「北ちゃんが…北ちゃんがぁ!!」
「落ち着きなさい、零夜。」
「でも、でも〜!!」
「大丈夫だから。いつもと違い三人セットじゃないけど…多分何とかしてくれるわ、『彼』なら。」
「『彼』って…『アレ』の事ですよね。だから信用できないんじゃないですか!」
「………一理あるわね。」
激闘!超人大戦!!
第三話前編
日向市の山の中、一人の男がさ迷っていた。
背は低めで痩せ気味の体、年は若く見え、少年のような顔立ちをしている。
格好は半袖Gパンのラフな格好だが、所々についた汚れが長い間山中をさ迷っていたのを示していた。
「『神奈川県の日向市のひなた荘に居るから』と言われてもな…」
男が憔悴した声で呟く、背中に背負ったズタ袋がやけに重そうに見える。
「この地図おかしいって…ここは神奈川だろ?なのになんで目印に清水寺があるんだ?零夜…手抜きか?」
男が手に持つ地図には見たことの無い地形が描かれていた。何しろ清水寺の隣に海が在り、そのすぐ近くには沖縄本島がある。
ちなみにコレは作成者の零夜が手抜きしたわけではない。
彼女が詩織から聞いたひなた荘の位置(1、詩織は重度の方向音痴である。2、詩織はあくまで直接行った事はなくアキト、成瀬川から又聞きしただけ。)
を忠実に書き写しただけである。
まあ…少しでも日本地図と重ね合わせればおかしい事に気付くはずだが。
こいつ相手にそこまでする余裕は無かったらしい。
「あ〜なんでアイツこんなトコに潜伏してやがんだ!受験だあ〜?あんな人間兵器を野に放つんじゃねえ!裏口で行け!裏口で!」
かなり危険な思いの丈を叫んだ直後、目の前が開け、温泉街が見えた。
「おお!人里に戻ってこれた!って言うか山中彷徨っただけか俺?もうこんな地図いらん!自力で探す!」
人里に戻ってこれた感動のせいか、男はハイテンションのまま町へと駆け出していった。
時刻は夕方、喫茶日向の店内、アキトとキツネ、はるかの三人が席に座り向かい合っている。
早朝の襲撃後の後始末が山ほどあったため、全て終わった頃には外は夕闇に包まれていた。
「やっと落ち着いたか…さてと、アキト、あの連中に心当たりは?」
「…ありませんね。」
はるかの問いにあっさりとアキトが答える。
「ほんまか?戦争中に実はやりあったとか、そうゆうオチちゃうんか?」
あまりの思考時間の短さにキツネが思わず突っ込む。
「戦争中には色々な人に会いました。流石に全員覚えてるわけではないですけれど…でも、あんな変わった連中多分会ってたら忘れてないですよ。」
と言うかあんな半魚人やエジプト男に会ったのを忘れる方が難しい。
「それもそーやな。でもあいつら明らかにアンタに用があったようにみえたんやけどな…」
「…浦島アキトじゃなくて漆黒の戦神テンカワ=アキトに用があったのかもな。」
はるかのセリフにアキトが一瞬ギョッとするが、
「そんな慌てた顔しなくても大丈夫だ、ちゃんと回りは確認してある。お前の正体を公表するような真似はしないよ。」
偶然にもアキトの正体を知ってしまった、はるかとキツネだがその件に関しては貝より口が堅かった。
尤も寮待機を命じられた他の寮生が寮を抜け出し覗いている可能性があったが、
直接被害にあった成瀬川やしのぶはそんな気力は無い様に見えたし、素子は気になってはいる様だが覗き見するような性格ではない。
恐れるのはスゥだけだったが性格的に隠れるのが苦手なため、もし隠れていたならばすぐに見つかるだろう。
最もなにかの盗聴メカを放っている可能性もあったが、寮を出るときにキツネが釘を刺しておいたからそれも多分無い。
「漆黒の戦神の力を欲している奴は世の中に腐るほどいるからな、その口じゃあないのか?」
「それは俺も考えたんですが…」
アキトがはるかの言葉に同意するが、
「あいつ等、俺を捕まえて何する気だったんですかね?」
