ここからは、ちょっと書き方を変えまして、各人の様子を実況生中継していこう。
まずは、素子・しのぶ・サラペアから。

 

 三人は、メカタマ6の攻撃を紙一重でかわしながら、日向市をひたすら南に向かって駆けていた。

 

「も・・・もうダメですぅ・・・(はぁはぁ)」

 

「どうしたんだよ、しのぶ。 腹でも痛いのか?」

 

「くっ・・・しょうがない、路地裏に隠れて少し休むか」

 

 ガクリ、と膝をついたしのぶを抱え、近くの路地裏に隠れる三人。

 

「・・・しのぶ・・・。 少しは運動をした方がいいみたいだな」

 

 かなりの時間を走っているのだが、素子は息が一つも切れていない。
・・・体力の化け物だろうか?

 

「・・・し、しのぶ・・・こ・・・これくらい走ったくらいで息が切れてるぞ。
 な・・・情けねえなぁ・・・(ゼエゼエ)」

 

と、強がっているサラだが、いい加減疲労が溜まっているサラもこれ幸いと地面に座り込む。

 

「で、でもよ・・・。 どうしてキツネはけ−たろとなるを一緒にしたんだ?」

 

「・・・(浦島センパイと一緒になりたかったなぁ・・・)」

 

「ああ、その事か。
 ・・・それはな、浦島となる先輩がスゥの被害に一番逢いやすいからだ。
 恐らく、一番ひなた荘で被害を受けているのは浦島だろうがな・・・」

 

「「なるほど・・・」」

 

 素子の推論に、思わず感心するしのぶ、サラの二人。

 

〔MYU−! (タ−ゲット確認。 これより攻撃に入ります)〕

 

とそこに、ガトリングガン二門を装備したメカタマ6が凄い勢いで飛んでくる。
しかも、ちゃんと攻撃体勢をとっている。

 

「う、うそっ!?」

 

「もう見つかっちまったのか!?」

 

「くっ!」

 

 抱き合って震え上がるしのぶとサラの二人。
二人を庇おうと、二人の前に立ちはだかるのは何時の間にか袴に着替えた素子。
その手には、先程景太郎に貰った幻の名刀・菊一文字則孝が握られていた。

 

「神鳴流・奥義! 雷鳴剣!!」

 

 ドガガガガガ−ンッ!!

 

 素子の剣から放たれた凄まじい雷が、メカタマ6を襲う! が・・・。

 

〔MYU−? MYUMYUMYU−!!(無駄無駄無駄無駄無駄−ッ!!)〕

 

 何処かで聞いたことがあるような科白を言いながら、突進してくるメカタマ6。
バリアか何かがあるのか、あの素子の剣もたいして効果が無かった。

 

「くっ・・・。 どうすれば・・・」

 

 剣を青眼に構えながら、間合いを取り直す素子。
だが、何時ものような余裕はなかった。

 

「こ、このままじゃモトコさん負けちゃうよう。
 そ、そうだ。 キツネさんからメモを預かっていたっけ。
 ええっと・・・」

 

と、キツネから預かったメモを見るしのぶ。

 

「・・・コスプレしているキャラの能力を使うことが出来る・・・って、
 マルチじゃ掃除だけですよ−っ!!(泣)」

 

「・・・じゃあ、アタシはパラッパみたいにラップなのか?(汗)
 キック パンチ ヨ− リメンバ−・・・。
 ・・・はっ、つい口ずさんでる・・・(大汗)」

 

と、しのぶとサラがボケ合っている間にも、
素子はだんだんメカタマ6に追い詰められていく。

 

「そ、そうだしのぶ。 キツネから預かった紙袋は何だったんだ!?
 ピンチの時に使えって言ってたじゃん」

 

「そ、そういえば・・・」

 

 ゴソゴソ

 

「「こ、これは・・・(大汗)」」

 

 紙袋を開けた瞬間、頭に大きな汗を浮かべる二人。

 

「しのぶ、お前着ろよ。 ・・・あたしじゃサイズ合わないから」

 

「・・・絶対イヤ」

 

「・・・モトコね−ちゃんがピンチだぜ?」

 

「!!」

 

 暫く考えていたしのぶだが、意を決して紙袋の中身を掴むと、いそいそと物陰で服を着替え始めた。
 ・・・しのぶの着替えたコスチュ−ムとは、一体・・・?

