刑事物語 1.魔法捜査課 みなさん、こんにちは!! あたしの名前は、リナ=インバース。 ここゼフィーリアにある、警察機構の一つ魔法捜査課の刑事です。 この、魔法捜査課というのは、魔法を使用した犯罪を主に取り締まる課です。 その特殊性ゆえ、この課の刑事はみなエリートと目されてます。(じっまーん!!) そして、あたしはこの課で一番の検挙率を誇る、名物刑事なのです!! 「確かに、検挙率は一番だが・・・始末書の数も歴代一位だろうが。」 そう、あたしにちゃちゃを入れたのは、同僚のゼルガディス。 何でも器用にこなすのだが、いかせん器用貧乏な感じが多い。 で、本人クールなつもりで、性根はお茶目な奴である。 「おおきなお世話だ!!」 「そうです!! ゼルガディスさんはそんな人じゃありません!!」 そう、ゼルガディスを庇うのは、アメリア。 あたしの一つ下で、去年この課に配属になった。 警察学校でも、あたしの一つ下の学年にいて、お互い色々と交流があった。 だから、ここに配属された時は、正直嬉しかったものだ。 同僚のゼル目当てで、警視総監でもある親を、説き伏せたらしいが・・・ そして・・・やめておく。 これ以上の人物紹介は、あたしの精神衛生上よくない・・・ 「おやおや、それはつれないですねリナ刑事。 僕は紹介して、いただけないんですか?」 ・・・あたしの上司、ゼロス課長。 色々と変な噂が、絶えない人物である。 はっきり言って、闇の違法組織の幹部の方が、似合いそうな人である。 「やれやれ・・・えらく嫌われたものです。 今月から、向こう三ヶ月の減給でよろしいですか。」 「ごめんなさ〜い!! 悪気は無かったんです〜!!」 思わず泣き付くあたし!! 冗談でわ無い!! 三ヶ月も減給されては、生活が出来なくなってしまう!! 「・・・まあ、いいでしょう。 それから、さっそくですけど事件です。 直ちに現場に急行してください。」 急に真面目な顔で、命令するゼロス課長。 「はい!!」 そして、また慌しい一日が始まる・・・ 2.遊び人?現る 「すみません、この辺りで怪しい人を、見かけませんでしたか?」 聞き込みの最中に、公園で子供の相手をしている、長身の男性に話しかける。 すると男は、かがんでいた状態から立ち上がり。 「えっ!! 怪しい奴? 俺なんかとか?」 かなりふざけた答えを、返してくる男性に。 思わず頭上の、相手の顔を睨み付ける!!(くやしいけど、身長差がありすぎる。) ・・・えっ!! そこには、優しそうな目をした、金髪碧眼の美男子がいた。 ・・・はっ、見とれている場合では無かった!! 「えっとですね、先程この付近の住宅で、マジックアイテムを使用した殺人があったんです。」 マジックアイテムの単語に、一瞬男性の顔が厳しくなる。 しかし、あたしは迂闊にも、その事に気が付かなかった。 「・・・いや、見なかったな。 ところで、そのマジックアイテムってどういう物なんだい?」 変な事を聞く人だ? 「そんな事聞いて、どうするんです?」 すると、男性は頭を掻きながら。 「いや〜、俺ってここらへんで、フリーターみたいな事やってるからさ。 もし、何か手がかりが見つかったら、連絡しようと思ってさ。」 なるほど、それは有り難いわね、情報源は多いほどいいわ。 でも、心の片隅ではこの人の事を、知りたがってたかもしれない。 「それなら、協力をお願いするわ。 まず、被害者は刀の様な物で、斬り殺されてるの。」 その言葉を、一言一句聞き逃さないよう、真剣に耳を傾ける彼。 「不思議なのは、その傷跡が炭化しているって事なのよ。 だから、この事件にはマジックアイテムが、関連している可能性が高いわけ。」 彼は、黙って自分の思考に沈んでいる。 「わかった?、取り敢えず手がかりを手に入れたら、わたしに連絡を頂戴。」 その言葉に、我に返る彼。 「ああ!! わかった、それでお前さんの名前は?」 「わたしの名前は、リナ=インバース。 魔法捜査課の刑事よ。」 そう自慢気に、答えるわたし。 「えっ!! お前さん刑事なのか? 俺はてっきり、今流行の少年探偵団かと思っ・・・ぐふっ!!」 