。
辛かった、何度も自害を考えるほど辛かった。
自我を捨て他人に依存する事で己を保っていたエレンにとって、寄る辺の無い状況程過酷なモノは無い。


何故2人、否、玲二の後を追っているのかは自分でも解らない。
殺す為に追っているのか、彼に逢いたいから追っているのか。答えは未だに出ていない。

(玲二。今は無理だけど、何時かは貴方ともう一度顔を合わせる時が来ると思う)

エレンと玲二。
両者が顔を合わせる時、その時に2人はどうするのだろうか?
銃口を向け合うのか。それとも再会を喜び合うのだろうか。

(どうなるのかは、私にも解らない……だけど)

だけど、それでもとエレンは思う。

「貴方に名を与えられた事……これだけは、感謝したいの」

そう、それが玲二によって心を取り戻した少女、エレンの偽らざる本心だった。

















ロサンゼルス郊外

ある邸宅の一室




執務机の上にあるライトスタンドだけが薄暗い室内を照らしている。
その男は革張りの椅子に深々と腰を沈め、研究ファイルに眼を通しながら、自分の部下からの報告を受けていた。

「そうか、日本に派遣された第一陣が全滅したか……」
「はい」

男の部下である少女は、能面の様な面持ちで主の言葉を待つ。
彼女の表情には喜怒哀楽の欠片も無く、蝋人形のような無機質さだけしか窺えない。

「成る程、ご苦労だった。退ってよろしい」
「それでは失礼します。マスター」

静かに一礼した後、少女は一切音を立てずに書斎から退室した。
男は満足気に何度も首を小さく縦に振り、組んでいた足をもう1度組みなおす。

「流石と言うべきかな。武装ベンツ3台と重装コンボイ1台、武装ヘリ1機の戦力と戦って全て返り討ちにし、見事逃げおおせたのだ……ツヴァイとその弟子の技量は更に上がっているぞ。何とも素晴らしい事じゃないか」

男は、サイス・マスターは楽しげに口を歪める。
最初の粛清部隊が全滅に近い損害を受けて敗退したのだから、次はサイスとその部下にファントム討伐の命が下されるだろう。
サイスは目の前にあるファイルをそっと開く。其処には6人の少女達の詳細な訓練結果が記されていた。

「仕上がりは既に済んでいる。後はお前達がファントムの名を継ぐに相応しい舞台を飾るだけだ」

そう、彼の研究成果である『ツァーレンシュベスタン』を、前代ファントムを狩るという華々しい戦果と共に裏社会に知らしめる絶好の舞台。『精神医学による最強の戦士の育成』と言う研究こそが己の命題であり、そして美学でもあるという常人には理解できない変態性を持ち合わせたサイスにとって、新旧のファントム達同士が戦う姿はオペラ・ガルニエで一流の歌劇を見るよりも素晴らしいものなのだろう。

その為にサイスはマグワイアからの矢の催促をはぐらかし、彼女達の育成に励んでいたのだから。
その甲斐があって彼の最高傑作『ツァーレンシュベスタン』は完成した。
後は彼女らが舞うべき舞台を整えるだけ。そして舞台となる日本では、着々と状況が整いつつある。

(さぁ、聞かせておくれ。銃声の嘆きを、死の絶叫を。命を賭けて戦いに興じるその哀れな姿を。その命の瞬きこそが、何よりも儚く、そして美しいのだ……)

陶酔すら混じった溜息を漏らし、サイスはそっと眼を閉じる。
彼の脳裏では、自分の掌で踊らされる哀れな亡霊達の素晴らしき演舞が繰り広げられているのだろう。

「ク、クククク………」

陰惨な愉悦に満ちた笑い声が、灯りを落とした書斎の中で何時までも漏れ続けていた。























「ねー玲二。今度は何処行こうか?」
「北海道に行く。……大陸に渡る前に蟹でも喰っていこうか」
「あ、それいいね。玲二は何が食べたい? 材料さえあれば、アタシが何でも作ってあげるよ!」
「そうだな……」


