「変わってないんだな・・・ここは・・・。 何もかも、あの時のまま・・・ん?」

 

 ザザッ!! ←素子が参上した音

 

「浦島ッ! キサマを・・・斬る!!」

 

 ギンッ ←刀が光を反射して光る音

 

「あ、ここの住人さん? ちょうどよかった、浦島景太郎って人を呼んで・・・」

 

「覚悟−ッ! 奥義・雷鳴剣−ッ!!」

 

「わ−ッ!? 一体俺が何をしたんだ−ッ!!?」

 

 トランス状態に入った素子に、物を尋ねようとした景太郎もどき(仮)は

何故か景太郎の代わりに切られる羽目になった。

 

 ドカ−ンッ!!

 

 ひなた荘・入口前の広場に響く轟音。

それに遅れる事数秒、しのぶとキツネが息を切らせつつやってくるが、

辺りにもうもうと立ち込める土煙・・・それはもう手遅れという事を示していた。

 

「遅かった・・・(滝汗)」

 

「ま、まあ、け−たろの事やから大丈夫やろ、多分(汗)」

 

 徐々に、土煙が晴れてきている。

そして、しのぶとキツネは信じられない光景を見る事になった。

 

「あぶないあぶない、もう少しで死ぬ所だったよ。

 でも一つ忠告しておくよ、お嬢さん。

 そんな大きな動作じゃ、かわされたら後がないよ?」

 

「な・・・!?」

 

「うそ・・・」

 

「受け止めたんか・・・。 しかも、人指し指と中指だけで・・・」

 

 素子の剣技を、二本の指だけで受け止めた青年の姿が、そこにあった。

しかも、その顔は不敵に笑っている。 素子の剣を二本指だけで受け止める・・・。

かなりの格闘技の腕である。

 

「う、浦島ッ!? 何故私の剣を・・・」

 

「あ、その前にここの管理人に用があるんだけど・・・。 今、何処にいるかわかる?」

 

 パニくッている素子に、管理人・浦島景太郎の事を尋ねる謎の青年。

 

「何言っているんですか、センパイ・・・?」

 

 恐る恐る青年に話し掛けるしのぶに、ニッコリと笑い掛ける青年。

その笑顔は景太郎そっくりだが、どこか違う。

しのぶは、直感でその事に気付いていた。 さすが、恋する乙女は違う。

 

「お嬢ちゃん、説明は後でね。 ・・・ちょうど帰ってきたみたいだな・・・」

 

と振り返って、階段の方に向かって歩いていく青年。 その顔には、笑顔が浮かんでいた。

 

 センパイに何の用ですか?と言おうとしたしのぶだが、

彼女が顔を上げた時には、彼の姿はもう既に目の前に無かった。

 

「・・・き・・・消えたんか?」

 

 遠くの方で、一部始終を見ていたキツネが恐る恐るしのぶの元に向かう。

だが、しのぶは黙ったままだ。

 

「しのぶ? 大丈夫か・・・って、立ったまま気絶しとる・・・。

 随分器用なんやな、しのぶ・・・(感心)」

 

 暫くしのぶの目の前で手をヒラヒラさせていたキツネだが、

やがてお手上げというように肩を竦めた。

 

 ・・・一度でいいから、立ったまま気絶する人を見てみたいモノだ・・・。

みなさん、そう思いません? え、思わないって? ・・・ごもっともです・・・。

 

 

 場所はひなた荘の前の、長い石階段。 時間はちょっと遡る。

 

「ねえ、景太郎? さっきの百円玉、もしかしてニセモノ・・・?

 たとえ本物でも、どうやってあんな風に曲げる事が出来たの?」

 

「百円玉は正真正銘の、本物の百円玉だよ。 ・・・百円玉を曲げたのは、〔破岩〕を使ったんだ」

 

 長い階段を一段づつ登りながら、なるは今まで不思議に思っていた事を口に出した。

いくら握力に自信があったって、百円玉(しかも五枚)を簡単に曲げる事は

不可能だからだ。 そしてそれを、何でもない様に答えるのは景太郎。

彼は、やっぱり大量の紙袋(全部なるの服)を両腕一杯に抱えていたりする。

 

・・・はがん?