最後まで聞かず、あたしの拳が彼のお腹にめり込む!! 「・・・それで、あなたの名前は?」 かがみ込んだ状態で、彼が名乗る。 「俺の名前はガウリイ、ガウリイ=ガブリエフだ。 よろしくな、リナ。」 そう言って、あたしに太陽の微笑みを向けた・・・ 3.夫婦漫才ですか? 今の事件は、結構難航しています。 ただでさえ手がかりが少なく。 その上魔法捜査課は、少数精鋭がもっとうなので、聞き込みにどうしても穴が開きます。 そんな中、リナさんは結構着実に、情報を集めてるみたいです。 なんでも、その周辺に詳しい人が、情報を提供してくれてるそうです。 それに・・・何だかその提供者と会う日には。 何故かリナさん、お化粧してるんです。 怪しいです・・・正義の血が騒ぎます。 という訳で、私はゼルガディスさんを連れて、今リナさんを尾行中です。 「何故、俺が付いていかなければ、ならないんだアメリア。」 ゼルガディスさん、少し不機嫌です・・・少し、強引すぎたでしょうか。 でも、これも乙女心のせいなんです。 あっ!! そうこう言う内に、リナさんが長身の男性に向かって行き・・ま・・す? その男性は、流れる豪奢な金髪と、青空の瞳をした美男子です。 背は高く、体つきも細いけれども、決してひ弱な感じは有りません。 ・・・そこまではいいんです。 何故、そんな人が道路工事の交通整備を、やってるんですか? 逆に、ギャラリーが集まって、交通渋滞が起こってますよ? あっ、取り巻きの女の子が、工事中の穴に落ちた・・・ でも、日常茶飯事らしくて、工事のおじさんが慣れた手つきで、引きずり出します。 こんな工事現場・・・労働局がよく許しますね。 その内、死人がでますよ・・・ そんな男性を見て、ゼルガディスさんが呟きます。 「まさか・・・あいつは? いや、そんなはず無いか。」 お知り合いなのでしょうか? 「ご存知の方なのですか?」 「いや、まだはっきりと言えない。 確かめ様にも、この人垣ではな・・・」 確かにそうです・・・あっ!! その人垣を割ってリナさんが現れました!! ・・・え? そのまま二人で、現場の休憩室に・・・って彼が、情報の提供者って事ですか。 周りの女性の視線に、ビビリながらも彼に着いて行くリナさん。 ふふふ、それにしても、リナさんにも春が来ましたね。 明日、さり気なく彼の事を、聞いてみましょう(笑)。 そして、翌日。 さり気ないつもりが、不注意で尾行の事実がばれ。 さんざん、苛められました(泣)。 その後、彼(ガウリイさん)をリナさんと何回か訪れましたが。 お互いに、とてもお似合いだと思いました。 あの、リナさんの素直な笑顔を見れるなんて・・・ かなりの人物ですね、ガウリイさん。(もう、傍目には夫婦漫才だし) それはおいといて・・・確かにガウリイさん、真面目に働いてるんですけど。 コンビニの店員(謎)してたら、ギャラリーで店内が人で一杯になってるし。 ガソリンスタンド(謎)で働いてたら、車が動かずずっと止まってるし。 ビラ配り(謎)をしようとすると、逆に30秒でビラが無くなりますし。 ピザの配達(謎)をしてると、電話予約が1年分配達員指定できますし。 ハンバーガー(謎)の店員をしてると、スマイルの注文しかきませんし。 ・・・歩く災害発生器ですか?あなたは・・・ 4.動き出した事件 「おい、ガウリイ。 何故、お前がここにいる。」 俺の問に、ガウリイが答える。 「ゼル・・・お前は知ってるだろう、俺の今の存在意義を・・・ 今の俺は、昔の俺じゃない。 俺がこの街に帰ってきたのは・・・」 やはりそうか、こいつの時間は4年前から・・・ 「しかし、腕は落ちて無い様だな。 俺が尾行していたのは、何時から気付いていたんだ。」 尾行があっさりバレたので、何となく確認をしてみる・・・ 「お前がアメリアに、連れて来られた日からさ・・・」 含み笑いをしながら答える。 何!! あの人込みから俺と、アメリアの視線を判別しただと!! こいつ、以前よりはるかに腕を上げている!! 「余程の修行を、したみたいだな・・・」 「ああ、もう後悔はしたくないからな。 俺の命に賭けても・・・」 決意の表情で呟くガウリイ。 