「バッファロー…ニンジャ…そしてアシュラ…なぜ貴様たちは正義などに走った!! だからお前達は復活を許されなかったのだ!! 」
「…サンシャイン」
「ハッ!」
「戦神が来る」
「お任せを。我が砂地獄で奴を葬り去ってくれます」
「…奴は強い、これを使え……」
「これは?」
「…あやつが持ってきた物だ…使え……」
「…信用できるのですか?」
「……わからん。しかし奴の戦神への…いや人類への怒りは本物…」
「わかりました。サタン様の意志こそが我らの総意、これは大事に使わせていただきます。」
「……頼んだぞ…もし…貴様が戦神に勝ったあかつきには…アシュラの…復活を…」
「!―――ありがたき幸せ!必ずや奴の首をここへ持ってまいります!」
激闘!超人大戦!!
〜古代遺跡死闘編〜
第二話
灯り無き道を男が駆けて行く。
全身黒尽くめのその男の姿は、闇に愛されているかのごとく、その姿を闇に溶け込ませている。
そんな中、道の先に明りがさし、男、テンカワ=アキトの姿を映し出す。
その光の先に、またも先程と同じ様な不自然な空間が姿を現した。
しかし、先程の空間と大きく違う事が二つあった。
1つは先の道が無い事。道はここで行き止まり、終着となっている。
そして、もう一つは―――――空間の中央に、どす黒い赤でペイントされた、リングがあった。
三本のロープで囲まれているところから見て、プロレス用のリングだろうか?
とにもかくにも、趣味の悪いリング以外に何も無い空間。
アキトが警戒しながらも、中央のリングに向かい歩を進める。
一歩、二歩、三歩…警戒しながら足を動かすが、奇襲も罠も何も無い。
そして、あまりに呆気無く、リングまで後一歩のところまで近づいた時、変化を感じた。
サクリと、岩肌では無い、なにか柔らかい物を踏んだ感触が足の裏から伝わる。
(…砂?)
見るとリングを囲むように、砂が敷き詰められていた。
思わずアキトの歩みが止まる。
砂を手に取ってみると、とてもきめ細かい。
また落とすとある意味幻想的なほどに綺麗に流れる。
まさしくこれは、高級品といっても過言ではないほどの上質な砂だった。
「グフォグフォ…そんなに人の身体が珍しいかい?」
いきなり聞こえる野太い声、思わず辺りを見回す。
しかし辺りには人っ子一人いない、直後殺気が足元から咽るほどに放たれた。
「下か! 」
アキトが気付いた瞬間、下の砂地からサンシャインが姿を現した。
そのままアキトをカナディアンバックブリーカーの体制で持ち上げ、漆黒のリングへと叩きつける。
しかし猫のような体制で綺麗に受身を取るアキト、背後には最上段ロープを易々と跨ぐサンシャインの姿があった。
「戦神、ここから先は通さん! この悪魔超人首領サンシャインが貴様を殺す! 」
少し前までは首領と名乗る事を躊躇っていた、本来この名は自分の親友である魔界のプリンスに与えられるべきものだからだ。
しかし今はそんな事には構っていられない、自らヘッドと名乗るプレッシャー、この重圧を力として戦神を殺す。
そして復活した友にこの名は与え、自分はそれに付き従う。
巨体に似合わぬ悲痛な意識を胸にサンシャインは数百年ぶりのリングに降り立った。
基本といえる力比べ、リングで対峙した両者は誰とも無く手四つの体制で組み合っていた。
「ははは! 弱い、弱いぞ! 戦神!!」
体格で圧倒的に勝るサンシャインが強引にアキトを押し潰そうとする。
しかしアキトは急に力を弱め、手をロックしたまま巴投げを仕掛ける、押し潰す勢いと引く力が合わさりサンシャインの巨体が大きく宙に舞った。
衝撃でリングがゆれ、巨体がリングに沈んだと思われたその時、再び砂となってサンシャインの身体が消え去ってしまう。
直後、投げの直後で寝ているアキトの眼前に砂の噴煙が固まっていき、
「グォフォォォォォォォォ!!」