2人はこれからも戦い続けるだろう。
行く手を遮る者達を撃ち滅ぼし、お互いに手を取り合って。

玲二とキャルの未来にあるのは希望か、それとも絶望か。


だが、その先に何が待ち構えて居ようとも2人が歩みを止める事は、2人が離れる事は決して無いのだ。





















THE END






























言い訳後書き

いやー、銃とか知らない人には全然訳解らんですな。(takaもそれ程詳しくはありません)
と言うか、キャルや玲二でなくても「ここは本当に日本か!」と言わんばかりの銃撃戦でございました。

ま、作者がジオブリーダーズのファンなので、自然とこうなってしまいました……好きなんだから、都合や設定なんざ後回しだぃ! しかし、この話の玲二とキャルってボニー&クライドみたいですなー。
後、玲二が煙草吸ってますが……姫萩夕をイメージしているので、今回はお目こぼしをw
苦情がございましたら、禁煙させますんで。(爆)

次回作 『亡霊達に明日は無い』がもしあるのならば、遂に新旧ファントムがサイスの目論見通りに激突します……






















北海道の温泉宿でだけどね。(マテ)









固有名詞の羅列消化兵器紹介

S&W M5906

スミスアンドウエッソン社製のオート拳銃。
使用弾は38口径9ミリパラベラムで口径は9mm×19。装弾数は15発+1。
この拳銃の性能に関しては、あまり評判は良くありません。
設計自体に不具合があり、後期生産型では大幅な改修が行われたと言います。
では何故キャルがこの拳銃に拘るかと言うと、米刑事ドラマ『刑事スタスキー&ハッチ』に登場するデイブ・スタスキー刑事の愛用銃だからです。

シュツルム・ピストル

カールワルサー銃器会社製。
中折式26.65mm滑空銃身のワルサー信号拳銃を、対装甲用として卵型手榴弾M39やM361小型榴弾を装填出来る用に改修したもの。
射程距離は自動拳銃より短いが、1発で機関銃座を破壊することも可能。装甲車や一般車両に対しては充分な攻撃力を有しています。ジオブリーダーズ5巻表紙で梅崎真紀が持っているのが現物ですね。

M203グレネード・ランチャー

M79グレネードランチャーを改修し、M16に装着出来る様にしたコンビネーション・ウェポン。
これにより、グレネード装備者の自衛力がアップし、重量的負担も軽減しました。M16シリーズとは切っても切れぬ存在と称され、開発されて30年近く経った今でも尚現役で使用されています。

エクスカリバーMK2

ワロップ・インダストリー社が開発したグレネード・ランチャー。
リボルバー機構、つまり回転式弾倉を採用したグレネードランチャーです。
重量が43sと非常に重く、キャルぐらいの年頃の娘が取り回すにはちときついでしょう。
装弾数が5発もある為、連続射撃による広範囲の制圧を実現しています。

Vz83

1961年に旧チェコスロバキアが制式採用した小型の短機関銃CZE Vz61の後継型。
グリップ内に発射サイクルを調整するレイトリデューサーと呼ばれる機構が内蔵されており、小型SMGに有りがちなリコイルショックで銃が暴れて正確な射撃がしにくいという問題点を解消しています。小さい・連射速度が高い・軽いのが特徴であり、特殊部隊やエージェント等が良く使用しているそうです。ファントム本編では、ドライ=ファントムとの決戦時にエレンが教会に持ち込んでいます。

MP5K

傑作と名高いH&K社製SMG、MP5の小型ヴァージョンです。
全長こそ325mmと短いが高い命中精度と取り扱いが容易な為、要人警護のSPやSWATが装備している場合が多いみたいです。
MP5の方は、本編で玲二がクロウディアとフェラーリで逃走中に武装ヘリに対し撃ちまくっていますね。

