なぜ涙が止まらないのだろう

 

 

悲しいからだろうか

 

 

苦しいからだろうか

 

 

それとも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嬉しいからだろうか・・・・・・

 

 

 

 

 

 

それは流れる涙のように

 

 

第1話

 

コライアスと呼ばれる王都を一望できる丘。

そこに一つの石碑があった。

石碑、といってもそんな大層なモノではない。

本当に、ただの大きな石に名前が彫られているだけの簡易的なモノ。

 

「君が死んでから、もうどのくらいたったかなあ」

 

1日?一ヶ月?1年?もしかしたら10年ぐらいだろうか?

いや・・・そんなことはどうでもいい。

君がこの世にいないことにはかわりはないのだから。

別れ際、私は君のことで決して泣かないと言ったけど、何度も約束を破って しまいそうになった。

今だって耐えてないと涙がこぼれそうなぐらいだし。

ほんとごめんね。不甲斐ないお姉さんで。

これじゃあ天国にいる君に笑われても仕方ないよ。

 

「君なら笑わないか・・・。どっちかっていうと心配してるかな」

 

私は空を見上げながら言ってみた。

空は青くて高くて、とても心地よいものだった。

 

「やっぱり、忘れられないよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

田舎を象徴するかのような村、ウキラム。

魔王軍が支配する城が近くに存在するためか、住む人々はほとんどいない。

いや、支配されていた、といった方が正しい表現だろう。

城の主、死を司る王、ヘムダルは一人の男によって倒されたのだから。

あくまで魔王軍の一部でしかないが、ウキラムはこれから少しは豊かになる だろう。

 

「で、なんでヘムダルが死んでるのにウキラムにこんなに人がいるのかな」

 

辺りにはおよそ200人あまりの武装した人々がいる。

さすがに、女は私だけ、アリスだけのようだが。

皆、腕に自信がある者達なのだろう。

表情がそう物語っている。

私は、というと、たまたま村の近くを通り、この集団を見つけただけ。

面白そうだったので集団に紛れ込んだのだが・・・。未だ何の動きもない。

周囲の者達に訪ねても明確な答えは返ってこなかった。

どうやら何をするのか知らないらしい。

分かったことといえば王都コライアスから、ここまで来たということ。

報酬がすごい、という話ぐらい。

まあ、ようするに何も分かってないないのと変わらないということだ。

 

「なんだかなあ」

 

私は足元を見た。

昨夜の雨で出来た水溜まりに自分の顔が映る。

相も変わらず金髪で、段を入れたセミロング。

久々に自分の顔を見た気がした。

 

「注目!今から勇者様からお話がある!」

 

辺りにいる、ただ武装した兵士とは違う、コライアスの兵士であろう者が少 し高い場所から叫ぶ

 

「聞け!勇気ある者達よ!」

 

ざわつきが静寂へと変わる。

皆の視線は兵士の隣にいる勇者様とやらへ注がれた。

 

「私が美しく、ヘムダルを倒したのは知っているでしょう。

 そして私は一人の重要な人物を捕らえたのです!」

 

勇者様はどうやらナルシストらしい。

そういうオーラが嫌というほど感じられる。

マッチョからはほど遠く、頼りない感じの体格。

よくあれでヘムダルを倒せたものだ。

 

「敵はその人物をおそらく取り返しにくるものと思われる。

 そこで、あなたがたに護衛を頼みたいのです。

 無論、私も戦うが人数が多い方がよりいいでしょう」

「一体、どれくらいの報酬がでるんだ?」

 

武装した男の一人が訪ねる。

 

「そうだそうだ。俺もそれを知りてえ」

「そういやあ、王都にあった張り紙には金額はかいてなかったな」

 

至る所から次々と声が上がる。

まあ、当然といえば当然だ。

捕らえた者が重要人物である以上、敵がそれなりの実力者を送り込んでくる のは明白。

高額な報酬がなければ、誰が好んでそんな危険な仕事をするだろうか。

 

「聞いて驚きなさい!200万ゴールドを用意してあります!」

「なっ!」

「すげえ!」

 

200万ゴールドといえば軽く城一個は買えるぐらいはある、と思う。

なにぶんそんな大金は持ったことはないのではっきりと断言は出来ないが。

ともかくすごい金額ということだ。

 

「城に到着した時点で残った人々で200万ゴールドを分ける、というかたちにしたいと思います。いいですね?」

 

