「あの………ジウさん、大丈夫ですか?」
ユニトの言葉が、何故か癇に触った。
あいつが一歩を俺に踏み出すたびに、イライラが増す。あいつに対する怒りか、
ユニトは怪訝そうに俺の表情を窺った。
「………ジウさん?」
その言葉が放たれた瞬間、俺はユニトの肩を掴んでいた。
強かったのか、ユニトは僅かに顔を顰めたが、俺にはそんなもの関係なかった。
「お前は何しに来た?」
低い声になってしまうのが自分でも分かる。だが、止めることは出来なかった。
口が勝手に言葉を紡ぐ。
「何で、ここに来た?」
俺の問いに、ユニトはきょとんとした顔で、こう呟いた。
「魔物の群れが出るって聞いたから………」
誇るでもなく、照れるでもなく、満足そうでもなく、ただ怯えるような表情を見せた。
それは“奴等”のせいか、それとも単に俺に恐怖を抱いているだけなのか………。いや、混乱してるのかもしれない。
褒められるために来たのではないだろうが、俺達、特に俺にとっては命の恩人なのだ。ユニト自身、そのつもりで来たのだろう。
ユニトが責められるような筋合いは恐らくないのだ。
だが、こいつのやろうとしたことは、決して褒められることでもない。今回、俺がある程度魔物の数を少なくした後に来ていたら、どうなっていたか分からない。
いや、ここに来たその時も、既にユニトは命が危険に晒されていたのだ。もし、あいつらがにきちんとした判断力があれば?ユニトが来た時、一番弱い者から殺そうとしたかもしれない。ユニトが“革導”を使ったとき、その危険性を恐れユニトを真っ先に殺したかもしれない。
無論、そうじゃなかったから、ユニトは助かった。
だけど………
「お前、自分が何やったか分かってるか.........」
ただでさえ、本来見せるべきでない“革導”を使った。
いくら、外すつもりだったとはいえ、ラドを殺しかけた。
何より――――こいつは、下手をしていたら死んでいた。
「でも、ジウさん言ったでしょ?私のことは“保険だ”って」
―――何かあった時、お前の“力”で守ってもらえるかもしれないって言う保険………かな?
ユニトはあの言葉に………。
例え、それが本気であったとしても、冗談であったとしても、その言葉は確実にユニトを束縛していたのだろう。
何だか、無性に悔しくなった。
手から力が抜ける。
俺が………悪かったのか………。
罪悪感が俺を責め立てる。
こいつを愚行に走らせたのは俺なんだ、と。
“一緒に来い”と誘った時、恩を返すつもりだった。罪を償うつもりだった。なのに、こいつにやったことはまるでその逆。
情けないったら、ありゃしない。
「悪い」
ただそれだけを、簡潔に述べるしか俺には出来なかった。
ユニトはかぶりを振って、その言葉を静かに否定した。
迷路のような
「なあ、ラド?」
俺は白い布を持ちながら、金髪を長く伸ばした青年に喋りかけた。
今は魔物と戦った場所から離れている。焦げ臭かったり血生臭かったりする死体の傍では、こんなことはやれない。まあ、どんな場所でもこんなことはやりたくないんだが。
「ん?」
「前に俺は言ったよな………」
「何を?」
「俺は早く大人になりたいと思ってるけど、今はまだ全然子供だって」
ラドはしばらく黙り込み、そしてこう付け加える。
「それは今も変わらないと.........。ま、自分が大人だって過信するよりましだと思うがね」
「ああ、だから、こういうことは普通、大人のお前がすべきことじゃないか?」
俺は拳をわなわなと震わせながら、静かに言い放つ。
「いや、だって、一番、今回救われたのは、調子に乗って暴れた挙句、剣を奪われ危機に陥ったとこを助けられたジウ君じゃないか」
その軽口に、また一つ額に不機嫌な皺が出来る。
あの剣を何とか引き抜いたところ、変な気持ち悪い液体が付着していた。どうもそれが、糊の役割を果たしていたらしく、剣が魔物の身体から抜けなかったのだろう。
ちなみに、付着した液体はユニトの“革導”で洗い流してもらった。
