私は死にたくなかった。痛い思いをしたくなかった。

だから、殺した。人をいっぱい。

最初はそれが間違いだと思った。でも、私にはそんなことを考えられる余裕さえなかった。

けど、時が経つにつれて。

その時私は、まだ小さい子供だった。善悪の区別がつかない歳だったのが、幸いしたのか災いしたのか。次第に人を殺すことが普通になっていた。命の重みに気付かぬふりをして。

笑うことはなかったけれど。

だけど、ある事件が私を変えた。

どんな事件かは忘れたけれど、凄く悲しくなって、人の死が恐くなった。

そして、私はその5年後、脱走した。

私、何で寝てるんだろう?

私が目を覚ました時、一番最初に感じたのは疑問だった。

確か、おじさん達に殴られ、そこを見知らぬ少年を助けられて………って、あれ?そこから、記憶がない。

しかも、なにこれ?

私は自分の置かれた状況に違和感を持っていた。私の腰の下は、暖かくて、柔らかくて、ふわふわしている。その白い布を、好奇心から軽く揉んでみる。

ベッドなのかな?

本当に長い間、地べたか床で寝てたから、感触だけでは、これがベッドなるものか、私には判断がつかなかった。

でも…………。

「気持ちいいっ」

こんなに気持ちいいのだ。多分、ベッドに違いない。私は、何故か嬉しくなった。

調子に乗って、ごろりと寝返りを打ったことで、ベッドから転げ落ちそうになった。危ない危ない。はしゃぎすぎちゃ駄目だよね、どんな時でも。

そういえば、私………なんでこの上で、寝てるんだろう?

天使の祝福?悪魔の誘惑?それとも、神様の気まぐれ?

少なくとも、そういうことだけはありえないというのは分かってたけど、私はまだここにいること自体に混乱を覚えていた。

安らぎを覚えていなかった、と言えば嘘をついたことになるけど、警戒心が顔を出さなかったと言っても、嘘をついたことになる。安らぎと警戒心、どちらに寄りかかるべきか迷う微妙な心境だった。

あ、でも、髪の毛がまだ黒いってことは、カツラをつけていることはバレていないみたいだ。むしろ、バレたら、こんな悠長にしてられないし。

私はカツラの髪の毛を指先でいじくった。

このカツラ、前髪で瞳もある程度隠してくれるから、結構嬉しかったりするんだよね。変装にはもってこい。色も私好みだし。

ギギッ

その時、木が軋む音がした。私は音のした方を向いた。

そこには古ぼけた扉と、それを開く私を助けてくれた少年の姿があった。

それを確認し、しばし、固まった後、私は少し感動してしまった。私を助けてくれた上、ここに連れてきて、しかも寝させてくれるなんて、なんて優しい人なのだろう。

その“優しい人”は、無表情でこちら側にすたすたと歩いてくる。

「大丈夫か?」

椅子に腰かけた少年は、静かな、しかし、どこか重い声でこちらに尋ねた。

「はい」

私は返事とともに、“優しい人”であるはずの少年に、少し違和感を覚えた。なんていうか、態度が刺々しい。でも、それだけじゃない。

服装についても、落葉色のジャケットはどこか取り残された感じがするし、両手の黒い皮手袋は何かを隠すようにも見える。腰にある彼の剣は、私を助けてくれた時の、あの威圧感をまだ残しているかのように、恐怖を感じさせる。

それに黒い瞳は、活力を失ったように、何も映してはいない。私の勝手な思い込みなのかもしれないけど。

そうか、見た目が全体的にちぐはぐなんだ。

「よく寝れたみたいだな」

私は、少年の言葉に、助けてもらった恩人を観察していた自分の心を見透かされたような気がした。羞恥心が頭をもたげる。

「あ、はい」

少し遅れて、私は返事をした。

「あの後、お前が気絶してな。ちょうど、俺たちの泊まってた宿……まあ、ここに連れて来ることになった。状況の確認は、これで出来たな?」

「ああ、はい」

本当は、簡単すぎるその説明に、全く理解できていなかったものの、つい反射で答えてしまった。

「そうか」

会話はそれきり潰えた。

沈黙が痛い。

私は少年が私のことをどのように見ているか、疑問に思った。

私のことについて、あれこれ詮索してほしくはないけど、実際、得体の知れない人間だからな、私は。疑惑を持たれないわけはない。私でも、そんな人間が目の前にいたら警戒するだろうな。