 

「こ、このままでは・・・ジリ貧だな・・・」

 

 メカタマ6に決定打を与えられず、肩で大きく息をしながらも刀を振るう素子。

 

 ドガガガガガガガガガガガガッ!

 

「ちぃっ!」

 

 メカタマ6の放ったバルカン砲をかわそうとした素子だが、疲れていたためか一瞬反応が遅れた。

 

「・・・ッ! ・・・無念ッ!!」

 

 思わず目を瞑る素子。 が、何時までたっても痛みがやって来ないので
不思議に思って目を開けてみると・・・。

 

「・・・し、しのぶっ!?」

 

 そう、しのぶが全ての弾丸をその手で受け止めていたのだ!
 しかも、素手で!!

 

〔MYU・・・MYU−ッ!!(そ、そんなバカな−ッ!!)〕

 

「・・・大丈夫ですか、モトコさん。 怪我はありませんか?」

 

「わ、私は大丈夫だが・・・。 し、しのぶ、その恰好はっ!?」

 

 ・・・そう、今のしのぶはあの北○の拳のケ○シロウのコスプレ中なのだ!
目茶苦茶無理矢理!! ていうか、似合ってねえっ!!

 

「き、気にしないで下さいっ! ・・・それより、後は私に任せて
 モトコさんは休んでて下さい」

 

 素子にそう言ったかやいなや、しのぶはもう既に駆け出していた!

 

 ダンッ!!

 

 凄まじい踏み込みで、一気にメカタマ6の懐に入り込むしのぶ。
こうなってしまえば、あとはしのぶの独壇場だ。

 

「あたッ!」

 

〔MYUッ!(ガハッ!)〕

 

「おあたたたたたたたッ、あちゃぁッ!!!」

 

〔MYUMYUMYUMYUMYUMYUMYUMYU!?(あべらぶめけ!?)〕

 

 次々に繰り出されるしのぶの重い一撃を、かわす術もなくその身に受け続けるメカタマ6。
 めちゃめちゃ不憫だ。

 

〔M・・・Y・・・U・・・(ま、まだまだ・・・)〕

 

 なおも立ち上がろうとするメカタマ6に、しのぶのこの一言。

 

「・・・お前はもう死んでいる」

 

 ピシッ! ピシピシピシピシピシッ!!

 

〔MYU−ッ!!?(ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁ−ッ!!?)〕

 

 ドォォォォォォォォォォォ−ンッ!!!!

 

 激しい爆発と共に、木っ端微塵に吹き飛ぶメカタマ6。

 

「「し、しのぶ・・・(汗)」」

 

 その一部始終を、何か悪い夢でも見てるんじゃないか?
というような感じで茫然と見ている素子とサラの二人。

 

 ・・・これが史上最強の暗殺拳、〔しのぶ神拳〕の誕生であった(笑)。

 

 

 つづいて、キツネ&むつみペア。
実はこの二人、先程いた場所から一歩も動いていなかったりする。

 

「なんや、もう終わりなんか? ・・・手応えの無いやっちゃなぁ・・・」

 

「うふふ・・・まだまだ遊び足りませんねぇ(はぁと)」

 

 ・・・メカタマ6の残骸を蹴って遊んでいるキツネと、
メカタマ6に腰掛け、可愛い顔して怖い事言っているむつみの姿があった。

 

〔〔タ−ゲット、確認。 これより捕獲に入ります〕〕

 

とそこに、ガトリングガンでは無く火炎放射器で武装したメカタマ6が飛来する。
どうやらこのメカタマ6シリ−ズ、幅広い武装のバリエ−ションがあるようだ。

 

 ・・・アメリカ軍か何かに売り飛ばせば、かなり売れるんじゃないだろうか?

 

「・・・おっ、二機来おったで! カメのね−ちゃん、宜しく頼むわ!!」

 

 どっからどう見ても、この様子を楽しんでいる様にしか見えないキツネ。
どこから取り出したのかわからないミサイルランチャ−を構えながら
むつみに向かって何事かを頼む。

 

「はい? ああ、あれですね?
 ・・・オプションプログラム#8、〔ベクトルシュミレ−ション〕スタ−ト!」

 

 ピピッ

 

〔武装、性能入力・・・完了。
 風向き・・・南南西にむかって1.85m・・・入力完了。
 行動パタ−ン入力、解析・・・完了。
 及び周辺等デ−タの入力、解析完了〕

 

「キツネさん、デ−タ解析終了しました!
 十秒後にあのマンションに向かってスティンガ−を撃って下さい!!」

 

「うっしゃ−、十秒後にあのマンションやな!?」

 

 その答えを聞いて、喜々として構えをとるキツネ。
でも、なんで十秒後なのだろうか? 何か深い意味でも?

