乗組員四十二名の内、十一名死亡。重傷二十七名、軽傷四名。無傷の者は零名。それが、時空管理局所属次元航行船<バルサザール>の被った“人的”被害の全てだった。
スクライア一族による救助作業は迅速だった。一族を襲った災害の直接的な原因である船の人間に対し、一族は恨み言を口にするでも無く、淡々と救助作業を行なった。ただ無論良い感情を抱いている訳でも無いのだろう、恨み言を言わない代わり、不気味なくらいに一族の人間は無言だった。
幸いにも軽傷四名の内の一人であったダイゴ=ナカジマは、率先して作業に従事した。ただ彼は救助作業には関わっていない。死者の遺体を船内から引っ張り出し、その骸を船からやや離れたところに埋葬する、恐らくは最も辛い仕事を引き受けた。
勝手に埋葬してしまって良かったのか。そうも思ったが、死体をいつまでも放置しておく訳にはいかない。艦のクルーにはそれぞれやるべき事がある筈と、“客人”の位置に居たダイゴは半ば無理矢理にその仕事を買って出た。
幸いだったのは、死んだクルー達と面識が無かった事か。あくまで他人と割り切る事で、余計な感情移入を防ぐ事が出来た。……それでも、何故か、目頭に熱いものが込み上げてきたのだが。
「終わったか」
全ての骸を埋葬し終えた時には、既に日が暮れかけていた。アジャンタの太陽は半円ほどが未練がましく地平線から顔を出している。公転の関係か、或いは自転か、夕暮れの時間が長いのがこの世界の特徴だった。
背後からかけられた声に振り向かず、ダイゴは「ああ」と応える。声の主が歩み寄ってきて、ダイゴの横を通り過ぎ、墓の前に立つ。
園崎玄十郎。彼は静かに手を合わせると、墓に向けて頭を下げた。
「御苦労だったな」
「……いいさ。こういうのも、初めてじゃねえし」
時空管理局捜査官という役職は、言うまでもなく危険と隣り合わせだ。魔導師としての資質を持たない、ダイゴの様な普通人ならば尚更の事。殉職した仲間達を葬る事も少なくは無い。自分が死んだ時は仲間が葬ってくれる。だから、仲間が死んだ時は自分が。誰が定めた訳でも無いが、捜査官達の間における暗黙の了解だった。
玄十郎は振り向くと、来た道を戻っていく。作業を終えたダイゴも、何とは無しにその後に続いた。
「船の連中な、全員手当てが済んだぞ」
「あ……ああ、ありがとう」
「俺に礼を言っても意味が無い。一族の連中に言ってくれ」
そこまで言ったところで、不意に、玄十郎が首だけで振り向いた。
眼。ただでさえ悪い目付きが、更にその瞳に剣呑な光を湛えて、ダイゴへと向けられる。
重力が増したかの様な威圧感。腰を抜かしてしまいそうになるのを、男としてのプライドで必死に耐える。
「事故の原因はロストロギアの暴走――お前、そう言ったな」
「あ――ああ」
「どんなのだ?」
一口にロストロギアと言っても、実際には様々なものがある。滅びた次元世界の残滓を総称してそう呼んでいるというだけなので、サイズや形状、その危険性などは非常に多岐に渡る。まるで危険性の無い、部屋のインテリア程度の価値しか無いものから、それこそ世界の一つや二つ、簡単に破壊してしまえる様なものまで。
そして今回、次元航行船バルサザールが運んでいたのは、極上に危険性の高いロストロギアだった。
様々なエネルギーを取り込み、増幅して放出する。それがそのロストロギアの特性。暴走に至った経緯は不明だが、あの程度の被害で済んだのは掛け値無しに幸運だったのだろう。
ダイゴも一度だけ見た事があった。あまり時間も無く、そもそも興味が無かったのではっきりと見た訳では無いが、艦に運び入れる際にちらりと目にする事が出来た。宝石を削り出した花弁で組まれた、薔薇の花。ロストロギアというより、単なる美術品の様にも感じた。その後、ロストロギアの名前を知って、妙に納得したのを憶えている。
確か、ロストロギアの名は――
「確か……<ジュエルフラワー>って名前だった気がするな」
「ふん。ジュエルフラワー、ね」
特に何という事も無さそうに、玄十郎は頷いた。
太陽が沈む。
ビラドーラ古代遺跡に、夜が訪れようとしていた。
魔法少女リリカルなのは偽典/Beginning heart
EpisodeⅢ【悪魔】
なんか、頭が痛いデス。
目を覚ましたセロの第一声は、そんな至極当然のものだった。
「え? あ、うん、いやー強敵だったね! まさかあのマネキンがあそこまで強かったとは思わなかったなー。セロを倒したあの一撃はあたしもぞくっときたね。なんて言うかさ、絶体絶命の大ピンチ? あたしがあと一歩遅れてたら、セロ死んでたね。このあたしであってもあれだけ苦戦したんだから、一撃で気絶しちゃっても全然恥ずかしくないって。いやいや、別に感謝とかはしなくて良いよー? 弱い者を守るのは主役としちゃ当然の事っしょ。いやでも、どうしてもってんならまあ、感謝しても良いよん?」
「……はア。どうモ、ありがとウございマス」
納得した様なしていない様な微妙な顔で礼を言い、セロは後頭部に出来た特大のたんこぶをさすった。
良かった、バレてない。隣を歩くセロに気付かれない様に、メイリィはこっそりとため息をつく。上手い事記憶が消えていたのは正直幸運だったとしか言い様が無い。いつもの様にプロレス技やら柔術の技やらの実験台にして気絶させるのならいざ知らず、魔法を使ってしかも誤射しましたはさすがにまずい。セロの事だから本人は怒らないだろうが、もしそれが玄十郎の耳にでも入ればがっつり説教を喰らうだろう。
何がなんでも誤魔化しきる。至極どうでも良い決意を固め、メイリィは地下遺跡の中を歩いていた。
――突如襲ってきた謎の人形を倒した後、もう此処に用は無いと、メイリィは帰り支度を始めた。帰ると言っても転移魔法でこの場に来た以上、それはセロを起こすしか無かったのだが。要はバリアジャケットを解除した、というだけの事である。
ところが、目を覚ましたセロは今までに見た事の無い様な真面目な表情で――それでも、彼を見慣れていない者が見れば、緊張感に欠ける様な表情だっただろうが――コットポトロの残骸を漁った後、一つ舌打ちして歩き出した。
置いてかれるのはまずい、帰れなくなる――とメイリィはセロの後を追い、そして現在に至る。
「ねえセロ、何処に行くの?」
「奥デス」
それは知ってる。
そうではなく、何処を目指して、何を目的として歩いているのか。それを問いたかった。
……セロニアス=ゲイトマウス=チェズナットは、基本的なコミュニケーション能力に欠けている。即ち言語、会話だ。言葉が不自由なのは仕方が無いとしよう。だがそれをどうにかしようとする意欲がまるで感じられない。何に対してもにこにこ笑ってやりすごそうとしているのが――他の人間はどうか知らないが――メイリィには透けて見える。
