「………ジウさん?」

目を覚ました直後に見つけた顔を私は眺めた。

寝息一つ立てず、―――“人形”の私がこんなことを思うのもなんだったけど、本当に人形のように瞼を閉じて、表情を固めていた。

ふと窓の方に目をやった。ピッチリと閉められたカーテンの下から、わずかに白い光が零れ出していた。

―――………朝。

私はそのことだけ認識すると、とりあえず起きようとして、そのだるけに包まれた身体を動かした

「………あ………」

動かそうとして気付いた。ジウさんの右手が私の頭に、左手が肩に添えられていることに。

なんとなく起こしてしまいそうで、動くことが躊躇われた。

ただ、どうしてこんな状態でいるのかは全くといっていいほど、気にならなかった。考えることといえば、こうして誰かと一緒に眠ったのは、久しぶりだなと、昔のことをふと思い出すのみ。

でも、昔とは違う。ジウさんに甘えるべきなのか、それとも、ジウさんに警戒心を持つべきなのか、朝早くで上手く動かない頭でもそんなことに考えが回るほど、私は怯えてる。

その時、ドアが軋んだ音を立てて動いた。

………カツラ!!

一瞬でそのことに気付き頭を触る。大丈夫なことは確認できたけど、今度からはきちんと注意しなきゃ.........。

「ありゃ?」

どこか間抜けな声を上げて、ドアを開けたのはラドさんだった。







宿屋の食堂で、俺達は一服していた。

………いや、一服していたとは言わないな。現に、俺ラドにからかわれているし………。

「本当に何もなかったの〜?ジ・ウ・く・ん?」

くそ、油断した。ラドが起きる前に起きるつもりだったのに………。俺の醜態を見たラドは、やはりというか当然というか、ユニトを抱きながら寝てたことを話題にしている。

実際、こいつの想像してるようなことはしちゃいないが、しかし、昨日は大変だった。

ユニトが泣き止むのに時間がかかるし、喚きこそしなかったけどそれまでずっと背中撫でてやんなきゃいけなかったし………おかげでまともに眠れなかった。

当の本人はトルを預けた厩に直行してるし。まあ、いたとしても、記憶がないみたいだから意味ないけど。

ある意味、酔っ払ったラドより強敵かもしれない。

そんなことを考えている内に、横合いから給仕が食事の乗った盆を持ってきた。

十分に焼かれた牛の肉を東方の香辛料で味付けしたものだ。湯気とともに立ち上る香りが食欲をそそる。

この香辛料を産する国では、神聖な動物とされるため牛は食えない。これは大陸の東西の中心であるウィスアだからこそ食べられる料理なのだろう。

俺はその料理をフォークで刺しナイフで切りながら、少しばかし遅い食事を始めた。

「なぁなぁ、ジウ〜」

しかし、こいつはやかましいな。一発殴れば、少しは静かになるだろうか?

思いついた瞬間、俺の拳が、といってもかなり手加減されているが、とにかくラドに向かって飛んだ。

「悪かった悪かった。そんなに怒るなってば」

チッ。この程度じゃ、やっぱり止められるか。

俺は苛立ちを隠すように、フォークに刺した肉を口に放り込んだ。辛すぎないその味が、多少寝ぼけていた頭を適度に目覚めさせる。悪くない。

「なあ、でも、本当に昨日何があったんだ?」

お前がどんなに真面目な表情をしても、からかい目的ってのはわかるよ.........。まあ、理由は適当に誤魔化して、昨日あった事実のみを言っておくか。

正直、理由を何も分かってない訳でもない。むしろ逆だ。

昨夜、錯乱してたユニトはポツリポツリと断片的だが、きちんと何をされたのかを語った。今、まとめてみても、本当に俺の予想通りだったってのは驚きだが、とにかく具体的な情報はまとまっている。そこから推測できる理由も。

“奴等”はユニとの食事に、薬………麻薬を盛り、それを食べさせ続けた。恐らく盛ったのは、ほんの少量だろう。そして与える食事自体を、数度に渡り断った。

単純な食欲と麻薬が欲しいと思う欲求。ユニトにとっての苦痛と欲求は、どうしようもないほどのものだったに違いない。

そうやって釣り上げて、ユニトを利用したのだろう。

しかし、無茶をする。どれだけ少量だろうと、毒は毒だ。しかも、例え“奴等”にとっては“道具”だとしても、大切に扱うべきものを自ら傷付けるような真似をするとは………。

