<真実への路> 第一部 第一話「始まりの別れ」 (5)
「・・・ちょっと!! 一体ここ何処よ!!」
目を覚ますと、あたしは見知らぬ場所にいた。 どうやら洞窟の様な感じだ。 目の前には、岩肌をさらけ出した壁が見える。 あたしの目の前には、なにか出入り口らしい空間も見える。 周りの状況を確認し終わった後・・・
意識を失う前の事を思い出し・・・取り敢えず暴れてみる。
モガモガ!!
バッタンバッタン!!
・・・何かに、縛り付けられているみたいだ。 口を封られて無いだけ、マシかもしれないが。
「・・・魔蔟のくせに・・・みみっちい事すんじゃないわよ。」
「悪かったですね・・・みみっちくて。 だが、貴方を自由にしておくと、色々と厄介そうでしてね。 まあ、そこでガウリイ=ガブリエフが殺されるのを、見物していて下さい。」
うおっ!! まさか答えが返って来るとは。 ・・・やっぱり、魔蔟って陰険。 これじゃあ、呪文で縛めを解く事が出来ない。 それより、ここは何処なんだ? あれから、どんな事があったのだろう。
「ねえ、どうしてあたしはここに縛られてるわけ?」
「貴方にはガウリイ=ガブリエフを呼び出す、餌になって貰います。 すでに先程、この場所と、時間の指定をしておきました。 なかなかの負の気を、発してくれましたよ。」
満足げに、あたしに話しかけるエウーカ。 こいつ!! 先程の傷を癒すために、どうやらガウリイ達を言葉でいたぶったな!! ・・・まあ魔蔟なんてこんな物か、例の神官だって似たような事してたし。 別段皆に怪我は無い様だ、今はそれが確認出来ただけでよしとしよう。
「それで、どうしてあんたはガウリイを狙ってるわけ? やっぱり、ガウリイが『光を導く者』だからかしら?」
その言葉を聞いた瞬間、エウーカの口調が驚愕のそれになる!!
「何故だ!! 何故貴様如きが、その名前を知っている!! この地には、その名を知る者はいない筈だ!! 一体誰から、その名を聞いた!!」
かなりの動揺をしめすエウーカ。 う〜ん、ここまで動揺を示すとは・・・ でも、セイルーンの巫女全員が知ってるって言ったら、どうゆう反応をするかな? ちょっと見てみたい気もするが・・・ それが原因で巫女抹殺指令、何て出た日にはあたしはもう、表通りを歩けんぞ・・・
「・・・さあね、知りたかったらガウリイにでも聞けば?」
無難に答えを返しておく。
「・・・まあ、いいでしょう。 ガウリイ=ガブリエフを殺せば、意味の無い名になりますからね。 ついでに、あの者も消しておきましょうか・・・」
何やら考えに沈むエウーカ。 まだ、他に目標があるのか? ・・・出来るだけの情報を、聞き出した方がよさそうだ。 もしかしたら、あたしが想像するよりも、かなり大きな事件かもしれない。
「それで、貴方が『炎を纏う者』というのは本当かしら?」
その一言で、今度は逆にあたしに嘲りの言葉をかけるエウーカ!!
「私が『炎を纏う者』ですと? これは凄い屈辱ですね、しかしこれではっきりしましたよ。 貴方は全然その名の意味を、把握してはいない。 もしその名を持つ事の意味を、知るならば・・・ 私達魔蔟を、決してその名では呼ばないでしょう。」
あたしの困惑と、怒りの負の気を吸収し、満足気に笑いながらエウーカが告げる。
「いいことを教えてあげましょう。 私が先程言っていた、あの者ですが。 その者こそが、貴方が言っている『炎を纏う者』・・・ といっても、まだ名を継いだ訳ではありません。 今なら確実に、殺す事が出来るでしょう。」
そして、高らかに笑い声を上げるエウーカ。 名を継ぐ? それは一体どういった意味なのだ? あたしの困惑は、深まるばかりだった。
「・・・来たようですね。 まずはガウリイ=ガブリエフ・・・ 彼が当初の目的です、見逃す訳にはいきません。」
エウーカの目の先には、洞窟の出入り口らしき場所を睨んでいる。 そこにはガウリイとルーク、そしてゼルの三人の姿があった。
「リナ!! 無事か!!」
ガウリイの声が洞窟内に響き渡る・・・ 心配してくれるのは嬉しいが・・・耳が痛いぞ。
「そんな大声を出さずとも、ちゃんと聞こえていますよ。」
エウーカの返事に続いて、あたしもガウリイに声をかける。
「大丈夫よガウリイ!! ただ身体を縛られてるだけ!!」
あたしの返事に、ガウリイが安堵の溜息をもらす。
「ガウリイ=ガブリエフ、何故貴方お一人じゃないんですか? それとも、このお嬢さんを見捨てるおつもりですかね? 私は、ガウリイ=ガブリエフ一人を指定した筈ですが。」
その質問に、ゼルが答える・・・
「どうした、ガウリイと人間二人が怖いのか? 心配せずとも、この旦那がそのお姫さまを見捨てる事は絶対に無い。」
続いてルークが話す。
「俺達はな、このガウリイが迷子になら無い様に、付き添いで来ただけだ。 まっ、ここまで来ちまったのは偶然だけどな。」
・・・迷子は解るとして(納得するあたしも、あたしだな) ゼルとルークだけでは、エウーカに勝つのは少し苦しい。 でも、少なくともガウリイ一人よりは有利なはず。 少しあたしは安心した。
「・・・まあいいでしょう、あくまで戦力の分散が目的でしたからね。 今更、二人位増えた所で何も変わりませんよ。」
ゼルの挑発と、ルークのこじつけに少々苛立ちながらエウーカが答える。
「なら、今すぐリナを返して貰う!!」
「ああ、いい加減この洞窟にも飽きたしな。」
「まあ、ここでリナ=インバースに恩を売るのも悪くないな。」
三人がそれぞれの感想を漏らしながら、エウーカに向って走り出す!!
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