「異議なーし!」

 

約200人のハモリ声。

鼓膜が破れるかと言うほどうるさい。

 

「にしても、これで一気に統率力がなくなるなあ。お金に目がくらんで」

 

ま、私としては楽しければいいのでどうでもいいことだが。

 

 

 

 

 

 

 

200人で列をなして歩けば自然と移動速度は遅くなる。

王都に向かうための森を歩き始めて1時間経つが、まだ2,3キロの距離し か進んでない。

これでは王都まではかなりの時間を浪費するだろう。

まったく、やれやれである。

 

「ふぁ〜あ。つまんないなあ。早く魔物とかでてこないかなあ」

 

アリスは最後尾を歩かされていた。

おかげで重要人物とやらもみることが出来ない。

始めはあれこれと重要人物の想像をして楽しんでいた。

熊みたいなやつとか根暗に違いないとか。

だが、それも飽きてしまった。

 

「っていうか、なんで最後部なのかな」

 

溜め息混じりに私はつぶやく。

返答なくとも理由は分かっている。

性別が女だからだ。

こういうとき、女とは実に不便な生き物であると思わざるをえない。

 

「まっ、だからといって男になりたくはないけど」

 

今の自分が好きだからというのが理由だ。

これは死ぬまで変わらないであろうこと。

 

「だけど、差別はよくない。そう思わない?あなたも」

「そうだな」

「お、ずいぶんとノリがいいね」

「話しかけられたら反応するのが礼儀だろう。

 それとも無視して欲しかったか?」

 

私は思わず目を丸くしてしまう。

18年間、生きてきたがこういう男は初めてだ。

ついでに黒いサングラスをかけ、黒いコートを身につけている服装もめずら しいし。

・・・ぱっと見、不審人物っぽいところは触れないでおこう。

 

「ね、ね、ね。名前教えてくんないかな」

「人に名を尋ねる前に自分の名を言え。

 それが礼儀だろう」

「あ、そうだね」

 

私は左手を胸にあてる。

 

「私はアリア・リスネード。

 アリアでもいいけど、個人的にはアリスがいいかな」

「俺は栄一という」

「エイイチ?」

 

めずらしい名だ。

 

「こういう字を書く」

 

エイイチはそこら辺に落ちていた棒で文字を書く。

 

「へえ、これで栄一ってよむんだ」

 

漢字で現された名前ということは、栄一はジャポンという種族というところだろう。

世界は基本的に人間か魔族という種族に分けられる。

だが、あくまで基本的にというだけ。

世界にはおよそ100種以上の種族がいるとされていて、ジャポンもその一 つというわけだ。

他に例を挙げるならエルフとかノームとかもいたりする。

 

「へえ〜、ジャポンなんだ。めずらしいね」

「差別してもかまわん」

「差別?なんで私がそんなことしないといけないのかな」

「俺がジャポンだから、という理由では駄目だろうか」

「ずいぶんとくだらないことを言うんだね。栄一って」

 

世間ではエルフやジャポンらは、人間と同等とは認められていない。

下等生物とされている。

ゆえに彼らは森や洞窟のなかで暮らす。

まあ、ジャポンはほとんど人間と見た目が変わらないから町に住む者もいるようだが。

私から言わせれば差別するなどとんでもない。

むしろ、尊敬すべき人々なのだ。

人間の多くは知らない。

世界を支えているのはエルフやジャポン達といっても過言ではないことを。

世界で一流とされている武具や防具はジャポンの人々が。

魔法が使えない人でも、読むだけで魔法が使用できる巻物はエルフが作って いるということを。

 

「君が着ている服は・・・」

「そ、ジーンズとTシャツだよ」

 

今、私が着ている服はジャポンの特注品だったりする。

防御力こそないものの、動きやすさが気に入っている。

ジャポンの服を着る人は滅多にいないので、町中を歩くと浮くのが難点だが。

ついでに武器もジャポンの・・・・・・

 

 

ズッゴォォォォォォン!!

 

 

突然、爆音が響き渡る。

誰かが魔法を失敗した、なんてオチがなければ・・・

 

「やっぱ、敵が現れたってとこ?」

 

 

 

ただなんとなく面白そうだな〜というだけで参加しただけなのに。

それが運命の分岐点であったことに私はまだ、気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

代理人の感想

ん〜、まぁまぁ?

文章自体は前よりレベルが上がってると思います。

ただ話がぶつ切りなので早く続きを。