それとも想像できなかったのだろうか?あいつがどうなってしまうかということを.........。

ユニトがある時高熱を出した時にやめたそうだが、それでも、今、ああして生きて動けるのは奇跡に近い。

何歳頃から何歳頃まで、飲まされていたのか知らないが、どちらにしても成長しきっていないはずのあいつにとっては、いつ死に繋がってもおかしくないはずだ。

そう考えると、あいつが不幸なのか強運なのか、よく分からなくなる。

だが、それでも右目を失った。右手、右腕に関しては、時々、痺れたり、動かなくなったり、怪我をしていないのに痛みが走ったり、逆に怪我をしてるのに全然痛まなかったりする程度のものらしいが、それでも若干不自由なことには変わりがない。

いや………もしかすると、そっちが本当の狙いかもしれない。あいつを生かさず殺さず、自分達の思い通りになるように適度に壊す。もし身体の方ではなく、精神の方が壊れていたならば、それこそ“人形”の出来上がりって訳か………。足を壊しても十分、人形になりえる。

可能性は低くない。危険の伴う手ではあるが、悪くないだろう。

しかし、何故そこまでユニトにこだわる?“Bag”は数が少ないとはいえ、決していないはずはない。ユニトが“革導”の天才だとしても、一人に時間を掛ける意味が分からない。

「おい、ジウ?」

ラドの声が俺を現実に引き戻した。

「ん、ああ?」

「どうしたんだ?そんな難しい顔して」

今更だが、ラドにはユニトの虹色の髪のこと、つまりユニトが“神の人形”であるということは話していない。

ラドの事だからユニトを奴隷商人に売り渡すとか、ユニトを追い出そうとか、そういうことはしないだろうが………それでも揉め事は出来るだけ避けたい。

俺は肉の最後の一切れを飲み込み、銀色に走るフォークとナイフを皿の上に置いた。

こんなことを考えてる俺って、やっぱり偽善者か.........。いや、例え、偽善者に成り果てようとも、罪の償いはしなきゃならない。

それに上手く行けば“仇打ち”が出来るかもしれない。

本当はこういうことこそ相談したいんだが、とチラリとラドの表情に目をやった。―――って、おい?何をニヤついている?

俺は目の前で横を向きながら、俺にはニヤけているようにしか思えないが、女性には端麗に見えるらしいその笑みを浮かべた男の視線を追った。

その先にはにこやかな笑みをもって近付いてくる女の姿があった。服装から察するにここの給仕か。美人………なのかな。

まあ、何にしても俺の言いたい事はただ一つ。………頼むから、ラドをこれ以上天狗にしないでくれ。

俺達に近寄ってきた、その女が声を掛けた。

「………あの、すみません」

って、俺!?さっきまで、ラドのほうを見てたもんだと思ったんだが、何でだ?

「傭兵の方ですよね?」

剣を見て分かったのだろう。

だけど、女の真意が掴めない。それに妙な殺意が女の目に纏わりついてて、気持ちが悪い。

ラドをと視線を合わせたが、あいつも状況がよく分からないらしい。

「ああ、そうだが」

俺は警戒しながら、簡潔に答えた。女は俺の警戒の様子など意にも介さず、わざとらしく手を合わせ、微笑んだ。

その笑みでさえ、吐き気のするほど気持ち悪いものだった。

「じゃあ、色々な場所へもいってるんですよね」

傭兵というのは、どこかに腰を据えられるような仕事じゃない。俺なんかはウィスア中を回ってるし、メルクなどに行って仕事をしたことはある。

この女はつまり、旅話を聞かせろと言っているのだろう。野や森などには盗賊や魔物が山ほどいるし、そうでなくても馬やら食料やらで気を使う。そうそう、町などから出るのは難しい。だから、自分の知らないことを知りたいと思うのだろう。
と、普通なら考える。