 

「破壊の破に岩って書いて〔破岩〕って書くんだ。

普段全力だと思っている力って、実は全然出し切れて無いって事は知ってるよね?」

 

「ええ、それなら中学の保健体育で習ったから知ってるわよ。

 100%の力を出すと体が耐えきれないから、自動的に力にセ−ブがかかるってヤツでしょ?」

 

 何を当たり前な事を。 そんな顔で景太郎を見るなる。

 

「例外は、極限状態に発揮される火事場の馬鹿力だよね。

 ば−ちゃんから教えてもらった暗殺術、〔浦島流暗殺拳〕って言うんだけど・・・。

 破岩は、人間にかかっているリミッタ−を瞬間的にだけど解除出来る。

 要するに、火事場の馬鹿力を再現してるんだ」

 

「なるほど・・・。 驚きを通り越して、呆れるわ。

 アンタが不死身なのも、もしかしたらそれの影響かもね」

 

 マジマジと景太郎を見ているなるに対し、景太郎は苦笑いしっぱなしである。

 

「じゃあ、アンタと対等に戦えるのは、ひなたおばあちゃんだけ?」

 

「そうだね。 まあ、ばあちゃんは現役引退しているけど。

 ・・・それと、もう一人いるよ。 ・・・すぐそこに、ね!!」

 

 ブンッ!!

 

 沢山の紙袋を抱えたまま、何も無い空間に鋭いハイキックを放つ景太郎。

 

 ガシッ!!!

 

「さすが・・・〔浦島流暗殺拳〕正統後継者だけあるね、景太郎。

 

 ガ−ドした両腕がボロボロだ・・・。 イテテテ・・・」

 

「まあ、それなりにね。 まだまだ甘いよ、景介。 ・・・久しぶりだね」

 

 鈍い音と共に、景太郎の目の前に現れるのは先程の青年だ。

景太郎の蹴りをガ−ドした影響か、彼の来ている服の両袖はボロキレと化している。

先程景太郎が放った蹴りが、もの凄い威力を持っているという証である。

「け、景太郎が二人・・・? 私、夢でも見てるの??」

 

 景太郎と景太郎もどきは何事も無く普通に会話しているが、

なるは突然の出来事に頭がパニクっていた。

 

 何せ突然、いきなり景太郎そっくりの青年が景太郎を襲って来たり、

それを迎撃するためにロス五輪金メダリストの某森○選手(古!)もビックリの

ハイキックをいきなり景太郎が放ったりと、なるは間近で目撃したのだ。

これで驚くな、という方が難しい。

 

「・・・な−んか、ヤな予感するよ・・・」

 

 腰を抜かしたなるの手を取って起こしながら、景太郎はポツリと呟く。

事実、その嫌な予感は外れる事が無かったのである・・・。

何故なら、彼らの後ろには、キツネ以下ひなた荘の住人が迫っていたからだ。

 

 

「ふ、双子ぉッ!!? け、景太郎とこの景太郎もどきがぁっ!!!?」

 

 所変わって、ひなた荘ロビ−。

 

上の科白をむつみを除き、ひなた荘の住人は異口同音の如く口にした。

 

「ま、そういう事だ。 ・・・そんなに驚く事もないだろう、お前達」

 

 いまだに騒がしいひなた荘住人を一瞥したはるかは、

煙草を燻らせながら読んでいた新聞にまた視線を落とした。

 

「景太郎もどきって・・・(汗)。 俺にはちゃんと景介っていう名前があるの!」

 

 そんなひなた荘の住人達に、自分の名前を強調する景太郎そっくりな青年(景介)。

そりゃ、いくらなんでも何時までも景太郎もどきじゃ酷過ぎる。

 

 ちなみに、彼の容姿は殆ど景太郎(そりゃそうだ、双子なんだから)。

ただ、後ろ髪を少しだけ長く伸ばして馬の尻尾みたいに一つに纏めている。

 

「意外よね、景太郎に弟がいたなんて。

 でも、いまさらラブひなのオリキャラ作るなんてちょっと無謀じゃない?

