赤いスーツに身を包んだ、5人の人影が真空空間を泳ぐ。手馴れた手つきで、慎重かつ迅速に暗闇の中を進んでいく。
彼等の手前には、小惑星から極太の鉄柱が突き出ているような、敵が隠れ住んでいるらしい“家”が見える。
この時代、宇宙にも居住するようになった人類は、極寒の大空にコロニーと呼ばれる巨大な居住地を作っていった。その中では、重力を人工的に発生させる事もでき、また空気などを含めた住み心地もそう悪くない。
『やっぱ、プラントのコロニーの方が綺麗だよな。なんていうかさ、すんげー不細工』
『ナチュラルは地べたを這いつくばってろってことだろ?』
ふざけ合うラスティ・マッケンジーとディアッカ・エルスマンの声がアスランの耳に聞こえた。勿論、真空の中で言葉が直接届くはずもない、スーツのヘルメットに内蔵された無線から伝えているのだ。
『五月蝿いぞ、ラスティ、ディアッカ。敵のまん前なんだ、少しは黙れ』
いつもはやかましく怒鳴り散らすはずの少年―――イザ―ク・ジュールがさすがに押さえた口調でたしなめる。珍しく、緊張してるのだろう。
『敵たっているかどうかも分からないのに………』
反論するディアッカにニコル・アマルフィが穏やかに言う。
『無駄口を叩かない方がいいですよ。イザークが本気で怒っちゃいますから』
それきりディアッカは沈黙した。激情家であるイザークが本気で怒ったら、恐らく穏やかなニコルしか止められないだろう。
それに―――と少年の一人、アスラン・ザラは自分の横へと視線を移した。先程見えたあの光は、メビウスという名の敵兵器だった。
敵は………間違い無くあそこ、“ヘリオポリス”にいる。
遺伝子調整によって生まれた人類コーディネーター。彼等の出現によって、地球は大きく動いた。遺伝子調整を是とする者、否とする者。政治も、経済も、文化も、技術も、道徳も、はたまた宗教でさえも、大きく動き始めていた。歴史は全てを動かしていた。
そんなコズミック・イラ70年、「血のバレンタイン」の悲劇によって地球、宇宙のプラント―――コーディネーター側勢力―――間の緊張は最終外交手段へと発展した。すなわち開戦である。
………誰もが疑わなかった物量で勝る地球軍の勝利。が、当初の予想は大きく裏切られ、戦局は混乱を伴ったまま、瞬く間に11ヶ月という時が過ぎていった。
File.01
中立国オーブの工業コロニー“ヘリオポリス”のとある公園のベンチで、一人の少女がパソコンと睨めっこしていた。
鍵盤楽器を叩くかのようにキーボードを打つ指がリズムのいい音を立て、画面へ文字を追加していく。
少女はその軽やかなリズムに乗るように、指が更に加速する。
「この浮気者!あんな女の子にヘラヘラ笑っちゃって!!」
「ゴメンゴメン、本当に許して.........」
後ろで言い合っている誰か二人の言葉も、彼女の耳には届かない。
………というよりも、期限が差し迫ってる課題を終わらすのに必死なのだ。まだその半分も終わっていないのに、人の痴話なんか聞けるだろうか―――彼女の場合は否だった。
「…………じゃあ、後でスペシャルパフェおごってね。それで許してあげる」
「えぇーっ!そんなぁー!!」
「私を怒らせたいの?」
「………うぅ、今月金欠なのに。まあ、それくらいで許してくれるなら、いいか.........」
「もっと、高いもの、おごらせようかな?」
「勘弁してくれよ、ミリィ………」
彼女が人の話を聞ける状況であれば、ミリィという少女の言葉が本気でないと気付いただろう。だが、今の彼女は気付くどころか、言葉自体聞こえていない。
「うふふ、冗談よ。ところで、キラ?」
少女は話し掛けられたが、無視したままパソコンをいじり続けている。先程から、“ミリィ”と話していた少年は小言で呟く。
「………聞こえてないみたいだけど?」
「仕方ないわねぇ。きらー?」
今度は声はそのままに、肩を揺さぶってみた。その行動に少女はついに反応した。