没個性な微笑、それを鎧とした過剰なまでの沈黙。自分という存在を他者に理解して貰う為の努力を、セロは完全に放棄している。
一週間前から、そうだった。
あの日、メイリィ=スクライアはこの遺跡で眠っていた少年を、地上へと連れ出した。
まずメイリィは玄十郎のところへと、セロを連れていった。日はとっぷりと暮れ、一族の人間も殆ど寝てしまった様な夜遅くだったので、そこしか無かったのも事実。
玄十郎の使っているテントには、ささやかではあるが調理設備がある。玄十郎がどこかから持ち込んだものだが、それを目当てにメイリィはちょくちょく夜中に玄十郎のテントを訪れては、夜食をご馳走になっている。また玄十郎は夜更かし大好きという変わった老人なので、寝ている心配も無い。
昼から何も食べていなかったメイリィはとにかく空腹だった。セロを紹介した後、メイリィは床に転がって食べ物をねだった。乙女の慎みというものをこれでもかと放擲したその様に、玄十郎は苦笑しながらも夜食を用意してくれた。
「あれ、食べないの?」――当然、玄十郎はメイリィにだけ食事を用意した訳では無い。うどん、と言っていたか、玄十郎の故郷の料理らしいが、それを目の前に置かれ、メイリィが自分の分を平らげても、セロはそれに手をつけようとしなかった。
遠慮している様には見えない。食べたいのを我慢している様でも無かった。ただ、困った様な顔で、丼とメイリィ、そして玄十郎の顔を交互に見ていた。
好き嫌いするんじゃありません、と大人ぶって、メイリィはセロに半ば強制的に、夜食を口にさせた。
異変はすぐさま現れた。おそるおそる食物を口に運び、咀嚼し、飲み込む。その次の瞬間、蒼白となったセロは口元を押さえて、テントを飛び出していった。げえげえと吐き戻す厭な音が聞こえてくるに至って、メイリィは自分が何か、とんでもない間違いを犯したのだと理解した。
「……食べられない、デス」
やがてぽつりと、セロはそう告げた。
食べられないし、飲めない。生命維持に必要な“食べる”という行為を取る事が出来ない。メイリィにはいまいち理解出来ない会話の後で、玄十郎がその結論だけを教えてくれた。
それから一週間、セロは本当に何も口にしていない。水の一滴、パンの一欠片もだ。それでいて、普通の人間と同じ様に――或いはそれ以上に働いている。食費がかからないというのはある意味歓迎すべき事なのだろうが、一族の中にはさすがに不審がる者も出てくる。それでも白眼視する者がいないあたり、懐が大きいと言えるだろうが。元よりスクライア一族も奇人変人の寄り集まりだ、今更一人や二人変な奴が増えたところで、大して気にする事も無いと考えたのだろう。
無論、疑問は残る。いや、考えてみればそれに限らず、この灰髪の少年は不可解なところだらけだ。
何故地下遺跡で眠っていたのか。何故砂蟲を追い払えるのか。何故、一切の食物摂取無しで生きていられるのか。それらの疑問に対し、セロは沈黙か、もしくはどうでも良い様な答えしか返さない。答える気は無い、それだけがはっきりとした答え。
ならば、今、この地下遺跡の何処を目指し、何を目的として進んでいるのか、それを問う事も無意味という事か。
だが無意味を即座に無駄と切り捨てられる程に、メイリィは大人では無く――言い換えれば、単に諦めが悪いだけでもあるのだが――しかし同じ事を何度も繰り返して訊き、相手の苛立ちを誘う手段を取る程に、子供でも無かった。
「むー……」
目の前を歩く少年の背を睨みつけ、メイリィは唸る。かつんかつんと響き渡る足音に紛れ、その声はセロの耳に届かない。
さて、どうやって聞き出してやろう。機を窺うか、締め上げて吐かせるか、色気で釣るか。とりあえず手っ取り早いところで、この三つが考えついた。
機を窺う。まずこれは却下。メイリィはそう気の長い人間では無いし、機を窺うというのならもう一週間窺っている。これ以上は待てない。よって却下。
締め上げて吐かせる。最も簡単で、かつ慣れた手段だが、セロ相手には効果が薄いだろう。この一週間、プロレスだの柔術だのの練習台に使っているが、毎度毎度悲鳴の一つも上げない。案外Mな属性なのかもしれない。快感を得ているのかもしれない。それは置いておいても、今更暴力に訴えたところで効果は見込めまい。
という訳で、最後の一つ、色気で釣るに決定。身の程を知らぬ、神をも畏れぬ行為を、何の自信があるのかメイリィ=スクライアは当然の様に選び取った。
「ねーえ、セロ――」
猫なで声と言うにはやや粘ついた、それでいて色っぽさも艶っぽさも何一つ感じられない声を上げて、セロに近づく。
と、セロが足を止めた。かつん、という足音がやけに広く反響していく。勢い余ってメイリィはセロの背にぶつかった。どこか広い空間に出たと気付いた瞬間、ぼっ、という音がして、一気に視界に光が満ちた。
そこは一週間前、セロと初めて会った場所だった。広々とした空間の中央に、三つの石棺が置かれている。一つは蓋がずれて落ちているが、残る二つは手付かずのままだ。まさかこの中にもセロみたいな人間が眠っているのだろうか。その予想は、内容の物騒さに反してあっさりと外れた。
昨日、一族の調査班がこの地下遺跡へと入っている。ビラドーラ古代遺跡は元々地上にあったものだ。長い年月を経る内に砂漠の下に埋もれてしまったらしいのだが、今メイリィ達が居るこの地下遺跡は、最初から地下に建造されているらしい。それほど大規模な地下施設では無く、一帯の地下を通路が縦横無尽に走っているのに比べ、ある程度の広さがある空間はこの一つだけだったと、そう報告していた。
部屋に置かれた三つの石棺。内、セロの眠っていた一つを除く二つ。調査班はこの二つの石棺を開けようとしたが、何らかのロックが掛かっているらしく、散々手を尽くしたものの上手く行かなかったらしい。明日――つまりは今日――幾つかの道具を持ち込んで、再度チャレンジするつもりとの事だった。実際にはその前に、コットポトロに襲われて逃げ帰る事になったのだが。
ともあれ、開かない筈の石棺――その蓋をセロはいとも簡単に開けて、中をまさぐった。おそるおそるメイリィも後ろから中を覗き込む。セロの仲間が寝ているのかと思いきや石棺は空っぽで、セロが取り出した一冊の本以外に入っているものは無かった。
「すみまセン、持ってテ下サイ」
ひょい、とセロは本をメイリィに渡してくる。分厚いハードカバーの本。軽く捲ってみるが、見た事も無い文字でびっしりとページが埋まっている。何を書いてあるのかさっぱり分からない。こりゃ駄目だとあっさり諦めて、メイリィは本を閉じた。