 今マガジン本誌じゃ〔本当の〕景太郎の妹がいるわけだし」

 

 うっ・・・。 ・・・細か−いツッコミありがとう、なるちゃん。

これはExcaliber的ラブひなという事で、許して下さい。

このSSを考えた時には既に可奈子が出てたもんなぁ・・・。

大体、情報が入ってこないんだよ。

 

「ふ−む・・・双子だけあってホンマよう似とるな、あんさんら」

 

「浦島がもう一人・・・(ピクピク)」

 

「センパイの事、これからどういう風に呼べばいいんですか?」

 

「け−たろが増えたんか−?」

 

「・・・ハムスタ−が子供生んだみたく言うなよ、カオラ(汗)」

 

「・・・・・・(ニコニコ)」

 

 それぞれ好き勝手に自分の意見を言うひなた荘住人の方々。

 

「正確に言えば、俺と景太郎は〔異母兄弟〕に当たるんです」

 

「ウチの親父が、昔不倫して出来た子供が景介なんですよ。

 景介が生まれた時ににその景介の母親が亡くなったんで、景介がウチに引き取られたんです」

 

「い、異母兄弟・・・。 それにしては、アンタ達似過ぎてるわね・・・」

 

「確かに・・・」 ←ひなたガ−ルズ全員

 

 普通、景太郎と景介の知られざる過去を聞いて驚くハズなのに、

異母兄弟のクセに似過ぎている、という点でしか驚いていないなる達一同。

アンタ達、それでいいのか、それで? ・・・絶対ズレてる。

 

「それで景介、お前何しにここに来たんだ?」

 

「ここに住むために来たのさ。 もちろん、ひなたば−ちゃんから許可は貰ってあるよ」

 

 景太郎の質問に、懐からゴソゴソと紙を引っ張り出して景太郎に見せる景介。

確かにその紙には、ひなたば−ちゃん直筆で入寮を許可する旨が書かれていた。

・・・一体どうやって彼はひなたば−さんを見つけてきたのだろうか?

 

「別にいいけど、みんなの意見も聞かなきゃ駄目だしなぁ・・・。

 みんな、この事についてどう思う?」

 

「別に私はいいわよ」

 

「ウチもなるに同意見や(面白くなりそうやし)」

 

「私も構いません(浦島センパイの弟さん・・・)」

 

「ウチもウチも−!!」

 

「別にアタシも反対する理由がないな・・・(遊び相手が増える事だし)」

 

 景太郎と景介を交互に見ながら、口々に賛成(?)するひなたガ−ルズ。

ただ、一人を除いて。

 

「・・・ちょっと待った」

 

 そう、言わずと知れた素子である。

 

「どうしたの、モトコちゃんは景介が住む事に反対なの?」

 

「そんな事、別に私は構わん。

 が、キサマは何故私の剣を受け止められたのだ?」

 

 はてな顔の景太郎&景介に、素子の鋭い視線が突き刺さる。

その瞳は大部分が怒りに、そしてほんの少し興味に彩られていた。

 

「何だ、景太郎。 あの事みんなに話してなかったの?」

 

「・・・まあ、そんな事普通一般の人に教える必要はないしね・・・。 知ってるのは、成瀬川だけかな」

 

 一瞬苦い顔をした景太郎に、驚いた顔を向ける景介。

双子(異母兄弟だけど)だけあって、苦笑した顔もそっくりだ。

 

「もうバレちゃったわけだし・・・話しても構わないの、景太郎?」

 

「・・・もういいよ、話しちゃって」

 

とチラリと景太郎を見るなるに、ヒラヒラと手を振って同意を表す景太郎。

いつの間にかソファ−に腰掛けており、もうどうでもいいやという顔をしていた。

 

「え−と、じゃあ・・・」

 

 昨日今日あった事を鮮明に思い出しながら、みんなにゆっくりと説明していくなる。

途中、彼女の頬が桃色に染まっているのは御愛嬌である。

 

