<剣士がささげる花束は・・・> 最終話 花束 1.我、心のままに・・・ お互いに死力を尽くした戦いは、実に1時間に及んだ。 既に辺りの大地は、二人の血と雪で白と赤に染まっている。 もう、これ以上の戦いは危険だ。 しかし、誰にもこの戦いを、止める権利が無かった・・・ そう・・・当事者を除けば誰にも。 そして、運命の時が訪れる・・・ 「何!!」 ズルッ!! 幾ら本人達が注意しようと、地面が最悪な事に変わりは無い。 泥に足を取られ、肩膝を付くデリス!! 今のガウリイに、その隙は致命的だ!! その隙を逃さず、ガウリイの剣閃がデリスの首元に伸びる!! 「駄目!! ガウリイ!! その人を殺しちゃいけない!!」 大観衆の声援の中で、聞こえる筈の無い制止の声を、あたしは張り上げた!! はあはあはあ・・・ 荒い息の中、俺はデリスを正面から見つめていた。 そのデリスは、不思議そうな目で俺を見ている。 そして、その身体をゆっくりと大地から身体を起こす・・・ 「・・・何故、あのチャンスを逃した。 それに、相手に止めを刺さずに、どうやって正気に戻れたんだ。」 心から不思議そうに、俺に尋ねるデリス。 ・・・俺にも解らん、ただ自分の闇に捕われ。 その闇の中でもがいていた時、不意に視界にあの少女の顔がうかんだ。 そう、俺にとって誰よりも大切な。 かけがいのない存在・・・ そして、自分の意識がもどった瞬間に・・・ 目前にある、デリスに向かって走る刃を引いた。 後、1秒覚醒が遅ければ・・・デリスは死んでいた、いや俺が殺していただろう。 「俺には、幸運の女神が付いてるからな。 その女神に叱られてね。」 笑いながらデリスに話しかける。 「・・・ならば、何故止めを刺さなかった。 俺の望みを、貴様は知っている筈だ・・・」 デリスは、哀願するかの様な目で俺を見る。 「もういいだろう・・・俺を楽にしてくれ。 貴方にしか、それは出来ない事だ・・・」 口調さえ変わり、俺に懇願するデリス・・・ 「・・・デール、確かにお前を楽にする事は簡単だ。 だが、その後に残されるソアラとエレナはどうする? これ以上俺に、罪を重ねさせるつもりか? それに、俺はもう人殺しに戻るつもりは無い。」 俺の呟きを聞き、デールが顔を上げ俺に問いただす。 「・・・俺が憎くないのですか。 貴方がこの街を出て行った原因も、突き詰めれば俺が・・・」 「もういい事だ、デール・・・」 俺は、首を降ってデールの告白を止める。 「デール、あの時はお互いに相手を、大切にしすぎた・・・ そう、傷つけるのを恐れたんだ、お互いにな。 いや自分が傷つくのが、怖かったのかもしれない。」 俺はあの頃を思い出しながらそう呟く。 「なあデール、過去には戻れ無いんだ。 なら前に進むしか無いじゃないか。 お前は俺に殺される事が、贖罪だと言う。 なら、お前を殺した俺は、何を贖罪にすればいい?」 お互いに睨み合いながら、話しは続いた。 そしてデールがまた、剣を構える。 「・・・強く、なられましたね。 俺は自分を傷つける事しか、贖罪にできなかった。 でも、貴方はそれすら包み込む強さを、手に入れられた・・・ 何が、貴方をそこまで変えたのですか?」 俺は、剣を下に垂らし。 自然体の構えを取りながら・・・微笑んで答える。 「さっき言っただろ。 俺には幸運の女神がいるって。」 ・・・デールが微笑みながら、剣を繰り出す。 その一撃をすり抜ける様に、俺の一撃が下方から打ち出される。 そして・・・ 「トムは執念を、クリスは誇りを、ラバールは意地を貴方に刻みました。 俺は・・・貴方に何を刻みましたか。」 俺の背後から、デールが声を掛ける。 「デール、君は贖罪の終わりと、新たな絆を俺に刻んだよ。」 その言葉聞き、この闘技場に現れてから。 