続けて残る一つの石棺も開け、同じ様に中をまさぐっている。こちらも見た感じは空っぽだ。棺の容量に対して中身が少なすぎるという意味であり、完全に空という訳では無い。その証拠に、セロが石棺の中で何かを見つけたその瞬間、彼の表情が凍りついた。
セロが身体を起こす。手には小さな、赤い宝玉。デバイスの待機状態にも似たその小さな宝玉は、遠目に見ても分かる程にくっきりと、大きな亀裂が穿たれていた。
「……あー……やっぱリ」
まるで似合わない、引き攣った笑み。それがセロの顔に張り付いている。
「ねえ何? どしたの? ……セロ?」
「メイさん。これ持っテ、先帰っテ下サイ」
罅割れた宝玉を手渡して、セロはそう言う。その声には有無を言わさぬ迫力があった。
「え、でも」
帰れと言われても道が分からない。しかもつい先程の衝撃で、何処で落盤が起こっているのか分からない状況だ。そんなところをうろつくより、セロに転移してもらった方が遥かに早い。
だが転移させてくれ、と言う前に、一緒に帰ろう、とメイリィは言いかけた。先に帰れなんて冷たいじゃない、と、そう言いそうになった自分に気付き、口を噤む。
セロは既にメイリィを見ていない。顎に手を当て、ぶつぶつと何かを呟いている。その表情はいつもの微笑では無く、焦燥に灼かれていた。
「やっぱり、さっきのあれデ……いや、随分時間も経っテルみたいだし、そのせいもあるのカ……?」
眼中に無いと言わんばかりのセロの態度に、さすがのメイリィもむっときて、彼に詰め寄ろうとした――その瞬間。
「!?」
ばっ、と過剰なまでに大仰な動作で、セロが振り返る。
思わずびくりと引いたメイリィの頭上を通り越し、セロの視線は何も無い中空へ。
一体何よ――とその視線を追って、メイリィも振り向き、上を見た。
オレンジ色の光が照らし出す空間。だが空中の一点が、陽炎の様に歪んでいる。
歪みは光を吸い込むかの様に渦を巻き、見る間に空間に“穴”を開ける。それはさながら、栓を抜かれた水槽の水面。光すら呑み込むそれは果ての見えぬ異界への入口。
入口であるが故に――それは。
出口でも、ある。
「……!」
“穴”の“淵”に手をかけ、ずるり、とそこから何かが這い出してきた。
「あ――アウロラ!」
【Stand by ready,set up.】
反射的に、悲鳴にも似た声で愛用のデバイスを呼び――それに応え、デバイスが己の判断で起動する。
踊り子の様な蒼のバリアジャケットに魔導杖。メイリィ=スクライアのデバイス、<アウロラ>の展開状態。それは即ち、彼女が戦闘態勢に入ったという事。
“穴”から這い出してきたもの。
それを端的に表す言葉を、メイリィは持ち合わせていなかった。
金属的な光沢を放つ銀の鱗、裂けた口、煌々と光る真っ赤な眼。イメージとしては爬虫類、蜥蜴の類に近い。だが背中に針鼠の如くびっしりと生えた棘と、何より二本の脚で直立した二メートルを超える巨躯が、蜥蜴というイメージを追い払っている。
「あっ……か……」
息苦しい。
呼吸が阻害されている様な、そんな感覚。
重力が増したかの様に身体は重く、熱を奪われたかの様に寒い。
当たり前だ。あれと同じ空間に居るのだから。
蜥蜴人間――便宜的に、メイリィは目の前の生物をそう呼ぶ事にした――と自分。この二つの間にある、生物としての絶対的な格差。象と蟻よりも遥かに大きいその差を、少女の身体は本能的に察していた。
「<ヒドゥン>……!」
今までに聞いた事の無い様な強い口調の声に振り向けば、これもまた、見た事も無い程に険しい表情をしたセロの姿。
ヒドゥン――セロが口にしたその名前に、メイリィは奇妙な違和感を覚えた。それは確か、ある次元災害の名ではなかったか。メイリィの知識には名前以上の事は入っていない、それが次元災害の名であったかどうかも、実はあやふやなのだが。
セロの言葉に反応したのか、ヒドゥンと呼ばれた蜥蜴人間がゆるりとこちらを向いた。それだけで感じる重圧が倍化する。立ってすらいられない、脚から力が抜け、メイリィはがくりと膝をつく。
蜥蜴人間はメイリィを見てすらいない。その視線は全て、セロへと注がれている。心臓を握り潰されそうな圧を孕んだ視線を受けて、しかしセロニアス=ゲイトマウス=チェズナットはそれを真っ向から受け止め、逆に射殺さんばかりの視線を返していた。
「そっカ……だかラ、起こされタ……偶然じゃ、無かったデスか」
セロの指が、右耳の鈴を弾く。
りぃぃいん……という涼やかな音が、質量すら伴っているかの様に重い空気の隙間を通って、空間に響き渡る。
「起きロ、<ククルカン>」
【El comenzar.】
ざぁっ、と赤褐色の光がセロを包む。
肩に巻かれた漆黒のストール、白い詰襟の服、膝から下を鎧う巨大な装甲靴、前腕に巻かれた環状魔法陣、そして宝玉の嵌め込まれたハーフフィンガーグローブ。
セロのデバイス<ククルカン>の、展開状態。
がしゃり、と金属音を伴って、セロが一歩前に出る。
「出テきタばかりデ、悪いデスけど――」
前腕の環状魔法陣が輝き、セロの掌を赤褐色の魔力光が覆う。
噴き上げる炎の如く、少年の掌で光は猛っている。指先から伸びる光は獣の爪を連想させた。獣が爪を、己の武器を見せるのは二つの理由から。一つは威嚇。無用な争いを避ける為に。
そしてもう一つは――戦意を表す為に。敵を狩る、その意思を示す為に。
「貴方は――潰しマス」
その言葉に。
蜥蜴人間は、口の端をきゅうっと吊り上げ――瞬間、弾丸の如くセロへと襲いかかった。
ロストロギア、<ジュエルフラワー>。
製作者・製作年代、一切不明。ただ数百年前、古代ベルカの文献にその名が残されていた事から、その当時には既に存在していたものと思われる。
数あるロストロギアの中でも、その危険性は特筆すべきレベルにある。様々なエネルギーを貪欲に吸収・蓄積し、増幅して解放する。エネルギーの質は問わないが、種類によっては蓄積や増幅にかかる時間が変動する事が確認されている。
エネルギーの解放に指向性を持たせる事も可能。ただしその方法までは伝えられていない。元より現存する文献が少なく、残る文献も大半が散逸している為、これ以上の情報は――
「……ふん」
そこまで読んだところで、玄十郎はウィンドウを閉じた。
<バルサザール>のデータベースから勝手に情報を引っ張ってきたのだが、リスクに見合うだけの情報は得られなかった。ばれればかなりの重罪である、罰金刑どころでは済まない。にも関わらず、玄十郎はロストロギアに関するデータを欲しがった。