「・・・かくかくしかじか、そういうわけなのよ。 わかった?」

 

「いや、かくかくしがじかっていわれてもな。 サッパリわからんわ、なる(汗)」

 

「む・・・これこれこういうわけなのよ、キツネ。 これでどう?」

 

「・・・全然分からへんけど、なる・・・(大汗)」

 

 一生懸命説明しているなるに、ついていけないキツネが手を上げる。

他のみんなもウンウンと頷いていたりする。

 

「・・・キツネ、アンタもう一回小学校からやり直してきた方がいいわ。

 代表的日本語表現がわからないんじゃ・・・おしまいね」

 

 ふうっ、と溜め息を付いてみせるなる。

拳を振るわせて怒りに耐えているキツネを、しのぶ達は何が何だかわからない

という表情をしながらも懸命にキツネを抑えていた。

 

「キ、キツネさん落ち着いてください!

 よくわかりませんけど、浦島センパイと、えっと・・・景介さんでしたっけ?

 お二人は強いっていう事なんですか?」

 

「そんな、浦島に限ってそんな事はありえんッ!!」

 

「〔暗殺拳〕って何や? ・・・それってうまいんか、チビ?」

 

「・・・知らない単語聞くと、何でも食べ物だと思うんだな、カオラ(呆れ)」

 

「あらまぁ、意外ですねぇ」

 

「みゅ?」

 

 やっぱり、みんな景太郎が強いとは思えないらしい。

そりゃあ、毎日なるや素子の着替えを覗いて(事故だけど)ブッ飛ばされている

景太郎を見てれば・・・ねぇ。 信じられない、というのも無理はない。

 

「なあ、け−たろ。 あんさんウチらの事をからかってるんやないの?

 嘘付くんなら、もうちょっと上手い嘘をつかんとあかんで?」

 

 ソファに座った景太郎に向かって、大袈裟に肩を竦めるキツネ。

 

「いえいえ。 それは本当ですよ、えっと・・・キツネさんでしたっけ?

 それに・・・俺は景介ですよ?」

 

「あれ? ほ、ホンマに景介や・・・。 何時の間に入れ替わったん?」

 

「センパイ、何処に行っちゃったんですか?」

 

「くっ・・・私とした事が・・・ヤツの気配を読めんとは・・・」

 

「「?????」」

 

「みんなの探している人は、こんな顔の人ですか?」

 

 ヒョイ

 

「ひいっ!!?」 ←なる、むつみ、はるか、景介を覗く全員。

 

 昨日なるを脅かした時みたいに、天井の板橋を足の指で挟んで

逆さ立ちして見せる景太郎。 それを見て、驚いて腰を抜かすひなたガ−ルズ。

 

「これで信用してくれます?」

 

 苦笑混じりの景太郎の科白に、コクコクと首を縦に振るひなたガ−ルズ。

・・・これから景太郎の事を、クモ男(笑)と呼ぼうと思いながら。

 

「とまあそういうワケで、不出来な兄と共にお世話になります。 これからよろしく!!」

 

 と、ペコリとお辞儀する景介。

こうして、ひなた荘に新住人が誕生したのであった。

 

 

「この辺りは、全然変わってないんだね。 ホント懐かしいや」

 

「そう? この辺りも結構変わってきているんだけど」

 

「あ、ちなみに一番上の科白は景介くん、二番目は景太郎の科白ね」

 

「・・・どこに向かって説明しているんですか、なる先輩。 しかも、カメラ視点で・・・(汗)」

 

 ・・・ひなた温泉街を歩いている、景太郎、なる、景介、素子達四人の姿があった。

なぜなら、銀行に景介が行きたいと言い出したからだ。

景太郎も銀行に行かないといけない理由もあったワケもある事だし、一緒に行く事にしたのだ。

(なんてったって景太郎の所持金、全部合わせて1000円だもんなぁ・・・(笑)。

 500円は、チンピラの時に自分で折り曲げたんだし(苦笑))

 

 また、なるも散歩ついでにウィンド−ショッピングを楽しんでいたし、

素子と言えば・・・怪しい(と素子自身は思っている)景介を見張るという名目で

彼らと一緒に来ていた(懐に妖刀ひなを隠し持っていたりする(苦笑))。

 

 歩いている場面を書くのは面倒臭いので、さっさと場面は銀行に移る。

 

「「じゃ、お金下ろしてくるから。 二人とも、ちょっと待っててね」」

 

「わたったわ」

 

「・・・わかった」

 

 椅子に座ってい休んでいるなると素子を残し、ATM端末に景太郎と景介の二人が近づいていったその時!!

