<結婚狂騒曲 第二幕> 一章.花嫁の父親 そうか嫁に行くんだな俺の娘は・・・ 目の前にいる花嫁衣装を着た娘を見て、改めて実感する。 あの小さかった娘が・・・ 感慨無量にふける俺に無粋な声がかかる。 「あの〜養父さん・・・もう皆さん揃ってられるんですけど。」 「解ってるわい!! もうちょうっと感慨に耽ってもいいだろうが!! もう直ぐ娘は嫁に行くんだ!! 最後のお別れくらい、心行くまでさせるのが人情だろうが!!」 自分でもかなり錯乱しているな、と実感している。 ・・・目の前の娘も苦笑している様だ。 「・・・そんな、今生の別れじゃあるまいし。」 そんな事を言いやがった青年を睨み付ける。 「・・・取り敢えず皆さん待ってますので。 早くしてくださいね。」 「解っとるわい!! ガウリイ!!」 そう言って自分の義理の息子を部屋から追い出す。 「そんなに興奮しなくても。」 「お前も黙ってろ!!」 「はいはい。」 女房も呆れた顔をしている。 娘も呆れた顔をしている。 ・・・ほっとけ!! 父親の気持ちがお前等に解るか!! そうだぞ俺の気持ちの解る奴が、ここには誰もおらんのだ〜〜〜〜!! 心の中で絶叫を上げつつも俺は娘の手を取り。 教会へと導いて行った。 俺の目の前で娘と男が誓いの言葉と口付をかわす・・・ これであの男が俺の義理の息子となるわけか。 ・・・ちょっと納得がいかんぞ。 まあ、悪い奴ではないがな。 女房も気に入ってるみたいだし。 御近所の皆さんのうけもいい。 だが・・・どうしてまた・・・ 「姉ちゃん!! 結婚おめでとう!!」 もう一人の娘の声が隣でする。 「おめでとう!! ルナさん!!」 義理の息子その一の声も聞こえる。 そう・・・リナに遅れる事半年。 ついにルナまでが嫁に行ってしまったのだ。 確かに結婚の承諾はしたが。 この息子もまた、謎の旅人だったりするのだ。 隣の過去を忘れた息子を盗み見しながら・・・ 「ふう・・・どうして家の娘はこう・・・酔狂なんだ?」 「貴方に似たからじゃないんですか。」 女房の声が急にかかる。 どうやら無意識の内に声に出ていた様だ。 「ふん!! 俺じゃなくてお前に似たかもしれんぞ!!」 「ふふふっ、じゃあ貴方もガウリイさんやカイさんと同列なんですね。」 「・・・俺に似たんだよ娘達わな。」 そう新しい息子の名前はカイ・・・ そのカイとの出会いも・・・結構強烈な物だった・・・ 二章.謎の旅人 「父さん、また拾ってきちゃった。」 娘の声を背中で聞く。 リナの結婚式から一ヶ月が経った。 リナ達は二人してセイルーンの知り合いとやらに会いに行き。 そのままセイルーンに居を構えたそうだ。 俺はまだリナの結婚式の衝撃から立ち直ってなかった。 「ああ? また何か拾ってきたのか?」 「うん、それでちょっとの間面倒みていいかしら?」 「勝手にしろ・・・俺は関与せんからな。」 この時・・・ちゃんとルナが持ってきた拾得物を見ておけば!! 後の祭りだが未だに悔やまれる。 「すいません・・・お世話になります・・・」 「はあ〜〜〜〜!!」 急いで俺が振りかえると・・・ そこには汚れた旅衣装をした男が、襟首をルナに掴まれ引きずられていた。 「・・・おいルナ、何だその薄汚い男は。」 「私の拾得物よ、隣町に買出しに行った帰りに道端に落ちてたの。」 ルナよ・・・それは落ちてたんじゃなくて倒れてたんだよ。 「一応生きてるみたいだったからね。 取り敢えず拾って持って帰って来たの。」 じゃあ何か・・・その男を引きずって町を歩いて帰って来たのか? そんな目立つ事をするなよ・・・年頃の娘が・・・ 「まあ、私としてもさすがにこれを抱えて持って帰る勇気は無かったから。」 俺のしかめっ面を見て、ルナがそう答える。 これ呼ばわりされた男はというと・・・苦笑いをしながら。 「暫くご厄介になります・・・」 なかなかふてぶてしい奴だ、義理の息子を思い出したぞ。 そして俺の燻っていた敵愾心に再び火が灯る!! 「許さんぞルナ!! そんな男とっとと捨ててこい!!」 「父さん今さっき関与しないって、言ったじゃない。 もう冬なんだから一晩位いいじゃないの。」 「ぐっ!! た、確かに言ったが・・・」 「あらあら・・・何ですか騒々しい・・・ ルナ? その人は誰なの?」 