新たな疑問が生まれてしまった。
「う〜ん…そこそこ強かったが…本気のお前を連れて帰れるレベルじゃなかったな。」
「もしかして、あの襲撃には隠された意味があったのかも。」
「あいつ等、頭悪そうだから実はそこまで考えてなかったんちゃう?」
「…ありえるな。」
「確かに。」
哀れ悪魔超人(笑)
それはともかく、議論が煮詰まりかけていたその時、
「すいませ〜ん」
入り口から少し離れた所から若い男の声が聞こえた。
「悪いが今日は休みだ。またの日にしてくれ。」
はるかが振り向き、言葉を返す。
「いや…」
そう言って、男は入り口からアキト達が目視出来る位置まで入ってくる。
男の正体、それは先程山中で彷徨っていた男だった。
「俺が用事があるのはそこの男、テンカワ=アキトだから。」
男の一言で空気が一気に張り詰めた。
緊迫した空気の中、アキトが呟く。
「お前…誰だ?」
男がそれを聞いた瞬間、ズッコケる。
「いや、何回か会ってるじゃん?あの…ほら俺だよ俺。」
「ん〜覚えてないな。」
「ほら、リュウジンのパイロットの…」
「リュウジン?ってあ、ドラゴンガンガーに似たやつか。」
アキトの頭に、鎖を使って戦うジンシリーズの異端機、リュウジンの姿が思い出されてきた。
そしてその機体に乗っていた、木星屈指の変わり者の事も…
「ああ!遊人隊の大島か!」
「ビンゴ!!」
男=大島克明はやけに気取ったポーズで指を刺しながら叫んだ。
(注、大島は自著『三軍神参上!』の主人公です。時ナデやラブひなにはいません、詳しくはあとがきをご覧ください)
「何でお前こんな所にいるんだ?」
アキトが至極当然の疑問を大島にぶつけるが、
「そこの姉さん。というわけで俺こいつの知り合いですので、メシとか飲み物いただけませんか?ツケで。」
大島は普通にアキトを無視して、はるかに食糧補給の相談をしていた。
それを見たアキトは背後から首を掴み、ゆっくりと自分の方へ捻りあげる。
「あががががが…!」
「まさかメシたかりにわざわざ木星から来たわけじゃないんだろ?」
「ひ、人とのコミニュケーションはまず第一に会話が…」
「立て込んでて忙しい中、お前相手に悠長にしてたら朝が来るからな、暴力も絡めないと…」
「人のこと綺麗サッパリ忘れてたのにそんな事までなぜおもいだす!って分かった分かった!言うから!俺の首はエクソシストじゃないんだぞ!」
それを聞きアキトが大島の首を捻る力を緩める。直後、大島は口を開いた。
「実は…北斗が行方不明で…」
アキトにしか聞こえないレベルの声の大きさで凄まじい事を呟く。
「何?!」
ボキボキ!!
驚きのあまりアキトの手に力が入り、周囲に破滅の音が鳴り響く。
「$%&#’()%$?!」
意味不明の言語を発し、大島は泡をふいてぶっ倒れた。
「やば!そいつ白目むいとるで!?」
事態を静観していたキツネが衝撃的な展開に思わず叫ぶ。
「あ、力入れすぎた…まぁ大丈夫かな?こいつなら。」
アキトは戦時中、自分や北斗そして『同盟』と対峙しても生き残った、しぶとい大島の姿を思い出しひとまず安心するが…
「おい…なんか魂出てないかそいつ?」
はるかの一言を聞き目をやると、
大島の体から、大島の形をした羽の付いたようなエクトプラズムっぽい物が抜け出ようとしていた。
「うわ!ちょっと待て、逝くな大島!キツネさん水持ってきてもらえますか!」
「よっしゃ!分かった!って、それ水一杯でどうにかなるレベルか?」
「アキト…頼むからひとのウチで死人は出すなよ?」
本気でヤバイことに気付き、空気が一気に慌しくなる。
結局、大島が蘇生したのは外が闇に包まれた頃だった。
「なるほど…戦後も遊人隊は舞歌さんのところで働いてるのか…」
「まあ、直属の優華部隊は寿退社や配置換えで人員不足になって…それにあの人、北斗や詩織に汚い仕事やらせたくないみたいでな