 

 ガシャ−−−−ンッ!!

 

 ガラスの割れる派手な音と共に、招かねざる数人(といっても5人)の怪しい

覆面軍団が乱入してきた。 どう見ても、預けてもいない預金を無理矢理引き落としに

来た客・・・俗にいう、銀行強盗というはた迷惑なヤツである。

 

「金を出せ−っ!!」×3

 

「騒いだヤツは、順番に撃ち殺すぞ!!」

 

「全員手を組んで、床に伏せろ!!」

 

 やっぱり彼らもお決まりの脅し文句を吐きながら、威嚇する意味で天井に向かって

二、三発銃を撃つ。 銀行にいる客全員、恐怖の余りに震えている。

 

「このバックに金を詰めろ。 ・・・殺されたく無かったら、早くしろ!」

 

「は、はいっ!」

 

 言われるまま、大人しくバックにお金を詰める窓口のお姉さん。

 

 ジリリリリリリリリリ・・・・・・・・・

 

「!? ・・・くそっ!!」

 

 スキを見て誰かが警報ベルでも押したのだろう、けたたましい程の音量で

警報音が鳴り響き始める。 恐らく、警察にも通報されているだろう。

 

 キキ−−−−ッ!!

 

「犯人につぐ−−−−! 君達は完全に包囲されている−!

 諦めてBenさんに投稿・・・ちがった投降しろ−!!

 

「・・・何呑気な事言ってんすか、先輩(汗)。 今はそれ所じゃないじゃないっすか」

 

 メガホン片手に叫んでいる先輩警官に、大汗垂らしながら突っ込む新人警官。

うむ、やはり〔ラブひな〕の世界でもBenさんは有名人のようだ。

 

「くそっ! ・・・おいっ、野郎共! もっと威嚇射撃しろっ!!」

 

「アラホラサッサ!(古ッ! このネタ分かる人いるのか?)

 

 ズギュ−ン、ズギュ−−−−ンッ!!

 

 警察に向かって、何度も発砲する銀行強盗達。

回りの客は、耳を塞いで恐怖に耐えるしか無かった。

 

「・・・くっ・・・」

 

 本当は思い切って突入したいのだが、人質がいるために

手荒な真似が出来ないでいる警官達。 その顔は、苦渋と焦りに満ちていた。

 

「・・・ねえ、景太郎(ボソボソ)」

 

「・・・何だよ、景介?(やっぱりボソボソ)」

 

 床に伏せたまま、自分の隣に伏せている景太郎に話し掛ける景介。

その顔は、恐怖・・・ではなく、嬉しそうに笑っていた。

 

「あいつらの持っている銃、何とか無効化出来ないものかなぁ?」

 

「・・・それなんだよなぁ・・・。 銃さえ無ければ、簡単に勝てるんだけど・・・」

 

 チラリ、と銀行強盗達を横目で見る景太郎。

銃を持っているのは、リ−ダ−格の一人と、その近くにいる覆面二人の三人だけだ。

 

「ちょっとアンタ達、何話しているのよ?(ボソボソ)」

 

「くっ・・・もうガマンの限界だっ! この私が成敗してくれるっ!!」

 

 懐から妖刀ひなを取り出して、今にもヤツらに切りかかろうとする素子。

 

「「「そ、それはマズイ(よ、わよ)素子ちゃん! 