どうなっても知らないからな――ダイゴ=ナカジマはそう言い、手伝いこそしなかったが邪魔もしなかった。
犯罪を犯してまで情報を漁ったのには、当然、それなりの理由がある。ただその“それなり”という部分が、世間一般のそれと大幅にかけ離れているが。
園崎玄十郎は好奇心の塊だ。今から三十年以上前、玄十郎はとある事故に巻き込まれ、第97管理外世界<地球>からミッドチルダへと放り出された。
次元漂流者。様々な要因によって、自分の生まれ育った世界から、別の次元世界へと迷い込んでしまう人間の事を指す。これの保護も時空管理局の仕事の一つであるのだが、今から三十年前は未だ旧暦の時代、管理局は組織としてまだ確たるものでは無く、玄十郎が保護されたのは、彼がミッドチルダに放り出されてから半年が過ぎた頃だった。
普通、次元漂流者は本人の希望によって、元の世界へと戻される。まったくの異世界で生きていく事を決断出来る人間はそういない。だが玄十郎はその例外だった。半年という時間の中で、彼は魔法という技術に魅せられ、貪欲にその知識を吸収していった。
ほんの少しでもそれに触れてしまった以上、彼に元の世界へ戻るという選択肢は無かった。正確にはあったのだが、それを選ぶ権利を彼は喜んでゴミ箱へと放り捨てた。
園崎玄十郎がデバイス・マイスターと呼ばれる様になるまで一年。魔導師としての資質こそ無かったものの、技術者としての資質は常人を遥かに凌いでいた彼がマイスターの名を手にするのにかかった時間は、他のマイスター達の数分の一。時空管理局始まって以来の天才と称された彼は、しかしある日突然、管理局から姿を消した。
理由はごく単純なものだった――思い通りのデバイスが作れないから。当時の管理局においてデバイス・マイスターに求められていたのは、『誰にでも扱える』デバイスの設計。汎用性こそを最優先し、その余りで性能を追及する様な風潮に嫌気が差した。ただそれだけの理由で、彼は名声やら権威やらを、かつて元の世界に戻るという選択肢を捨てた様に、いとも簡単に投げ捨てた。
それから三十年弱。数多の世界を流れ歩き、気に入った人間に自分の作ったデバイスを与え、本人曰く『はぐれマイスター』として彼は生きている(余談だが、『はぐれ』という名称は、運良く遭遇したら結構な経験値=高性能なデバイスが得られるというところにもかけているらしい)。
そんな玄十郎が、デバイスと並んで興味を示すもの。それがロストロギアである。
ただし、それだけならばスクライア一族と変わり無い。園崎玄十郎が求めるのは、『デバイスに転用出来る様な』――言い換えれば『兵器として使える様な』、危険度の高いロストロギア。それらを入手し、解析し、そしてその能力をプログラム化して、デバイスに組み込む。
そうして作り出されたデバイスは、デバイス依存型の魔法としてそれらのロストロギアの能力を得る。一定範囲の空間を抉り取ってしまう魔法、術者が認識した“生物”だけを燃やしてしまえる魔法、何処に居ても頭上に金ダライを降らせる魔法、指定した対象の衣服を剥ぎ取ってしまう魔法など、実用性はともかく効果という面では危険極まりない魔法が使える様になる。
尤も、玄十郎はそれらのデバイスを他人に譲る事は殆ど無い。自分の作るものの危険性を彼は充分に知っている。通常の技術で作り上げたデバイスは惜しみなく分け与えるが、ロストロギアの技術を応用したものは全て手元に残している。作る事自体が目的なのだ、言ってしまえば模型を作る事と変わらない。ある程度“仕事”と割り切るデバイス作りと違い、こちらは正真正銘、単なる“趣味”なのだ。
だからこそ――手を抜かない。
そして、それ故に貪欲に。
<ジュエルフラワー>。十人以上もの管理局員の命を奪った危険な代物が、彼には格好の玩具に見えていた。
「ちっ……やっぱり、直に見ないと分からんな……」
如何なるプロセスでエネルギーを吸収し、蓄積し、増幅するのか。解放のトリガーとなるのは何か。それらのデータがまるで足りない。
幾つものウィンドウを同時に展開する。そこに映し出されているのはぼろぼろになったバルサザールの艦体。どの様な形で、或いはどれだけの威力でエネルギーがジュエルフラワーから解放されたのか、それを確かめていく。
「ちーっす。入るぜ、ゲンさん」
「うん? ……ああ、お前か」
玄十郎のテントに入ってきたダイゴを一瞥し、玄十郎はウィンドウに視線を戻す。
ダイゴは所在無さげに佇んでいたが、やがて近くにあった椅子に腰を降ろした。
「何してんだ? ……それ、艦の映像だよな」
「ジュエルフラワーの威力がどれほどかと思ってな。ふん、相当なもんだという事は分かるが……それしか分からんな。現物は見られんのか?」
「おいおいおいおい、冗談じゃねえよ。あの情報見せてやっただけでも、結構ヤバいんだぜ、俺? つーか何だよ俺、何で今日会ったばっかの爺さんにここまで扱き使われてんだよ」
「まあそう言うな。あまり文句ばかり多いと、読者にツンデレキャラとして認知されるぞ?」
「冗談じゃねえ!」
ダイゴが叫ぶが、正直、玄十郎も似た様な気分だった。
「何だ、ツンデレは嫌いか?」
「いやツンデレは大好物だよ! じゃなくて、ツンデレってのはよ、もっとこう、崇高にして素敵なもんであるべきだろ! つーかなんだ、そう、甘酸っぱさが必要なんだよ! ツンとデレの落差がはっきりと分かる可愛いおにゃのこだから許されんだ、野郎のツンデレなんて、苦味走った大人の味すぎるわ!」
「……残念だ。お前は今、全世界の海○雄山ファンを敵に回したな」
何の話だ。
それより、と玄十郎は話題を変える。
「この、ジュエルフラワーだが……バルサザールが運んでいたのは、これだけか?」
「あん? ああ、それだけらしいぜ。こんな危険なもん、他のものと一緒くたにしておけねえよ」
まあ、そうでなくても暴走しちまったけどな。ダイゴはそう付け加える。冗談だろうが、笑えなかった。
「で、それがどうしたよ?」
「ああ……ざっとデータを漁ってみたんだがな。このロストロギア、これだけで独立しているものじゃ無い気がするんだが」
「は? って事は何だ、これに別売りのオプションが付きますってか?」
「と言うよりは、別売りの電池を入れんと動きません、だな。しかも単三じゃなくてボタン電池ってオチだ」
「あー、クリスマスに貰った玩具が、26日にならんと遊べねえってアレか。……いや、話ズレてんな。要はアレ、完品じゃないって事だろ?」
「まあ、そうだな。これは単なる俺の勘なんだが、多分ジュエルフラワーには、外部からエネルギーを供給する装置が存在している。無くても動くが、本来の機能は発揮出来ない――というところだろうな。直に見ない事には断言出来んが」