 

「まあ、黙って見とき! ・・・7・・・8・・・9・・・ファイヤ−!!!」

 

 ズド−ンッ!!

 

 ちゃんと十数え終わったあと、お決まりの掛け声と共にスティンガ−ミサイル
(追尾カメラを持った高性能誘導ミサイル。 メタルギアソリッドでお馴染みですね)
をぶっ放すキツネ。

 

 ドガァァァァァァァァァンッ!!

 

が・・・狙いは大きく逸れ、スティンガ−ミサイルはそのまま超高層マンションに
吸い込まれるように当たった。

 

「アホ−ッ! 全然効果ないやんか−!!
 その前にマンションを破壊するとは思わんかったわ−!!!(汗)」

 

 つかつかつか、とむつみに詰め寄るキツネ。

 

「いえいえ、これでいいんですよキツネさん。 ホラ・・・」

 

「・・・ん? ・・・な、何やて・・・(大汗)」

 

とむつみの指差す方向を見て、絶句するキツネ。

 

 ガラガラガラ・・・ドガッ!

 

〔〔MYU・・・(そ、そんな・・・出番これだけ・・・?)〕〕

 

 そう、先程放ったスティンガ−ミサイルの爆発でマンションが崩壊し、
その破片がメカタマ6を直撃、破壊していたのだ!!

 

 ・・・もちろん、突然崩壊し始めたマンションの住人や、
マンションのすぐ近くを歩いていた人達も巻き添えをくっているけど。
その様子は、阿鼻叫喚の地獄絵図を連想させた。

 

「これにて一件落着、ですね(はぁと)」

 

「・・・・・・(滝汗)」

 

 ・・・このね−ちゃんを怒らせてはいかん! 何するかわからへん!!(汗)
と、つくづく心の底から思ったキツネだった。

 

 ところで・・・あのマンションどうするんだろう・・・(汗)?

 

 

 

 最後に、景太郎&なるペア。
素子が言った通り、彼らが最もハ−ドな逃亡劇を日向市内で繰り広げていた。

 

 大盛りで有名な某ファミレスチェ−ン、○っくりド○キ−ひなた支店。
そこに、景太郎となるの姿があった。

 

「「どいたどいたどいたどいたぁ−!!!」」

 

 ドドドドドドドドドドドドド・・・・・・

 

 注文も取らずに店内を颯爽と走り抜けていく景太郎&なるペア。
回りの客も、なんだなんだと首を伸ばして二人の事を興味深げに眺めている。

 

 一人は、全身黒づくめで黒マント、おまけに黒いバイザ−をした青年。
そしてもう一人は、こんな真冬の最中なのにノ−スリ−ブのニットを着た美少女。
・・・はっきりいってそんな格好で店内を走れば、目立たない訳がない。

 

「お客様−? 通り抜けやひやかしは御遠慮願いま・・・!?」

 

 ウェイトレスがそこまで言った時、彼女は何故彼らがそこまで
必死になって逃げるのかが漸くわかった。

 

 ドゴ−ンッ!!

 

 ギュララララララララララッ!! ← キャタピラの音

 

「「ひ−っ、まだ追ってくるぅ−!(泣)」」

 

「待ちや−け−たろ−、なるなる−!!」

 

 ドドドドドドドドドドドドド・・・・・・

 

「い、一体今のは何だったんだ・・・(汗)」

 

 店内にいた店員と客全員が、茫然とした様子で呟いた。
まあ、確かにいきなり戦車が店内に乱入してくれば誰だって驚くだろう。

 

 そして、何故彼らは戦車に追われているのか?
昔懐かしの〔風雲! た○し城!!(古!)〕でもやっているのだろうか?
しかも、こんな日向市内で? Excaliber、こんなネタわかるヤツいるのか?
という謎が、彼らの間で深まっていった。

 