初めての、心からの微笑みを浮かべながら、デールは倒れた。 そして、俺は幸運の女神の方を向き、勝利の凱歌を送る。 「勝者!! 『ソードマスター』ガウリイ=ガブリエフ!! 第50回トライム剣戟祭の優勝者は、『ソードマスター』です!!」 その言葉を聞きながら、俺の目はリナだけに注がれていた・・・ 2.礼の言葉を送る人は・・・ 「ここに、俺の恩人達が眠っている・・・ リナに一緒に、来て欲しかったんだ。」 カールさんがあたしを止めた丘・・・ その丘に、あたしはカールさんの言葉どおり、ガウリイと訪れていた。 二つの墓標を前にして、ガウリイがあたしに話しかける。 「・・・この大きい墓標が、前領主イアン=トライム様ね。 そして、この墓標が・・・ダラス=エラールさん、デリスのお父さんの墓ね。」 あたしがそう答える。 「ああ、この二人がいなければ、俺はここにいなかった。 そして、リナに出会う事もなく。 何処かの戦場で、朽ち果てていただろう・・・」 ガウリイの台詞を聞きながら。 あの日、ソアラさんがあたしに告白した事を思い出す。 「私は、幼少の頃からデールに惹かれていました。 それは確かです、そしてガウリイ様には、憧れを抱いてしまいました。 そんな、私の気持ちをデールは、敏感に感じ取ってしまった。」 人は、自分が好意を持つ人の変化には、敏感になる物だ・・・ それは、デールもまたソアラさんに、好意を持っていたという証拠だろう。 「そして、あの日私は他の貴族の女性に、デールとの交際を告げられました。 信じられずに、デールに尋ねてみると彼は、その事を肯定したのです。」 ・・・ソアラさんを忘れる為の嘘。 そして、ソアラさんにはそれが見抜けなかった・・・ 「私は・・・愚かな選択に出ました。 あの時、私がデールを信じられれば。 自分の気持ちを正直に、デールに伝えておけば・・・ 結局、私はデール信じる事も、自分が傷つく事にも逃げてしまいました。 そう、私は最後にガウリイ様に逃げていったのです。」 涙を流しながら、自分の愚かさと弱さを告白するソアラさん。 恋は盲目・・・ソアラさんはきっと普段は、毅然とした貴婦人なのだろうに。 あのガウリイが、好意を抱くほどの女性なのだから・・・ 罪の告白は続く。 「私が自分の選択の愚かさを知り・・・ 兄とダラスに相談しました。 その時兄は、普段見せないほどの悲しみの表情をし・・・ ダラスは決意の表情で、自分に任せて下さいと言いました。 私は・・・ダラスと兄に頼るしか、術を知りませんでした。」 そして、あの悲劇が起こった・・・という訳か。 「剣戟祭決勝で、ダラスは自分の命と引換えに、ガウリイ様の罪を消しました。 私の気持ちを知ったガウリイ様が、私と結ばれる事を望む筈は無く。 また、その事が解っているからこそ、兄とダラスは・・・」 そう、領主の妹を傷物にし。 責任も取らず、ただ立ち去る事など・・・領主として許す訳にはいかない・・・ しかしガウリイの気性上、ソアラさんと添い遂げる事など無いだろう。 ガウリイは・・・そういう人だ、昔も今も。 そして、去って行くガウリイを止めれ無いのなら。 英雄を理由もなく、追放には出来ない。 その為の人柱が、デリスの父ダラス=エラールだったのだ・・・ 皮肉な話しだ、デリスの勘違いから始まり。 ソアラさんの、自分の弱さに繋がり。 ガウリイの未熟さに行き付き。 最後はデリスの父、ダラス=エラールの命によって物語は終わった・・・ ダラスさんはイアン様を守れなかった罪を、これで返したつもりなのだろう。 しかし、残された者達には・・・深い心の傷を残した。 その上、まだ悲劇は終わらなかった。 「私とデールは、お互いの気持ちを確かめ合い。 