「見せろって遠回しに催促してやがるな……」
肩を竦めるダイゴを見て、玄十郎は苦笑する。この男、意外に頭の回転が速い。メイリィとでは出来ない、知的とは言わずとも、まともな会話が楽しめる。
展開していた何枚かのウィンドウを、一枚だけ残して閉じていく。残されたウィンドウに表示されているのはジュエルフラワーの映像だった。宝石を削りだして作った薔薇の花。こうして映像だけで目にすれば、単なる美術品にしか見えない。
だがその薔薇がどれだけの被害を齎したのかは――今更、思い出すまでも無い。しかも玄十郎の想像では、それはこのロストロギアが持つ力のごく一端に過ぎない。
もしこの薔薇と、これにエネルギーを供給する何がしかが揃ったとしたら。
世界の一つや二つどころか、全次元世界纏めて簡単に吹っ飛ばせるのでは無いか。
想像するだけで、肌がぞくりと粟立った。
「けどよ。俺もデータベースの情報は目ぇ通したが、フラワーの事が載ってる文献にゃそんなん出てこなかったぞ」
「うむ。そこが気になるな……案外このロストロギア、別のロストロギアに繋ぐ事を前提に作られたものなのかもしれん」
「……電池だけ先にあって、それを使う為の道具を後から作ったってか?」
「憶測だがな」
確証は何も無い。
裏付けとなる証拠は無く、そしてそれを調べる余裕も無い。
案外、“花”に対する“種”があるのかもな――玄十郎の冗談に、ダイゴは笑わなかった。
「ただまあ……これだけ危険なロストロギアだ、“電池”もそれなりに有名なものである可能性は高いな」
「有名ねえ。無限書庫でも行って調べてみるか?」
馬鹿ぬかせ、と玄十郎は吐き捨てた。ただ言葉の乱暴さの割に、口元には笑みが浮かんでいたのだが。
無限書庫。時空管理局本局に存在する、超巨大データベース。
『まず集めよ』――いつかの誰かが発した号令により、ありとあらゆる情報が掻き集められ、そこに収められている。だがあまりに肥大化したその規模に、収められた情報の整理が追いつかず、あらゆる情報は未整理のまま雑多に放置されているのが現状だ。
世界の記憶を収めた場所。それが無限書庫の別称だが、同時に記憶の墓場とすら呼ばれている。収められる事によって情報は記憶としての価値を失い、記録に堕すると。
此処で情報を求めるのならば、チームを組んで年単位の時間を必要とする。生憎と玄十郎にそんな時間は無い。やるべき事はともかく、やりたい事は山積みだ。無限書庫に閉じこもるのもそれはそれで魅力的だが、それ以上の楽しみが外界には溢れている。
「まあ、いい。それよりも何か用があったんじゃないのか、ナカジマ?」
「あん? あーいや、別に用ってほどのもんじゃねえよ。暇潰しさ、暇潰し」
俺は忙しいんだがな、という玄十郎の言葉に、嘘ばっか、とダイゴが返す。実際、玄十郎の言葉は嘘では無いが本当でも無い。趣味に興じる事を忙しいと言えるかどうかは意見の分かれるところだろう。
と。
ばたばたという足音が聞こえ、玄十郎とダイゴの視線がテント入口に向いた丁度その時、一族の若い男が顔を出した。
「げ、玄十郎さん!」
「どうした。何かあったか?」
「そ、その――」
男はちらりとダイゴに視線を遣る。
管理局絡みか、その視線ですぐに察した。
ダイゴはこくりと頷く。それを受けて、玄十郎は男に「いいから話せ」と、強い調子で促した。
「ちょ、長老が管理局の人間に――」
がたん。
ダイゴ=ナカジマが、椅子を蹴倒して立ち上がった。
あれは確か――今から、五日ほど前の事だっただろうか。
一族内においてメイリィ=スクライアは調査発掘の護衛という役割を振られている。ただし当然ながら、これは有事にしか仕事が無い。ならば普段は何をしているのかと言えば、玄十郎の作るデバイスの動作試験の手伝いが主な仕事になる。
炊事洗濯掃除などの雑用に対し致命的なまでに適正が無いメイリィに出来る仕事と言えば、それくらいしか無かった……と言うのも確かにその通りなのだが、それとはまるで逆に、彼女はデバイスの扱いに対し天賦の才があった。単体の魔導師ランクで言えば精々B+というところの彼女であるが、デバイスを使わせればもう一ランク半は上の実力を有している。ただそれは逆説、デバイスに依存する傾向が強いという事でもあるのだが。
デバイスは戦闘に使うだけのものでは無い。広義の意味でいうのなら、魔法行使を補助する為の機器であればそれはデバイスであると言える。一族の人間が使う検索魔法などを補助する為の機器も、その例外では無い。メイリィはそういった補助魔法は決して得意では無かったが、だからこそこのデバイスのモニターに相応しかった。
で。
普段使い慣れない魔法が簡単に使える、と調子に乗って発掘現場のあちこちをうろついた挙句、彼女が居住地に戻ったのは日もとっぷりと暮れた後の事だった。
「うー……お腹減った……」
ぐぎゅるるる、と腹の虫が盛大に鳴り響く。既に夕食は片付けられ、炊事場も火が落とされていた。仕方ない、いつもの様に玄十郎に何か食べさせてもらおうと彼のテントに足を向けた時、メイリィの耳に妙な声が聞こえてきた。
My mother has killed me,
「…………うん?」
何だろう――歌?
ふらりと、メイリィは歌の聞こえる方へと歩き出す。
My father is eating me,
不思議な声。
高くなく低くなく、楽器の様にも、風の音にも聞こえる。
けれど、そこに癒しは無く。
刃物の如くに研ぎ澄まされた澄音は、夜空に煌々と照る満月に突き立てられるかの様に、天へと昇っていく。
My brothers and sisters sit under the table
Picking up my bones
何と歌っているのかは分からない。聞いた事の無い言語、アカペラなのではっきりとは言えないが、メロディも同じく、聴いた事の無いものだった。
メイリィは知らない――知る筈は無い。
その歌は遥か遠く、彼方の世界の狂気を謳ったもの。
And they bury them under the cold marble stones.
歌声の主を見つけると同時に、歌は終わった。
淡いクリーム色のローブ。ロマンスグレーというのか、白髪の混じって灰色になった髪が、月光に濡れて蒼く輝いている。
ひゅう、と一つ息を吐くと同時に、右耳に付けられた鈴がちりんと鳴った。
「……セロ」
セロニアス=ゲイトマウス=チェズナット。
背後から己の名を呼ばれた彼が、不思議そうな顔で振り向いて――
轟ッ!