「わっ、やめてよ、打ち間違えちゃうでしょ」
「さっきからずっといたのに無視してたのは誰?」
オレンジの服を着た少女―――ミリアリア・ハウにジト目で睨まれ、パソコンと向き合っていた少女―――キラ・ヤマトはたじろいだ。
「いたの?」
切り揃えていない茶髪に、あどけなさの残る表情、それに綺麗なアメジストの瞳がほんの少し引きつった。
「いたわよ!!」
ハネた髪型が印象的なその少女が顔を近づける度、キラにかかるプレッシャーが重みを増していく。
「なんで、気付かなかったの?」
ミリアリアの恋人であるトール・ケーニヒは横から助け舟を出した。キラは勢い勇んでその舟に乗る。
「ちょっと、課題に集中してて………」
それを聞いたトールが少し考えて、思ったことを言う。
「また、課題?最近キラにだけ多くね?」
「うん、そういえばそうよね」
ミリアリアも恋人の言葉に同意する。キラはそんな二人に自分も気になっていたことを言った。
「それに、なんか課題じゃなくて、教授の仕事の手伝いっぽいんだよね、これ」
「えぇー、何それ!?」
キラの言葉にミリアリアは素っ頓狂な声を上げた。
「って、いいの?仮にも教授が一学生の力ばかりに頼って………」
「うーん、そういえば教授も少し困った顔してたような………なんか教授の仕事じゃないみたい」
「そういや、最近サイの調子もおかしいよな」
言い合うキラとミリアリアの言葉を聞いて、トールは友人の異変を口にした。
「すごい挙動不審じゃない、最近のあいつ?」
「え?」
「知らないの、あんた?」
キラとミリアリアは声と視線を揃えて、トールに振り返った。
二人に見られてトールは思わず後ろずさった。
「何かあったの?」
そんな恋人の様子にミリアリアは呆れたように溜め息を吐く。
「私達の一学年下に、フレイって言っているじゃない?」
「ああ、あの学園のアイドル」
「うん、そのフレイと付き合い始めたんだって」
さらりと出た爆弾発言にトールは、頭を吹き飛ばされた。
「え、あのフレイ・アルスターと!?嘘だろ!?」
「フレイって可愛いよね、サイが好きになったのも分かるかも」
「あら、あの子から告白したって話よ」
「本当、それ?」
「うん」
愕然とするトールを尻目に女二人は世間話を始めた。もうすっかりカトウ教授のことなど忘れたように。
トールはトールで
「あのヤロ〜、後でとっちめて全部吐かしてやる」
などとうめいていた。
ここにあるのは、“外”の戦争とは無縁の平和な時間だけだった。
「立派な戦艦だね、こりゃまた」
重力のあるコロニーでも、居住区ではない場所は無重力であることも多い。赤いスーツを着ていた彼等はそこからかすかに見える白亜の戦艦を観察していた。
「あれは放っといていいんですか?」
緑のスーツを着ている何人かの同胞と、オーブ………つまりこの国の服を着た人間がその言葉を呟いたニコルに振り返った。
神秘的な緑色の髪が、一目見たら女性と勘違いしてしまうかもしれないその顔と相まって、童話の妖精を思い起こさせる少年だった。
「あれの周辺にはいくつか爆弾が仕掛けてある。まあ、さすがに外部装甲や内部には仕掛けられなかったが。ともかく、壊せずとも、人の流れは止められるさ」
オーブの服を着た男性が軽く語った。この男性も他のスーツを着ている男性も皆、遺伝子をいじって生まれたコーディネーターだ。
「ああ、違いますよ。奪わなくていいんですか?」
穏やかなニコルの声にディアッカの声がからかう。
「当然だろ。あんなデカいもんを、この人数で乗っ取れると思ってるのか?」
褐色の肌をした少年は、皮肉げに笑みを見せる。
今回の件は複雑なだけにアスランはその笑みに、端整な顔を曇らせた。
プラント―――現有戦力がザフトという名の軍隊で、基本的にプラントよりもそちらが、連合の敵として呼ばれる事が多い――――と地球が戦争を始めてから、地球の国家のほとんどはコーディネーターと敵対する道を選んだ。そんな中でオーブは地球でも数少ない中立国であり、コーディネーターを受け入れる地球唯一の国家でもあった。