 ・・・実際は、ただの(過激な)鬼ごっこなんだけどね・・・(笑)。
実際、今の今まで僕も忘れてたりして。 なんせ、10年以上も前だからね・・・。

 

 

 

「じんぐるべ−るじんぐるべ−る」

 

「すずがなる−♪ きょうはたのしいくりすます−♪♪」

 

 日向市、とある民家。 そこでは幼い兄妹が、ジングルベルを歌いながら
クリスマスツリ−の飾り付けに大はしゃぎしていた。

 

 ・・・母親の作る料理やケ−キ、そしてサンタさんから貰えるプレゼントの事・・・
考えると、とても幸せな気分になってくる。

 

「ねえねえお母さん。 サンタクロ−スさん、
 ちゃんとプレゼント持ってきてくれるかなぁ・・・?」

 

「・・・そうねぇ・・・いい子にしてたんだもん、きっと来るわよ」

 

 母親の顔を覗き込む幼い子供達の頭を撫でながら、母親は言い聞かせるように語った。

 

 小さい頃は誰もが信じていたサンタクロ−ス。 この兄妹も例外ではない。
見ていて、とても微笑ましい。

 

 が・・・その幸せを運ぶサンタクロ−スならぬ”幸せをぶち壊す使者”は、
確実に彼らの家に迫っていた!!

 

 ドドドドドドドドドドドドド・・・・・・

 

「「すいませぇぇぇぇぇんっ! お邪魔しまぁぁぁぁぁす!!」」

 

 何処から侵入してきたのか、黒づくめと青年とノ−スリ−ブニットを着た少女が乱入してくる。

 

 言わずと知れた、景太郎&なるである。
・・・断りもなく家に侵入したという事は・・・不法侵入罪である。
立派な犯罪行為だ。

 

「「「・・・へ?」」」

 

 あまりにも急な展開に、頭のCPU(中央演算処理装置。 この場合、脳味噌)が
フリ−ズしてしまったこの親子。 OSはW○n98でも使っているのだろうか?

 

 そして・・・彼らが来たという事は・・・。

 

 ドガッシャァァァァァァァァン!!!

 

「「「!?!」」」

 

 ・・・そう! 戦車に乗ったアジア系美少女も、もれなくおまけでついてくる!!

 

「ニャハハ−! メリ−クリスマ−スや−!!」

 

 ギュララララララララララララ・・・

 

 凄まじいキャタピラの音を立て、彼らの家を破壊しながら去っていくスゥ。

 

「「「・・・・・・」」」

 

 後に残されたのは、茫然としている親子三人。

 

「お母さん・・・。 サンタクロ−スって、戦車に乗ってくるの・・・?」

 

 茫然とした様子で呟く少年。

 

 強くなるんだ、少年。 この世には理不尽な事ばかりだからな。

 

 ・・・後日、この一家は”クリスマスイブの日に戦車に襲われた家”として
TV局に取材され、一躍時の人となる。 また年末ジャンボ宝くじで一等を当て、
戦車砲にも耐えうる豪邸(要塞?)を建築したとかしないとか・・・(笑)。

 

 う−ん、なんて逞しいんだろう・・・(爆笑)。

 

 

 

「け、けいたろ−っ! も、もうダメェ−!!」

 

「も、もう少し、もう少しだから成瀬川−ッ!!」

 

 ・・・傍から聞けばちょっと怪しい科白に聞こえるが、
ただいま彼らはひなた荘の裏にある山をやっとの思いで登っているのだ。
(辺りをがむしゃらに走り回っていたら、いつの間にかここに来ていた)

 

「や、やっと頂上についた・・・」

 

 ゼエゼエ・・・と肩で荒い息をしている二人。
およそ三時間(!?)に渡ってスゥの戦車から逃げ回っていたため、二人は既にヘロヘロだった。

 

 が、神は彼らを見捨てるのが好きなようで、すぐにスゥが追いかけてくる。

 

「も、もう追いついて来た−(泣)!!」

 

 どっかに落としたのか、黒いバイザ−をしていない景太郎。
その瞳からは、凄まじい量の涙を流している。

 

「た、たまちゃん・・・。 あれ、やるわよ」

 

「みゅ?」

 

 何処からともなく現れたタマが、なるの腕に付けているヘンな物に合体する。

 

 たたかう → コンバイン → たま
 G.F.   ヴァリ−
 ドロ−
 アイテム

 

 ん? ・・・これって・・・どっかで見た事があるような・・・?