「大体、ユニトちゃんは、お前に結構懐いてるみたいだし………」
俺は溜息を思い切り吐いた。
確かにラドがこんなことをやったら、余計なことしそうだしな。女好きで、あえて何がとは言わないが、色々と経験豊富なこいつに任せたらユニトに余計な傷を与えてしまいかねない。
「………もしかして、私迷惑ですか?」
ユニトが消え入りそうな声で、俺に聞いてくる。
いや、迷惑だよ、確かに。俺の目の前にこうやって、裸の背中を見せるのは。
今、ユニトは下半身は俺の貸したズボン、そして上半身は裸。そんな状況の女の子に包帯を巻いていたのだ。
こういう状況には慣れてなくて、かなり恥ずかしい。っていうか、辛い。
ユニトも少しは恥ずかしがってくれれば、気が楽なのに………これじゃ、自分が馬鹿みたいではないか。
それでも俺は包帯を巻き続けていた。
「はあ…………」
俺は溜息をもう一度吐いた。
始まりはこうだ。
「ユニトちゃん、その怪我はどうしたんだい?」
ラドがユニトの右肩の傷に気付き、優しく声を掛けた。
俺もラドがそう言うまで、その酷い怪我に気付かなかっただろう
ユニトに背中を向けさせると、俺はその傷をじっと見つめた。出血はある程度止まっているようだが、それでも服についた染みからその怪我の酷さが分かる。
にしても、このような痛みをよく我慢できるものだ。泣き言も言わず、涙一つ見せず、しかも笑顔を浮かべてられる。俺だったら、案外、情けない泣き言をブツブツと呟き続けるかもしれない。
「ちょっと、トルを急がせるあまり、木の枝が刺さちゃって」
トルとは、ユニトが乗ってきた白い馬のことだ。ユニト曰く、“優しいおじさん”にタダで譲ってもらったらしい。何故か、俺に対して敵意を剥き出しにしてるような気がするが、気にしないでおこう。
しかし、木の枝程度でここまで酷い傷にはならない。何かがあったのを、ユニトが無理に隠そうとしているのが、見てとれた。
まあいい。話したくないなら、話さなくてもいい。
「で、“革導”で治せないのか?」
“革導”―――超常現象を起こす“道具”なら、その程度の傷もあっさり治せそうなのだが………
「そういう“技”も確かにありますけど、傷口がきちんと見えてないと………」
治せないらしい。
となると………適当に薬でも塗って、包帯でも巻くしかないか。
「仕方ない、ジウ、薬塗って包帯巻いてやれ」
ラドも同じことを考えたのか、俺にこう言った。
しかし、よくよく考えてみると………ユニトは仮にも若い女の子、薬塗って包帯巻くにしても服が邪魔……………
「ちょっと待て!さすがに、それはまずいんじゃないか!?」
確かにユニトの傷は背中の方にあるわけで、ユニトにやらせるということも無理な話な訳だが、しかし、俺も健全な男子な訳で………いや、別にユニトをどうこうする訳でもないんだが………………いやしかし……………。
迷ってる俺にラドが畳み掛けるように言う。
「え、ジウ君?こんな、健気な子をこのままにしちゃって?そういうのを無慈悲って言うんじゃない?」
ちっ。俺もユニトを危ない目にあわせたっていうしこりがあるだけに、反論が上手く出せない。
といつの間にか、ラドは俺のズボンを取り出した。
「あ、ユニトちゃん、このズボンをとりあえず穿いてな。さすがに下着一枚は過激すぎるから」
さりげなく危険なことを口走ってるが、確かに服は必要だ。ユニトのは、上半身と下半身につける服が、一つになっているので、もうあれは着れないだろう。
うん、この場合のラドの行動は正しいと思う。
「え、でも悪いですよ、そんな.........」
ユニトの遠慮してくれる態度が、正直ありがたい。
「いいのいいの、気にしない気にしない」
ラドの人をからかってくる態度が、正直恨めしい。
「じゃあ、ユニトちゃん、今来てる服の下からズボン穿いたら、その服脱いで」
「えと、じゃあ、そうさせてもらいます.........」
ラドの言葉に本当に遠慮して返事をするユニト。