そういえば………。

「あの……」

「何だ?」

私が口を開いたのと同時に少年が、遠慮なく聞き返してきた。

その口調や態度に、私はわずかに縮こまったけれど、それでも、言わなきゃいけないことがあった。

「え……と、ありがとうございました」

少年は私の返事に、無表情を崩し、面食らったような顔をした。

何か、おかしいことをしたのだろうか?私は不安になる心を抑え、少年の表情の変化を窺った。

少年は面食らっていた表情を元に戻し、先程までの無表情になった。

「随分と遅い礼だな」

少年の言葉に少女は赤面した。

「すみません」

私はペコペコと頭を下げた。でも、礼儀知らずの人間に見られたかもしれないと思うと、かなり恥ずかしかった。

「まあ、仕方がないといえば仕方がないが……」

気絶していたことを言っているだろうけど、その口調はちょっと刺々しかった。

………居辛い。

やっぱり、人に何かされたら、すぐに礼を言わなきゃだめなんだよなぁ。一つ学習。

「まぁ、礼なんかいらないしな」

少年の言葉に私は心苦しいものを感じた。早く礼を言わなかったから、刺を刺されているのだろうか。

「俺は助けに行ったわけじゃないから」

「えっ?」

少年の一言に、私は思わず聞き返していた。

私はこの人に確かに助けられたのに、そう思ってたのに?

「苛々したんでね、お前は殴ってた奴等が。それに、あれは正義感から来る物でもない」

じゃ、目の前にいる少年はいい人ではなく、ただ拳が振るいたかかっただけなの?私はその理由になっていただけ?

「それに、ここに運び込んだのも、面倒を押し付けられたのが理由だからな。“流れ者”同士、気が合うだろうって」

少年の言葉の響きは、気恥ずかしさから来る嘘ではなかった。真実を淡々と言っている風にしか、私には聞こえなかった。

ただ喧嘩したかっただけ、ただ面倒を押し付けられただけ………。優しい人間だと思っていた少年は、私の抱いた幻想でしかなかった。

嫌な気分だ。

ここは優しい世界だと思って、逃げ出したのに、そこに住む人々はあそこと変わらない。期待を裏切られた私はひどく傷付くしかなかった

でも。

「私は結果的に助けられました。だから、感謝するんです。それでいいと思うのは、私の我が侭ですか?」

少年は少し眉を動かし、そして、私を見つめた。

だけど、これは私の偽らざる本心だ。いや、そう思いたいという、願いだ。私は今度こそ、きちんと言おう。そう心に決め、口を開けた。

「だから、ありがとうございました」

少年は目を静かに瞑り、そして、口の両端を愉しそうに曲げた。

「面白い奴だな、お前は」

少年の言葉に私も笑った。褒められたわけではないだろうけど、素直に嬉しいと思う。

少年は、そんな私の様子を、無表情に戻った顔で眺めながら、急に思いついたように言った。

「そういえば、名前、聞いてなかったっけ。なんて言うんだ?」

えっ、私の名前!?どうしよう............。言っちゃって、いいのかな?でも、偽名なんて、すぐに思い浮かばないし……。

本名を言うにしても、私の名前まで、噂になってなければいいんだけど。ああ、けど、ラストマジックの部分だけでも変な風に取られるかもしれないし。

ああ、でも…………。

私が名前を言うのに躊躇してると、少年が怪訝な視線をこちらに向けていた。

怪しんでる?

私には躊躇している暇などなくなった。思わず、口走ってしまう。

「……ユニト・ラストマジックです」

思ったより、すらすら言えた。そこまで、彼には怪しまれなかったはずだ。

うん。大丈夫。

けれど、何故か少年の表情は揺らいでいた。もしかして、知ってた?

だとしたら………。

ありうる最悪の状況が、私の脳裏に蘇る。あの日々に、あの生活に戻りたくない。

静かな恐怖が私を緊張させる。それでも、まだ、取り乱さず、落ち着いていられたのは幸いだった。彼の続く言葉によっては、それもどうなるか、分からない落ち着きであったけど。

彼が口を開くのを、私をじっと待った。

彼は何か思案したように考え込み、抑揚のない声で言った。ただ、私は口を開いてから、声を出すのに、一瞬の間があったのが気になった。

「………俺の名はジウ・リプロダクションだ」

「ジウさん?」

私は確かめるようにその名前を声に出して繰り返した。

ジウ・リプロダクション。ジウさん。じうさん?

どこかで聞いたことのある名前だ。でも、どこで聞いたのだろう。どこで………?

―――ジウ君。私ね………―――

突如、私の頭に記憶の断片が響いた。その声は誰の者か分からないが、子供の声だということだけは分かる。

―――は?何を……―――

次に響いてきた声も、子供の声だった。やはり、誰の者かも、分からない。だけど、ひどく懐かしい声で、ひどく哀しい声だった。

だけど同時に私は、その言葉と声にいいようのない不安を感じた。なんでだろう?