女房の登場に俺の嫌な予感は加速する・・・ いや!! まさかルナにかぎってそんな事は・・・ 「あなたの恋人にしては・・・えらく汚れているわね?」 「一応誤解なんだけど母さん・・・取り敢えずお風呂でもほうり込んどいて。」 最早物扱いの青年(だと思う・・・汚れが酷くて年齢がよくわからん。) 「はいはい、こちらにどうぞ・・・」 青年を引きずって行く女房を見ながら・・・ 「俺の意見を聞け〜〜〜〜〜!!」 俺は空しい絶叫を放っていた。 三章.思い込んだら試練の道を 「ルナさんは素敵な人ですね。」 「当たり前だろ俺の娘なんだからな。」 「・・・貰っていいですか?」 「・・・ふざけるな拾得物如きが。」 「・・・」 「・・・」 今朝の会話を俺は思い出す。 青年の名前はカイと言った・・・年齢はルナの二つ上の25才らしい。 ・・・こいつはなし崩し的に家に住み付いている。 こちらとしても、何かと器用なこの青年を店の手伝いに使っている。 近所うけもいいらしい、年の割にはしかっりした青年だった。 ・・・ただし、こいつも過去の事はしらばっくれてやがる。 こいつを見てると俺は、嫌でも義理の息子を思い出すんだよ!! そう、こいつも金髪碧眼だった。(こいつの髪は短いが) まあ義理の息子ほどではないが・・・なかなかの美男子だ。 早速近所では第二の結婚話しが盛り上がっている・・・ しか〜〜〜し!! 甘いな皆さん、ふっふっふっ!!! あのルナが!! ただの美男子にまいるものか!! そう!! あのルナがだ!! 俺の確信に満ちた思惑を・・・こいつは一言で切り崩しやがった・・・ 「ルナさんにはもう返事を貰ってるんですが・・・」 「は?」 「いや〜大変でしたよ。 思い込んだら試練の道を・・・ですね。 ほら三週間前大怪我をして帰ってきたでしょう? あの時じつはプロポーズしてたんですよ。」 三週間前・・・確かにこいつはルナと隣町に買出しにいって、大怪我をして帰ってきた。 何があったとルナに聞いても無視をされるし。 こいつはこいつで意識不明の重態だったりする。(ちっ!! いっそあのまま・・・) 「何だか怖い事考えられてません?」 「お前の想像通りだと思うぞ。」 「・・・」 「・・・」 「で、承諾が欲しいんですけど・・・」 「失せろこの拾得物。」 何があったかしらんが、あのルナを口説き落とすとは・・・ こいつもしかして、なかなかの大物かもしれん・・・ だが!! それとこれは別だ!! 「で、お前はルナの何処を気にっいたんだ。」 「全部です。」 「・・・答えになっとらんぞ!! だいいちルナの正体をお前は・・・」 「はい、ストップ!!」 俺の口を塞ぎながらカイは笑いかける。 「ルナさんの正体も知ってます。 しかしあれはルナさんの一面でしかありません。 俺は一人の女性としてのルナさんに求婚したんです。 ルナさんが人間の女性であるとい事も、事実なんですから。」 全てを知ってルナを欲しいと言うのか、こいつは・・・ 「俺も始めてルナさんから聞いた時はビックリしましたよ。 でもそれでもいいと言うと・・・ちょっと取り乱しましてね。 あの時の怪我は、ルナさんを止め様とした時の怪我なんですよ。」 ・・・結構根性もあるらしい、あのルナを止めに入るとは。 「まあ、俺が焦りすぎたのが原因みたいな物ですけどね。」 ははは、と軽く笑いながら言い放つ。 「・・・おい、焦りすぎたって何をだ?」 「・・・ま、まあ秘密です。」 「・・・貴様!! まさか!!」 「いえ!! そんな不埒な事は決して!!」 「・・・じゃあ何だ。」 「えっと・・・未遂未満みたいな事故みたいな。」 「・・・出て行け。」 「・・・ルナさんとですか?」 「・・・一人でだ。」 「ルナさんと一緒なら出ていきます。」 「貴様一人で出て行けと言ってるんだ〜〜〜!!」 そんな押し問答を朝から続けている俺達だった。 四章.二度目の決断 騒がしい毎日が続き二ヶ月の日が過ぎた。 最早ルナの結婚騒動は町中が知る事となってた。 ・・・一部ではいつ俺が折れるかの賭けも行われているらしい。 潮時かもしれん・・・ 「なあルナ・・・あいつの何処がいいんだお前は?」 「さあ?」 ・・・おい。 娘の答えに絶句する俺。 「じゃあ何でお前はプロポーズを受けたんだ?」 「何故だろ?」 ・・・おちょくってるのかルナ? 「・・・本気で一緒になる気か、あの男と。」 