遂に結ばれました、兄のとりなしの元で・・・ その時には、デールもかなり落ち着いてきていました。 それまでは、狂った様に剣術を磨く剣鬼と化していたのです。 それに、エレナを懐妊した事を知って、昔の優しい彼に戻りつつありました。 でも、ダラスの机から一枚の書類を見付けた時・・・ 彼の全ては崩壊しました。 その書類には、自分のこれからの行動の是非を、兄に許可を求める書類の写しでした。」 そう重要な書類には、複数の写しなどを作成し紛失に備える。 たまたま、その内の一枚をデリスは、発見してしまったのか・・・ 「そして、デールの詰問に兄は・・・全ての事を話しました。 もう、デールも家庭を持つ身。 きっと冷静な判断を下す。 と、信じて・・・」 だが、デリスは現実に耐えられなかった。 自分が巻き起こした罪を、父の命で解決していたとは。 何も知らず、ただガウリイを憎むのみだった自分に・・・ デリスは耐えられず、自分を贖罪の旅に駆り立てた。 生まれたばかりのエレナを残し、ガウリイを探して戦場を渡り歩く。 始めはガウリイに、罪を償いたかったのだろう・・・ しかし、地獄の戦場を渡り歩き。 その狂気に当てられ、全ての罪の元凶をガウリイにあてた。 弱い自分が戦場で生き抜く為には、憎しみの力が必要だったのだろう。 「5年ぶりに帰ってきたデールは・・・ 身も心も別人の様でした。 ただ一度眠るエレナを見て、目を細めた時だけ・・・昔の彼と姿が重なっただけ。 そして、全ての罪はガウリイ様との決着で終わると。 そう言い残し、私達の前から消えていきました。」 これが今回の騒動の、全てのあらまし・・・ ガウリイは自分の罪というが・・・ 昔からとことんお人好しなんだ、この人は。 「ねえガウリイ。 どうしてあの時デリスへの、止めの一撃を止める事が出来たの? ガウリイは完全に、暴走モードだったじゃないの。」 含み笑いをしながら、ガウリイび問いかける。 「ん? ああ、リナの声が聞こえたからな。 それで、正気に戻ったんだよ。」 ガウリイも笑って答える。 「聞こえたって? あんた、あの大歓声の中で、あたしの声が聞こえたって言うの?」 もう人間やめたのか? ガウリイ。 「さあな〜、聞こえた気がしたのか・・・実際に聞こえたかは解らんさ。 でも、リナは俺を止める為に、声を掛けてくれたんだろ?」 うっ。確かにそうだけど・・・ 「有難なリナ・・・俺もデールも、ソアラやエレナ、そしてカールも皆感謝してる。」 か、感謝って(汗) 何したっけあたし・・・ 「リナは知らんだろうが・・・ 昔の俺なら、デールを含む対戦者全員を殺していたかもしれん。 その俺を変えたのは、リナお前だと皆が知っている。 だから、ソアラも俺達の過去を、お前さんに話したんだろう。」 き、気付いてたのね・・・ 「よ、よくわかたわね。 普段はクラゲのくせに・・・」 でも、自然とあたしの顔には微笑みが浮かぶ。 もう、ガウリイの贖罪は終わった。 これから、彼は自由なのだから。 「やっぱり、今回の一番の功労者はリナかな。 だからその報告をイアン様と、ダラスさんにしたかった・・・ このリナが、最後の仕上げをしてくれたってね。」 急に真面目な口調になるガウリイ。 そして何かを考え込み、黙り込む・・・ 「ガ、ガウリイどうしたのよ急に?」 「・・・リナ、今日のパーティが楽しみだな!!」 そんな事を考えとったんかい!! まあいいか・・・ 「そうね!! お腹一杯食べてやるんだから!!」 「そうだな!! それ位してもらっても、罰は当たらんだろう!!」 「うっし!! そんじゃ帰ろうか? パーティの準備もあるし。」 「そうしよう、一応俺は主役だからな。」 「ふふふん、何時も遅刻ばかりのくせに。」 お互いにふざけつつ、丘を下っていく。 