気になった私は、思わず彼に聞いてみることにした。

「あの、私とジウさんって会ったことありません?」

私の声に、ジウさんはふいと天井を見上げ、そして、呟くようにこう言った。

「いや………ないな」

そうだよね。会ったことあったら、私にこんな態度を取らないもん。

むしろ、会ったことないって、否定されることを望んでいたのかもしれない。ここで、私を、“神の人形”を見たことがある人に出会うのは、こちらからも願い下げだ。

「けど……」

突然、再開した彼の言葉に私は冷やりとした。鼓動が速くなっていく。私は、そこまでしなくともいいだろうと、言われんばかりに彼の口を注視した。

「……お前の名前を聞いて、聞き覚えがある名前だと思ったけど」

やはり、私と彼は会ったことがるのだろうか?でも、彼も会ったことはないと言っているし………。

混乱が私の頭を掻き乱し、恐怖が私の心を締め付ける。

知られたくない。知っていて欲しくない。そんなの、絶対に嫌だ!

私は勤めて平静を装おうとした。だけど、どうやら、それは無理だったらしい。

ジウさんは私の顔を覗き込んできた。

まずい。もし、私のことを本当に知っていなかったとしても、ここで怪しまれれば、そんなこと関係なくなってしまう。

ギギィッ……

その時、再び扉を開く音がした。

私とジウさんは。気まずい雰囲気になりかけていた空気の中で、視線を同じように振り向けた。

ノブに手を掛けていたのは、長い金髪が印象的な、20代ぐらいの若いおじさんだった。美形にも見えるその顔は、何かを愉しむような軽薄な笑みを浮かべており、ジウさんと対照すると、かなり親しみが沸きやすかった。

でも一体、誰だろう?

私が疑問を感じていると、ジウさんとその人が勝手に話し始めた。

「ジウ、その子の様子はどうだ?」

「見ての通りだ」

見ての通りって.........。そんな簡潔すぎる答えで、いいのだろうか?

でも、若いおじさんはそれでも、お喋りをやめなかった。

「しかし、お前、女の子はもっと慎重に扱うべきだぞ。入ってきたときのあの気まずい雰囲気は何だ?せっかく、二人きりになったんだら、きちんとお話しなきゃ」

「うるさい。黙れ」

「女の子は我々人類の、三大至宝の一つだぞ」

「無視するな。黙れと言っている」

「そういう態度が、女の子を恐がらすんだって。分かってないなぁ、全く。」

「お前にだけだ。安心しろ」

「ったく、剣の腕は立つのに、こういうことに関しては、全く駄目なんだから」

「お前、昨日、俺に酒を無理矢理飲ませたこと忘れてるだろう」

「意外にしつこいなぁ、君も」

若いおじさんは異様におしゃべりなようだ。って、それはともかく………。

「駄目ですよっ!!未成年にお酒を飲ませちゃ!若いおじさん!」

どんな危険な状況になるか分からないんだから。

私が大きく叫んだ瞬間、二人は一度、目を丸くして………

「若い“おじさん”か………。ハハハ」

一方は抜け殻のようになりながら苦笑し、

「クス」

一方は笑い声を漏らすのを我慢しきれなかったようだ。私には、どうしてそのような態度を取ったのか分からなかったけど。

若いおじさんは、何故か涙目になりながらこう言った。

「俺はラド・ブラッドハンズ。一応、ジウの連れってことになるかのな?出来れば名前の方で呼んで欲しいな。よろしく。」

「あ、ユニト・ラストマジックです。こちらこそ、お世話になってすみません」

私達はこうして、手短に自己紹介をした。自己紹介って言えるほどのものでもないけど。

でも、この人のおかげで、すっかり場が和んでしまった。凄いな、ラドさん。ジウさんも恐くなかったけど、ラドさんはとっつきやすい。壁っていうものが、基本的にないんだ。

そんなラドさんにジウさんが声を掛けてきた。

「で、買ってきたのか?」

「おう。大きさとか色とかは関係ないんだろう?」

「ああ」

何のことだろう?そう私が思っていると、ラドさんが彼の後ろに置いてあった紙袋から、白い布の固まりを取り出した。

服?

それしか、考えられないけど…………何でここで?しかも、誰の?

「ほい」

今度は私が目を丸くしていると、ラドさんが私にその服を渡した。どうやら、この白い服は私のらしい。けど、何で?