そこで適度に汚れた俺らが代わりにそっち系の仕事を。今回は人手不足を補うためのリリーフとして俺が護衛補佐として来たと。」
ほんのわずかな灯りの中、階段の踊り場でアキトと大島が向かい合うようにして会話している。
ちなみに蘇生直後、大島は怒り狂うかと思ったが、
『別に気にすんな。慣れてるから。』
とやけに優しかった。
…数週間後、某同盟にアキトの女性関係についての最新情報(誤解を招き易い物に限る)が大量に届けられたが多分関係ないだろう(笑)
それはともかく時間がたち過ぎたためキツネはひなた荘に帰り、いくらなんでもはるかの目の前である意味大事件の北斗失踪は話せないため今は喫茶店前の階段に並んで腰掛けている。
「それでお前がわざわざここまで連絡に来たのか?」
「もしかしたら詩織辺りが唐突にお前に会いにでも行ったんじゃないか?って説もあったから一応確認にな…無駄みたいだったが。」
大島が深く溜息をはく。
「残念だが来てないな…というか北斗地球に来てたのか?」
アキトが至極当然の疑問をぶつける。
「あれ?おまえ知らないのか?三日後の『合同サミット』の事。」
「ああ、なるほど。舞歌さんの護衛か。」
『合同サミット』の一言でアキトは全てを理解した。
『合同サミット』、それは今までに無い規模で行なわれる木星と地球の有力者の集まる会議の事であり、
このために『サミットタワー』と銘打たれた巨大建造物が東京に新しく作られた時点で、その規模の大きさがうかがわれる。
ちなみにアキトにもネルガル経由で招待状が来ていたが『サミットの二日後に模試があるから』との理由で断っている…いいのかそんなんで?
「ああ、その関係で千沙さんや零夜、百華も地球に来てる。最も千沙さんはロンゲの御守りで大変だし、百華は…言わなきゃダメか?」
何故か遠い目で大島が虚空を見上げる。
「いや、いい。…ナオさん新婚なのに大変だな。」
アキトの脳裏には中国服の少女に追い回される、新婚の黒尽くめのエージェントの姿が浮かんできた。
「まあそれは銀河のかなたにでも置いといて。俺等は三日前に地球に着いて、その日のうちに千沙さんや百華は別行動、
零夜はデスクワーク、俺は会場手伝いと言う名のパシリ。北斗は舞歌様の護衛って感じで2日が経ったんだが…昨日、異変が起きた。」
そう言うと大島は懐から幾枚かの写真をアキトへ手渡した。
「北斗は深夜にホテルの屋上で自主トレをしていたんだが…朝になっても帰ってこなかったらしい、
一晩中寝室で待っていた零夜が不審に思い屋上へ上がってみると…」
何か微妙に恐ろしい表現があったような気がするが、アキトに手渡された写真はそんな突っ込みしてる場合ではない説得力があった。
「大量の血痕を残し、北斗は消えてた。この時点で詩織が勝手に飛び出した確率は10%切ったんだけどな。」
写真には屋上に広がる大きな血だまりが映し出されていた。
「この血は誰のだ?」
「極秘裏に検査したら96.8%の確率で北斗本人の血だ。」
「北斗の!?」
次の瞬間アキトの顔が驚愕に変わる。
この血の量は尋常ではない、北斗相手にここまでの傷を負わせられる相手は自分の記憶にはいない。
いや、それ以前にここまでの血を出した北斗本人の体が…
アキトの顔をみた大島が見定めるかのようにして呟く。
「そのリアクションからすると、やっぱお前シロだな。いや、実は正直、最初は俺はお前を疑っていた。」
「何?」
アキトがいきなりかけられた嫌疑に怒気を放つ。
「んな顔するな!本気で怖いから…だって北斗相手にこんな事が出来る可能性がある人間、俺の中ではお前しかいないし…
それに『最初は』って言っただろうが『最初は』って!とりあえず2枚目以降の写真を見てくれ。」
アキトが怒気を押さえながら、他の写真をめくって見る。
写真にはなぞの物体の破片と、なぞの部品が写っていた。