 

「たまキャノン!!」

 

 ズド−ンッ!!

 

 なるの腕から、弾丸と化したたまが凄い勢いで射出される。
要するに、〔アン○ェロキャノン〕のたま版というわけだ。

 

「や、やるなぁ、なるなる。 この〔ビシュヌ君初号機〕の
 大半の機能が駄目になったわ」

 

 どうやら、ビシュヌ君初号機のディスト−ションフィ−ルドを貫通して
戦車本体にダメ−ジを与えることが出来たらしい。

 

「そうだ! ・・・ほ−ら、スゥちゃん、クリスマスプレゼントの
 バナナセットと128MBのメモリ−だよ−」

 

「な、なんやて!?」

 

 先程のなるの攻撃でキャタピラがいかれたのか、亀のようにとろい戦車。
そして景太郎のすぐ側まで行った時、景太郎の取った行動は・・・。

 

「うわっ、風で飛ばされて崖から落ちちゃった−。
 ゴメン、スゥちゃん。 俺、今から取ってくるよ」

 

と、わざとプレゼントを崖に投げる景太郎。
・・・一体、この男は何を考えているのだろう?

 

「うわっ」

 

と案の定足を滑らし、崖から転落する景太郎。

 

「け、景太郎−っ!?」

 

「あ−っ、バナナセットとメモリ−がっ!?
 待っとれ−、今助けに行くからな−っ!!!」

 

 何時の間に装着したのかパラシュ−トを背中に背負い、そのままの勢いで空にダイブするスゥ。

 

 ・・・スゥにとって、景太郎なんかよりバナナセットとメモリ−の方がよっぽど大切らしい。

 

 ・・・不憫な奴だな、景太郎・・・(汗)。

 

「景太郎・・・」

 

 ポタッ、となるの頬を伝う涙が落ちて、地面を濡らしていく。
・・・なんだかんだ言って、景太郎の事結構気にしてるんだね、なるちゃん。

 

「・・・どうせ死ぬんなら、私にプレゼント渡してから死になさいよっ!!(怒)」

 

 ・・・訂正、プレゼントの事しか心配してないらしい。

 

「・・・それはいくらなんでも酷いんじゃないか、成瀬川・・・(汗)」

 

「け、景太郎!? どうして・・・?」

 

 突然後ろから掛けられた声に驚いて振り返るなる。
そこには、先程落ちていったハズの景太郎が五体満足で立っていた。

 

「あ、足がある・・・幽霊じゃないよね・・・?」

 

「・・・生きてるよ。 このコスチュ−ムの御陰でね・・・」

 

「・・・どういう事?」

 

 頭にハテナマ−クを浮かべるなる。

 

「このコスチュ−ムの御陰でボソンジャンプが出来たんだ。
 もちろん、何処に飛ぶかはわかんないランダムジャンプだったんけどね・・・」

 

 ・・・け、景太郎は、A級ジャンパ−だったのか(汗)。
ふむふむ、景太郎七不思議に景太郎はA級ジャンパ−・・・追加っと(カキカキ)。

 

「どうしたの、成瀬川?」

 

「し・・・」

 

「し? ・・・俺が死んだかと思ったの?」

 

「心配して損したじゃないのよ−っ!!!(怒)」

 

 座ったまま景太郎に怒鳴るなる。
・・・嘘付け。 プレゼントの事しか心配してなかったくせに。

 

「ゴメンゴメン、成瀬川。 ・・・よっと」

 

 座ったままのなるの手を取り、なるを立たせる景太郎。

 

「メリ−クリスマス、成瀬川。 これ、成瀬川へのプレゼント」

 

「え?」

 

と景太郎が懐から取り出したのは、小さなビロ−ド張りの小箱。

 

「?」

 

 首を傾げながらも、パコッと小気味良い音を立てて箱を開けるなる。

 

「け・・・景太郎・・・。 これ・・・」

 

 箱を開けたなるの顔が、みるみるうちに驚きに染まっていく。
そこに入っていたのは、可愛いデザインのシルバ−リング。

 

「・・・覚えててくれたの・・・?」

 

 恐る恐る景太郎の顔を見上げるなる。
景太郎といえば、顔を真っ赤にして、照れ隠しに鼻の頭をポリポリと掻いていた。

 

