平和なーー少なくとも平和な生活。
そんなものはいつまでも続くわけがない。そう思っていた。
硝煙の匂い。
血の匂い。
そしてーーー死の匂い。
それらは刻一刻と近づいてくる。
あいつらにも。
自分にも。
フルメタル・パニック!
<とても平和なある一日>
陣代高校は今日も平和だった。
あいつが来なくなって、3日目。
皆は戸惑いをみせながらも、短いと思われる平和を思い思いに過ごしていた。
「相良君がいないだけでここまでしずかだったなんてねえ・・・」
感慨深げに話をふってくる、ミツアミ姿の親友。
「まあ、あいつがいないと私の苦労も半減・・・いや、90%は減るからね」
「そんなこと言ってぇ、カナちゃん顔色が優れないようだけど、心配なんでしょ?」
「な、なにいってるのよ!私がなんであいつの事心配しなきゃなんないわけ?私はほっとしてるんですけどっ!キョーコったらなに言い出すのよ、うは、うははははは」
図星だった。
連絡が取れない。あいつの携帯にかけても「電波の届かない」場所にいるらしいことしかわからない。いつもいつも、連絡だけは欠かさなかったのに。
「定時連絡は必要だ」
あいつはよく、そういってた。実際、私にもよく連絡だけはしてくれたーーーだけは、ね。
3日前、初めてーーーーそう、初めてあいつをむかえにいった。
早起きして。
シャワーも長めに浴びて。
リップぬって。ーーまあ、あいつがきづくとは思わなかったけどーーそれでも、気づくことを期待して。
いつもより力いれたおべんと持って。
すこし、どきどき、して。
呼び鈴をならした。
でもーーーー
あいつはーーーーーいなかった。
前みたいにいなくなった?
違う、ノートパソコンも、私が貸したCDもある。あいつらしい生活臭はまだ残ってる。
私はとりあえず、ほっとした。きっと、いつもみたいに「お仕事」なんだろう。定時連絡しなかった罰を考えとこう。
外食でもおごらせようか。いや、あいつはきっと大騒ぎしてしまう。遊園地はどうだろう。
先輩の時のお礼しよっかな。いやいや、これは罰なんだ。ふりまわさなきゃ。
いつもはこっちがふりまわされてるんだ。そう、帰ってきたら振り回してやるーーー
そんなことを考えてた。いつもみたいに1日で帰ってくるって。
でも、あいつはここにはいない。きっと、私じゃ追い付けない、どこか遠くで戦ってる。それならまだいい。もしかしたらもう、あいつはーーーー
「カナちゃん?どうしたの?」
「うわぁぁぁっっっ!!・・・・あ、キョーコか」
「あ、じゃないでしょ?いきなりボ〜ッとしちゃって。相良君がらみでなにかあるの?相談にのれるようなことだったらいつでもいいから。私はーーカナちゃんの味方だからね」
そう言ってくれる恭子がとても嬉しかった。でも、
「いいよ、たいしたことじゃないし。じきに、ね。うん」
私はそう言うしかなかった。あいつが持つもう一つの顔。
それは恭子にもいえなかった。
「あ、そうだ・・・・・・」
私はふと思い付くと、恭子に話しかけた。
「こないだ、TVでやってたんだけどね。スパイダーマン、知ってる?あれのパクリでさあ。なんか正義のヒーローみたいなのやってんのよ、さえないやつがね。で、その恋人はそれを知っちゃう訳よ」
「ああ、みたみた。でもスパイダーマンのパクリだったっけ?」
首を傾げる親友には構わず、続ける。
「その娘もアホだよねえ。冴えない奴なんてほっときゃいいのに。あげく何時死ぬかわかんないような人間いつもいつも待ってんのよ。違う奴探しゃいのにねえ」
はっ、と肩をすくめる。
「大体、そういう奴とつき合おうって思うん事自体が変なのよ。そうおもわない?」
「そっかなあ・・・・」
「男も男よ。たった一人の女を安心させることもできないくせになぁにが正義のヒィロォよ。まずそばの人間幸せにさせろっての」
「でもさぁ、カナちゃん・・・」
まくしたてていた私に、ちいさく異を唱えてくる。
「好きなものは好きだからしょうがないんじゃない?」
「そんなどっかの漫画の題名みたいなこといわれなくたってわかってるわよ。でも、すきだからこそ、心配させるのって何か違くない?たまにならまだしも、ずっとよ、ずっと!?しかも毎回毎回死ぬかも知れないようなことでさ」