サンシャインが砂から具現化し、ダイビングボディプレスの体制でアキトへと襲い掛かる。
「甘い!!」
しかしアキトは右脚を突き上げ、そのままサンシャインの胸を狙って蹴り上げる、その蹴りは正確に日輪マークを貫いた。
そのままアキトの足に貫かれた体制で串刺しと化すサンシャイン、目は閉じられ顔からは表情が失われている、勝利を確信して足を引き抜こうとするアキト、だが……
足が動かない、まるでサンシャインの中で何者かが押さえつけているようだ、否、これは完璧な痛みだ。
動揺と困惑の中、サンシャインの眼がカッと開き、顔に生命が蘇った。
「甘いのは貴様だ、戦神。」
ギュイーンギュイーンギュイーン
不気味に響くモーター音、直後足を捕らえているサンシャインの胸に血塗られたローラーが姿を現した。
二重のローラーは見る見るうちにアキトの右足を飲み込んでゆく、
「ぐわぁぁぁぁ!!」
骨の砕ける感触と血が絞られる感触、最悪の感触が2重でアキトに遅いかかり、彼にしては珍しい悲鳴をあげさせる。
「グフォグフォグホォ……今日の夕飯は戦神の干物か、たのしみだな。」
悲鳴を聞き慢心に陥るサンシャイン、その隙をアキトは逃さなかった。
右足を引きずり込まれる、それはつまり巨漢のサンシャインの本来攻撃しにくい場所、顔面の攻撃射程内に侵入すると言うこと。
軋む足の痛みを押さえ、無理矢理固定された右足に捻りを加える、自由な左足が凄まじい振りでサンシャインの顎へと襲い掛かかる。
「がはぁ! 」
大笑いしていたサンシャインの口に入った一撃、その衝撃でローラーの動きが眼に見えて遅くなる、その隙に強引に足を引き抜きサイシャインの拘束から逃れた。
右足を撫でて異常を確認する、痛みはひどいが何とか動かせる、幸い骨もヒビで済んだ様だ。
「干物は天日だからいいんだよ、機械で作った干物なんか邪道だ」
顎を押さえるサンシャインに向い言い放つ、流石に元料理人とあってなかなかウンチク有る言葉だ。
「ふふふ……強いなお前は。だがなあ!! 俺は負けられんのだぁ!!」
怒号と共に勢い良く突っ込んでくるサンシャイン、余りに猪突猛進な攻撃、そのままなら絶対当たらないだろう。
「……身体が動かない!?」
足が、いや怪我をしていない腕まで動かない。
その攻撃をアキトはそのまま棒立ちで受け止める、衝撃音と共にアキトの身体が大きく宙に浮いた。
それを感触で感じたサンシャインはアキトを吹き飛ばした位置で両手を高く掲げる、しかしどう見ても距離がかなりある、この位置ではまずアキトをキャッチする事はできないが……
数秒後には何故かアキトはサンシャインのリフトアップからのスラムによってリングへと叩きつけられていた。
軌道が急に変わったのだ、宙を飛んでいるアキトの軌道が。
その軌道はまるでサンシャインの腕に吸い寄せられるような軌道となっていた。
アキトの硬直に不自然な軌道変化、ここまで来ると偶然ではない、何かがこのリングには隠されているのだ。
身体を休ませながらトリックを見破ろうとするアキト、そんなアキトの耳に声が入る。
「どうしたぁ? テンカワ=アキト? おねんねするには早すぎるぜぇ? 」
否……
ありえない声、この声の持ち主は宇宙で燃え尽きて死んだはずだ。
冷や水をぶっ掛けられたかのように意識がクリアになる。
自分を見下ろすようにしてその声の持ち主は居た。
「ひさしぶりだなぁ、俺だよ俺。この熱さ、忘れたわけじゃないだろう? 」
戦時中に出会ったクリムゾンの最強部隊、人を捨てたことで得た力は絶対的な強さと恐怖があった。
ブーステッドマン部隊、しかし彼等は全員死んだはずだ。
特に目の前の男はいち早く死んだ――
「冷たいわねえ……あんなに殺りあったのに忘れちゃうなんて」
「まったくなぁ? まあ所詮戦争の英雄から見れば俺らなんてカス同然なんだろ」
「無理も無い、摂理から見れば不可解な事だからな。」