  銃刀法違反で警察に問答無用で現行犯逮捕されちゃう(よ、わよ)!!」

 

 血気盛んな素子を、何とか宥める景太郎達三人。

素子なら本当に刀を振り回してしまいかねない、という所が怖い。

 

「ねえ素子ちゃん、お願いがあるんだけどさ。

 この三本のボ−ルペンを、ヤツらの銃口に向かって投げられるかな?」

 

「なるほど、ヤツらの銃はリボルバ−・・・。 上手い事考えたね、景太郎」

 

「? ・・・どういう事?」

 

「あ、ああ・・・投げられるが・・・」

 

 景太郎の考えを理解したのはやっぱり付き合いの長い景介だけらしく、

なると素子の二人は頭に?マ−クを浮かべている。

 

「訳は後で話すよ。 俺と景介がオトリになるから、合図したら、投げてね。

 頼んだよ、モトコちゃん。 成瀬川は、危ないから現状維持しててくれ」

 

 そう二人に言い残すと、二人はスックと立ち上がり、銀行強盗達に向かって怒鳴った。

 

「おい、お前ら! 銃弾もまともに当てられないのか!?」

 

「景介・・・・。 お前、もうちょっとマシな挑発出来ないのか・・・?(汗)」

 

 左手を出して挑発する景介に、眉間に手を当てて首を振る景太郎。

挑発するとはいえ、それはいくらなんでもやりすぎじゃ・・・と思う。

撃たれたら元も子もないし、第一死ぬほど痛い(いや、当たったら普通死ぬって)。

 

「ほう・・・。 じゃあ、お望み通り撃ってやろうか・・・?

 ヒ−ロ−気取りのつもりの、自殺志望者さんよ?」

 

 カチャリ・・・

 

 三つの銃口が、景太郎と景介の心臓を捕らえる。

 

「死・・・「今だっ、モトコちゃん!」

 

「伏せろっ、二人とも!

 ・・・神鳴流秘剣・風塵乱舞!!」

 

 ヒュンッ!!

 

 景太郎達が伏せるのと、素子がボ−ルペンを投げ放ったのは、ほぼ同時だった。

 

 カッ!

 

 ・・・そして、そのボ−ルペンは狙い違わず銃口へと吸い込まれていく。

だが、その事に気付いた者はごく少数の者(景太郎、景介、素子の三人)であり、

誰も気付く者はいなかった。

 

「・・・ふんっ、驚かしやがって・・・。 今度こそ、冥土に送ってやるぜ!」

 

 そして、改めて銃の引き金を引く犯人達。

 

 カツンッ!

 

 ・・・しかし、鳴り響いたのは銃声ではなく、情けない小さな金属音だけだ。

それもそのはず、肝心のリボルバ−が回らないのである。

 

「なんでだっ!? なんで弾が出ねえんだよっ!!?」

 

「「ア、アニキ・・・ど、どうするんです?」」

 

 焦るリ−ダ−格の覆面に、下っぱ達が情けない声を上げている。

全く、情けない・・・。

 

「え? 何がどうなっているのよ? ・・・説明してよ、モトコちゃん」

 

「・・・私も浦島に言われてやっただけなので、よく分かりませんが・・・」

 

 床に伏せたまま素子に尋ねるなるだが、第一ボ−ルペンを放った

素子当人が何が起こったかを理解していない。

 

「・・・モトコちゃんが投げたボ−ルペンが、空薬きょうに入っているんだよ。

 リボルバ−式の拳銃は、薬きょうが弾倉に残るんだ。

 そこに入っているボ−ルペンが、つっかえ棒の役目をしているんだよ」

 

「そ、そうなの・・・(汗)」

 

 何時の間にかなるの隣にいる景太郎が、目を丸くしているなると素子に詳しく説明している。

 

「ど−やら、そちらの切り札はなくなったみたいだね。

 そろそろ、こっちもいってみようか!!」

 

 腕を組んだままだった景介が銀行強盗達に話し掛けたあと、

彼の姿は忽然と消えた。 そう、まるでそこに何も無かったように。

 

「なっ?」

 

 リ−ダ−格の覆面が驚きの声を上げる。 それは、銀行にいた客も同じ事だ。

 

「・・・前方不注意だよ、覆面のリ−ダ−さん?」

 

「!!??」

 

 覆面A(リ−ダ−)がその声を認識した時、景介は既に目の前に迫っていた。

・・・そしてそれが、彼の聞いた最後の言葉になった。

 

 ガッ!!