無論、コーディネーターと敵対してる国家の気分もいいだろうはずがなく、隙をうかがっては侵略を試みようとしているが、何せその技術力で名高い“あの”オーブ。結局のところ、どの国もオーブヘ攻撃できずにいた。
だが。
オーブの一部の政治家が、北アメリカを領地とする大西洋連邦の圧力に屈し、地球連合の機体を作り始めた。
連合から提供されたザフトの新兵器をもとに、オーブは新たな兵器を開発したのだ。
それがザフトにとって脅威になるかならないかはともかくとして、今度は彼らが牙を剥いたのだ。
中立と公言していた国が、何故敵国の兵器を作る?我等をたばかったのか?これはあまりに酷い裏切りだ!!と。
そして、オーブの人間、それもコーディネーターである彼らが同胞の身に起こるかもしれない危機に、怒りを感じたのか、不安を覚えたのか、オーブという国を裏切り、ザフトにその新兵器の情報を流した。
そして、今日“それ”を奪う計画は実行される。
「しかし、何も赤服5人じゃなくてもよくない?人数が少ないってのはそれだけ蹴落とすライバルが少なくていいけど、奪う機体と数を合わせる必要もないんじゃないか。特にこれだけ難しい任務なんだから」
オレンジ色の髪をしたラスティが複雑な声音で語るのをアスランは新鮮に思った。いつもは余裕で軽口を叩くあのラスティが、と。
「ふん、怖気づいたならそれでもいいぞ。4機奪って、残りの一機はぶち壊す」
イザークが嫌味を言いながら、ニヤリと笑う。
彼もラスティも、赤いスーツを着ている者はまだ十代の少年であった。しかも、緑のスーツを着ている兵士の中にも、彼らと同年代の者は何人もいる。これは遺伝子を操作したコーディネーターが早く成熟するためだ。プラントでは15歳以上を成年としていることからも、よく読み取れる。
ちなみに、アスランたち5人が赤いスーツをしているのはエリートの証で、緑のスーツの兵と比べてもかなりの能力差がある。
「これが難しい任務じゃないっていうなら、お前の頭はよほどの天才か馬鹿のどっちかだな、イザーク」
そうラスティが言うと、イザークは銀色の眉をピクリと上げた。
「誰もこれが簡単な任務だなんて言っていない。だが、俺達にはそれを実行するだけの実力と自信があると言っているだけだ」
それだけ言うと、イザークは床を蹴って意気揚揚と先へ進んだ。
しかし、どうもアスランは不安は隠せなかった。
ラスティも口ではああ言っているが、本当のところはそこまで不安は感じていないだろう。何せ、遺伝子を余すところ無くいじくり尽くしたコーディネーター、その自分達ザフトが遺伝子をいじくっていない凡才ばかりのナチュラルだけの連合軍に負けるはずが無いのだ。
だが、それでもアスランの不安は積もるばかりだった。
具体的に何がどうというわけでもない。単純な勘だ。“眠れぬ獅子”と言われるオーブの武力も、あの機体の開発を隠す為に、“ここ”の軍備も少ない。
だが、何か嫌な予感がする。ここにいる親しい誰かが死ぬとか、そういうことではないだろうが………。
後ろから何歳か年上の同僚に肩を叩かれて、アスランは自分の不安を拭い先へと進んだ。
ヘリオポリスの周辺では、音も立てず緑色の艦が二隻あたりを窺っていた。
一隻はナスカ級高速戦闘艦と呼ばれる部類のもので、名は“ヴェサリウス”。もう一隻はローラシア級MS搭載戦艦、名は“ガモフ”。どちらもザフト軍の艦だ。
その内の一隻ヴェサリウスの艦橋で、銀色の仮面をつけた一人の男が艦橋に大きく広がった画面を凝視していた。
この男の名はラウ・ル・クルーゼ、その外見こそ風変わりな感じがするが、地球連合からは“仮面の男”と恐れられ、ザフト軍からは少々不気味がられてはいるが、その指揮に絶大な信頼を寄せられているザフトきっての名将である。