「あの、これは?」

その服を、手に持ちながら、私はラドさんに尋ねた。

「ああ、さっきの一件のせいで君の服がボロボロになっててさ、ジウに買ってこいって言われてたんだ」

さっきの一件とは、私がおじさんたちに殴られていたことであろうか?彼にしてみたら、それしか考えられないのだけれど、私には思い当たる節がいっぱいありすぎた。

結構な人生を歩んできてるな、私。今更、思っても意味はないけど。

でも、それより、私が感動したのは、見ず知らずの私にここまでやってくれる、この人達の厚意だった。本人たちはそうは思っていないだろうけど、今まで、こんなに手厚く親切を受けたことのない私は、涙が滲みそうになってしまう。

「すみません。ありがとうございます」

私は濡れそうになった瞳をこすりながら、ペコリと頭を下げながら、感謝の気持ちを述べた。

「まあ、後先考えないで、喧嘩を吹っかけようとするジウが悪いってことで」

ラドさんは、軽くこう言った。その言葉は、彼らにとっては事実なのかもしれなかった。だけど、私は嬉しさで胸がいっぱいだった。

こんなに嬉しい気分になったのは、あの時以来………。

―――じゃあ、私と………―――

あの時?あの時っていつだっけ?

思い出せそうで、思い出せない。何があったんだっけ、あの時って?私が9歳のころだっていうのは、覚えてるんだけど、具体的なことまで思い出せない。

本当、何があったんだっけ?

私には、皆目見当がつけられなかった。

ま、いいや。さっきと違って、思い出さなきゃいけないってでもなさそうだから。いい思い出っぽいし、無理に思い出そうとすると、余計に思い出せないしね。

私はそれきり、その記憶について考えるのに区切りをつけた。私、こういう思考は、前向きなんだけどなぁ。



でも、私はこの記憶に、意外な事実があることを後に知った。



その時、ラドさんが唐突に声を上げた。

「そういや、ジウ、仕事あるけど、受けるか?」

仕事?ジウさん、まだ若いのに、仕事をしてるのかな?

なんか、凄いな。私と大して、歳も変わらないのに、働いてるなんて。私なんかと比べて、随分と大人びているし、自立も出来てるみたいだ。

私は彼の仕事が、何かも知らず感心していた。

「内容は?」

ジウさんは私の尊敬の視線を無視し、冷たい声でラドさんに聞き返す。

「ちょっと、待ってろ」

そう言うと、ラドさんは懐から手帳を取り出し、適当に頁をめくった。

ラドさんの持っている手帳は、大してボロボロではなかったが、どこか古ぼけた感じがあり、かなりの年季をうかがわせる物だった。

その手帳で目当ての頁を見つけたのか、ラドさんの手はある場所で止まり、それを読みながら、簡潔にこう言った。

「えと、討伐だ」

私はその言葉に、思考を一時的に止められた。

え?……討伐?それって、つまり………。

私はジウさんの職業に、また違う意味で尊敬した。同時に恐怖した。彼の持っている剣を見て何故、私は気がつかなかったのだろう。

「討伐?それは傭兵の仕事じゃないだろ、この国じゃ?」

ジウさんは、ラドさんの言葉を意外なように尋ねた。

だけど、私にはそんなことどうでもよかった。推測が事実だったということに、私は捕らわれていた。彼は、傭兵だということに、一種の驚愕さえ覚えていた。

私は、傭兵というものに偏見を持っていた。野蛮で、金のために人を殺し、女性を見れば、ひたすら屈辱を与える。そういう人種、いや、私と同じような化け物だと思っていた。

しかし、よく考えると、私を助けてくれた傭兵は、私の想像した傭兵とは、大きく違っている。目の前にいる傭兵は、私に宿の一室を貸し与えてくれ、しかも、その上、私のために服を買ってきてくれた。