 

 驚いている覆面Aを尻目に、景介は思いっきり踏み込むと、

バク転の要領で彼の顎を鋭く蹴り上げる。

 

 ドサッ・・・

 

 景介が着地した後、一拍おいて覆面Aが地面に叩きつけられる。

 

・・・浦島流暗殺拳、〔朧月〕・・・。

 ・・・な−んて技の名前まで教えて、俺ってちょっとサ−ビス過剰かな景太郎?」

 

「・・・自覚があるなら止めればいいじゃないか、景介。

 まあ、景介らしいと言えば景介らしいかな」

 

「うそ・・・!」

 

「し、信じられん・・・」

 

 一撃でKOを取った景介を、信じられないといいたげな瞳で見つめる

なると素子の二人。 中国雑技団もビックリのアクロバットを披露したばかりか、

 

蹴りの一撃で覆面を倒してしまったのだ。

 

「久しぶりにこの力を使うな・・・」

 

 景太郎が呟いた瞬間、彼の姿も風となる。

余りにも高速で動いているために、人間の目では捕らえきれないからだ。

 

「「どこだ、どこにいきやがったんだ!?」」

 

 何処から襲ってくるか分からない景太郎に対して、背中合わせに立って警戒している覆面B&C。

 

「・・・上だよ」

 

「!!?」

 

 カッ、ドガッ!!

 

 景太郎がいきなり現れたかと思うと、物凄い音を立てて吹っ飛んでいく

覆面Bの姿が、そこにはあった。 どの様に吹き飛ばしたかというと、

 

景太郎は空気をこじ開けて真空を生み出し、カマイタチ現象を起こしたのだ。

 

「なっ・・・」

 

・・・浦島流暗殺拳、〔空刃〕・・・。 他人の心配してる場合じゃ、ないんじゃない?」

 

ガスッ!

 

 何時の間にか接近したのか、景太郎は茫然としている覆面Cの

 

鳩尾に重い一撃を当て、気絶させる。

 

「・・・残りは、アンタ達二人だね。 ・・・どうするんだ?」

 

「・・・おとなしく、警察に投降した方がいいと思うよ。 俺はこれ以上、怪我をさせたくないからね・・・」

 

 景介は心持ち楽しそうに、対して景太郎はこれ以上人を傷つけたくないという

沈痛な顔で残った覆面達を見ていた。

 

「「くっ・・・くっそぉぉぉぉぉぉッ!!」」

 

「きゃッ!?」

 

「ッ!?」

 

 覆面達は偶然近くにいた女性二人・・・なると素子の二人を羽交い締めにし、

首元にナイフを突きつけた。 ドラマでも追い詰められた犯人がよくやる手であるが、

やられている当人にとってははた迷惑な行為だ。

 

「くッ・・・。 ・・・どうする、景太郎・・・?」

 

 人質を取られて下手な行動が取れなくなった景介は、拳を怒りに振るわせている。

彼は、卑怯な戦いをする事が一番嫌いなのだ。

 

「あの二人・・・かわいそうに・・・」

 

「へ? 景太郎、それどういう・・・」

 

 景太郎が呟くのと、景介がマヌケな声を出すのはほぼ同時だった。

そして・・・・・・。

 

「何時まで乙女の胸を掴んでいるのよっ!!」

 

 ガスッ!!

 

「神鳴流奥義! 雷鳴剣・弐の太刀!!」

 

 ドガガガガガッ!!