今回の任務では、アスラン達の上司という立場になる。
後ろに立っていた黒い軍服を着た恰幅のいいアデスという男が、そのクルーゼに口を開いた。
「しかし、周辺の巡回までなしとはある意味相当警戒していますな」
その言葉にクルーゼは苦笑した。確かに周りの目からカムフラージュする為に、兵力を少なくするというのはいい手ではあるが、周辺の警戒が出来なくなるまでは少しいきすぎだ。
「恐らくその新兵器によほどの期待をしているのだろう。ただ、それが我々にとってガラクタではないことを祈るがな」
それを聞いたアデスもまた苦笑した。所詮はナチュラルの造った兵器、いかにオーブが携わっているとはいえ、大した性能はないだろう。
「まだ、決行までには時間がある。少し世間話でもするか?」
「しかし、世間話といっても戦時中ですからな、大して面白い話はないでしょう。それともアスラン・ザラの婚約者の話でもしますか?隊長がそのようなことに、興味があるとは思えませんが」
上官の提案をアデスは穏やかに断った。しかし、クルーゼは苦笑しながら、会話を続けた。
「私もラクス・クラインの歌は好きだよ。戦時中だからこそああいう曲で癒されたくなる」
「ほう、意外ですな。隊長はそういったことには興味があるとは思えなかったのですが」
「彼女は人気だからね。私のような者の耳にまで、彼女の歌は入ってくるさ」
クルーゼは笑いながら、アデスに視線をやった。
「しかし、私の話したいことはそういうことではない」
「では、どういった話で?」
アデスは上官の言葉に耳をさらに傾けた。
「世間話というにはいささか堅い話ではあるが、まあ聞いてくれたまえ。コズミック・イラ60年イタリアの方でとある植物園が誕生した。大した規模ではないらしいが、そこにはちょっとした看板があってね。何だと思う?」
「さあ………私には想像もつきませんな」
アデスの返事に満足そうに微笑むと、クルーゼは話を再び続けた。
「青い薔薇さ。知っての通り、青い薔薇は遺伝子をいくら弄ぼうとも、なかなか誕生しなかったものだ。しかし、我等コーディネーターが誕生してから遺伝子工学は大きな発展を遂げ、青い薔薇も作れるようになった。しかし、考えてみたまえ。ナチュラルは既にコーディネータを敵視していたのだ。プラントではその花がいくら見れても、地上では決して見れなかったに違いない」
クルーゼは淡々と何の感情もこめずただ喋っていた。
「だが、コズミックイラ60年に初めて地上で青い薔薇を咲かしたその植物園は今でもまだ残っているそうだ。コーディネーターとの溝が計り知れなくなっていた時代に開園したにもかかわらず」
「なるほど、確かに興味深い話ですね。そういえば、ナチュラルは戦争が始まってからも遺伝子改良された野菜などを食べてるらしいですな」
アデスも話の意図を掴んだのか、自分から発言した。
「全くもっておかしな話です。人の遺伝子操作は戦争を起こしてまで許さないのに、花や食品の遺伝子操作は許しているのですから」
「そうしなければ、今の時代生活できないということもあるかもしれんがな」
そこで、クルーゼは意味ありげな笑みを浮かべた。
「しかし、私は違うと思うのだよ。聖書では人類は神の姿だけを写して生まれた。しかし、いつの間にか我々は知恵を身につけ、それこそ世界を支配し、神と同じ世界に来てしまった。だからかな、向こうが我々を神と勘違いし、恐れていると感じているのではないかと思ったのは。何といっても………」
その時、同じく艦橋にいる一人のオペレーターがクルーゼの言葉を遮りつつ声を荒げた。
「準備完了の合図がありました!!」
「予定より早く着いたな。どうします、隊長?」
クルーゼはアデスの問いに、躊躇うことなく命令を下す。
「では、予定を繰り上げ、これより3分後に警告を行いヘリオポリスに向けて全速前進。警告を行ってから1分以内に返答がない場合は、宇宙港に向け主砲を撃て。その後、“ジン”を全機出す」