ふと隣のガウリイが足を止め、もう一度丘の上の墓標を振り返る。 「どうしたの? ガウリイ。」 「ああ、最後のお別れの挨拶をな・・・ もう、ここに俺が来る事はないだろうからな。」 「・・・そうね、ガウリイがこの街で出来る事はもう終わり。 後は、残った人達にまかせましょう。」 「これからが大変だな、カールやデール達も・・・」 「でも、少なくとも一人で戦う事はもうないわ。」 「・・・ああ、そうだな。」 そう言葉を呟きながら、もうガウリイは後ろを振り返る事無く丘を降りて行った。 3.君に贈る花束は 会場前も凄い人数で賑わっていた。 俺も正装に着替えていた。 黒を基調としたタキシードに、金糸の模様が所々施されている。 これはトライムの剣士隊の正装でもある。 (懐かしいな、これをまた着る日がくるとはな・・・) 昔を少し思い出しながら、会場に足を踏み入れる。 会場には華やかな音楽が流れ、俺は目当ての人物を探す。 彼女は相変らずだった。 食事のテーブルの前から、動く気はさらさらないのだろう。 まあ、その方が安心できていいのだが・・・ リナは気が付いてない、周りの男達の視線を独占している事に。 彼女の瞳に合わせた様な、真紅のドレス。 必要最低限ながら、微妙なアクセントを醸し出しているアクセサリー。 そして、一度見れば忘れられない炎の瞳。 リナは、間違い無くこのパーティの主役の一人だった。 そんなリナの側に、いち早く掛け付けたいのだが・・・ 「『ソードマスター』カール様がお待ちです。」 無粋な邪魔者が、俺の行く手を阻む。 「わかっているよ、直ぐいく。」 ふう、仕掛けは最後のお楽しみとするか・・・ そして、俺はカール達に挨拶をする為にその場を移動した。 ガウリイが現れた瞬間・・・会場内が一瞬静寂に包まれた。 それ程正装をしたガウリイは、凛々しく格好良かった。 普段見なれているあたしも、一瞬見とれてしまった。 そんなガウリイが、あたしを探しているとは知らず。 あたしはひたすら、自分の食欲を満たしていた(笑)。 それに食べている間は、うざったい貴族の男も寄ってこないし。 そんなこんなで、ふと横を見ると・・・ 「何であんた達がここにいる訳?」 そこには、トムとクリスそしてラバールの三人がいた。 「いや、あのガウリイがご執心の女性が、どんな人かと気になってな。」 とトム。 「なかなかの、美人だな。 少し線が細いと思うが。」 ・・・誉めてるの、かな? ラバールの口調では判別できない・・・ 「なかなかお美しい、貴婦人ではないですか。 宜しければ、お名前をお聞きしたいのですが・・・」 クリスの質問にあたしが答えようとすると。 「彼女の名前はリナ=インバース。 ガウリイ様の旅の相棒ですわ。」 ・・・ソアラさんとエレナがあたしの後ろにいた。 そして、前の三人からは過剰な反応が帰ってくる。 「何!! あのリナ=インバースなのか!!」 「まさか!! こんな女性があの・・・」 「信じられん、噂とは余りにかけ離れすぎている。」 ・・・どんな噂を聞いてるんだ、あんた達。 「信じられなくても、そいつの名前はリナ=インバースだよ。」 そして笑いながら、カールさんとデリスと共にガウリイが現れる。 「よう、お互い無事にこの日を迎えられたな。」 俺は三人に軽く話しかける。 「ああ、いい加減回り道にも疲れたぜ。 もっと早く帰ってこいよな。」 「まあ、もうそろそろ家督を継ぐ準備が、始まりますからね。 ぎりぎりのタイミングでしたよ。」 「俺も、今が自分の強さのピークだろう・・・ これから先は、自分の体力の低下と戦わないとな。」 どうやら三人共、自分なりの決着を付けたようだ。 ところでっと・・・ 「お前等リナをからかうとは、命知らずだな。 こいつは俺より確実強いぞ。」 