「・・・それじゃあ、会いにいっちゃえば?」
「へ?」
「いつ、どうなっちゃうかわかんないんでしょ?だったら会わなかったら後悔するよ、きっと。会う方法がなくても、会おうって思わなきゃ。だと思うよ、私は」
「ふ、ふぅん」
「相良君がなにしてるのか私はしらないけどーー」
「な、だからあいつは関係なくてっ!」
「はいはい。でも、ヒーローもあいたいんじゃないかな?でも、会えない事情があるんだよ。黙って行ったんじゃなくて、行かなくちゃならなかったんだと思うよ・・・」
「そうかな・・・・?」
「そうだよ・・・・・って、カナちゃん、何か変な音しない?」
「変・・・・?」
耳をすますと、確かに何か音がする。
それはだんだん大きくなってーーー
「っきゃぁぁぁっっっ!!」
もの凄い暴風が私たちを襲った。
思わず目をつむって風に背を向ける。
やがて、風とともに音は小さくなっていき。
いつかどこかでやったような気がしながら目を開けると、
「む、千鳥か」
「む、ぢゃなぁぁぁい!!」
私のハリセンがうなる。あいつはーーーソースケはきりもみ状に吹っ飛ぶと、ゴミおき場に突っ込んだ。きっかり2秒で立ちあがって、
「ぬ。今日も調子はいいようだな」
「この馬鹿慣れてきつつあるし・・」
大きく溜息をついていると、恭子がソースケに近づいた。
「ね、相良君、3日間もなにしてたの?カナちゃん心配してたんだよ?」
「む・・・。残念だが、君には知る資格がない」
「私はいいけど。カナちゃんには教えてあげなきゃ駄目だよ?」
「了解した」
「ん。それじゃあまたあしたね。カナちゃん、明日ね!」
「ん〜、じゃね〜」
「さらばだ」
気を・・・きかせてくれたのだろう、か。恭子は走っていってしまった。少し気まずい空気が流れる。
私たちは黙って家路についた。
もう、あとすこしで私の家というところで、ソースケが口を開いた。
「その・・・、すまない。連絡を入れようとは思ったのだが、その手段がなくてな・・・」
「も、もういいわよ。こうやって無事に帰ってきたんだし」
「気に・・・・しているのか?」
「だから、もういいって。大変だったんでしょ?」
「いや、クルツにまた宝探しに巻き込まれてな・・。携帯は家に置き忘れるし、俺としたことが・・・
ん?どうした、千鳥?」
「置き・・・・忘れだぁ?」
「ああ」
「じゃ、電源は・・」
「きっているにきまっているだろう」
「・・・・・ソーーォスケェ!!」
私のねりちゃぎが頭頂部を直撃して。
この戦争バカは悲鳴もあげずに崩れ落ちた。
「私がどんだけ心配したと・・くぬっ、くぬっ!」
「やめろ、千鳥。しゃれにならん、しぬ・・・」
「私が殺してあげるわよ!!!」
取り敢えず私は。
遊園地よりも外食よりも、こいつの鈍感さを叩き直すのが最優先事項だと、心にきめていた。
確実に、それらは近づいてくる
硝煙の匂い
血の匂い
そして、死の匂い
だけど今は平和なーーーー少なくとも平和な生活
それが少しでも続くように、思っている。
それで、いい。
後書き
わあ、夢の痕餓鬼だ!!いや、ごめんなさい。
まずはお礼を。ここまで読んでくれてありがとうござい
ます。なにしろ初めてなもんで。つっこみやきつい感想は
覚悟してます。が、ゆるしていただくとうれしいなw
次に、代理人様。「DCでもいいよ」といっていただき、
とても感謝してます。そう、私はPCをもたないのです!
だからなんだ!といわれるときついんだけど。
今回は前後にソースケの、間にかなめの心情、つ〜か気持ちですね、
それをちょっとばかし書かせてもらいました。あまっちょろいですねぇw
でも、その甘さがいのですよ、きっと。きっきっと。です、でです。
ウィスパードにくわれかけました!やべやべ。
と、いうわけで(どんなだ)駄文なりにこれからも投稿
していくつもりですので、ウザくてもおつきあい、よろしくおねがいします!
代理人の感想
うむ、いいですね。
かなめの描写もいいですし、綺麗にオチがついているのが何よりも(笑)。
続きものの様なんで次回も期待しております。