 そう、いつか景太郎がなると一緒に買物に出掛けた時、
ショ−ケ−スに入っていたこのシルバ−リングを、
なるが何気なく「このリング、可愛いな」とポツリと洩らした事があった。

 

 その時は、景太郎の返事は「ふ−ん、そう?」という素っ気ない物だったが、
景太郎はその時のリングを覚えていたのだ。

 

「景太郎、ありが・・・クシュンッ!!」

 

 お礼を言っている途中でクシャミを洩らすなる。
さっきから繰り返しになるが、今のなるの格好はノ−スリ−ブニットにスパッツ。
・・・冬にする格好ではない。

 

「・・・寒いの成瀬川・・・って、その格好じゃ当たり前か。 えっと・・・」

 

 バサッ

 

「!?」

 

「こうすれば寒くないよな、成瀬川?」

 

「そ、それはそうだけど・・・これはちょっと恥ずかしいわよ・・・」

 

 そう、なるがそう言う通りその格好はとても恥ずかしかった。
何故なら、景太郎の羽織っている黒マントに二人一緒にくるまっているのだ。

 

「でも・・・あったかい」

 

「・・・? 何か言った、成瀬川?」

 

 小声で呟くなるに尋ねる景太郎。

 

「な、なんでもないわよっ! ・・・メリ−クリスマス、景太郎」

 

「・・・メリ−クリスマス、成瀬川」

 

 お互いにそう言った後、夜空を見上げる。
深々と舞い降る雪が、まるで二人の事を祝福しているようだった。

 

 

 

 今、このお話を読んでいるあなたにも、幸せが訪れますように・・・。
Merry Christmas!!

 

 

 

Fin

 

 

 

 お・ま・け

 

 

 

 2000年12月31日、大晦日。

 

「どんどん雪が降ってくるわね−。 来年は雪が多いかもね?
 ・・・景太郎、このお餅焼けてるわよ」

 

「そうかな? そういえば、そうかも・・・あちち・・・。
 ・・・あ、スルメ焼けてますよ、キツネさん」

 

「く−っ、大晦日の日に、かまくらの中で雪と焼いたスルメを肴に熱燗を飲む!
 ・・・これぞ日本人の心や!!」

 

 ・・・ひなた荘の面々は、中庭に作ったかまくらの中で20世紀最後の夜を満喫していたりする。
 ・・・ちなみに、火鉢で餅を焼いているのがなると景太郎で、
熱燗を飲んでいるのが言わずと知れたキツネである。

 

「年越しソバ、おまちどうさまでした!」

 

「ミカンも持ってきたぞ」

 

 そこに、手に白い手袋をしてお盆一杯に年越しソバを持ってきたしのぶと、
赤いマフラ−を首に巻いたサラが、ミカンを持ってかまくらにやって来た。

 

「わ−、ソバやソバや−(はぁと)」

 

「うむ、やはり一年の締めくくりは年越しソバがなければな」

 

 コタツに入りながら、昨日やっていた番組の
〔その時、その出来事が起こった・2000年版〕のビデオを見ているスゥ。
 ・・・それには、クリスマスに日向市で起こったあの悲劇が流れている。

 

 素子といえば、景太郎から貰った妖刀ひなと菊一文字の手入れをしていた。
・・・何もこんな所でやらなくてもいいと思うんだが・・・。

 

「あらまぁ、スイカを忘れているじゃないですか、みなさん」

 

「・・・スイカは冬の果物じゃないぞ、むつみ・・・」

 

 キツネと一緒に熱燗を飲んでいたむつみが、はるかに突っ込まれる。

 

「景太郎君、クリスマスのディナ−はバッチリだったよ。 本当にありがとう」

 

 瀬田と言えば、煙草を燻らせながら景太郎にディナ−の様子を話していた。

 

「そうそう、忘れる所やった。 みんな、この写真見てみ」

 

「?」

 

 キツネの取り出した写真に、顔をくっつける様にして覗き込む残りの九人。

 

「・・・これって・・・浦島(君・け−たろ・景太郎君・浦島センパイ)・・・と、
 なる(さん・ちゃん・先輩・成瀬川先輩)ですよね・・・?」

 

「「・・・・・・(汗)」」

 

 全員の視線を浴び、固まる景太郎と顔が真っ赤になるなる。
・・・そう、クリスマスイブの時の写真を(二人一緒にマントにくるまってるトコ)
何時の間にか写真に収められていたのだ!!