「悪魔のしもべとして復活……全く俺たちは呪われている。」
次々と現われるありえない声に姿。
カエン、エル、ジェイ、イン、そしてD。
因縁深きクリムゾン最強の5人が生前と変わらぬ姿でそこにいた。
「………! 」
「俺も居るぞ。忘れたかい? 戦争最大の英雄サマ? 」
驚きで声が出ないアキトに向け新たな声がかけられる
忘れるはずの無い声、最凶の称号が最も似合う男、漆黒の戦神となったアキトに完全黒星を付けた男テツヤ、彼もヨーロッパの一件で死んだはずの男――
続々とリングに浮かび上がる死者、地獄以下の最悪な光景が目の前に広がっていた。
「復讐か……もはやその一言では片付けられぬ。世を越えてまでの死闘の数々、正に外道よ…… 」
最悪の怨敵、その声は上空から聞こえた。
上空に浮いていたのは編み笠で顔を隠した6つの影、そしてその中央には、
「久しいな復讐人、貴様はもはや我を超えし外道よ」
歴史と共に幾度も繰り返し当たった強敵、北辰の姿があった。
北辰……?何かおかしいことに気付く、確かこの世界の北辰はアキトの事を戦神と呼んでいた、復讐人と呼ぶのは……
「火星での恨み、ここで晴らさせてもらおう」
過去、いや未来?とにかく元いた世界、自分の幸せを崩した最狂の怨敵である北辰。
時空、摂理、全てを超えてアキトの敵であり死亡した人物がこの漆黒のリングに集まっていた。
「懐かしいだろう? 戦神? 」
ロープにもたれかかりながら事の張本人であるサンシャインがにやけた笑いを浮かべ、驚愕するアキトを見つめていた。
「コレは一体……? 」
「我ら悪魔超人には怨念を持ち死んだ者を亡霊として蘇らせる技術がある。その方法は簡単だ、その死んだものの断末魔の血をリングに深く染み込ませるだけ……これぞ悪魔超人界最大秘奥義の一つ!! 呪いのキャンバスよ!! 」
漆黒のキャンバス、これはただの演出面での色ではなかった。
アキトによって死んだ者の血、その量が膨大すぎてキャンバスの色が赤を超えて怨念の黒へと染まっていたのだ。
「血だと!? そんな馬鹿な!! 何処から持ってきたんだ!? 」
明らかにおかしい、ブーステッドマン達幾人かの死に立ち会っているが悪魔超人の影は一切なかった、血を採取する事など不可能に近い。
第一、北辰はどうなる? 元いた時代の北辰、その血を採取するには次元でも超えない限り絶対不可……
「ふふふ、ヤツならそんな事は容易よ」
「ヤツだと? 一体誰が……」
「おおっと、サービスはここまでだ!! 戦神、謎を抱いたまま死ねえ!!」
ロープの反動を使い、ヤクザキックを仕掛けるサンシャイン。
同時にアキトの手足を脇からカエンにインにエルの三人が押さえ込んだ。
サンシャインの20文キックがアキトの腹部に突き刺さり、背後に凄まじい勢いで吹き飛ばされる。
「まだまだ終わらないぜ!! 」
背後に控えていたジェイがアキトを捕まえて上空へ放り投げる、上には北辰と六人集が待ち構えていた。
吹っ飛んできたアキトを錫杖で一撃する北辰、しかしアキトの身体は中空で固定されたように動かない、アキトの身体は六人集に支えあげられていた。
「ふふふ……止めと行くか。貴様ら!!用意はいいな!? 」
「使われることに疑問がないといえば嘘になるが、奴を追い詰めているのは事実……」
「まあ割り切れ。アイツは人間を超えてやがる、もう堕とせるのはコイツみたいな化け物しかいないみたいだってな」
腰を落とし構えるサンシャイン、その背後に着くDとテツヤ、二人は拳を構え背後からサンシャインを殴りかかる体勢になる。
「行くぞ!!サンシャインマグナム!!」
サンシャインの号令と共に殴りかかる二人、拳がサンシャインの背中に炸裂するごとにサンシャインの身体から円柱弾が凄まじい勢いで打ち出される。
円柱弾は空中のアキトに正確に襲い掛かった。
グサグサグサグサ!!