「で、リナの事はどう思ってるんだ?」 「な、何を急にいいだすんだ!! どうって、どうでもいいじゃないか!! お前には関係無い!!」 おお、珍しいなここまで動揺するガウリイは。 「まあ、口が悪くて、手癖が悪い、その上ちびで・・・」 「おい、そこまでにしろ。 俺を無理に怒らせる、理由はなんだ。」 冷めた声で、俺にプレッシャーをかけるガウリイ。 「・・・次ぎに狙われるのは、リナだろう。 お前との関係が、深くなりすぎた・・・」 その言葉に、傷ついた顔をするガウリイ。 「そうかもな、俺はその事を理解していて・・・彼女を、リナを手放せなかった・・・」 苦しげに答えるガウリイ。 一番苦しいのは、お前だろうに。 「それだけでもないが、俺はリナを守る。 もう一度、やり直せるかもしれない、リナがいれば・・・」 ああ、そうだろうリナはそういう奴だ・・・ 「では、頑張れよ・・・」 「ああ」 そうして、俺はガウリイとわかれた。 5.新たな道を 「あれ、ガウリイから連絡があったみたいね。」 机の上に、一枚のメモが置いてある。 『重要な情報を入手した、至急港に来られたし。 但し、情報の提供者が、一人で来る事を指定している。』 「な〜る、慎重な情報提供人ね。 でも、部署には誰もいなし。 仕方ない、すぐに行って帰ってこよう。 メモを、アメリアの机の上に置き、メッセージを残して出かける。 「ガウリイ〜!! 来たわよ!!」 大声を上げながら、港をガウリイを探し歩くあたし。 「おかしいわね〜、何時もなら直ぐに、見つかるのに?」 首を傾げていると。 不意に、聞き覚えの無い声がかかる。 「なに、お嬢さんには死体で、ガウリイに会ってもらうよ。」 何!! 一瞬、悪寒を感じて前方に身を投げ出す。 その上を、光の刃が通り過ぎる!! 「そ、そんな!! 光の剣!!」 何故、伝説のアイテムがここに!! そうか!! この事件の犯人は、コイツか!! 「ほう、あれを避けるか。 さすが、魔法捜査課と言ったところか。」 後ろには、全身黒ずくめな長身の男。 ただ目だけが、ギラギラと猛禽類の様に光っている。 「ダム・ブラス!!」 「無駄だ・・・」 あたしに呪文を、光の剣で軽く弾く男。 「くっ!! 何故あたしを狙うのよ!!」 その問に、男が答える。 「決まっている、ガウリイを苦しめる為だ。」 なっ!! どう言う事なの? 「あの男を苦しめるには、身近な人間を殺すに限る。 自分自身が許せず、自滅してしていきよるわ。」 そう言って、低く笑う。 「さて、そろそろ観念してもらおうか、お嬢ちゃん。」 光の剣を掲げ、私との間合いを詰める男。 駄目だ!! 隙が無い!! このままでは・・・ 「そこまでにするんだな、ガイ・・・・」 こっ、この声は!! まさか、ここにいるはずは・・・ 「馬鹿な!! 何故貴様がここに!! ここに来るまでには、50人の腕利きを用意していたはずだ!!」 露骨に焦りを見せる男。 「どうして俺が、一人で来ると思ったんだ。 ここは、俺の故郷でもあるんだぜ。 知人の一人や二人位いるさ。 なあ、ルナさん、ゼル、アメリア。」 と、後ろに呼びかける。 「ああ、迂闊だったなガイ。」 「大丈夫ですか!! リナさん。」 「失点1よ、リナ。」 あう、ねーちゃん・・・あたしのねーちゃんは、実は警察署の署長なのだ。 公私共に、頭が上がらない・・・ 「どういう事よ、ガウリイ。」 ガウリイの側まで退避し、彼に疑問を投げかける。 「・・・あいつ、ガイは俺が光の剣の後継者になるのを、妬んでいた。 そして、四年前俺が用事で出かけている内に、家の道場に置いてある光の剣を奪い。 ・・・俺の家族を全員殺した。」 苦い顔で、そう語るガウリイ。 「そして、私と、ゼルはガウリイの家の道場の、門下生だったのよ。 そこにいる、ガイもね・・・」 と、ねーちゃん。 道理で、ガウリイがねーちゃんや、ゼルと知り合いなわけだ。 って!! この男も!! だから、光の剣の後継者である、ガウリイを憎んでいるの。 自分が決して、光の剣を継げないから。 「そして、俺はガイを探し。 この四年間、さ迷い続けた。」 その時、ガイが叫ぶ。 