 

「な、何でこんな写真がここにあるんだよッ!?」

 

「ちょ、キツネッ!」

 

「さあな−?(ニヤリ) でも、よく撮れてるやろ?」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「浦島−ッ、切る−ッ!!」

 

「ラブラブやなぁ−」

 

「やっぱりデキてたんだな、お前ら−!!」

 

「あらまぁ」

 

 しのぶはあらぬ彼方へと走り出し、素子は妖刀ひなと菊一文字で景太郎に切りかかり。
スゥとサラは、何時もの様になるの事をからかう。
そして、相変わらずマイペ−スなのはむつみ。 たまと一緒に、熱燗を飲んでいた。

 

「・・・やれやれ、相変わらず、か・・・」

 

「いいじゃないか、彼らも楽しんでいるみたいだし」

 

 呆れているはるかに、ちゃっかりはるかの肩に手を回す瀬田。
・・・こちらも、なかなかいい雰囲気である。

 

 

 

 21世紀はどうなるか分かりませんけど、良い年であることを願いたいよね。
それでは皆様、良いお年、そして良い21世紀を・・・・・・。

 

 

 

 

 

後書き

 

 

 Merry Christmas! Excaliberで−す!!

 

「ううッ、何で俺がこんな目に・・・(泣)」

 

「け、景太郎と私は、本当に何でもないんだからね!!(アセッ)」

 

 はいはい、わかったよ二人とも。

 

「でもさ・・・今回はかなりラブラブだったんじゃない、成瀬川?」

 

「そうね、Excaliberはあまりのラブラブさに、
 壁に頭を打ちつけた後、床の上をゴロゴロと転げ回ったみたいよ。
 元々ラブコメはそんなに得意じゃないらしいし」

 

 ・・・悪かったね。
でも四ヵ月振りに日本に帰ってみたけど、めちゃめちゃ日本が変わってたね。
一瞬、「僕は日本に帰って来た・・・ハズなんだけどなぁ・・・」
と思ってしまったよ。 何か、女の子みんな顔黒いし。

 

「まぁ、確かに・・・。 Excaliber、
 お前池袋を薄手の長袖シャツ一枚で歩いてたんだってね」

 

 ああ、暑くてさ。 人間、慣れって怖いね−。
マイナス10度の世界で暮らしてるからさ、16度もあると暑くてね。
御陰で回りの道行く人々に、「こんな格好で寒くないのか?」
みたいな視線で見られてたよ、ウン。

 

「当たり前よ、普通。 いくらあんたは暑くても、回りの人は寒いんだから。
 そういえば・・・あんた確か、ラブひなのコミックス全巻持ってきたんだっけ?」

 

 おう! 重かったぞ!!

 

「「本当にバカ(だな、ね)、コイツ・・・」」

 

 大きなお世話だよ。
では、次回予告。

 

ナデシコであった、本当に怖い話 Vol.07
未来より来たりし厄災、あるいは幸せの予兆 − その3 −
そして、伝説へ・・・

 

 お楽しみに!!
次回で未来シリ−ズは終わりかな、たぶん。
感想、意見、苦情、カミソリメ−ル等待ってます!

 

 それでは、Merry Christmas! そして、よいお年を!!
ぬおぉぉぉぉ、ラブひなのプレステソフトが欲しいィィィィィッ!!

 

「駄目だ・・・Excaliberが壊れた」

 

「もともと壊れてるじゃない、景太郎。
 Excaliberが壊れてるから最後は私達がしめないと」

 

 

「「・・・せ−の・・・
  Merey Christmas! また来年もよろしく!!」」

 

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

ExcaliberさんからSSの投稿です!!

Merey Christmas!!

いや〜、季節モノのSSを投稿していただきました!!

しかし、コスプレできましたか(笑)

景太郎が凄く活躍してましたよね〜

なるも何だか素直だし(爆)

でも、白井と灰谷は・・・ご愁傷様ですね(苦笑)

 

では、Excaliberさん投稿、本当に有難うございました!!

 

感想のメールを出す時には、この Excaliberさん の名前をクリックして下さいね!!

後、掲示板になら感想を書き易い、と言う方もおられるので。

この掲示板に出来れば感想を書き込んで下さいね!!