<ゲーム>





 無意識の内にいつも視界に捕らえている女性が、一人でテラスに出ていった。
 どうやら周りを騒がす男性陣に辟易したようだ。
 パーティ会場を去り際に・・・視線で俺に何かを問う。
 俺は気付かない振りをしながら、暫くしてから周りの着飾った女性達から抜け出した。

「失礼・・・少し友人と話しがありますので。」

 後を付けてきそうな様子の女性達に釘を刺し。
 口実に使った友人に一応顔を見せておく。
 このパーティに俺達を招待した友人達は上座でまだ来客の挨拶を受けている。
 お互いに奇妙な運命に巻き込まれた者同士・・・視線で俺は友人に祝福を祝った。
 それに気が付いた友人の片割れは微かに微笑んで俺に答え、また来客との会話に戻っていった。

「さて、あちらのお嬢さんはご機嫌だが・・・」

 俺は近くを通った給仕を止め、カクテルを二つ掴むとテラスへと足を向けた。
 もう一人のお嬢さん・・・俺のパートナーに会うために。




 もう一人のお嬢さん・・・最早一人の女性と言っても過言では無い年齢だ。
 しかも、今は普段の旅装束ではなく美しい真紅のドレスを身に纏っている美女だ。
 思えば出会ってから5年が経つ、もう彼女は20才になっていた。
 今は何処か不機嫌な様子でテラスから夜空の星と月を眺めている。
 人間見た目では解らないと言う見本の様な女性。
 そして俺が恋焦がれる唯一人の女性だ。