「俺一番上手く、光の剣を使えるんだ!! ガウリイ!! 剣の腕はお前が上でも、光の剣はふせげまい!! ここにいる奴、全員皆殺しだ!!」 その目には、もはや狂気しかなかった。 自分の欲ゆえに、自分を壊した哀れな男。 そして、その男にまきこまれ、全てを失ったガウリイ・・・ 「終らせるよ・・・父さん、母さん。 ガウリイ=ガブリエフの名のもとに、我手に帰れゴルンノヴァ」 静かに、ガウリイが呟く。 その瞬間、ガイが握っていた光の剣が、ガウリイの手元に飛び込んで来る!! 「ガイ、この光の剣は、真の後継者にしか使いこなせない。 さよならだ・・・」 斬!! 自分の手を離れた光の剣を凝視したまま、静かに倒れるガイ・・・ 光の剣の魔力に取り付かれた、哀れな男の最後だった。 「いくら正当防衛とはいえ。 これで、俺も人殺しだ。 さあリナ、俺を逮捕してくれ・・・ 俺は、お前を利用したような男だ。」 悲しそうな瞳で、あたしを見るガウリイ・・・ ゼルとアメリアも、苦しそうな顔をしている。 そんな、確かに法律上ではそうかもしれない。 でも、それなら一体ガウリイの人生って、何だったの? 四年間もガイを探しまわり、今また刑に服すなんて。 「いい提案があるのですが、ちょっとよろしいですか。」 いきなりのゼロスの登場。 何しに来たんだぜロス。 「冷たいですね〜リナ刑事。 いい考えですよ、つまりガウリイさんは殺人を犯した。 これは事実です。 そして、我々魔法捜索課には人員が足りない。 そこでです、あっ署長この書類に、ハンコお願いします。」 と言って、一枚の書類をねーちゃんに渡す。 その書類に目を通して、ハンコ(何処から出した?)を押すねーちゃん。 「さて、ガウリイさんここで選択です。 このまま、刑務所に行くか・・・リナ刑事のコンビとして、魔法捜索課に入るか。 ちょうどフリーターですし、就職は別段困らないでしょう?」 その言葉に驚くガウリイ。 確かに有効な手段だ・・・犯人が抵抗し、やむなく刑事が斬殺。(いいのか、おい?) そう言ったシナリオになる。 だけど、生きる目的を失ったガウリイが、その道を選ぶだろうか? その時、ガウリイがあたしに話しかける。 「リナ・・・俺は、お前の側にいてもいいのか? お前さえよければ、俺はお前の隣を、俺の新しい居場所にしたい。」 真剣な顔で、あたしに聞く。 「・・・一つ教えてくれる。 ガイの餌に、何故あたしを選んだの? あなたの為なら、どんな人でもその役を、引き受けたんじゃない。」 そう疑問をぶつける。 そう、あたしより強い人もいたはずだ。(ねーちゃんとか) 「俺は・・・リナと会う度に、リナに惹かれていったんだ。 俺の心には、復讐心しかなかった。 この復讐が終れば、自殺さえ考えていた・・・ でも、リナと会って自分の馬鹿さ加減が、よくわかった。」 そして、じっとあたしの目を見詰める。 「俺は、リナが危険だとわかっていても、リナから離れられなかった・・・ それ程に、俺は・・・リナを必要としているんだ。」 静かに、自分の気持ちを告げるガウリイ。 もう、あたしの気持ちは決まっていた。 いや、初めて会った時。 その時に、もうあの青空の瞳に、つかまっていたのかもしれない。 「・・・魔法捜査課は、命がけの部署よ。 しっかり、援護してよね。 これから、よろしくねパートナーさん!!」 飛びっきりの笑顔を、ガウリイに送る。 「ああ!! まかせとけ!! リナはどんな事があっても、俺が守る!!」 ガウリイも、最高の笑顔であたしに答えてくれた。 「いや〜これで、夫婦刑事が二組ですか。 独り身には辛い職場です。」 と呟く、ゼロス課長。 「何を言うの。 事件は解決し、人員不足も補うなんて。 一番得をしたのは、あなたじゃなくて?」 そう切り返す、ルナ署長。 「いや〜、そうなりますかね〜 でも、結果よければ全て良しですから。」 しかし、この後。 検挙率は2倍に伸びたが。 始末書の数は3倍になり。 頭を抱えるゼロス課長の姿が、悲哀を呼びましたとさ。 めでたし、めでたし。 「全然、めでたくありませんよ〜 もう、ディスクワークは結構です〜」 Fin