「…何だこれ?」
「それが現場に散らばってたんだよ、遺留品ってやつかな?実はその物体と部品の原型予想図を預かってるんだ。」
そう言うと大島はアキトから少し離れたところに立ち、またも懐を探り絵を取り出した。
「これが部品の方の完成予想図だ…って何で怒ってるんだ!?」
なぜだか絵を見たアキトが先程にも負けない怒気を発していた。
怒気を当てられた大島が思わず後ずさる。
「冗談を言っていいときと悪いときの違いを体に刻み込んで欲しいのか?」
「いや!マジなんだって!部品を組み合わせたらほんとにカセットテープが組みあがったんだって!」
大島の持っている絵には巨大なカセットテープが描かれていた。確かに悪い冗談としか思えない物体だ。
「…それにしてもカセットテープか。」
「ああ、そう言えばラベルに超人大全集とか何とか…」
「!本当か!」
大島が何気なく話した『超人』というキーワードにアキトが過敏に反応する。
「ど、どうした?いきなり声を荒げて。」
いきなりのアキトの大きいリアクションに大島が思わず引く。
「ああ…実は…」
アキトは今日の朝、自分が悪魔超人と名乗る勢力に襲われた事を訥々と話し始めた。
話が終わった後、しばしの沈黙が流れ、大島が口を開いた。
「にわかには信じにくい話だが――これで物体の方の完成図の説明が付いたぜ、最初はなんだかよく分かんなかった物体のな。
アキト見ろ、これが物体の方の完成図だ!」
大島が勢い良く懐から最後の紙を取り出す。
絵には巨大なバネが描かれていた、だがそのバネには手足らしきものが付いている、
巨大なバネの玩具の人形、なにも異変が無ければ素直にそう思っただろう。
しかし、今の状況ではアキトの答えは決まっていた。
「悪魔超人…北斗も的にかけてたのか。」
おそらく幾人かの超人が北斗を襲撃し、拉致して行ったのだろう。
しかし超人たちも無傷とは行かず…
その際にこのバネの超人は北斗によってズタズタにされた―――
大島がいつになく真面目な口調で口を開く。
「アキト、いろいろ忙しいのは知っているが北斗探索の協力を頼みたい。
本当は俺だけで片付ける様に言われてたんだが…お前のトコにも襲撃があったって事は――」
「わかった、力を貸そう。」
大島の言葉が終わらないうちにアキトが言葉を発する。
「会議ぐらいなら受験を優先するが、北斗をさらう様な連中が裏で暗躍してるとなれば話は別だ。
―――俺はいつでもあの頃に戻れる。」
もはやその場には女子寮管理人兼受験生の浦島アキトはいない。
代わりに、その場にいたのは戦争の英雄、漆黒の戦神テンカワ=アキトだった。
「おお、復帰してくれるか!だったら渡すものがあるんだ、ちょっと待っててくれ。」
嬉しそうに言って大島は持参したズタ袋をあさり始めた。
「いや〜何しろ急だったもんだから全部は用意できなかったんだけどな。」
大島の声を聞きながら、アキトは浅く目を閉じ考え込む。
正直言って自分のところに来た連中に北斗を拉致できるほどの力は無かった。
と言う事は…
『まだあいつらには上の連中がいるのか?』
水を自在に操る半魚人型のアトランティス。人を布で包み水分を吸収する人型のミスターカーメン。
今まで人を捨て力を手に入れた連中とは戦った事がある、しかしこの二人の力はある意味常軌を逸している。
それ以上の能力を持った超人、そいつらが北斗を襲撃したに違いない。
ブロロロロロロロロ…キキ〜〜〜!!
それに気になる事がもう一つ、スゥのメカタマにより消えた黒ローブの男、他の二人より大きな気を発していた男がこんな事で消えるのもおかしい話だ。
ドン!グチャ!!
再度の襲撃もありえる、このまま自分はひなた荘を離れていいのだろうか?
「アキト君、こんばんわ。」
「おーすっ!バカ!元気か!?」
「ああ、瀬田さんにサラちゃん。こんばんわ」
・・・・・・ん!?
