「・・・ぃ。おき・・・」
どの位意識が飛んでいたのだろう。
「・・・てよ、アキ・・・」
どこかで俺を呼ぶ声がする。
戻らなきゃ。
戻らなきゃ。
「「起きてよ、アキト兄ぃ!!」」
ーーーーーー俺は、ようやく目を覚ました。
<さ迷うゲスト・オブ・フューチャー>
第一話
「ブロス、ディア・・・」
まだ痛む頭を抑えながら、俺は懸命に何が起こったのかを思い出そうとする。
「そうか・・・。俺は遺跡に取り込まれて・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
ブロスが大慌てで俺に噛みついてくる。
「そんな事って・・・。それ以上に重要なことがあるのか?」
「あるからいってるんでしょ!」
「じゃ、どんな場合だと言うんだ?」
「・・・こんな場合」
短く告げると、ブロスは外の様子を映し出す。
「・・・・・確かに。」
そこはーーー銃弾が飛び交う戦場だった。
見たことのない、8メートルほどのメカーーー飛鳥インダストリが開発したのだろうかーーーが2機、
呆然とこちらを見ている。華奢だが、同時に力強い躍動感を思わせる機体。
メカというより、人間のアスリートをほうふつとさせる機体。と、突然、後ろから衝撃が襲った!!
慌てて体勢を整えると、襲ってきたモノの正体を確認する。
こちらはずんぐりとした、頭部がまるでカエルのようなメカが4機、銃を構えている。
とりあえず、借りは返す必要がある。
「ブロス、DFSはどうなってる?」
「ってゆーか、アキト兄ぃ・・・。これ、動いてるのが不思議な位なんですけど」
「そ〜だよ! フェザーも全く使えないし・・・。遺跡のバカァ!」
ディアは遺跡のせいだと決めつけている。ま、実際そうなのだろう。なんだかんだいっても、ディアは優秀だ。
間違ったことや適当なことはいわないだろう・・・たぶん。
相手は見たこともない機体だ。おまけにこっちはまともに動けない。用心するにこしたことはない、か・・・。
「アキト兄、<ニンジャ>接近!」
・・・・・・何だそれ?
ディアの言葉にジト汗をかきつつも、回避行動をとる。
すぐそばを、人型のーーー確かに巻物をくわえた忍者に見えたーーーメカが通り過ぎる。
さっきの2機のうちの一つだ。それは俺の方を見もせずに、外部スピーカーから声を発した。
「貴様はとりあえず後回しだ。そこから動くな。動くと敵とみなすぞ」
ニンジャは瞬く間にカエルロボットーーーこっそりケロットと名付けておいたーーーを破壊していく。
正確な射撃。そしてーーーあれは、なんだ?弾が機体の前で止まったようなーーー
訝かる暇もなく、ニンジャは全機を破壊すると、俺に銃を向けた。
「さて・・・一つ訊く。貴様は何者だ?」
時は少し遡る。
宗介はマオ、クルツ、ロジャーと共にある任務についていた。
あるテロリストがフィリピンのある島で準備活動をしているのだという。
「フィリピンねえ・・・。よくよくここはテロ連中に好かれてるんだな」
クルツのぼやきにロジャーが声を押し殺して笑う。
それは、簡単な任務のはずだった。
いつもの通り、M9とアーバレストを使ったテロリストの掃討である。
マオと宗介が制圧し、クルツとロジャーが後方で援護射撃をする。それだけのことだ。
宗介もラムダ・ドライバをある程度使いこなせるようになっていた
ーーーAIの<アル>はますます奇妙な言動をするようになっていたが。
簡単な任務のはずだったのだ。
だが。
<軍曹殿、警告です。何か来ます>
アルが無機質な声で告げる。宗介は眉をひそめた。
「何かとは何だ」
<分かりません。しかし、何か来ます>
「何だそれは」
<・・・私のカンです>
その言葉に宗介はため息をつく。ラムダ・ドライバを使えるようになったのはよかったが、
このAIはやはりどうにかできないものか。
かなり本気で考えていたのだが、マオの通信により、遮られる。
「ソースケ、あれ!」
マオの言葉で我に返ると、前方に光が出現した。
<ほら、私の言った通りです>
「黙ってろ」
<失礼、黙ります>
自慢げにいったーーーそういった仕草をすることが自分は信じたくないことだったがーーーAIを黙らせると、
光を睨む。それは少しずつ形をつくっていき
ーーー黒い機体が現れた。天使のようでもあり、死神のようでもあるーーー
宗介達が呆然としていると、その黒い機体が被弾した。
はっ、と我に返り、双介は黒い機体に突っ込んでいく。当たる寸前で避けようとは思っていたが、
その一瞬前に避けられた。
こいつは強い。しかも、とてつもなく。
そう直感したが、先に目の前の目標をせん滅することにする。
宗介は黒い機体をマオに任せると、サベージに向かって発砲した。
「何者・・・と言われても」
俺は困ったように頬をかいた。自慢じゃないし、したくもないが
ーーー漆黒の戦神の名は知れ渡っているはずだ。
当然、その機体も。
だが、目の前のニンジャとその連れの機体ーーーアスリートとでもいおうかーーーは、本当に知らないらしい。
ウィンドウを開こうとしたが、無理だった。仕方ないのでこちらも外部スピーカーに切り替える。
「連合・・・機動戦艦ナデシコ所属、テンカワ・アキト」