激烈な衝撃が波と音それぞれにメイリィの頬を叩き、彼女を現実逃避の回想から、現実へと連れ戻す。
蜥蜴人間の突き出した右腕。貫手の形に指を揃えられ、ただ純粋に必殺の威力を乗せた一撃がセロの掌に阻まれる。
否、正確には掌を覆う赤褐色の魔力光に、か。
防御魔法では無い。防御魔法とはつまるところ対魔法防御、蜥蜴人間の繰り出す一撃の様に、速度と質量によって構成される暴力には対抗出来ない。術式無しに魔力を直接放射する、原始的で技巧とは程遠い防御が、セロの取れる唯一の手段。
「…………ッ!」
セロの顔が歪む。
一週間、七日間という時間の中で、メイリィや一族の人間、玄十郎が何をしても崩れなかった鈍色の微笑は、驚愕と戦慄の前に容易く剥がれ落ちた。
ばちっ――と緋色の電光が周囲の空間に噛みついた。蜥蜴人間の爪はじりじりとセロの防御に喰い込んでいく。掌に纏った魔力光の防御を貫かれれば、少年としての強度しか持たぬ肉体など豆腐の如く簡単に、蜥蜴人間の爪に切り裂かれるだろう。
退く事は出来ない。今ここで一歩でも退けば、防御行動から意識を逸らせば、その瞬間に“死”に飲み込まれる。そしてその更に次の瞬間、メイリィも同じ運命を辿る事になるは間違いない。それは疑い様の無い、確定された未来。本人達がそれを望むか望まないかとは全く別に、何処かの何かによって、既に定められた事。
なのに。
メイリィにはただ呆然と、目の前で起こる現実を眺めやるだけしか出来ない。
脚が動かない。
腰が抜けた。
身体が言う事を聞かない。
それは確かにその通り。ただ足りない。それらから導き出される結論を、導き出されなければならない結論を、彼女は意図的に思考から排除する。
『だから、私には何も出来ません』。
その一言を言わない為に、彼女は何かを踏みつけにした。
「……ククルカン、『血槍』!」
【Lanza de la sangre.】
グローブの宝玉が明滅し、掌に纏う魔力光が更に赤黒く染まる。次瞬、名の如く槍の様に放出された魔力が、零距離で蜥蜴人間に直撃。派手な爆発を引き起こした。
だん、とセロが後ろへ飛び退いて、間合いを離す。
僅か一合で相当消耗したのか、息は荒く、肩は激しく上下している。額の汗を拭い、息を整えながら、彼は爆煙の向こう側を睨みつける。
あの程度でくたばってはくれない。戦意を孕んだ視線が、そう語っていた。
「せ、セロ――」
《逃げテ》
思わず名を呼んだメイリィに対する返事は、念話によるものだった。
《それ持っテ、逃げテ下サイ。……早ク》
“それ”――古ぼけた一冊の本と、罅割れた宝玉。
《に、逃げろって、そんなの――》
つい一時間程前にも、似た様なやり取りをしたのを思い出す。
だがあの時は、彼が半ば強制的に転移魔法で一族の人間達をその場から離れさせていた。今はそれをせず、自力で逃げろと言っている。
転移魔法に使う魔力すら惜しい。或いはこの念話に使う魔力さえも。言葉と同時に思考が、そして何より焦りが、僅かではあるが伝わってくる。
自己犠牲に価値を見ていないという事は変わり無いが、それをしなければならない程に、灰髪の少年は追い詰められている。それが分かった。
「Urrrrrrr…………RuaAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHH!!」
咆哮が黒煙を噴き散らす。
鼓膜を破らんばかりの蛮声が、異形の姿を視界に捉えさせた。
セロの姿を認識したか、蜥蜴人間がゆるりと構えを取った。上体を低く、両腕を掲げ、爪と牙を剥き出しにした、獣の構え。人のカタチをしているモノが取るそれは、身震いする程に禍々しく、おぞましい。
対するセロも身構えた。極端な半身の態勢を取り、右の掌をゆるりと敵へと向ける。掌に纏わせた魔力光は鮮血の如く赤黒く。泥炭の様なダークグレーの瞳は確かに敵の姿を捉え、全神経を敵の一挙一動に集中させる。
ぐぅっ、と蜥蜴が上体を仰け反らせ、しなる竹の様に反動を伴って顔を突き出す。瞬間、口から吐き出される銀色の魔力光。直射型砲撃魔法、それも明らかにSオーバーの威力を持ったそれを、少年は避けようとしない。
前衛型転移魔導師。本来の魔導師区分には存在しないそれに分類される少年は、その本領たる転移魔法陣を展開して、銀色の暴力を待ち受ける。
銀色の光が赤褐色の魔法陣に叩き付けられ、吸い込まれ、飲み込まれる。徐々に細っていく光の柱が針となり消えた時、蜥蜴の右手側の空間が歪み、魔法陣が顕現。それに対する蜥蜴の反応は確かに速かったが、しかしそれ以上に、魔法陣が銀色の光を吐き出す方が速かった。
己自身の放った魔力波動の中へと、蜥蜴の姿が消えていく。先刻セロが放った一撃とは比較にならぬ程の爆発。爆煙は地下空間を埋め尽くし、粉塵は傍観者たる少女の喉をも苛んで、破壊の痕跡を刻んでいく。
「――『血爪』」
【Clavo de la sangre.】
グローブの宝玉と前腕の環状魔法陣が同時に輝き、魔力光が更に厚く強く掌を覆う。魔力光が作り出す巨大な掌は中核たる掌の三倍を超えているだろう。獣の狂暴と人間の凶暴を併せ持った赤褐色の爪を携え、灰髪の少年が爆心へと駆け出した。
踏み込みに黒煙が切り裂かれ、銀色の異形がその姿を現す。一足一撃の間合いまでに要するはまさしく刹那。人を模した蜥蜴は易々と敵を己が懐に呼び入れた。そこに計算は無い、有るは只一つ傲慢のみ。生物として遥か高みにある銀蜥蜴は、地べたすりの策も計も問答無用に踏み躙る。
ならば見よ。例え貴様が如何なる階梯に在ろうとも、此方の暴力もまさしく問答無用。
セロが右腕を振りかぶる。身体の撥条を最大限に利用した、横薙ぎの一撃。圧縮された掌の魔力光は触れる一切を削り取る。
セロニアス=ゲイトマウス=チェズナットが、己が持つ至近距離の切り札をこれ以上無い角度と速度と威力とで振り抜いた。
だが。
――異音。
金属同士が打ち鳴らされた音に、それは酷似していて。
赤褐色の光爪は、銀色の皮膚に刺さりもせずに止まっていた。
ぎしりと指先に異質な感触。
生物の皮膚にあるまじき硬度――そう、防御でも何でも無く、ただ生物としての性能のみで、ヒトの必殺は防がれた。
「セ――」
ロ、とメイリィが口にし終える前に。
蜥蜴人間の拳が深々とセロの腹腔に捻じ込まれ――少年の矮躯を吹き飛ばす。
魔法でも何でも無い、ただの拳。それだけでセロの身体は砲弾の如き加速を伴って、直線上の壁へと叩きつけられた。
衝撃が石壁を砕き、重力に引かれて落ちた少年の身体へと破片が降り注ぐ。障敵と共に砕けるからこその砲弾、少年の身体もまた、無事では済まない。
バリアジャケットを纏ったその上から、衝撃が彼の身体を貫いている。ごぼ、と口から盛大に血反吐が溢れ出た。
もぞりと腕が動く。ごそりと脚が動く。だがそれだけだ。たった一発の拳は、少年から肉体の支配権を奪い去っている。立とうとする脳髄の意思に手足が従わない。ただ唯一、未だ戦意に満ちた瞳だけが脳髄の意のままに、敵の姿を睨みつけている。
立ち上がれぬ少年に向け、蜥蜴人間が一歩踏み出す。ぼう、と右手が光った。光は指先へと移動し、やがてそれぞれの指先から細い縄となって、セロの身体に絡みつく。