 

 ぷしゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・ ←煙の吹き出る音

 

「・・・なるほど、こういうワケね・・・(汗)」

 

「・・・そういうコト(汗)」

 

 至上最強といわれる暗殺拳を習得した景太郎と景介二人でさえ恐れさせる、

剛拳を誇るなると人間離れした剣を持つ素子の二人だった。

 

 喧騒渦巻く銀行内に警察が突入し、彼らを逮捕していく。

その間に、景太郎と景介の二人は本来の目的であるお金を引き落とし、

なると素子の二人を伴ってそそくさと去っていった・・・。

 

 

 なんかもう、ラブひなじゃないなコレ・・・。

 

 

「全く・・・ヒドイ目にあったわ。 手付きがいやらしいったらもう・・・」

 

「全くですね、なる先輩」

 

 先程の羽交い締めされた事を未だに根に持っているのか、

なると素子の二人はブツブツと文句を言っている。

その後ろで、景太郎と景介が冷汗垂らしながら並んで歩いている。

 

「・・・景介、お前本当にいいのか? 特上寿司10人前(!)だなんて・・・。

 あとで後悔しても知らないぞ?」

 

「大丈夫大丈夫。 俺達兄弟の、再会祝い兼引っ越し祝い兼犯人逮捕祝いだって」

 

 心配げな景太郎の問いに対し、あっけらかんと答える景介。

なぜ、彼がここまで強気でいられるか、というと・・・。

 

 先程の、銀行強盗五人組全員の財布の中身を根こそぎ取ってきたからである。

もちろん、これは犯罪ですのでマネしないように。

 

「ま、これからヨロシク、景太郎」

 

「こっちこそ、景介」

 

 パァン、とお互いの手を打ち合わせる景太郎と景介の二人。

これからのひなた荘の生活は、賑やか(騒々しい?)になりそうである・・・。

 

 

 

 

Fin

 

 

 

 

後書き

 

 

 どうも、みなさまお久し振りです、Excaliberです。

今回のラブひなSS、いかがでしたでしょうか?

 

「・・・何かもう、ラブひなじゃなくなってるわね・・・」

 

 うっ・・・。

 

「オリキャラまでつくって・・・しかも、俺の弟(異母兄弟)だし・・・」

 

「そのオリキャラの浦島景介。 よろしく(ペコリ)」

 

「・・・なんでいまさらラブひなのオリキャラをつくったのだ?」

 

 素子ちゃん、その事なんだけど・・・。

ラブひなのオリジナルスト−リ−のために、彼は誕生したんだよ。

ということで、このお話はその前振りのために作成したワケ。

景太郎と景介が使う、浦島流暗殺拳もそう。

 

「「「「ふ−ん・・・」」」」

 

 話は変わりまして、みなさまチョコ貰いました?

Excaliberは、貰うどころか学校の授業中に自分で作りました(爆笑)。

ああ、なんて情けない・・・。

 

「景太郎の事、笑えないわね・・・・・・」

 

 全くその通り。 まあ、チョコをあげる風習は日本だけだけどね。

さて、そろそろペ−ジも無くなってきたし、次回予告。

 

「機動戦艦ナデシコ・時の流れに外伝

 ナデシコであった、本当に怖い話 Vol.08

 彼方より来たりし厄災・あるいは幸せの予兆 − その4 −

 目指せ! クッキングマスタ−!!」

 

 未来シリ−ズはこれで本当に終わりです。 お楽しみに!

 

「・・・興味ないね」

 

 うぐぅ!!

 

「駄目よ、本当の事いっちゃ」

 

「・・・アンタの方がよっぽどキツイと思うが・・・(汗)」

 

「そんな事より、はぐはぐしようよっ(はぁと)」

 

 あううう・・・キツイよ君達・・・。

前回紹介した四人のキャラの内、一人(景介)は明らかになったが、残り三人、

そして新たに加わった四人の新キャラとマイト達との関係は!?

待て、続報!!

 

「「「「・・・興味ない(わ、ね)」」」」

 

 ぐふぅ!!

 

 

 

 

管理人の感想

 

Excaliberさんからの投稿です!!

ラブひなの第三話ですね。

しかし、強かったんかい・・・景太郎(苦笑)

双子の弟さんまで登場しましたしね〜

今後、この二人が誰とくっつくかが楽しみですね(爆笑)

まあ、その辺はExcaliberさんの腕の見せ所と言う事で・・・

 

では、Excaliberさん投稿、本当に有難うございました!!

 

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