ステアーAUG

ステアー社が開発したブルパップ式突撃銃で、オーストリア陸軍の正式採用銃。
プラスチック・パーツを多用した奇抜なデザインからは想像できないほど命中精度は高く、僅かな部品交換をするだけで口径の変更や左利きへの仕様変更が行える等汎用性でも優れています。 本編ではキャルがロフトに隠してあったのを掃除中に見つけ、分解していました。

P-90 PROJECT90

ベルギーのFN社が90年に開発。
ボディアーマーを打ち抜く専用高速弾、2800gという軽量さと504mmと全長が短いのが特徴。
尚且つ装弾数50発という多弾数を実現し、良い事尽くめだがコストの高さと冷戦の終結という時期の拙さゆえ正式採用はされなかったそうです。が、ペルーの日本大使館占拠事件でその実用性が世間に知らしめられると、対テロ部隊や各国の特殊部隊等で採用される様になりました。 無論、その高性能ゆえ軍・法執行機関以外への販売は禁じられているので、玲二の手に渡る訳が無い筈ですが何故彼が所持しているかは謎のままです……。

SPAS12

イタリアのフランキ社で開発されたコンバットショットガン。
ガス・オペレーションのセミ・オートマチックと手動式ポンプアクションを任意に選択でき、銃弾が詰まった場合にも手動で排出できる為緊急時の対応面でも優れています。 連射性と弾薬汎用性を両立させた秀逸なショットガンであり、西側諸国の軍警察で対テロ用として採用されました。 ターミネーター1で、シュワちゃんが警察署を襲撃する際に乱射していたショットガンとして有名ですね。 無論、これを見たキャルが興奮して片手撃ちを真似するものの、腕が腫れるわ玲二に怒られるわで散々な結果でした……自業自得なのでしょうがないと言えばそれっきりです。

MG3

ドイツ第3帝国が生み出した最高傑作機関銃MG42の後継型。
MG42とはドイツ軍の傑作機関銃MG34をベースにし、プレス加工を多用して構造の単純化と生産効率向上を目的に開発されたものです。発射速度の高さと独特の発射音から連合軍兵士より『ヒトラーの電気ノコギリ』の異名で恐れられ、特にノルマンディー上陸作戦ではオハマビーチを海兵隊の血で真っ赤に染め上げました。 大戦終了後もその完成度と性能の高さに各国が注目し、米国のM60重機関銃もこの機関銃を参考にしているらしいです。 発射速度が毎分1300発、口径が7.62mmなので、出会い頭に撃たれれば、分隊程度の兵力では秒殺されてしまいます。 ちなみに日本アニメの『人狼』を見たキャルがMG3を片手で振り回そうとして玲二に見つかり、お尻ペンペンされたのは2人だけの秘密らしいです……お馬鹿ですね。

ドラグノフ

ソビエト製セミオート式狙撃銃。
共産圏の最高傑作銃AK47をベースに新規設計した狙撃銃で、モシン・ナガンM1891/30の後継としてソビエト軍制式狙撃銃として採用。 ソ連を初めとする共産圏の代表的な狙撃銃であり、AK47の流れを継ぐ銃らしく頑丈で悪環境にも強いみたいです。 今回登場するドラグノフは、アラスカの武器商人を襲撃した際にキャルが分捕って来た物。玲二が装備するとそれらしい使用方法で使われますが、キャルが装備すると間違い無くアクティブスナイパーになり、あまつさえ銃剣を着剣して突撃する始末です。(オプションとして着剣機能があります)

PSG-1

ヘッケラー&コック社が開発した狙撃銃。
自動小銃の難点である構造の複雑化による命中精度の低下を、精度の高い部品のみを使用することで補っています。 そのためコストは非常に高くなっていますが、装填の自動化によりセミ・オートで狙撃を連続して行う事が出来ます。 G3ライフルのマガジンも装填可能で、1丁7000ドルという値段を除けば文句の付け様の無い狙撃銃の最高峰とも言えるでしょう。本編では玲二がカウンタースナイプを行う際に使用し、ワイズメルの側近であるランディを仕留めています。