四肢に突き刺さる感触、それと同時にアキトの身体を放す六人衆、アキトの身体は落ち葉のようにか細く落下した。
「やったぞ! これでアシュラの復活は許される……」
勝利を確信したサンシャイン、小躍りしそうな勢いで喜びを示す。
しかし、
「……まだ終わっていない」
アキトの声が喜びを霧散させる、アキトはまだ死んでいなかった、よろよろと息絶え絶えしく起き上がる。
「馬鹿な!!人間ごときがまだ生きているだと!?」
「どうも俺が死んだときより化け物性が上がっているみたいだな」
「無理も無い、奴を覆う力『昂氣』その力は予想以上のものだ」
動揺するサンシャインと違い、冷静な顔のテツヤとD、他の連中もさほど驚いていないようだ。
「ぬう……ならばこのキャンバスの力を思い知らせてくれる!! 」
パチンと指を鳴らすサンシャイン、直後に黒いキャンバスから無数の手が浮かび上がりアキトの身体をつかんだ。
直後、徐々に幾多もの顔が浮かび上がる、老若男女……様々な顔が恨みに満ちた瞳でこちらを見つめている。
「コロニー襲撃……凄まじい犯罪だな。無差別の虐殺、まさにその所業悪魔にも劣るわ」
アキトの最大のアキレス腱、コロニー襲撃。
忘れたわけではない、心の底にしまっていただけ。
復讐心から引き起こした最低の所業――
『イタイヨークルシイヨー』
『ウワァァァァ!! アツイ! アツイーー!! 』
『キャァァァァァァァァ』
『ナンゼダ!ナゼワシガシヌンジャー!! 』
夢で何度か聞いたことがある怨念の声、しかし今、その声は現実となってアキトの目の前で輪唱を続けていた。
「うわあああああああ!!」
色々な感情がほとばしり、輪唱をかき消すような声が喉の底からわきあがってくる。
しかし怨念の輪唱は一切止まることなく合唱を続けた――――
〜続く〜
次回予告
アキトに襲い掛かる恨みの影!!
一人では返すことができぬ重い影……
しかし影を消すために現われる無数の光があらわれた
「お兄ちゃんは悪くないよ!! 」
「恨んでいるわけねえだろうが!!お前のおかげでこっちの俺は生き残ったんだからよ!!」
驚愕必至の次回、お楽しみに!!
後書き
どうも久々の超人大戦です。
4ヶ月ぶり……いやーすみません、いろいろ事情ができまして更新がエライ遅れました。
次はもうちょっと早く仕上がると思いますんでお許しください。
超人図鑑はお休みで、まだサンシャインとの戦いは佳境ですので次回辺りに彼は。
最近彼は2世で美味しいので次回辺りネタが増えている可能性も(爆)
ところで某エアマスターの金次郎と長戸を見てるとアシュラとサンシャインを思い出しませんかw
管理人の感想
ふじいさんからの投稿です。
うわ、敵役勢ぞろいw
そのうえコロニー襲撃の怨念まで出てきたら、そりゃあアキト君身動きできませんがな(苦笑)
さて、ここで次回に引っ張るわけですが。
・・・助っ人の正体は誰でしょうか?w