「本当何が聞きたい?」

俺は女の質問に答えず、逆に追及した。

すると女は困った顔をしながら、俺を見つめた。

「………旅してる風に見える人間に会うのは決して少なくないですけど、あなたのような格好いい人に出会うのは滅多にないから」

そう来たか。確かにそんなことを言われて嬉しくない奴はいないだろうが、俺は生憎とそういう言葉は苦手でね。

それに、大体の………予想はついた

「世辞を言っても出せる物は何もないぞ」

「そんな世辞なんかじゃ………」

「その割には俺の顔を見てないようだけど」

女が一瞬反応した。やはり………な。

もう話すこともない。面倒………というよりも無意味だ。

「そんなにこの右手が目障りなら、荷物まとめて消える準備しますが?」

ラドもやはり気付いたのだろう、俺の突きつけた言葉に便乗するように、追い討ちをかけた。

「何なら、俺が相手しますけど?こう見えても、彼と一緒に2年間旅してきましたし、女性の扱いも彼より数段上だと自負しております」

女がラドの底の見えない笑みに、少しずつ引いていく。

「俺は彼と違って、“普通の人間”ですから」

俺へのあてつけではなく、女への皮肉として言葉を放った。顔は笑っているが、目には殺気なんてものを越えた何かを宿している。

女は恐ろしくなったのか、その場を何の挨拶もなしにそそくさと逃げ去っていった。

すっかり冷めた雰囲気の中で俺だけが口を開いた。

「ラド」

「ん?」

俺は目に光を宿し、殺意を口にする。

「ちょっと今日は別行動をとることにする。ユニトをよろしく」

「ああ、分かった」

これでいい、偽善者よりも俺はこっちの方が性に合ってる。そう思った。






私は鼻歌交じりに濡れた手拭で、トルの背中を拭いていた。

トルはやっぱり全然元気で、目もキラキラしてる。なんか今にもどこかへ向けて、走っていきそうだ。

それに引き換え、私ときたら、昨日は全く歩いてもいないのに、足や肩は痛むし、頭はまだ寝ぼけてるみたいだし、本当に体力のない。

ま、いいか。

今日、久々に誰かに抱きしめてもらえたということもあって、少々上機嫌だった。甘いかもしれなかったけど、今の私にそんな言葉がでる様子もない。

そういえば、とどうでもいい疑問が浮かんだ。思わず口に出す。

「ねぇねぇ、トルってオスなのメスなの?」

トルに顔を近づけながら、聞いたけど返事はない。あっても、理解できないだろけど。

「その子はメスだよ」

声のした方を見ると、この厩のご主人さんがいた。微笑みながら、こちらに近付いてくる。

「しかし若い………それも女の子だというのに、手馴れているね」

「そうですか?ありがとうございます」

私は頭を下げながら喜びを表に出した。

「一昨日、ジウさんにやり方を教わったばかりで………下手だと思ってたんでですけど」

「ほう。その割にはサマになっていたよ」

私はエヘへとだらしない笑みを浮かべた。

「馬とどれだけ親密になれるかが、君の心遣い次第だからね。まあ、これからも大切にしてやりなさい」

「はい」

私は思い切り笑った。

「ああ、それとお嬢さん」

「はい?」

ご主人さんは優しげにゆっくりとこう言った。

「あまりを無理をしすぎても、いいこともはないからね。余裕を持つことも時には大切だよ」

「はあ.........」

赤の他人から見えるほど、私って余裕がないのかなぁ?確かに色々酷い目にあってきたけど、今は至って普通に生きてるつもりなのに。

―――あ。

私の目にこの厩の外で話し合ってるジウさんとラドさんの姿が映った。

「お嬢ちゃんの連れが来たようだしね、私はこの辺でおいとまするよ」

「あ、はい」

いなくならなくたって別にいいのに………。

なんか、二人とも機嫌悪そうに見えるから、誰かもう一人ぐらいいたほうが私としては嬉しいのに。

何を話してるんだろう?表情も険しくなってるし………もの凄く不安になってきた。

―――って、あれ?何でジウさん行っちゃうの?

ジウさんは話が終わったのか、ラドさんから離れてどこかへ行ってしまった。てっきり、こっちに来るもんだと思ってたのに。

何かが私の心をくすぐった。好奇心ではないけど、それ似ている感じ。

トルの身体のお掃除はもう終わったし、ついて行ってもいいかな?