その言葉に顔を青くする三人。 そして・・・ 「言うに事欠いてそれかい!!」 俺の後頭部に、リナの突っ込みが決まる。 「・・・おい、ガウリイに突っ込み入れてるぞ。」 「噂は案外本物かもしれん・・・」 「まさに、天下無敵の呪文馬鹿とは・・・」 リナの一瞥に、黙り込む三人。 「あんた達・・・実は仲が良かったのね。 四人そろって、夜空の星になってみる(はぁと)」 俺達は首をそろえて、左右に振る。 「ふん!! それなら始めから、喧嘩売るんじゃないわよ!!」 そう言って、また食事に専念する。 その姿を、目を細めて見ていると・・・ 「ガウリイ・・・今回はご苦労様だったな。 しかし、お前を変えた人物が、あのリナ=インバースとはな。」 カールが話しかけてきた。 「ああ、リナと出会って俺は色々勉強させられたよ。 だからこの先も、あいつに付き合うつもりだ。」 だからここには残れない。 先程の誘いを、暗に断る。 「・・・そうか、まあ俺達にはお前さん達を、止める権利はないからな。」 苦笑をしながら、カールが答える。 悪いな・・・だが、これだけは譲れ無いんだ。 「ガウリイ、残ってはくれないのは解った。 しかし、忘れないで欲しい。 俺達はいつまでも、お前を大切な友人だと思っている。」 ・・・何よりも嬉しい言葉だ。 「ああ、解っているさ。 この土地は俺にとって第二の故郷なのだからな。」 俺の言葉にカールが微笑んだ。 あたしの目の前では、カールさんとガウリイが談笑している。 そして、その隣ではデリスやトム達が、何やら盛り上がっている。 ふと。上座のほうを振り向くと・・・ そこにはガウリイのシンボル、黄金の獅子像が飾られたトロフィーがある。 その獅子像が誇らしげに見えるのは、目の錯覚かもしれない。 これから先の事は誰にも解らない。 だけども、今は少なくとも過去に縛られる人は、もういない。 ガウリイやデリス達が、過去を乗り越える為に払った代償は、決して軽くない。 しかし、この代償が無ければ彼等は、先に進めなかった・・・ 「・・・本当、馬鹿な人達よね。」 正直な感想をもらしていると、不意にドレスの裾を引かれる。 「・・・何?」 横を振り向くと、エレナがあたしの側に来て、ドレスの裾を握っていた。 そして、その青い瞳であたしを凝視する。 「こんばんわ、エレナ。 どうかしたの? あたしに何か用かな?」 あたしの質問に、エレナは満面の笑顔で答える。 「リナさん!! お父様とガウリイ様を、助けてくれて有難う御座いました。 お母様が、一番お世話になった人はリナさんだと、教えてくれました。」 そう、面と向って誉められると・・・幾ら五才の子供相手でも、つい顔が赤くなってしまう。 その時、視界の隅でガウリイがデリスから、花束を二つ受け取っているのを見た。 その花束は、真紅と真っ白な薔薇だった。 「エレナ、こっちにおいで。」 デリスの声に呼ばれ、エレナが嬉しそうに返事をする。 「は〜い、お父様!!」 心底嬉しいのだろう、今まで求めていた父親が帰ってきて・・・ そして、デリスの近くまでいくと、何やらガウリイと話しをしている。 何の話しをしているのだろう? 突然ガウリイが、跪きエレナと目線を合わせ。 その手に持つ花束のうち、真っ白な薔薇をエレナに差し出す。 「応援有難うエレナ、約束の父さんと感謝の花束を贈るよ。」 エレナも嬉しそうに微笑みながら、その花束を受け取る。 「有難う御座います!! ガウリイ様。 でも、エレナは赤い薔薇でもよかったのに。」 「ははは!! この薔薇をエレナに上げたら、今度こそデリスと死闘をしないといけないな。」 「当たり前です。 その死闘では、決着がはっきり着くまで止まりませんよ。」 「う〜ん、エレナの将来が不安だ。」 