「ジウ、優しく治療してやれよ」
俺はその言葉に何も言えなかった。
ユニトを誘った自分に少しだけ後悔していた。
………一生を通じて、こんなことになるのは、多分、今回限りだろうということで、俺は諦めた。今回限りになるかならないかは、今後のユニトの身の振り方によるだろうが。
俺は空を仰いで、溜息を吐いた。
―――という訳だ。
しかし、邪な欲望が俺の目の前に立ちはだかると思っていたのに対して、それほど欲望は顔を出さなかった。決してない訳ではないが、予想よりも強くない。
色々理由はあるだろうが、一番の理由は、その背中に走った無数の傷跡だろう。
火傷だの、切り傷だの、色々な理由でつけられたと思われる傷跡が、背中いっぱいに描かれているように残っている。何はされたのか、想像しただけで吐き気がする。あまりにも痛々しいそれを見たとき、俺は無意識に手を握り締めていたほどに酷かった。
包帯を巻き終わり、その傷だらけの背中からようやく目を逸らした。
恥ずかしいのもあったが、これ以上見てると無性に悲しくなってしまいそうだった。
「終わったぞ」
俺の声にユニトが振り向こうとする。
俺はその細い左肩を掴んで、それを止めた。
「感謝の言葉はいいから、早くこれ着ろ」
上半身裸のままで振り向いて欲しくないんだよ。頼むから服着てから振り向いてくれ。
ユニトが少しだけ混乱した雰囲気を見せたが、あまり気にせずに俺の差し出した服を着てくれるみたいだった。
ユニトはこれからどうする気なんだろう。
俺達と一緒に来るのだろうか?
それとも、別の道を選ぶのだろうか?
だけど、今の行動見る限りは一人にはさせられない。何というか、必死に隙を見せないようにしても、体全体で隙を見せつけてる。
どんな些細なことでも簡単に付けこまれるな。まあ、見ている限りは、人を簡単に信じる様子がないようだから、まだ救いがあるが。
………俺らしくない。ユニトに出会って何度も思ったことを、もう一度心の中で呟く。
こうやって他人のことを心配する一方で、人や何かを斬ることに喜びを覚えてるのは、偽善だな。その“偽善”と言われることを俺がしている。
やっぱり、俺らしくない。
苦いものが口の中にこみ上げてきた。
大体、恩を返し、罪を償うには、どうしたらいい?
ユニトを守り続けることか?
なら、いつまで守るつもりだ?
どっちかが、死ぬまで?
またユニトを束縛するつもりか?
それ以前にユニトはそれを望んでいるのか?
……………俺は償いを、恩返しをする為に、ユニトを誘ったが、具体的に何をするか決めていたのか?
そういうのをなんて言うんだ?
本末転倒って言うんじゃないのか?
こうなってくると、本当に自分がしたいことが分からなくなってくる。
――――元々、何かしたいと思ったことが、これといってあるわけでもないが。
「どうしたんですか、そんな難しい顔して?」
俺の苦い表情が気になったのだろう、ユニトが不安を隠さずに訪ねてきた。
俺の服はユニトには、かなり大きいようで、袖が手を覆うくらい、ブカブカだった。
その光景が懐かしくも思え、少しだけ表情が柔らかくなるのを感じた。
「別に」
俺の素っ気ない台詞も、少しだけ弾んでいるように感じられ、やはり俺らしくないと思った。
「トル、美味しい?」
私の言葉にこの白い馬は嬉しそうに目を細めたような気がする。
私の差し出した草を、口に含んで何度も噛む様子は、すごく優しい表情だった。それを見てるだけで、すごく心が弾む。
ご飯、食べたら、体も拭いてあげよう。
ちょっと脚の部分なんかは泥や砂で汚れてるし、このままだとかわいそうだし。
私はトルのことが凄く気に入った。
乗馬の経験もなく、なおかつ、ジウさん達のところへ急ぐ私が、落馬しないように気を使って走ってくれた。
勿論偶然そうなっただけかもしれないけど、この馬の様子を見てると不思議と“そうじゃない”って気がしてくる。
トルはどうなんだろう?私のこと気に入ってくれたのかな?
