＜真実への路＞ 第一部 第一話「始まりの別れ」 （１１）
先に外に出ていたゼルガディスさんは、１０分経った今でも夜空を眺めています。 私はそのゼルガディスさんの横の地面に座っている。 周りは暗闇に包まれ、宿屋の明かりが微かに見えるくらい。
・・・でも私はこの人の隣にいるだけで、何故か安心出来る。 ゼルガディスさんは昔色々と悪い事をしたらしくて。 大きな街には滅多に訪れません。 ですからセイルーンにいる私に会いに来るなど・・・有り得ない話し。 一緒に旅ををしたのは一度きりだけど。 その旅は私の今までの人生全てより充実した旅だった。 確かに困難な旅だったし・・・正直何回か死にかけもした。 でも隣には信頼出来る仲間と、このゼルガディスさんがいた。
私はリナにいろんな事を教わった。 正義が一人一人にある事も教えられた。
・・・だからこそ、ゼルガディスさんを真正面から見れたかもしれない。 今の私の表情はきっと、ガウリイさんの隣にいるリナと同じ表情をしてるのだろう。 いろいろと自分の考えに耽っていると、ゼルガディスさんから声がかかった。
「なあアメリア・・・俺とお前さんが出会ってもうすぐ一年位だな。」
確認する様な口調で私に問いかける。
「そうですね、お互い信じられない冒険をしてきたのに・・・ まだ一年程しか経ってませんね。 不思議な気持ちです・・・一年前の私では想像も出来ない事が色々ありました。」
一年前の私・・・か。
親蔟達との陰謀合戦や、国の行事に縛られた生活。 危険しか無かったわけじゃない・・・ 楽しい事が無かったわけでもない・・・ でも、私は今の私の方が好きだ。 リナ達やゼルガディスさんと一緒にいる私が好きなのだ。 ・・・でもその旅も、もう終わる。
あの手紙を受け取った時から、私には第二王女の使命が発生したのだから。 明日、明後日にはセイルーンに向って旅立たなければならない・・・ そうしたら・・・もう二度とこの人とは会えない可能性もあるのに。
「昔の俺の事を考えていたよ・・・ リナに出会わなければ、俺は多分何処かで犬死してただろうな。 リナは俺を人の道に戻してくれた恩人なんだ・・・」
・・・そう、この人の心には強くリナが根づいている。 私ではリナの替わりにはならないのだろうか？ リナに話せば笑い飛ばせされそうな事を考える。
「そしてだなアメリア・・・ 俺に人に戻る為の冒険を決意させたのは、お前さんなんだ。」
「え！！ それはどういう意味ですか？」
動転気味の声で問いかける私に、ゼルガディスさんは顔を赤らめながら話す。
「単刀直入に聞こう。 セイルーンの第二王女と結ばれる程の地位とは、どれ程の物が必要なんだ。」
ゼルガディスさんの目は真剣だった・・・ 私の答えを聞き逃さない様に顔を近づけてくる。 そして私の驚きの表情に気付き、慌てて言葉を付け加える。
「あ〜勿論、俺にそんな気持ちは待っていないと言うなら・・・答えなくていいぞ。」
焦りすぎた自分を誤魔化す様に、そう付け加えるゼルガディスさん。 そんなゼルガディスさんを見て、私の緊張は解れていった。
・・・冗談ではないんだ。
ならば、私も正しい答えを話さなければならない。 それがいかに困難な事でも、現実は現実なのだから・・・
「一国の宰相か大国の大臣位が最低条件ですね。 他国の国王や王子位ならば文句無しなのですけどね。」
私の目をゼルガディスさんが覗き込む。
「その答えは・・・了解の答えと考えていいんだな？」
ここで私の悪戯心が騒ぎ出す。
「何の了解ですか？ 私は正式にゼルガディスさんの気持ちを聞いていません。 セイルーンの第二王女の結婚相手の資格について、お答えしただけですよ。」
その答えを聞いて顔をしかめるゼルガディスさん。 ちょっと意地悪が過ぎたかな？
「・・・いいだろう、そのままでいいから聞いてくれ。 俺はアメリアの素直な性格に引かれた・・・自分には無い物だからかもしれん。 リナに人の道は教わったが、俺のは人生の目標は既に無かった。 だがお前さんと出会って俺はまた変わった、少なくとも人生を楽しむ事を知った。 そしてお前さんに惹かれていったんだろうな・・・ なあアメリア、ガウリイにとってリナが道標というなら。 俺にとっての道標はお前さんなんだよ・・・だから、ずっと側にいたい。 ・・・これじゃ駄目か？」
私は顔を伏せたままゼルガディスさんの言葉を聞き入っていた。
「・・・いいえ。十分です。 私はリナの替わりには、なれないと思ってました。 でもゼルガディスさんはリナではなく、ちゃんと私を見てくれていました・・・ それだけで十分です！！」
私はゼルガディスさんに抱き付いた。 もう二人の距離は無い事を確かめたくて・・・
「なあアメリア・・・俺はその地位を得る為二年を費やすつもりだ。 だから二年の間待っていてくれ。 もし二年後の結果次第では・・・」
不安を感じて間近にあるゼルガディスさんの顔を覗く。
「・・・その時また考えるさ。
最後の手段は駆け落ちだ。」 笑いながら私にそう話しかけるゼルガディスさん。
「絶対ですよ！！ 二年後には絶対迎えに来て下さい！！」
「ああ、約束するよアメリア・・・」
そして私達は口付けを交わし・・・ 宿へと帰っていった。
そして次の日の朝を迎え・・・
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