「お一人ですかお嬢さん?」

「何を気取ってるの?」

 俺が来た事で幾分か機嫌を直した声で答える彼女。
 今日は久しぶりに酔ってみるのも良い・・・彼女に。

「一つゲームの続きなど・・・と思ってね?
 だからお嬢さんはこれから<君>と呼ばせて貰う。」

 俺の言葉を聞いて不思議な顔をし彼女が俺に問う。

「何のゲームをするって言うの?」

「一言で言えば恋愛・・・5年前から続いているゲームさ。」

 俺の言葉を聞いて彼女の眉が一瞬跳ねる。

「酔ってるでしょう貴方?」

「酔っている時人間は素直になる物なのさ。」

「じゃあ、あたし・・・じゃないわね。
 私は<貴方>と呼ばせて貰おうかしら?」

 悪戯っぽく笑いながら彼女が俺のゲームに参加を同意する。

「どうぞ、ご自由に・・・」

 俺も微笑みながら彼女の言葉に答える。
 そして俺は手に持つカクテルの一つを彼女に手渡す。
 まずは先制の一撃は俺から・・・

「君と出会い・・・君と共に旅をして5年が経つ。
 今無事に大切な友人達を祝福できた事に乾杯・・・」

「そうね・・・貴方に守られ共に旅した5年と、今から幸せになる友人達に乾杯。」

 チンィィィィィィィン

 澄んだ音を発ててグラスが触れ合う。
 お互いに一口づつカクテルを口に含み、彼女から返しの一撃が来る。

「もし・・・貴方が私を守りきれない事態が来たなら。
 貴方はどうするのかしら?」

「・・・他人が君を殺す前に・・・俺が君を殺す。」

 お互いの間に痛い程の静寂が満ちる・・・ただ、パーティ会場の喧騒のみが俺の耳に届く。

「そして俺もその場で命を絶つ。」

「・・・意味の無い事をするのね。
 でも、他人に殺されるより貴方に殺される方が私は納得できそうね。」

 彼女を命懸けで守るのは俺の使命だ。
 だから俺の力及ばず彼女が死ぬ時・・・それは俺の手にかかって死ぬ時だ。
 そして彼女がいない世界に俺は興味は無い。

「じゃあ、私より先に貴方が死ぬ事は無い訳なのね?」

「ま、不慮の事故を除いてはな。」

 肩を竦めて彼女の問いに答える。
 そしてお互いの顔を見て静かに微笑む。





 火照った体に夜風が心地よい・・・
 彼女は俺の左腕と自分の右腕を組んで俺に寄りかかっている。

「ねえ、ゲームの続きって言うのはどうゆう意味なの?」

「君が俺に最後の決め言葉を言わせるか。
 もしくは君が俺に最後の告白をするか・・・5年間続いているゲームさ。」

「・・・意地っ張りなのはお互い様でしょう?」

「だから楽しいのさ・・・
 今までの相手は一方的すぎて面白くなかったからな。」

「あら、5年前の貴方とそのお相手のやり取りを聞いて見たい物ね。」

 少し嫉妬混じりの声で俺を責める彼女。
 その仕草でさえ俺には愛しく思える。
 最後の言葉を口にする事は簡単だ・・・だが言葉に言い表せない事も確かに存在する。

「恋は盲目か・・・君でなければ俺は旅の途中で人生を諦めてかもしれないな。」

「それは褒め言葉かしら?
 貴方がこのゲームに負ける日も近いわね。」

 夜風に自慢の髪をなびかせ彼女が可笑しそうに笑う。
 時には正直に自分の心の内を吐露するのも楽しい物だ。
 俺は彼女に出会うまでは死んでいた。
 何も固執する物も無く、ただ息をして気が赴くままに旅をしていた。
 達成するべき目標も無く、ただ目の前を通り過ぎる時間を無感動に眺めていた。
 自分の目に写る景色に色はなく、ただ白黒の画面だけを俺の脳に送っていた。
 そして彼女に出会った・・・

「ふん、少なくとも俺無しでは生きられない状態に君を落とし入れてやる。」

「残念ね、私はそこまで他人に依存する程弱くないわ。」

「だからこそこのゲームは楽しいのさ。」

「呆れた、本性は意外と独占欲の塊なのね貴方って。」

「男性なんてみんなそんなものさ。」

 二人共に黙り込み・・・お互いの触れ合っている腕の体温に相手の存在を確認する。
 しばしの無言、だが言葉は無くても俺は彼女の言葉を聞いていた。
 そして俺は彼女に声にならない俺の想いを語っていた。
 その時パーティ会場での音楽が変わる。
 ふと目を会場に向ければ友人達が周りに促され優雅にダンスを踊っていた。
 そしてその友人と目が合い。

『そこで何をしている? 早く彼女を誘ってここに来い!!』

 と、雄弁に俺に目で訴えてきた。

「さて、ひとつお相手を願えますかお嬢さん?」

「あら、負けないわよ。」

「こちらも負けるつもりはないさ。」

 そして彼女の手を取り俺はパーティ会場に向かった。
 ゲームは続く・・・しかし意外と簡単な事で決着はつくかも知れない。
 ただ、星空に輝く月だけが俺と彼女の今夜の一戦を見ていた。





<ゲーム>			END

 

後書き

・・・こんな物で宜しいでしょうかブルーナイトさん?

ちょっと短いので心苦しいのですが。

一応リクエストを考慮して頑張ってみました。

しっとりしたガウリナ・・・作中誰も名前が出ていないけど(笑)

さて誰が誰でしょう?(バレバレだって・・・)

コレ位のおふざけ・・・でも無いか、仕掛け位いいですよね?ねえ?(誰に聞いてるんだ?)

ただ一言で感想を言えば・・・大変でした。以上!!

出来れば感想を下さいね。

では・・・以下は作者の本音です。(ブルーナイトさん別に気にしないで下さいね(汗))

・・・・

・・・・

・・・・

・・・・

・・・・

もうこれ系統書かないもんね!!

途中で書きながら叫んでたもんね!!

キーボードがもう少しで真っ二つさ!!

夜中に叫びながらコンビニに行って酒買って、呑んで、書いたんだもんコレ(笑)

体中がラブラブ以来久しぶりに拒否反応を起したね・・・

ゴロゴロと転がる寸前で止まってるけど。

これ系統の真面目な話しもBenは駄目だと解りました・・・

・・・<西遊記>でも書こう。

では、さようなら・・・

以上、作者の愚痴でした。

 

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