あのおじさんとは、かなりあっさりと別れちゃったし、もしかしたら私を恨んでるかもしれない。
やっぱり、大切にしてくれた人と離れたら、寂しいだろう。
そう思うと、ちょっと罪悪感が芽生えた。
「ゴメンね、トル.........」
トルはその言葉に顔を近づけて、撫でるように私の顔と擦り合わせた。
こそばゆい感じがしたけど、その柔らかな感触に私は安堵を覚えた。
トルはそこまで、私のことを嫌ってはいないみたいだったから、そのことを嬉しく感じたから。
私はトルの首の後ろに手を回し、ギュッとしがみついた。
その視界の先には、ジウさん達がご飯を作ってる煙が見えた。
………出来れば、肉料理は勘弁して欲しいな。
肉が出てきただけで、今まで殺してきた経験を思い出すし。
血にまみれ、異臭を放つ人間の死体など………ましてや自分の殺した人間の死体など思い出したくもない。
でも、決め手になったのはやっぱり、あれだろう。
私がまだ幽閉された時、私は確か9歳の頃だったんだっけ。
美味しく………といっても、いやいや人を殺した後で、食べた食事だったから、味が薄く感じられたけど、とにかく、肉をほおばっていた時だった。
ひとりの監視役のおじさんがこう問い掛けてきたのだ。
―――その肉、何の肉だと思う?
その人にしてみれば単なる悪戯だったんだろう。
だけど、その時の私はそれが嘘だか、真実だか見抜く手段も知力もない上に、誰も助けてくれる人間はいなかった。
何より、それが事実である可能性もひどく捨てきれないものだった。
私は、きょとんとした瞳で見返したに違いない。
―――お前が今日殺した奴等の肉なんだよ、ヒャハハハッ!!美味しかったか?
その時の私の表情はどんな感じだったのだろう?
よく“お前にも見せてやりたかったよ”と言われるような表情をしていたのだろうか?
その後、私は手にしていた食器を落とし、半ば錯乱状態に陥り、皿を投げ飛ばし、気が狂ったように叫び、いつもは暴力で押さえつけるようなおじさんたちも手が付けられないような状態になってしまった。
数分も経たない内に、“あの人”が来て私を凍らすような視線で黙らし、そのまま寝かせてくれた。
いつもなら、とんでもない罰を与えられるのに、その時限りは何の罰もなかったのが不思議だったけど、“あの人”が怖いことだけは、やはり変わらなかった。
そして、次の日から、私を錯乱状態を陥れたおじさんは見なくなった。
私をからかうような言葉を掛けてくる人間もいなくなった。
何かが、私の知らないところで、あったのだろう。
だけど、私は肉を見るだけで、固まってしまうようになった。
今はそこまで酷くないが、当時は皿を壁に投げつける時でさえあったほど、私は肉に対して異常な恐怖を抱いていた。
その後、私に与えられる皿は滅多に手に入らない魚を調理したものや、東方や南方から来た虫料理が盛られるようになった。
逆に豚、鶏、牛、羊、兎などの獣の肉は私の目の前から消え去った。
結構、酷い人生送ってるな…………私も。
この程度で、酷いなんて言ったら、もっと酷い人生送ってる人に“ふざけるな”って言われるかもしれないけど。
トルっていう信用できる友達も出来たんだし、今はもう独りじゃないんだから。
ジウさん達に関しては、それほど信用してない。
助けたいとは思った。
私も助けられたから、一度知り合った人間が死ぬのはあまりいいものではないから。
だけど、それは信じることとは別な感情だ。
特にジウさんは何やら、裏がありそうだし、私が“神の人形”だということも知っていた。私の虹色の髪は、有名みたいだから、致し方ないとはいえ、やっぱり“知られている”という事は怖い。
傭兵なんて、因果な職業をやっているのだとしたら、余計にだ。
だから、馬であるトルの方がよっぽど信用できる。
少なくとも、私を人殺しの道具に仕立て上げる可能性はない。
私もトルを移動の為の道具にする気はない。
きちんと、“友達”として一緒に歩んでいきたいと思ってる。トルの言葉は分からないし、トルも私の言葉を完全に理解することは出来ないだろうけど、それでも“友達”でいたい。