「警告の内容は?」
「“貴国が条約を無視し、連合軍兵器の開発しているとの疑いがある。その真偽を確かめるため、ザフトは貴国に強行調査を実施する。なお、もし一分以内に明瞭な返答が得られない時は武力行使もやむを得ない”とでもすればいい。攻撃したらアスラン達に例の合図を送るのを忘れるなよ。私は途中で“シグー”で出るかもしれんから、後の指揮は全て君に一任する」
「了解しました」
クルーゼの言葉にアデスはより細かい指示などを、ブリッジの各員に渡していく。彼の口からはつっかえることなく、指示が飛ぶ。
先程の静けさとは打って変わって、一気に艦内が騒がしくなる。その様子を見ながら、クルーゼは先程の台詞の続きを口にした。
「ナチュラルは恐れているのではないかな?………何といっても、“君達”はより神に近付いて生まれてきた人間なのだから」
その言葉は慌しくなった艦橋の中で、誰にも聞かれることもなく消えていった。
「遅れてごめーん」
「ああ、いいよいいよ。まだ教授も来てないし」
カレッジに着いたキラやミリアリアを迎えたのは、派手な服に派手な色眼鏡をつけた友人のサイ・アーガイルだった。派手な格好をしている割には、不良という感じはしない。
その横では、同じく友人であるカズイ・バスカークがカタカタとキーボードをいじっていた。
それを尻目にトールはサイに尋ねる。
「………ところでサイ、一つ聞いておくけど、最近付き合ってる子いる?」
「え………えーと…………」
サイは居心地の悪いような表情を作った。
「いや………いな……」
「ゴメン、サイ。ボク達言っちゃった」
サイが誤魔化そうとするのを、キラが悪びれる様子もなく遮った。
「キラ〜!!」
サイは抗議の声を上げるが、その声が彼女に届く前にトールといつの間にかパソコン画面から離れたカズイが襲い掛かっていた。いつも通りの風景だ。
そんな中、ミリアリアがキラに近寄り、彼女だけに聞こえる声で尋ねた。
「………ところでキラって、サイのこと好きじゃなかったの?」
「うーん、そういう感情はないなあ。というよりも、男の人自体好きになった事はないかなぁ」
キラにとっては、恋などどうでもいい話だ。そんなもの、犬の餌にもならない。
もしも恋人が出来た瞬間に今やっている課題が終わったり、“外”の戦争が終わったりするなら話は別だが。
その時、決して大きくない機械音がドアが開いたことを教えた。
先程からじゃれ合っていた少年たちとは違い、その音が聞こえたキラとミリアリアはパッとそちらに振り向いた。
深く被った帽子で顔を隠した、金髪の少年がそこには立っていた。少々小柄で、身長はキラとあまり変わらないのではないのだろうか。
キラはその少年に近付き話し掛けた。
「あの………どういったご用件でしょうか?」
「ちょっと!お客様が来てるのよ!!少しは静かにしなさい!!」
ミリアリアがいつまでふざけている男性全員に喝を入れたのが、キラの背後から聞こえた。彼女の声も五月蝿い、と思ったのは当然秘密にすべき事である。
「失礼だが、カトウ教授はおられるか?」
少年の高い声に、キラは少したじろいだ。何故だかは知らないが、責められている感じがしたのだ。帽子の下からのぞくオレンジ色の瞳も強い光を宿しており、激しい炎に焼き尽くされるような錯覚を覚えさせられる。
「えーと、今はいないみたいですけど.........」
「なら、ここで待たしてもらっても構わないだろうか?」
まただ――――とキラは思った。また責められているような感じがする。
「ええ………ここの備品に勝手に触れさえしなければ大丈夫だと思いますが……」
「そうか」
少年の言葉にちょっとした緩みが生じた。責められていると感じたのは、彼もまた緊張してただけなのだろう。
「何なら、こちらに座ってお待ちください。すぐに来られると思いますので」