「う〜ん、解んない。」 ・・・あいつも、もしかして報われん男かもな。 ちょっと同情してしまったぞ、俺は・・・ 「・・・でもね父さん。 私の力と正体を知っても、カイは私がいいなんて言うのよ。 その上プロポーズまでするんだもの。 ちょっと位は付き合ってあげないとね。」 ・・・しかし、娘の顔には幸せそうな微笑があった。 そうか・・・この娘もあの力に今まで苦しめられてきたんだな。 そして、親類以外の始めての理解者が出来たわけだしな・・・ 俺としても、何時までもルナに独り身でいて欲しいわけじゃない。 娘の幸せの為には・・・ だが時期が悪いぞ時期が!! もう俺は金髪碧眼の男を信用出来なくなりそうだ。 「ふう・・・ちょっと店に出てくる。」 「いってらっしゃい父さん。」 店に出る前に自宅の裏庭で思い出に耽る・・・ 備え付けの椅子に座りながら、この位置から何時も見ていた景色を思い出す。 リナがいた、ルナがいた頃の思い出を・・・ 娘が生まれた時から、こうなる時が来る事は解っていた。 もう既に娘の一人は別の居場所を見付けた。 そして今、もう一人の娘も新しい居場所を見付けようとしている。 「何時までも子供じゃ無いですよ、あの子達も。」 隣に歩み寄りながら女房がはなしかけて来る。 そして俺の隣に座る。 「・・・解ってるつもりだったんだがな。」 「あなたの方が子供に見えますよ。」 「ほっとけ・・・」 「もう決心はついたのでしょう。」 「お見通しか・・・まあな。 リナと一緒でルナも不幸にはなるまい。」 憎たらしい事になかなかの人物だからな、あいつも。 「・・・さっきリナから手紙が来ましたよ。」 「そうか・・・元気にやってそうか?」 「ええ、半年後には子供も生まれるそうです。」 「そうか・・・って子供!!」 驚いて立ちあがりかける。 「そうですよ、おじいちゃん。」 俺に孫が出来るのか!! ・・・かなり嬉しいが・・・なんだか複雑だ。 「半年後には俺もおじいちゃんか・・・」 「あら、でもルナの子供の方が生まれるのは早いですよ。」 「そうか・・・ってルナの方が早いってお前!!」 俺は今度こそ本当に椅子から滑り落ちた。 俺の頭は度重なる衝撃に最早錯乱していた。 「知らなかったんですか? だから早く結婚の許しを出してあげればよかったのに。」 「・・・相手は誰だ? って一人しかおらんわな・・・そんな命知らずは。」 あいつ・・・手は出して無いと言いながら。 ふつふつと怒りのオーラを出しながら俺は決断した。 「こうなれば責任を取らすしかあるまい!!」 「結局、きっかけが欲しかったんでしょうあなた?」 「うるさい!! あいつは何処だ!!」 「店で帳簿を付けてましたよ。」 「よし!! まずは一発殴ってやる!! その後は・・・」 いろいろと想像を巡らしながら俺は店に向った。 もしかしたらルナに手を出したのは、あいつの覚悟の表示かもしれん。 あいつなりに、自分と俺を追い詰めるつもりだったのだろう。 ・・・良い度胸だ、多分これでも俺が動かなければルナと駆け落ち位するかもな。 しかし・・・もうあいつはルナから逃げられまい。 これからは俺とルナの監視の基で、店で一生こき使ってやる!! 俺は含み笑いをしながら、第二の息子になるであろう青年の元に向った。 もう春は目の前だ。 結婚式は小春日和だといいな・・・と思う俺がいた。 <結婚狂騒曲 第二幕> Fin 1999.7.12 By Ben
後書きです。
ひっかかりましたか皆さん(^○^)
ひっかかってくれると嬉しいんですけどね。
まあ・・・そういう訳で第二幕です。
実は・・・後日談みたいなものがあったりします(笑)
でも書きません(笑)生殺し生殺し。
・・・というのは冗談です(決して皆さんに喧嘩を売ってるわけじゃないです!!)
一応機会が巡ってくるまで温存しときます、はい。
近い内に訪れると思います親父(おじいちゃん)の再登場(笑)
あと、ルナのプロポーズ・・・書こうと思いましたが。
親父出せないんで省きましたすんませんm(__)m
こちらは・・・また気が向いたら書きます。
それでは感想等を貰えると嬉しいです。
また他の小説も読んでやって下さい、さようなら。
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