だから、一人と一匹でいい。
のんびり生きられれば、それで………。
―――でも、やっぱりこのままじゃいけない。
このまま、流されるように生きていたら、結局あの生活に戻されるか、飢え死にするかどっちかだ。
そうなったら、折角出会えた“友達”と別れることになるかもしれない。それは………嫌だ。
だったら、藁にすがってみてもいいかもしれない。
どっちにしても、危険に変わりがないとしたら、少しでも、安全性のある道を選んだ方がいい。
もしかしたら………却って、危険なのかもしれない。
“あの人”の知り合いだから、私を知っていたのかもしれない。そうであれば、あの地獄に戻る可能性だってある。
そうなったら、“革導”でも使って逃げよう。
あの町で一人でいた時、凄く寂しかった。凄く後悔した。信用ならないからって、ジウさんを拒んで、それで物凄く心細かった。不安だった。
今はトルがいるから、もういいかと思ったけど、それでも少し不安だ。自分の身を守れるのかどうか。
だから、ジウさん達と一緒に行く。
私は、ジウさん達に利用されることの恐怖より、ジウさんを積極的に利用する気持ちへと動いていた。
―――信用できないなら、信用できるまで守ってもらえ。騙されたって分かったら、その時手遅れになったとしても、必死に逃げようとすればいい。
こんな気持ちになったのは初めてだった。
開き直りに近い感情かもしれない。
「ねぇ、トル………」
トルから顔を離し、私はゆっくりと口を開いた。
「私………ジウさんに付いて行ってもいいかな?」
トルは身じろぎもしなかったけど、首を傾げたような気がした。
「勿論、トルも一緒に」
トルは今度は小さく首を下げた。
私はその反応に、満面の笑顔を見せた。
―――私、ジウさんと一緒に付いて行きたいです。
―――本当はジウさんのこと、これっぽっちも信じてないけど………。
―――それでも、付いて行っていいですか?
あいつの声は小さくて、聞き辛いものだった。
その聞き辛い声に、俺は“いい”と答えた。
ただ、ユニトの視線は、あいつの言葉通り、こちらを疑るような視線だった。いや、実際疑っているのだろう。
実際、肩も腕も震えていたし、瞳は少し宙を彷徨っていた。本当はあの時すぐにでも、逃げ出したかったのだろう。
それでも、言ってきたということは、何かしら覚悟を決めたということだろう。
話自体は調子のいい話だと思うが、今は、それでいい。
人を信じるということは、そう簡単なことではないし、この短期間に出来るものではない。
むしろ、これで“信じます”なんて言ってきた日には、本気で首を揺さぶっていたかもしれない。
でも、俺は何をすべきか迷っていた。
「ラド、今の俺をどう思う?」
トルという白い馬にもたれかかって熟睡しているユニトに、毛布を掛けながら、俺は呟いた。
………どうでもいいが、こいつ俺の事を疑ってるんだよな?なのに、何でこんな無防備な姿で寝てるんだ?異常なくらいに、隙だらけだ。
………前言撤回しておくか。こいつは人のことを疑っても、あんまり意味はない。
「前にも聞いたな、その言葉」
ラドは薄く笑っていた。
その笑みにどこか安心する。こいつは、最も頼れる大人だと―――最も信頼できる人物だと。
それを認めることは、少し悔しいが………。
「“こんな可愛い女の子を誘うなんて、大胆になったな”程度かな?」
背伸びして、からかうように言うが、きっと本音は別だろう。
まあ、それでもいい。
その本音がどんなものだとしても、こいつは俺の事を卑下したりしないだろう。信用とは少し違う、何といえばいいか………同じ臭いがするから。
何にせよ、俺は出来ることを探そう。
あの女の子に罪を償い、恩を返す為に―――――。
月の欠けたある夜。
一人の少年は未だ同じ迷路の中を。そして、一人の少女は新しい迷路の中へ飛び込もうとしていた―――。
後書き
前言撤回します。
前回の後書きで“次回で挽回”と言っていますが、出来てません。
ああ、何でしょう?ユニトのように開き直ればいいんでしょうか?