アキトが思考の世界から帰還し目を開けると、目の前にはアキトのバイトの雇い主の考古学者瀬田と、その娘のサラがいた。
ちなみに何故か大島の姿は消えており、大島がいた辺りに瀬田の車が階段途中にも拘らず駐車されている。
「なんだ、瀬田か。車は階段の下に止めて来いと言っただろ?」
轟音の正体を見に喫茶店から出て来た、はるかが瀬田に皮肉交じりの挨拶をする。
「いや〜ちょっと急いでたもんでねぇ、ついついうっかりね。」
頭を掻きながら人懐っこい笑みで瀬田がはるかに挨拶を返す、そして視線をアキトの方へ向けた。
「アキト君、いきなりで悪いんだけどまたちょっとサラを預かってくれないかな?」
「えっ?」
「パパ、大丈夫だって。自分の身は自分で守れるよ。」
サラが不満げな声を上げるが。
「ダメだよ。今はうまく逃げ切れたけど、今度もまた上手くいくとは限らないからね。ここは僕があいつらを引き付けるからサラはここにいなさい。」
瀬田が穏やかながらも有無を言わせない口調でサラを諭す。
「お前引き付けるって…今度は何やったんだ?また悪の秘密結社とでも戦ってるのか?」
かつての経験を交え、はるかが呆れた目で瀬田を見る。
「実はこの間、大学の資料室で一冊の本を発見してね。何でもその本によると、
1900年代後半に日本アルプスの山中で人間とは違う種族間の抗争があったらしくて、それを証明するために発掘してたら…」
「「してたら?」」
アキトとはるかの声が見事に被る。
「いい物を見つけた直後に、その種族を自称する連中に襲われてとりあえず逃げてきたって訳だよ。
いや〜まさか超人なんて種族ホントにいるとは思わなかったって…どうしたんだい唖然とした顔して?」
はるかは口からタバコを落とし、アキトも思わず伊達メガネがずり落ちる。
「今日はトラブルの千客万来だな…」
はるかの呟いた一言が今日の状況を端的に表していた。
「ふーん。なるほど…それは興味深い話だね。」
北斗関連の話を除いた事情を聞いた瀬田が深く考え込む。
「瀬田さん、情報が少しでも欲しいんです。その発掘した物を見せてもらえませんか?」
「…うん、いいだろう、ほかならぬアキト君の頼みだしね。ちよっとまっててくれるかい?、今取ってくるから。」
アキトの頼みを聞き瀬田が車へ目的の品物を取りに行くが…
「あれ?おかしいな?ここに入れといたのに。サラ、あのマスク何処に置いてあるか知らないかい?」
「うん、知ってる…」
サラが心なしか、いつもより元気なく答える。
「良かった〜どこだい?」
「あれ…」
サラが階段の上の方を指差す、その先には―――
布袋をとぐろで巻いた巨大な蛇がいた。
明らかに日本に生息している大きさではない。
何よりも特異なのは頭に付いたひもの縫い目らしきもの――それがこの蛇がただの蛇ではないと言う事を証明していた。
皆の視線が蛇へと移った直後、蛇は嬉しそうに口の端を上げ笑みを浮かべ、階段を上っていった。
「な、なんなんだよ…あの蛇…」
サラが瀬田の後ろに隠れるようにして呟く。
蛇の気色悪い笑みは流石に刺激が強かったようだ。
「…瀬田さん!」
「ああ、あれももしかしたら超人の一人かもしれないね。サラ、はるかとここで待っててくれ、大丈夫、すぐに戻ってくるから。」
サラの頭を軽く瀬田が撫でた後、アキトと瀬田は蛇を追いかけ階段上部、すなわち日向荘へと駆け出していった。
サラとはるかが無言で後姿を見つめる。
ズル…ズル…
直後車の下から何かが這いずる音が聞こえてきた。
残された二人が気味悪そうに見つめる中、
「な、なんで車が飛んできたんだ?…」
頭から軽く血を流した大島が這い出てきた。
姿が消えてたと思ったら、どうやら瀬田の車に踏み潰されてたらしい。
「脱出に思ったより時間が…」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バキィィ!!