拘束魔法の一種か。しかし本来、相手を捕縛・拘束し、戦力を奪う為だけのそれと違い、蜥蜴のそれはあくまで攻撃の為に。
ぐい、と蜥蜴がバインドを引き込んだ。縛り上げられた少年の身体が軽々と宙を舞い、遠心力が彼の身体を振り回す。最初に直撃したのは天井だった。最大の光源であるオレンジ色の光球を押し潰し、天井へと激突する。更に蜥蜴が腕を振り降ろせば、天井から一直線に今度は床へと叩きつけられた。
「がぅっ……!」
漏れ出た声は悲鳴ですら無く、肺から押し出された空気が立てただけの音。その音に、確かに蜥蜴が笑った。裂けた口の端をにぃいと更に吊り上げて、異形の笑みを形作る。それは笑いでは無く嗤い。蟻を踏み潰す子供の浮かべる、邪気の無い愉悦を湛える顔。
バインドが引っ張られる。瓦礫に埋もれた少年の身体が引き摺り出される。再び遠心力によって振り回され、今度は壁へと叩きつけられた。
終わらない、止まらない。壁、天井、床、地下空間を囲む石板に何度も何度も、少年は叩きつけられる。
肉が崩れる音、血が噴出す音、骨が砕ける音が地下空間に響き渡る。聞くに堪えないおぞましい音に、少女は眼を背け耳を塞ぐしか出来なかった。
「ひ……ひ、ぃい……」
やめて。もうやめて。そう叫ぶ事すらも出来ず、ただメイリィは現実から目を逸らす。
如何に魔導師であろうと、メイリィ=スクライアは未だ十四の小娘。能力はあっても経験が足りない。こと戦闘経験というならば百戦錬磨、数多の世界で幾多の障害を排除してきた彼女であるが、しかしそれ故に敗北を知らず、それ以上に絶望を知らない。
言ってしまえば、彼女は強者という存在を知らないのだ。ただ一方的に蹂躙するだけの存在、ヒトの身には決して届かぬ域に在るモノの存在と出会わなかった事が、彼女の不幸。
故に。
そこで震えるメイリィ=スクライアは魔導師である以前に、ただの小娘。
恐怖に怯え、身を竦ませ、友が肉塊と化していくその光景から目を背けるだけの、ただの小娘。
【マスター。立ってください、マスター】
アウロラの声も聞こえない。
共に戦う相棒の声にまで、彼女は耳を塞いでいる。
【ここに居ては危険です。離れましょう。……マスター!】
「だめ……だめ、足、うごかない……」
弱々しくかぶりを振る少女の目の前に、流星の如き速度で“何か”が落下した。
捲れ上がった石板の隙間に、赤黒く濡れたその“何か”が垣間見える。
分かっている。そんなもの、考えるまでも無い。
バリアジャケットはずたずたに千切れ、そこから覗く肌は肉が露出している。天へと突き出された腕がぴくりと動いたが、それが生命活動の証拠かどうかは分からない。
メイリィは目を逸らした。見ていられなかった――否、見たくなかった。
ひゅるん、と銀色の縄が解かれ、蜥蜴の手へと戻っていく。
蜥蜴が近づいてくる。殊更にゆっくりと、獲物が怯える様を楽しむ様に。
「……逃げテっテ、言ったノに」
どこか緊張感の無い声が、メイリィの耳朶を打った。
顔を上げれば、そこには見慣れた灰色の髪。赤黒く濡れて尚、己を失わない灰色が、目の前に立っていた。
歪に折れ曲がった四肢は明らかに直立出来ないレベルの損傷を負っている。ぼろ布のバリアジャケットは最早防護服としての機能を果たすまい。出血は素人目に見ても致死量をとうの昔に超えている。こうしている今も、ぼとぼとと滴り落ちた血液が彼の足元に血溜まりを作っている。
にも関わらず――セロニアス=ゲイトマウス=チェズナットは、立っている。
それが当たり前の様に、立っている。
「セロ――」
「ククルカン。“解放”は出来ル?」
【Imposibilidad.】
不可能というデバイスの答えにあっそ、と呟いて、セロが一歩前に出る。途端、ぐらりとその身体が傾いた。咄嗟に脚を突っ張って転倒は阻止するものの、それが精一杯という事は明白だった。
立っている事すら単なる痩せ我慢。戦う事など出来よう筈も無い。蜥蜴の敵になどなる筈は無い。
だが――蜥蜴人間は、立っている事自体が戦意の表れと、もしくは侮辱と、或いは不敬と取ったか。
銀色の輪郭がぶれ、瞬間、セロの眼前に異形の巨躯が姿を現す。
毟り取る様な荒々しさで少年の胸倉を掴み、人外の膂力に物を言わせて振り回す。硬い床へと狙いを定め、弧を描く様に叩きつけた。しかしそれでは終わらない。無礼にも立ち上がってきた身の程知らずを、蜥蜴は許す気など毛頭無い。
大の字に転がった少年から、蜥蜴はまだ手を離さない。今度は横方向へ、床と平行に投げ飛ばす。バインドで絡めた時と違い、今度は少年が抵抗らしい抵抗をしない為、軽い身体は更に軽々と投げ飛ばされる。
石壁を砕き、その下の土壁を露出させて、少年が崩れ落ちる。
蜥蜴の攻撃はまだ終わらない。銀色の魔力光が収束を開始、その数三つ。収束型砲撃魔法――術者だけで無く、周囲の魔力を掻き集めて撃つという性質から、数ある攻撃魔法の中でもその破壊力は群を抜く。それを三発同時に、死にかけの少年へと撃ち放つ。絶死レベルの攻撃を幾度も喰らい、それでも尚死なない羽虫への苛立ちがそこに現れていた。
銀色の破壊光が少年へと迫る。だが標的に届くその寸前、赤褐色の魔法陣がその行く手を阻んだ。光が魔法陣に飲み込まれる。これを敵へと撃ち返すのが転移魔導師たるセロの得意技。だが光を吐き出す魔法陣は遂に現れず、代わりに地震と思しき振動だけが地下空間を揺らした。
最早、任意の空間に“出口”を作る事も出来ない。蜥蜴は一足に少年との間合いを詰め、うずくまる彼の髪を掴んで引き摺り起こした。
「…………は」
にやりと――血に塗れた顔で、それでもにやりと、少年が笑う。
それが更に蜥蜴人間を激昂させたか、握りこまれた拳が少年の腹に突き刺さる。一発では足りない、二発、三発。四発五発六発七発。それでもまだ終わらない。一撃ごとにセロの口からは夥しい血が溢れ、蜥蜴の銀色の皮膚へと降り注ぐ。
最早セロは抵抗しなかった。だらんと下がった四肢は力無く揺れるだけで、ダークグレーの瞳は焦点を失っている。内臓は一つとして原型を留めているまい。千切れ落ちた漆黒のストールが足元の血溜まりに落ちて、ぱちゃりと音を立てる。僅かに遅れて装甲靴の破片が落ち、こちらはがらんっ、と重たげな音を響かせた。
すうっ、とメイリィの身体から体温が失せていく。がたがたとぶれていた視界が安定を取り戻し、代わりに色を失っていく。白と黒と灰色――そう、それはあの少年を構成する色だ――の中に混じる赤。紅。朱。
セロ/死ぬ/殺される/怖い/駄目/立たなきゃ/立てない/戦え/
ぶつ切りの思考が、目の前の光景とシェイクされる。
怖い怖い/敵/アウロラが/自分も死ぬ/負ける/撃て/でも駄目/逃げるな/危険/死にたくない/見殺し/血が/赤くて/怖い怖い怖い/怖い怖い怖い怖い/怖い怖い怖い怖い怖い――!
「う――うわぁああああああああっ!」
ぼん、と蜥蜴人間の背で、爆発。
ぴたりと蜥蜴はセロを殴る手を止めて、後ろを振り向いた。
少女が――蒼のバリアジャケットに身を包んだ一人の少女が、立って、手にした杖を蜥蜴へと向けている。
アウロラの先端から、白い湯気が立ち昇る。魔力放射を行なった証、そう、攻撃した事の証。
「あ……、あ」
今、自分は、何をした?
