『Pouvez-vous les emballer separemenr?』
第一話 「すくいあげてくれないか (アイツトハベツガイイナ…)」
出会いは奇跡だった。その奇跡の次もまた奇跡だった。
今日は俺が主役の日。そう、祭りだ。今日俺は人生最大の修羅場をむかえる。そう、生きるか死ぬかの戦いだ。
俺の鮮やかな赤色の体がよく生えるこの大きな水槽で、仲間の131匹と俺は今日、死に物狂いで泳がなければならない。己が望んでいる救いの手から逃れようとしなければならない。そうしなければ一円硬貨と同じ価値の俺達は死んでしまうから。なぜならば俺は
『金魚』
なのだから。
俺は救いの手をまっている。このしなやかな身のこなしを人間に見せつけながら。単なる光の反射をそうと悟られぬように自分の体が輝いていると思わせながら。
俺が死に物狂いで泳いでいると、大嫌いな奴がチョッカイだしてきた。でめきんだ。
「よう、調子はどうだ?」
俺達はまだ名前がない。だから赤色の俺達のような奴は「赤」、俺の目の前にいる憎たらしい奴の仲間達は「でめきん」、赤と白の奴らは「まだら」と区別をつけている。
「俺の心配するより、自分の心配したら?」
俺はこいつの相手はもう飽きた。なにせ、いつもちょっかいだしてくるのはあっちでそのくせ弱い。激弱だ。それじゃ誰だってあきるのは当然だろ? しかも俺ってば優しいからででめきんの顔見ても笑わない努力をしてんだぜ? あいつらは俺らの世界では笑い者さ。だからあいつらの中で赤やまだらに復讐しようなんて馬鹿な事を考える奴らがでてきた。もちろん俺の目の前にいるでめきんもその一人。
まぁ俺はもうこいつと話す気がないからすぐにこいつから離れようとした。そしたらあいつ、体当たりしてきたんだ。
「いってぇ!お前、何するんだよ!?」
「ふん。俺はお前みたいにスカしてる奴がだいっきらいなんだよ!!」
…こ、こいつ、今自分の精神年齢が低いって自分で認めやがった…。しかもそれに気付かないで鼻ならしてやがる。一体どこまで馬鹿なんだか…。ここまでくるとこいつが哀れに思えてくる…。
「おーい!! 次きたぞー!!」
俺がでめきんに「お前…」と言いかけた時、仲間の合図が聞えた。そう、客がきたのだ。
「おっしゃ!! でめきん!! お前も頑張れよ!!」
「お前にいわれたくないわ!!」
俺とでめきんは最後となるかもしれない言葉のやりとりを終え(決して別れのあいさつなどではないぞ!? あいつにあいさつなんて絶対したくないからな!!)俺はまた死に物狂いで泳ぎ始めた。
「あっ…!!」
なんと!!急に水の流れが変わったと思ったら俺は救いの手の主に選ばれたのだ!!気が付くとあの破れやすい救いの手の上に俺は乗っていた。そして、俺よりちょっと渋めの赤い小さな水槽の中に落とされた。ここはどこなんだろう…?
不思議に思いながら小さな水槽の中を泳いでいると、俺の上にまた誰か仲間が落ちてきた。俺はふりかえりながら
「おう!!お前も助かったか!!」
と言って、そのまま固まった。仕方がない。なにせ俺の次に入ってきた仲間はあの「でめきん」だったからだ…っ!!
でめきんも俺を見て固まっていた。俺達は長い事固まっていて、気付いたら次は透明な袋にいれられていた。最初に覚醒したのは俺だった。
「お!!おおおお前!!何でここにいるんだ!?」
俺の叫びででめきんも覚醒し、急にヒステリックに叫び始めた。
「何故!?何故お前は!!俺は!!ここにいるんだ!?お前は誰だ!?あ、赤か…俺は誰だ!?お、俺か…」
こいつ…頭でもうったんだろうか…?俺はでめきんのわけのわからぬ叫びで平常心をとりもどした。
そこからはずっとでめきんはわけのわからぬ叫びを続け、俺はそれを冷めた目で見ていた。そうしてると不思議なほど早く時間が過ぎていった。
「うわぁっ…!!」
急に水に流れができた。俺とでめきんは驚いて声をあげた。
ヒヤリ…
どうやら俺とでめきんはさっきいた透明な袋から違う場所に移されたようだ。体にあたる水の感覚がさっきと全然違う。
周りを見てみると。そこは大きな水槽のようだ。水草もあって呼吸がしやすい。
「へぇ…いい所だな…」
でめきんが夢をみているような、どこかぼんやりした声をだした。
「…確かに。呼吸もしやすいしな…」
でめきんと意見が一致した事は悔しいが、それ以上にここが俺みたいな金魚にとってはすごくいい環境だと思った。まあ人間達にとっては普通の水槽なんだろうけどな…。
と、急に人間が水槽をのぞきこんできた。
『ふーん…2匹とも、なんかおもしろいね』
「な、なんだと!? おもしろいではなくカッコイイだろ!?」
でめきんはこの人間の言葉に文句をいいながら、水槽の水面近くをグルグルと大きく泳ぎ回った。
『あはは、でめきん君、君は元気だね〜』
この時はさすがの俺もでめきんを可哀相だと思った。まあ人間は俺達の言葉が聞えないから仕方がないけどね…。
『えーっと、その赤い金魚君! 君はあごがつき出てるから名前は【シャクレ】!!』
「…は?」
「ぶっ…!! シャクレかー!! いいねー!! 似合ってるぞっ!! よかったな!!」
俺は一瞬固まってしまったがでめきんのムカつく言葉で我をとりもどした。
「な、なんだと!? 俺のどこがシャクレだ!?」
俺は人間に一生懸命抗議しようとした。だが悲しいかな、人間は俺達の言葉が聞こえない。だからこの俺の必死の言葉も無視されてしまった。まあ結果的に俺にとっては気分がよくなる言葉だったけどね。
『でめきん君は…なんか出っ歯が似合いそう!! よし! でめきん君の名前は【でっぱ】だ!』
「…へ?」
「ぶっ…お、お前…で、でで出っ歯が似合うんだとよ? な、なあ? でっぱ君、聞いてるか?」
今度は俺がでめきん…もといでっぱをからかう番だった。でっぱは固まっていたが、俺の言葉を聞いて、我をとりもどしたようだ。
「な…っ!! おい人間!! 俺はでっぱなんて似合わない!! このカッコイイ顔のどこがでっぱなんだ!? おい!! 聞いてるのか!? 大体これだから人間は美的センスが…」
まあ、でっぱが言いたい事はわかる。そりゃあ俺もさっき人間に抗議しようとしたからな。だが俺の抗議を無視されたからでっぱの言葉も当然無視された。
「私、中川夏子よ。これからよろしくね。シャクレ、でっぱ!」
ということで、この時から俺はでっぱと変なネーミングセンスをもつ人間の中川夏子と生活することになったのだ。
この時俺達は、これからどんな大変な目に会うのかも知らず、のほほんと言い争いをしていたのだ―――――。
代理人の感想
あっはっはっはっは、なんか面白そうですね(笑)。
しかし、金魚も半角文字で喋るんだなぁ。金魚専用の巨大掲示板とかあるんだろうか(爆)。
後文章でちょっと気になったんですが、「!」や「?」の直後はスペースを入れたほうがよろしいかと。
(文中では修正してあります)
文章を書くときの約束みたいなものなので覚えて置いてください。
後、誤字誤変換も結構多いのでお気をつけて。