「いや………それには及ばない」
キラの提案も少年は軽く断った。
しかし、こんな少年が教授に何の用なのだろう。
後ろを振り向くと、ミリアリアやサイもキラと同じように突然の来訪者の顔をジロジロと見て、少年に一瞥を貰ってる。
「ん?地震?」
その時、トールがボーっとした口調で呟いた。
それを聞いたキラ達は笑って、トールたちに向き合った。
「ここは宇宙だろ?いくら火山の多いオーブでも宇宙で地震は起きないって」
「そうよ、何寝ぼけたこと言ってんのよ?キラじゃあるまいし」
「あー酷い、ボクってそういう風に見られてたんだ」
再び喧しくなるカレッジで、トールは腑に落ちない顔で呟く。
「おかしいなぁ。確かに揺れたんだけど………」
「気のせいじゃない?そんなの全然感じなかったよ」
キラは明るい声で、呟く。
トールもあまり気にかけずに、今手がけているロボットアームの作業確認に移る。工業などで使うものと比べると、大したことはないが、学生の手がけたものにしてはなかなか精巧なものだとキラ達は確信している。
その横で来訪者である少年は、何かに不安を感じたように、キョロキョロと辺りを見回していた。
「どうかなさったんですか?」
ミリアリアが喋りかけたその時―――――大きな爆発音がした。
ドゴォォンンンンッッ!!!
地面が破裂したかのように、大きく揺れ始める。脳が身体が盛大にシェイクされ、全員が尻をつき、悲鳴も出せないほどのパニックに襲われる。
何が起きたのか?そんなことは彼等にはどうでもよかった。ただ、今起きてるその何かが早く終わればいい………それだけだった。
やがて、長い長い間をかけて、振動は止まった。機器は散乱し、作りかけのロボットアームが壊れていた。
しかし、それを嘆く余裕もない。
「本当に地震?」
ミリアリアはトールを笑った事など忘れ、
「爆発事故?」
キラは最も高い可能性を口にし、
「隕石?」
カズイとトールは二人揃えて同じことを言った。
そして、残ったサイは―――
「まさか………ザフト?」
急に募る不安が、ここにいる誰もを焦らせた。
後書き
キャラの画に悶え苦しんでいる変態男女の皆様、「嫌いなんだけど土曜夕方6時は楽しんで見てしまう」中道派の皆様、アクションで圧倒的多数だと思われる福田監督撲滅協会の皆さん、どうもこんにちは。あなたの知らない人です。
どうだったでしょうか?楽しんで………いただけてませんよね。心理描写も全然してないし、分かりにくい表現もあっただろうし………ハァ(溜め息)。
ちなみにこの作品、作った理由は友人仮名F.Kとのこんな会話から。
「RAINBOW頑張ってるよな」「あ、そう?ありがとう」「でさ、そんなお前にお願いなんだけど種デスの小説作ってみてよ?」「え?終わってないし、とりあえず無理」「じゃあ、種でもいいや。そういえば、お前、種は主人公女にすべきだとか言ってなかったっけ」「ああ、言ってた言ってた」以下略(一部脚色及び勘違い等あり)
大体こんな感じです。思いつきで書くもんじゃありません(爆)こうだったら、面白いだろうなぁ、とか妄想をよくするたちなので、ボンヤリとは行くべき道が浮かんでいますが。
ついでに言うと、キラを女性にしたのは、アスランをホモにしたくなかったからです。神聖十字軍さまのようなバランスのいい上手い書き方を私ができるとは思いませんから。
では、ここらへんでお暇いたします。この作品かRAINBOWで再びお目にかかりたいと存じます。
代理人の感想
・・・確かに、キャラクターの人間関係をそのままにした上でキャラクターのバランスを考えると
キラとアスランのどっちかは女にならざるを得ませんが(あるいは同性愛を容認せざるを得なくなりますが。
思いつきだけではなく、「まともに」これを書いてどこまでいけるかってのはちょっと興味があるところではあります。
まぁ今回だけだと何もいえないので、突っ込んだ感想は次回以降ってことで。