ジウさんは少なくとも、私の想像した人たちとは違う。

私にはそれでよかった。

心の中にはまだ、わだかまりがあったが、私は彼らの会話に耳を傾けることにした。

「何で?何の討伐にせよ、傭兵は戦闘が仕事だろ?」

「ああ。だけど、この国は違う。そうだろう?」

私はそこで、彼らの話についていけなくなった。つい、声をかけてしまった。

「あの……どういうことですか、それって?」

聞いてはいけないことようにも、感じたけど、聞いてしまったのだから仕方がない。

ジウさん達は、こちらを振り向き、少し驚いた顔をしていた。

「ウィスアの治安制度を知らないのか?」

「ウィスア?」

私はジウさんの口から出された固有名詞の情報を記憶から引き出した。確か、現在最も、力のある国だとか、そうでないとか。でも、私にはそれしか、知識がない。

私がその限られた情報をジウさん達に言うと、今私がいるこの場所こそが、ウィスアの東部だと教えられた。

私は、ここがどことすら、分かっていなかったのだから、ある意味、安心はできた。自分が今いる場所が分かったところで、何が変わるわけでもなかったが。

しかし、彼の話はそこで終わらなかった。

「他の国の場合、何か、国内で武力を必要とする事件が発生すると、農民や商人を強制徴兵する」

「もしくは、傭兵などを募集して、その事態に対処するか、ですよね」

これぐらいは、いくら私でも知っている。

「ああ。だけど、ウィスアは常に国力を保つために、兵士や騎士を細かい事件にも動員する。そうすれば、突発的に戦争が起きても、浮き足立たずに対応できるし、兵士の実戦経験も多くなるから、滅多に負けることはない。そのせいで、傭兵の仕事が少なくなったがな」

「なるほど」

だから、ジウさんはラドさんに質問してたんだ。何故、この仕事がジウさんにきたのか、分からなかったからだ。

私とジウさんはそこで、ラドさんを見た。ラドさんはお手上げといった素振りをしながら、口を開いた。

「しかし、いつも、国の兵力に余裕があるとは限らない」

ラドさんは勿体ぶった言い方をしながら、愉しそうに微笑んだ。

「どういうことだ?」

ジウさんも怪訝そうに、顔をしかめた。

「西部で大きな事件があったらしい。どんな事件か知らないけど、おかげで、王都はそっちの対応で大忙しだそうだ」

ラドさんは、そう言いながら、ジウさんの方に顔を向けた。ジウさんは無表情で頷いた。

「大変なんですね」

私は平凡そのものといった、台詞を言った。

「で、仕事の詳しい内容は?」

ジウさんが、今度はやる気のないかのような素振りを見せながら、ラドさんに尋ねた。

この時、私の中には、不思議と不安といったものを感じなかった。何故だったのだろう?これも考えられる事はたった一つだったのに。

「三日前、ここの東に位置する森で、男の死体が見つかった。男は、もちろん、この町の住人だ。死体には、何かで斬られた痕があったそうだ」

可哀相に.........。私は、その男に同情を禁じえなかった。

だけど、本当に心動かされるのは、これからだった。

「同日、死体以外に何かないか、探していたこの町の住人は、男数人を目撃。男達は、恐らく盗賊か何かの、一味だと思われる。一味の推定数は、20人ほど」

その言葉を聞いたとき、私は先ほどの恐怖を思い出した。その人たちは、きっと………。

私はジウさんがこれから、人を殺しに行くのだと気付いた。しかし、その衝撃よりも、もっと心を支配するものが、私の口から、ある言葉を引きずり出す。

「私を追っていた………人たち………」

無意識に零れ落ちた私の言葉は、二人に聞こえてしまった。ジウさんも、ラドさんも反応してこちらを振り向いた。

これが何を招くか分からなかった私は、自分の語った内容に後悔と不安を抱いた。これからの自分の、運命に危惧を抱いた。

そして、自分の軽い口を、少しだけ憎んだ。







あとがき



自分の小説がインターネットで見れるって、気分がいいものなんですね。初めての体験に、興奮気味の私です。

さて、最近、目標が出来ました。それは代理人様からの感想で、褒められること。そこまでひどくないとはいえ、案の定、注意(第1話)が出た以上、これを目標に掲げないわけにはいきません。無謀な挑戦なような気もしますが。

あ、それから、この第2話からはタイトルつけます。本当に、我が侭な作者ですみません。



このくだらない作品、文章力はないけど、ネタだけならいくらでも考えています。どんでん返しや、驚くような設定も準備してます。文章力も向上させるつもりです。

この作品を見て楽しんでくださった奇特な方々に感謝をしつつ、この作品を末永い目で見てくださるようにお願いいたします。







ちなみに、ユニトは謎の少女ではなく、少女です。もちろん、“普通の”はつきませんが。彼女に関するほとんどのことが、第5話あたりで語られる予定です。むしろ、“謎の”をつけるのは、ジウの方かも。



 

感想代理人プロフィール



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代理人の感想

というか、現時点では「わけのわからん奴」ですねぇ、ジウは。

行動原理が見えてこないというか、妙にやる気のない厭世的な感じも受けますし。

これについては次回以降に期待ですが、そろそろ見えてもいいかなと。

 

>謎の少女ではなく少女です

・・・?

女の子っぽい何かではなく、本当に女の子だよといいたかったのかな?