<真実への路> 第一部 第一話「始まりの別れ」 (7)
洞窟を抜けると、何やらゼルとルークが言い合っていた。 何もこんな所で喧嘩をしなくても・・・
「だから!! 用事があって出掛けるんだよ!!」
ルークが叫び。
「だが解せんぞ・・・今までミリーナの側から、決して離れ様としなかったお前が。 どうして急にミリーナを置いて、用事を果たしに行く。 やはり、今回の事件について何か心当たりが、あるんじゃないのか?」
どうやら、用事を果たしに行くルークを、ゼルが引き止めているようだ。 そう、あの洞窟でのルークの行動。 彼の行動には不審な点があった・・・ あれ以上の、エウーカの発言を阻止しようとする意思が、感じられたのだ
「・・・心当たりが無い訳じゃない。 それを確かめに行くのは確かだ。 ただ、その確認には一人でいきたいんだ。」
諦めがついたのか、ゼルの疑問を肯定するルーク・・・
「何故一人にこだわるのかは知らんが・・・ 旦那、あんたはどうなんだ? 旦那もこの一件には、無関係ではあるまい。」
さらに続くゼルの詰問・・・ そう・・・ガウリイは、エウーカの言っていた標的であり。 託宣の『光を導く者』かもしれないのならば・・・ 今回の一件は、確かに無関係の筈はない。
「・・・俺には現状がどうなっているかは解らん。 だが、ルークが自分で確認に行くというのを、止める権利も無い。 それに俺の知っている事と、ルークが知っている事が一緒かどうかも解らん。 ・・・ルークは喋る意思が無いみたいだしな。」
そう言ってルークを睨むガウリイ。 ルークも静かにガウリイを睨み返す。 ・・・おいおい、こんな所で喧嘩をしないでよ。 しかし、ガウリイの心当たりって?
「・・・俺が帰ってきてら、お互いの意見を交換しよう。 それでどうだ、ゼルガディスさんよ。」
そのルークの発言に、暫く考え込んでからゼルは承諾の意を示す。
「まあよかろう、現在情報が不足しているのは事実だ。 それで、何時くらいに戻ってくるんだ?」
「・・・一年位かな。」
真面目な顔で、とんでも無い事を言うルーク。 おいおい・・・
「・・・本気か、貴様?」
あ、やっぱりゼルがキレかけてる。
「嘘に決まってるだろ、俺がそんなに長い間ミリーナの側を離れるもんか。 せいぜい五日位だな、それ位なら待てるだろ?」
今度はミリーナに微笑みながら、言い変えるルーク。 うーん、やっぱり良い性格してるわコイツ。
「まあな、せいぜい飛ばして行って来い。」
呆れた口調でゼルがルークを送り出す。
「おう!! それじゃ行って来るぜ!! 待っててくれよなミリーナ!!」
レイ・ウイングを唱え、浮き上がったルークがそう言い残し飛び立つ・・・
「嫌です。」
飛び立とうとして・・・樹木に激突した。(哀れな奴・・・) そして、一同はルークを無視して宿屋へと帰っていった。 それにしてもミリーナ・・・結構傷ついてるんじゃ・・・ 何だかんだ言いながらも、ルークが側を離れていくのは、今まで無かったものね。 でも、もしガウリイがあたしの側を離れて行くと言えば・・・ ミリーナの様に、表面上だけでも冷静でいられるだろうか? この時の予感は、もしかしたらあたしの不安な心が見せた予知だったかもしれない。
皆で騒がしく宿屋に帰ってみると。 そこには・・・
「ガウリイ様!! お久しぶりです!!」
「シルフィール!! どうしてこんな所にいるんだ? サイラーグ復興の手伝いを、してるんじゃないのか?」
そう、シルフィールは壊滅したサイラーグの復興の為、現地で手伝いをしていた。 そのシルフィールがどうしてこんな所に? ガウリイではなくても不思議に思うだろう。
「はい、実は皆さんにお話しが・・・ その前にリナさん。」
真剣な目であたしを見つめるシルフィール。
「な、何よ、そんな真剣な目であたしを睨むなんて。」
「ガウリイ様を、何処に連れて行くおつもりですか?」
ずべべべっ!!
またかい・・・床に倒れながら、そう思うあたしだった。
「まあ、皆さんそう判断するわよね。 特にリナとガウリイさんを知る人なら、堅実な判断ね。」
まあ、シルフィールもかなりの力を持つ巫女だし。 例の託宣についても、もちろん受けているだろう。 しかし・・・どうして皆、無条件であたしとガウリイを思い付くかな・・・
「と、この件は置いときまして。
アメリア様、お父上からお手紙を頼まれて、私はやって来たのです。」 ・・・そっちが本件かい・・・でもやっぱり、王子様とは言わないのねシルフィール(笑)
「何でシルフィールがそんな伝言を持ってくるの?」
取り敢えず疑問に思ったので聞いて見る。
「私が行き先を告げたのは、シルフィールさんだけなんです。 それに火急の用事なら、レイ・ウイングが使えるシルフィールさんの方が早いですし。」
そういう所は抜け目が無いのね、アメリア。 さすが腐っても王族って、ところかしら。
「・・・リナ、何だか凄く失礼な事考えなかった?」
「うんん、気のせいでしょ?」 う〜ん、変に鋭いなさすが巫女頭。
「それで手紙って?」
「はい、これです。」
手紙を見つめるアメリアの顔が、みるみる強張っていく・・・ 一体何が起こっているんだ。
急速に回り始める事態に、あたしは何も知る事無く・・・
今は、ただの傍観者でしかなかった。
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