軽くパニック状態に陥ったサラが、いきなり車の下から這い出てきた大島に土器の一撃を加える。
「ぶっ!!」
頭から吹き出す血を30%増しにして、大島は再びぶっ倒れた。
闇の中、中庭で何かが宙を切る音が聞こえる。
「3000、3001、3002…」
素子の声が響き渡る、音の正体は素振りの音だったようだ。
素子は正直悔しかった。
なぜなら、確かにカーメンには勝利した。
しかし内容は楽勝とはいかず、むしろはるかの援護が無ければ正直危険な状態だった。
(私もまだまだ甘い…)
いつまた化け物どもの襲撃があるか分からない、いま自分に出来る事は鍛錬のみ。
素子の強さの根底の一つにはこういった強さへの貪欲さがあるのかもしれない。
「ケケケ…たゆまぬ鍛錬はいいことだ。ま、カーメンに負けそうになったクズがいくらやっても無駄かもしんねえけどな。」
中庭の池に面する大岩の上から素子を小馬鹿にする声が聞こえる。
「誰だ!」
素子が視線を上にやると先程の蛇がニヤつきながらこちらを眺めていた。
次の瞬間、蛇の頭の縫い目がはじけ中から影が飛び出してくる。
影は素子の真正面に降り立った。
「俺だよ、俺。昼間は世話になったな。」
影は昼間、スゥのメカタマ軍団と自爆したはずの黒ローブの男と同じ声を発する。
「馬鹿な!貴様はスゥの爆弾で吹き飛んだはずだろうが!」
「確かにあの爆風は辛かったぜ、腕も一本吹き飛んだ…しかしな俺の体はトカゲの尻尾と一緒で、腕だろうとなんだろうと再生する事が出来る!」
現に体にはやけどの跡一つ無い。
ワニの顔を持った爬虫類人間…
そこには悪魔騎士の一人、スニゲータの姿があった―――
後編へ続く
後書き
実はトラブル続きの超人大戦。後編も同時に送るつもりだったのですが…飛びました(涙)現在修復作業中なのでしばしお待ちください。
あと大島登場は予定外でした。と言うか本来あの役はガイか零夜にやらせる気でいましたが…ガイはちょっと進行上の都合でダメに。
零夜にしようかとも思ったのですが、彼女の場合、戦闘シーンが…ちょっと…
例プラネットマンVS零夜
「これで最後だ!魔技!惑星直列!!」
プラネットマンが体を構成している惑星群を直線一列に変形させ、零夜に向かい突撃していく。
「ふっ…勝負を焦りましたね。」
しかし、零夜は慌てず両手に持った釘バットを握りなおし、逆にプラネットマンへ向かい駆けて行った。
両者が衝突する直前、零夜がスライディング気味にプラネットマンの下側へもぐりこみ、
「どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
気迫と共に釘バットでプラネットマンの体を統率する頭脳部の惑星バルカンをぶち抜く。
「ぐあはぁ!!」
釘バットがバルカンの地表を大きく抉り取り、少し間をおいた後、惑星バルカンは砕け散った。
それは同時に宇宙支配をもくろむ超人プラネットマン終焉の時を示していた。
・・・・・思ったよりいけるかもしれない(自爆)
いや流石に世界観の時点でかなり狂っているのでこれ以上の狂いはマズイ!ってことで零夜もカット。
ま、仕方無しにオリキャラの大島の出演となったわけで…
軽いキャラクター設定表を最後に乗せておきますので『三軍神参上!!』を見なくても分かるようにしておきます。
そのまえにすでに死んだ(と思われる)あの超人の紹介を、
スプリングマン 必殺技 デビルトムボーイ
七人の悪魔超人の一人。その名の通りバネ状の体を持っており、関節技無効、超ジャンプ力などの便利な能力を多数持っている。
その体をフルに使った絞め技『デビルトムボーイ』は対戦相手の体をズタズタに引きちぎった事もある。かなり凶悪な超人。
しかし外観デザインはアン○ンマンにもそのまま出れるような格好である
それではまた。
おまけ
大島克明プロフィール
自作『三軍神参上!』の主人公
外観は少年顔で背も低いため若く見られる、しかし実は白鳥と同じ年齢だったりする。ただ精神年齢が低めのためバランスは取れている。
木星軍の少尉であり、ドラゴンガンガーを模した機体『リュウジン』のパイロット
所属部隊名は舞歌直属遊軍部隊通称『遊人隊』他にメンバーには『巨人』富士、『狂犬』諏訪等がいるが彼等が超人大戦に出てくる可能性は0である
鎖を使った武術木星式鎖術を使用する、本編では天井に張り付く等の某蜘蛛男並みの動きをしており、ある意味人外の道を着々と進んでいる。
某異伝ではっちゃけすぎたため戦後死亡説が流れたが、そんなことは無くこの作品では普通に戦後も舞歌の元で働いている。ただし本編の方でどうなるかは分からない(爆)
能力的にはアキト、北斗にはおとるが独特の狡猾さで互角に立ち会う。ただ性格は馬鹿方向に壊れているので座右の銘は「キチ○イに刃物」
代理人の感想
おや?ステカセキングはまだ生きてるのかな?
まぁ七人の中でもイロモノとしては最高級だけにこれだけで終わらせるのも勿体無いかw