軍と言うのはさすがにためらい、言い直す。
しかし、俺の返事を聞いて、アスリートが肩をすくめたーーー器用な事をする。
「何言ってんの、アンタ。寝言は寝て言うもんよ」
「ナデシコというのは戦艦の名前なのか?」
アスリートーーー女性の声だった。少し意外だーーーをやんわりと押し退け、ニンジャが再度言う。
その言葉に、さすがの俺も驚きを隠すことが出来なかった。
「お前達・・・ナデシコを知らないのか!?」
「・・・そんな名前の艦、聞いたこともないわ」
俺の反応に、二人の様子が変わっていく。
観察から注意に。注意から警戒へ。
「連合宇宙軍で最強の艦だぞ!? 名前位は知っているはず・・・!」
俺は声をあげる。
「ちょっと待って」
「連合・・・宇宙軍?」
「? そうだが?」
そう答えた俺に、二人は困ったように顔を見合わせた。アスリートが口を開く。
だがしかし、さっきまでの警戒はない。代わりに別のーーー例えるなら、
最近のゴートさんに対する俺たちのようなーーー警戒がみえる。
「一応きくけど・・・。人間が月に立って、まだ50年も経ってないことは知ってるわよね?」
「・・・・・・は?」
今度は俺が目を点にする番だった。
「何を言ってるんだ? 人間はすでに火星・・・いや、木星でプラントを造って生活をしているじゃないか」
「ソースケ・・・どうしよ」
「俺に聞くな、マオ」
俺の答えに、いよいよ反応に困ったらしい。
一方俺も、ここがどこだかうすうす分かりはじめていた。
アスリートーーーマオといったかーーーの言葉を鵜呑みにすると、ここはーーー。
俺は警戒心を無理矢理解く。敵対心がないことが分かれば、向こうも手出しはしてこないだろう。
「あの。ごめんけど、今日って何年何月だっけ?」
「・・・199X年、2月8日」
急に変わった俺の態度に拍子抜けしながらも、
ニンジャーーーソースケと呼ばれていたーーーは律儀に答えてくれた。
「・・・・・・そう。ありがと」
大きくため息をつく。ハッチを開くと、二人は驚いたような動きを見せた。
しかし、敵意がないことを分かってもらうには、これが一番手っとり早い。
ディアとブロスが危険だと言っているがーーー反撃できるだけの余裕はある。
「ごめん。故障したんだ。無理は承知だけど、でもできれば匿ってくれないかな?」
俺の声に二人は再度顔を見合わせる。
暫くの間動きがなかったがーーーやがてアスリートが近づくと、手を差し出した。
「OK。戦隊長の了解が取れたわ。これは本来あの子が扱える範囲じゃないのだろうけど・・・。
とにかく、トゥアハー・デ・ダナンはあなたを保護します」
「・・・助かります」
「それと、その機体、どうする? 一応まだ艦にはスペースあるけど・・・」
「あ、じゃあ、お願いします」
「おっけい。あ、私はメリッサ・マオ。階級は少尉よ。こっちのむすっとしたのはサガラ・ソースケ軍曹。
とりあえず、ヨロシク」
「相良宗介軍曹だ。宜しく頼む」
「うん。よろしく」
俺は答えながら、又も遺跡に翻弄される自分を嘆いていた。
続く
後書きじみた座談会
拓斗「え〜、というわけで、第一話ですけども」
宗介「短いな」
拓斗「う・・・。まあ、これはプロローグのつもりで書いたんだし」
アキト「じゃあ、これプロローグにして、第一話かけばよかったんじゃ?」
拓斗「う」
クルツ「しかも、俺出番ないし」
ロジャー「俺の説明もないから、俺オリキャラだと勘違いされるかもしれんぞ」
拓斗「ああ、それはない・・・と思う。まだ一度もオリキャラ出したことないし。
オリキャラを無闇に出すの、苦手なんだ」
マオ「どうして?」
拓斗「決まってるでしょ。人多くなりすぎたら動かせないからだよ」
クルツ「そ、そうか・・・」
アキト「ま、動かせないんじゃそのキャラにも悪いしね」
拓斗「そゆこと。おまけに、今回はアキトスマイルも無しの方向でいこうかな、と」
アキト「え、ということは・・・」
拓斗「うん、君の被害者がでないということですわ」
アキト「ほ、ほんとっっ!? ありがとう! 命の恩人だよ!!」
拓斗「・・・・・・今のところは、ね(ボソッ)」
アキト「ん、何か言った?」
拓斗「いや、何も(ニヤリ)」
後書き
う〜ん、本当に短い(爆)。まあ、今回は導入部分と考えて頂ければ幸いです。
実は、ミリタリー系やメカ系はめっぽう弱いわたし。
これでも一生懸命やってるんですが、これからどんどんボロが出てきます。
そのときは暖かく突っ込んでください。
カナメちゃんでませんでしたね〜。まあ、あとには出す予定もあるかも知れません。
それは私のインスピレーション次第・・・ActionではBen波というんでしたっけ(爆)。
それでは、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございます。
Benさん、時ナデの設定使わせてもらいます。
K,爽やかに罵倒するあなたの顔、とても充実して見えました。覚えてやがりなさい。
それでは、次回も駄文にお付き合いを・・・。
代理人の感想
う〜ん、短いながら相変わらずテンポがよく、面白い・・・・んですがっ。
「わがまま」の方も、ちゃんと完結させて下さいよ〜。
期待してるんですからね〜。