などと、楽しそうに会話をしている。 急に横からあたしに、ソアラさんが声をかけてくる。 そちらを向きながら、ガウリイの方を見ると、こちらに向って歩き出していた。 不意に周りがざわめく。 「おい!! 『ソードマスター』の手を見ろよ!! 真紅の薔薇を持って来ているよ!!」 「えっ!! 本当ですか!! まあっ、一体どなたに差し上げるのかしら?」 何を皆して騒いでるんだ? 「リナさん、このパーティで剣士の方の持つ薔薇には、深い意味があるんです。」 何にそれ? 「白い薔薇には、自分を応援してくれた方への、感謝の気持ちと親愛を・・・」 ああ、だからガウリイはエレナに、真っ白な薔薇を贈ったのか。 「そして真紅の薔薇には、永遠の愛と忠誠を誓う意味があります。」 えっ!! そ、それって・・・ 真紅の薔薇の花束を持ち、歩き続ける俺の先の人垣が割れていく・・・ 「しっかりやれよ・・・」 ああ、わかってるさトム。 「なかなか、良い趣味ですね。」 そうだろうクリス。 「・・・まあ、お前の趣味にどうこう言わんが幸せにな。」 それは・・・気が早いぞラバール。 そして高鳴る鼓動を自覚しつつ、俺はリナの前に歩を進める・・・ リナの横にいたソアラが、目線で俺を励まし去って行く。 「リナ・・・ソアラから聞いたと思うが、これが俺の気持ちだ。 この薔薇を、お前に受け取って欲しい。」 真っ直ぐに俺の目を覗き込む、真紅の瞳・・・ この瞳に導かれ、俺はここまでやって来た。 リナが戸惑い気味に俺に質問する。 「後悔はしない?」 「ああ、俺の過去の贖罪はここで終わった。 今からは、改めてリナとの旅に同行したいんだ・・・ リナに会わなければ、俺はまだこの街から逃げていたかも知れん。 しかし、リナは俺自身を変え。 このトライムにある、全ての過去を清算してくれた・・・ これは俺の、本当の気持ちなんだよ。」 俺の告白を聞き、リナが微笑む。 「まったく、大げさな人ね。 いいわよ、その代わり覚悟しておきなさいよ。 まだまだあたしの旅は終わらないわよ。」 その言葉を聞き、俺は満面に笑みを浮かべ、真紅の薔薇を差し出す。 そしてリナが、その真紅の薔薇を受け取る。 「有難うガウリイ・・・嬉しいわ。」 俺の位置でないと、聞き取れない程の小声でリナが囁く。 「これからもよろしく・・・リナ、愛してるよお前だけを・・・」 俺も囁き返す、自分の気持ちを告げる。 リナはそれを聞いて、顔を真っ赤に染める。 周りの人達の拍手を受けながら、俺達は見つめ合っていた・・・ あたし達はテラスに出ていた。 そしてバックミュージックを聞きながら、お互いに手を取り合い踊り出す。 周りには、いつの間にかデリスとソアラさんがいた。 トムとラバールもお互いに、パートナーを連れて現れる。 クリスは、例の婚約者と一緒だ。 カールさんも、誰か知らない女性と現れた。 あたし達は、月の光に照らされながれ踊り出す・・・ 優しい月の光が、過去を清算した男達を照らし・・・ 春を感じさせる穏やかな風が、その男達を見守った女性を包み込み・・・ あたし達はその月光の中、お互いだけを見詰め合い。 いつまでも・・・いつまでも踊り続けた。 これからの未来を思いながら・・・ 最終話 花束 Fin 後書き ・・・燃え付きました。 いいのか? こんな中途半端なの書いて。 まあ、取り敢えずのケジメという事で・・・ 何とか形にはなったけど・・・ もう、これから無謀な事は控えよう。 ちょっと毛並みの違う連載か、短編もいいな。 まあ、取り敢えずちょっと休憩・・・出来ないって(笑) まだ色々あるんだもんね。 連載物と、プレゼント物とか・・・ 手、広げすぎたな・・・ちょっと反省。 まあ、感想を頂けたら幸いです。 それでは、また次の小説を読んで頂ければ光栄です。