これで面白いと言ってくれる方がいらっしゃったら、その方の目の前で「ありがとう」を連呼したいです。
という訳で、こんにちは。あなたの知らない人です。
いや、更新遅れたのは、この前買った「デジモンワールドX」にハマってたからじゃありませんよ。実際、LV10で止まってるし。
攻略サイトを見ている限り、今回成熟期は出てきそうにないし、OPは、新春アニメスペシャルの使いまわしだし、どうなんでしょう?面白いことには、面白いんですが………。
というか、「フロンティア」を無視しすぎだと思うのは私だけでないはず。折角、十属性があれで確立したんだから、氷とか鋼とか出して欲しいです。大体、闇属性はあるのに、光属性がないってどこかおかしい気がします(汗)
(注)決してつまらないゲームではありませんので!!
まあ、話がかなりおかしくなったところで、退散したいと思います。それでは、ここまでお読みくださりありがとうございました。次回もお付き合い頂ければ幸いです。
ちなみにデジモンか龍騎の二次小説を書こうかなと思ってることは秘密です。ましてや、それをActionに投稿しようなどと………
代理人の感想
あーっ。もーっ。
「何をウジウジ悩んどるんじゃこんボケェッ!」
とジウを背中から蹴り飛ばしたいっ!(爆)
本当はユニトもですが、まぁ女の子だし。
ストレスたまるんだよなー、こう言う展開(笑)。
ただ、こう言う読者にストレスを与える展開(「ため」とも言えますが)が物語において許容されるのは
(異論はあるでしょうが)それを解放するカタルシスがあってのことであって、
それが上手く解放出来ないとただ鬱陶しい話がダラダラ続くだけになってしまいます。
この場合ならユニトとジウ双方が前向きになったり、
互いの間に信頼関係が成立したりするのがカタルシスになりますね。
逆に二人の関係が完全に破綻したり、どちらか(或いは双方)が死んでしまったりするのも
それはそれでカタルシスになります。
ハッピーエンドのお話も、あるいは悲劇も、こうした「ため→カタルシス」の構造があってこそ
物語として成立するわけで、それが無いと単なる鬱な文章の連なりになってしまいます。
鬱な展開を続けたり、主人公をうじうじ悩ませればいーってもんじゃないんですよ、ええ(どこか遠くを見つつ)。
>上半身と下半身につける服が、一つになっている
「つなぎ」なり「ワンピース」なり言い方はあるんじゃないかなと(苦笑)。
こう言う細かいところにも気をつけないと、意外に文章全体の足を引っ張る事があります。
後、読点のつけ方がどうもバランスが悪いような。
音読してみてはどうでしょうか。
>デジモンか龍騎の二次創作
遊戯王ライダーはともかく、デジモンは殆ど知らないんですよねー。
本当に来たときのために、近所のレンタルビデオ屋をチェックしておこうかな(笑)。