いや知っている、解っている。メイリィ=スクライアは、あの蜥蜴へと向けて、攻撃魔法を撃ち放った。
蜥蜴人間の紅い瞳が、不思議そうに蠢いた。ああ、奴には理解出来まい。生存本能を殴り倒し、自殺志願者となって尚立ち上がる娘の事など、理解出来る筈が無い。
少年を殴りつけていた拳を解き、銀色の蜥蜴がメイリィを指差した。指先が銀色に光り、奔流となってメイリィへと襲い掛かる。セロへと撃ち放った砲撃を濁流とするなら、これは精々水鉄砲か。だがその程度で充分。蟻の一匹を押し流すには十二分。
【Round Shield.】
メイリィの目の前に魔法陣が展開される。アウロラによる自動防御、しかしそれは終わりを僅かに遅らせただけ。防ぎきれる筈も無い、障子紙よりも簡単に、渾身の防御魔法はぶち破られる。
光の奔流に飲み込まれ、少女の身体が吹き飛ばされる。高密度の魔力の奔流、飲み込まれた後は爆発が待っている。蜥蜴の放ったこれも例外では無い。
【Reacter Purge.】
だが爆発の一瞬、アウロラが自らバリアジャケットを爆破した。砲撃の爆発がそれによって相殺され、普段の服装に戻ったメイリィは一命を取りとめている。ただし至るところに焦げ跡は残り、ダメージも深く身体に食い込んだか、立つ事が出来ない。
からん、と主の手から離れた魔導杖が転がった。一拍遅れて、セロから預かった書物と宝玉もその近くに落ちる。
これで邪魔者は居なくなったとばかりに、蜥蜴は少年への拷問を再開した。
「やめ……て」
拳は止まらない。
最早それは拷問ですら無く、少年の肉体を挽肉へと変える作業工程。
「やめて、よぅ……!」
身体が動かない。声だけは一丁前に出るくせに。何故私の身体は動かない……!
視界が滲む。込み上げてくる涙が眼前の惨劇にフィルターをかける。 ぼろぼろと頬を伝い流れ落ちる涙が鬱陶しい。そんなものはいらない、泣いて喚いて何かが変わるのならそうしよう。だが現実はそれだけでは動かない。世界はそれ以外のもので回っている。
――ああ。
――セロが、死んじゃう。
手を伸ばす。その行為に意味は無い。伸ばした手は何処にも、誰にも届かない。何処の誰も、その手には気付かない。
いや――
【面を上げよ】
そんな声が、メイリィの耳朶を打った。
首を動かし、眼球を動かし、その声へと視線を向ける。十メートルほど離れたところに転がっている愛杖。その先端の宝玉が、鈍く明滅している。
そして同様に、その傍らに転がっている罅割れた宝玉もまた、アウロラに合わせる様にして明滅していた。
【目を開けよ。顔を上げよ。その魂に宿る不屈の心こそ、絶望の天敵】
ばちっ、と罅割れた宝玉から火花が散る。
声はアウロラから聞こえてくる。だがそれはアウロラのものでは無い。愛杖の“口”を借りて、何者かがメイリィに呼びかけている。
【立て。立って戦え、メイリィ=スクライア。力を貸そう。我等はやりたい事とやるべき事が一致した幸せなる者。故に我等こそ、あしきゆめに抗する者】
少女が、立ち上がる。
弱々しく、しかし何よりも雄々しく。
ばさり――愛杖の近くに投げ捨てられた書物がひとりでに開き、猛烈な勢いでページが捲られていく。
罅割れた宝玉が、光を失った。だがアウロラの宝玉は更に強く激しく、明滅を始める。
【Main system scanning start――complete.】
【Network connection start――complete.】
【<Deseo>systemprogram download start――complete.】
【Program install start――complete.<Deseo>system startup!】
くるくると、アウロラの表面で文字が、文章が踊る。
明滅が止まる――しかし光は消えず、地の底をまるで真昼の屋外と思わせるほどに強く、神々しさすら纏って地下空間を埋め尽くす。
蜥蜴が手を止めた。億劫そうに振り向いて、真正面から光を浴びる。そこで漸く、メイリィにとっては初めて、蜥蜴人間は驚きと取れる表情を見せた。
セロの髪を掴んでいた指が解ける。重力に従い、少年の身体が足元の血溜まりに落ちた。
デバイス<アウロラ>がふわりと浮遊し、少女の手へと収まった。
さぁっ――と、光が少女の身体を撫でていく。バリアジャケットが再構成され、踊り子の様な衣装が彼女の身体を覆う。
「……行くよ、アウロラ」
【了解です、マスター】
蜥蜴人間が、少女に向けて構えを取った。
事此処に至って、蜥蜴が遂に、メイリィを敵と認識する。
そしてメイリィは、既に蜥蜴を敵と認識していた。
この差が持つ意味に誰一人気付かぬまま、少女と化物が対峙する――
Turn to the Next.
後書き:
という訳で、第三話でした。お付き合いありがとうございました。
内容的にはセロがボコられるだけの話だったり。今回出てきた蜥蜴人間が、本作の主な敵になります。名前に関しては……まあ、言わずもがな。その辺の関連性は第五話で開示予定です。
作中における蜥蜴のイメージとしては、ゴジラとかラドンとか、昭和の怪獣映画ですね。とにかく圧倒的な存在、一方的に蹂躙してくる存在。原作本編では主役の彼女がそんな感じになっているのですが(笑)、本作では敵としてそれを用意しております。『ゴジラ相手に知恵を振り絞って立ち向かう人類』な構図です。
ちなみに、本作のダイゴは魔導師では無い、一般人な設定です。あの家系って元々魔導師の素質が無い様だったので。魔導師の素質(要はリンカーコア)って基本は遺伝するものらしいですし。期待した方、ごめんなさい。魔法全盛の世界における一般人の活躍とか悲哀とかが彼の見所に……ならないかも(爆
魔導師じゃないのに捜査官なんて出来るのか? という疑問もあるかと思いますが、五十年前といえば所属する魔導師も少なかったんじゃないか、また魔導師は武装隊とかに優先して配属されるだろうし、捜査官ってのは前線で戦うのが仕事じゃ無いよな(某六課部隊長も元々捜査官ですが、頭に『特別』ってついてますし)とかいう言い訳で勘弁してください。
といったところで、本日はこの辺で。宜しければ、またお付き合いください。
おまけ:元ネタ暴露コーナー
今回は一つだけです。
・ジュエルフラワー……アレに関係する品ってのが一発で分かる代物です。元々、“種”は『エネルギーを貯めるだけ溜め込むタンクに、おまけとして魔導的なインターフェイスが申し訳程度に付いてるようなもの』らしいので、そのエネルギーを有効に使う為の道具という設定をつけてます。電池が無いと勝手にそこらからエネルギー引っ張ってしかも暴走する厄介な品になってしまいましたが。ちなみに作中にある通り、これが作られたのは“種”が作られてからかなり後。作ったのも別の文明という設定です。
今回はこんな感じで。それでは、また。
感想代理人プロフィール
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代理人の感想
哀れセロ。ユーノといい、クロノといい、所詮この話では男はヒーローになれないのだな。w
一番哀れなのは自分に色仕掛けの適性がないことに気付いてないメイリィではないか、という疑惑はさておき。
しかし・・・玉っころは「あれ」としても、本は?
まさかとは思いますが「あれ」と「あれ」が元々一つの物だったなんて事は・・・・ガタガタブルブル
セロの正体も同じくらい気になりますけどね。
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