それに敵を知り、己を知れば………えーと、何だっけ?面倒臭いから負けることがないって偉い人の言葉もあるし。味方なら味方で、きちんと情報はしっておかないと。

動き出す足が自然と、忍び足になる。

ジウさんの事だから、すぐにバレちゃうかもしれないけど、バレたらバレたでいいや。別に後ろから不意打ちしようってつもりじゃないし。

迷いもなく、どんどん私の忍び足は前進する。………と次の瞬間―――

「ほわっ!?」

喉が閉められて、苦しい。ほんの一瞬のことだったけど、私はむせ返って何度も咳をした。

「ああ、ゴメンゴメン。まさかそこまで、苦しめるとは思わなくて。大丈夫、ユニトちゃん?」

「コホッ。―――だからって、服の襟を後ろから掴まないで下さいよ」

喉を押さえながら、私はその犯人に恨みを込めて睨みつけた。ラドさんはそれを流しつつ、軽口を放つ。

「おお、明るくなったんじゃない、ユニトちゃん?」

ラドさんもさっきの険しい表情が嘘のようだけど。

「一応……ですけど」

私は頬を膨らましながら、答えた。ついでに気になったことを尋ねる。

「ところでジウさんは何処へ行ったんですか?」

ラドさんはにやりと笑って、はぐらかすように行った。

「ユニトちゃんみたいな可愛い女の子が行ったら危ないトコ。だから、さっき止めたの」

それって、首を締めた事への言い訳なのかな?だとしても、言い訳にすらなっていないのは、私の気のせいじゃないと思う。

………でも、さっきまで二人とも機嫌が悪そうだった。それが気になる。ラドさんも笑っているけど、それが嘘だとすぐに分かる笑い方はやめて欲しい。

「………また殺しに行ったんですか…人を?」

思わずその惨状を思い浮かべて、ちょっと嫌な気分になった。でも、その想像って私の記憶なんだよね。本当に嫌になる。

「傭兵の仕事は受けてないよ」

「じゃ、何でさっきあんなに、難しい顔してたんですか?」

私の質問を無視して、ラドさんはトルの頭を撫でつけた。

その仕草に私は何故だか悲しくなった。自分があまりにもバカみたいだからだろうか?

「昨日は大変だったらしいよ、ジウのやつ」

突然すり替えられた話に、私は反らしかけてた顔を振り向けた。

「酔い潰れてた俺を宿に運んだと思って部屋に帰ったら、今度はユニトちゃんが何故かは知らないけれど、苦しそうにしてたって………収まるまでずっと背中撫でてたんだってさ」

だから、今朝起きた時、ジウさんが抱きしめてくれてたんだ。

それに、“アレ”のことも知られちゃったんだ。なんか、私、ジウさんにいっぱい秘密握られてる............。

「あいつは暖かい奴じゃないかもしれないけど、決して冷たい奴でもないよ」

でも、本当だったら、眠れずに朝まで苦しむのに、そうならなかったのってジウさんのおかげ?