バーレットM95

バーレット社が開発した対戦車セミオートライフル。
アンチマテリアルライフルの名称の通り、主に航空機や軽装甲車両への狙撃に使用されます。 12.7mm機関砲弾を使用、薄いコンクリート程度なら撃ち抜き射程も最大1.8kmと長大な為、対人狙撃としても非常に有効です。 (名目上対人狙撃はあまりに残虐な為禁止されてますが、本当は有って無いも同じ様な状態なんですね)

RPG-7

共産圏を代表するロケット・ランチャー。
ドイツのパンツァーファウスト150を元に製作されたRPG-2の改良ヴァージョン。 弾頭と発射器の2つで構成され、初弾を発射しても発射器に再度弾頭を装着する事で何度でも撃つ事が出来ます。 弾頭は用途によりHE弾やHEAT弾を使い分ける事が出来、対戦車用のHEAT弾は300mm程の装甲を貫く威力を持っています。 尚発射の際には激しい発射炎を後方に撒き散らして反動を逃がす為、うっかり射手の後ろに居ると大火傷してしまうでしょう。 ベトナム戦争の映画では必ずと言っていい程登場する兵器で、よく米兵の立て篭もるバンガーを吹き飛ばしています。

M72型66mm対戦車ロケット砲

1960年代に開発されベトナム戦争でその有効性が実証されたロケット砲。
ランチャーとコンテナが一体式になっており、使用する際には後部コンテナを引き伸ばしてから発射。 RPG-7とは対照的に1発撃ったら終わりの使い捨て兵器で、軽車両や敵陣地の攻撃に使用されます。 ベトナム戦争では主に対人兵器として用いられ、RPG-7程の汎用性を見せる事は出来ませんでした。

カールグスタフ84mm無反動砲

スウェーデンFFV社製の対戦車無反動砲。
薬莢付きの砲弾を発射する、れっきとした『砲』ですね。対戦車榴弾の他、榴弾・発煙弾・照明弾等も使用でき、汎用性も高いです。 自衛隊の普通科連隊もこのカールグスタフを装備しており、通常射手とサポートの2人1組で運用します。

FIM-92A スティンガーミサイル

ジェネラル・ダイナミックス社(現在はレイセオン社)が開発した個人携帯用の対空ミサイル。
優秀な赤外線探知機により全方向から交戦が可能。従来までは肉眼に頼っていた目標識別を、IFF(敵味方識別)装置を追加する事で誤射が起こらない様にしてあります。機銃による対空射撃しか航空機に対する対抗手段が無かった歩兵に強力な防空能力を持たせ、アフガニスタンでのソ連軍の優位を覆した傑作兵器とも言えます。……が、その兵器を支給したアメリカ軍と支給されたアフガンのゲリラ達が後々に戦う事になり、米国製の武器によって米軍機が攻撃されたのは運命の皮肉としか言いようがありません。

M67手榴弾

米軍が使用している破片手榴弾の一種。
6センチの鉄球の回りに184グラムの爆発物が詰まっていて、信管が作動して爆発すると鉄球が破砕して高速で飛び散ります。 通称は”アップル”。主に対歩兵戦や建物内の制圧攻撃に使用されます。

柄付き手榴弾 24型

第3帝国軍で使用されていた手榴弾。
円筒型の容器に170gのTNTを詰め、その下部に30cmほどの木製の柄を取り付けて使用します。 柄が付いている所為か遠心力による投擲が楽に行え、連合軍の手榴弾よりも飛距離が有ったそうです。 愛称は”ポテトマッシャー”。使い方は柄の先端にある玉付きの紐を引きマッチを擦るように導火線に点火し、投げ付けます。 『コンバット』やハリウッド産の戦争映画では何故か爆発までの時間が異様に長かったり、タイミングが悪かったりするこの手榴弾。まぁ、そんだけ大戦中にアメリカ兵がこの手榴弾で酷い目にあったと言う事でしょうか。






代理人の感想

うわー、こんなに並べられてもわからん〜(笑)。

まぁそれはともかく脳天気、といったらなんですが気持ちいいドンパチでしたねw

あー、スッキリした。