「だから少しは、信じてあげな」

信じろと言われても………。

「ま、ユニトちゃんは素直だから、とっくに信じちゃってるかもしれないけど」

……私は複雑な気持ちでその言葉を聞いた。

だけど、そうそう簡単に人を信じられない。今までずっと騙されてきた。隠されてきた。酷い目に遭い続けてきた。

「じゃあ、飲みに行くかー!!」

ラドさんの明るい言葉が、私の暗い思考を終わらせた。

「私は絶対飲みませんし、こんな昼間からラドさんに飲ませたりもしませんよ」

「ありゃ、手厳しい」

「ジウさんに気をつけろって教わりましたから」

「あいつめ………」

恨めしそうな言葉とは裏腹に、ラドさんはトルから手を離すと、揚々とした足取りで厩の出口に向かう。…………絶対に飲ませないんだから。

私もラドさんに続いて厩の出口に向かった。その時、ラドさんの足がピタリと止まった。

「一応、教えておこうかな………ジウにも許可貰ってるし」




俺は森へ来ていた。

コートを脱ぎ捨て息を吸う。今の俺には気持ちいい空気とは言い難い。

木々の葉の緑が心なしか暗い色をしていた。雲の影が濃いわけでもないのに、その色は不安を湛えていた。

………全く、相手は素人だ。緊張することもなかろうに。

「さてと.........」

俺は後ろを振り向いた。

「なあ。折角人目につかないところで待ってるんだ。そろそろ出て来いよ」

気配が動揺した。丸分かりもいいところだ。向こうさんはまだ隠れようとしてるが………ね。

「それとも怖い、俺が?ああ、もしかして、この右手?」

俺はわざとらしく、挑発するように右手をかざした。

人をなめ切る態度に、気配がわずかに動きを見せたが、それでも隠さない。

俺は仕方なしに投擲用のナイフを手にして、無造作に投げつけた。

鋭い音が木々の間の風を切り、乾いた音を立て、木に突き刺さる。

その木の後ろにいた気配が、今度は大きく動揺する。それでも顔を出そうとはしない。

「なんなら、俺がそっちへ行こうか?もう、まどろこっしいのはやめておきたい」

その言葉で逡巡にケリをつけたのか、その気配はようやく俺の目の前に現われた。

「危ないじゃありませんか、いきなりナイフを投げつけるなんて」

「ボウガンをこちらに向けて言われてもな、説得力がないんだが」

やはり、先程の食堂で俺を誘ったあの女だ。手には何処で手に入れたのか、ボウガンを持っている。

そして、その目は殺意でぎらついている。

「しかし、あんたも相当暇だな。こんなところまでつけてくるなんて」

俺は呆れたように言った。

実際、ここに来るまでかなり距離を置いて近付いてきた慎重さは、正直褒めてやりたい。

「あら、じゃあ、あなたがここに来たのは、私を誘い出すためではないのですか?」

「いや、森林浴のつもりだったんだがね」

さっきと言っていることが全く違うが気にしない。

何を思ったのか、女はボウガンを降ろした。

「あなたの本来の右手を見せてくださいますか?」

「嫌だね。本当に見たいと思うのなら、俺を殺してから見ればいい。殺されるつもりは毛頭ないが………ね」

これは、例えこの右手を見たことのあるラドだとしても、見せるつもりはない。見せてしまうのは、俺にとって苦痛だ。

俺は、剣を抜き放ち、更なる追い討ちをかける。

「それに、間違って“普通の人間”を殺すのが嫌なら、最初からしなければいい」

「なら、姉さんの仇として…………」

………理不尽だな。俺の中で憎悪と殺意が沸き立つ。………そして、同時に破壊欲も心の中に満ちてくる。

「あなたを殺す!」

知るか、そんなこと…………俺が知るかよ。




「あいつの右手にはな、入れ墨がしてあるんだよ。何故か知らないけど、生まれたときから」

ラドさんが重々しく口を開いて、出た言葉は断片的な情報だった。ただ、生まれたときから、入れ墨している人間なんて聞いたこともなかったけど。

「入れ墨ですか?」

私はもう一度聞き返した。思い当たる節も、該当する知識もないのに私は何故だか不安になった。

「そう、蛇が人の口を囲み、その口の中に目が描かれた入れ墨」

ラドさんは苦い顔をしながら、簡潔に言う。

でも私はその言葉が何を示しているのか分からなかった。その入れ墨が何だというのだろう?なにか、その入れ墨をしてるとまずいことでもあるのだろうか?

私が不思議な顔をしてるのに気付いたラドさんが驚いたように目を開いた。

「まさか知らないの?“悪魔の仔”のことを?」

“悪魔の仔”―――その禍々しい響きが私の胸の中で不安を伴って響いた。





後書き

ども、こんにちは。ダメ作家街道爆進中、信号無視や違法駐車は日常茶飯事、人を跳ねようが他の車にぶつかろうが気にしない、そんな高校2年のあなたの知らない人です。
さて、ここはナデシコ2次小説投稿がメインのサイトなんで、きっと皆様方はもう答えを出してるんだろうなと、下の台詞を持ち出してみます。
「ある日突然・・・自分にはどうにもできない巨大で理不尽な暴力によって・・・・・・自分の守るべき妻と子が奪われたら・・・お前は男としてどうする!?黙っていられるのか!?一人前の男として・・・オスとして・・・どういう行動を取る!?」
この台詞は『国境を掛ける医師イコマ』2巻に出てきた台詞です。出たのは確か11月頃だったんですけど、買ったのは2月の終盤だったり(笑)。ちなみに3巻まで出てます。今、ヤングジャンプで掲載してます。
え、私?“1人前”の男であると言うことが前提なんで、私ごときが答えなんて出せる訳ないですよ(爆)
いや、でも、3巻の地雷の話は結構勉強になりました。興味が沸いた人は、是非読んで私と一緒に感動を共有しましょう。
では、ここまでお読みくださり、どうもありがとうございました。次回もお付き合いくだされば幸いです。

 

 

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代理人の感想

引きましたね。

ユニトの過去がある程度明かされたところで今度はジウな訳ですが・・・

やっぱり、こっちも負けず劣らずで血生臭いものになりそうですねぇ。南無。