<真実への路>


第一部 第二話「それぞれの理由(わけ)」

(4)

 あたし達はある村を訪れていた。
 この村を先日デーモン達の大群が襲い掛かり。
 そのデーモンをたった三人の男性が倒した、と言う噂話しを聞いたからだった。
 普通に判断しても、たった三人で多数のデーモン達を倒す事は難しい。
 ・・・そしてあたし達には、その三人の男性に心当たりがあった。
「リナさん・・・本当にその三人が・・・」
「確立はかなり高いわミリーナ。
 方向と時間を考えても、ちょうどその辺りを通る筈だもの。
 それにあのお人好しの固まり達が、襲われている村を見捨てるとは思えないわ。」
 そう彼等の・・・彼の本質は変わっていない。
 それだけは自信を持ってあたしは断言できる!!
「とにかく現場に急ぐわよミリーナ。」
「ええ、そうですね。」
 そして、あたし達は現場の村へと辿り付いたのだった。

「では三人の男性だけで、80匹以上のデーモンを4時間で倒したと言うんですか?」
 ・・・予想以上の数字に思わず声を上げるあたし。
 話しを聞こうと捕まえた村の男の話しはそんな物だった。
 幾らなんでも非常識な数字だ。
 あたし達がベストメンバーで望んでも、一晩中かかる程の数だ。
 しかも・・・
「・・・ガウリイさんは一体、どの様な攻撃手段を用いたのでしょうか?」
 そう・・・ミリーナの指摘があたしの疑問でもある。
 ガウリイに魔法は使えない。
 その筈だ・・・あたしの知っているガウリイは。
 そして唯一の攻撃手段・・・ブラスト・ソードはあたしの腰に在る。
「もしかして・・・人違いかも?」
 思わずあたしは呟く。
 可能性を上げればこれ位しか思い付かない。
 幾らゼルあたりがガウリイの剣に、アストラル・ヴァインをかけたとしてもだ・・・
 どう考えても三人が一緒に戦い続けるのは不可能だろう。
 それだけの数のデーモン相手には機動力と各個撃破が鉄則だ。
 一箇所に固まるなどフレア・アローの餌食にして下さい、と言う様な物だ。
 ・・・そうなればどう考えても、ガウリイは戦力外となる。
 アストラル・ヴァインにしても、限り在る魔力を剣に付与するだけの術なのだから。
 ならばゼルとルークの二人だけで、80匹以上のデーモンを倒せるのか?
 これも二人の実力を知るあたしから言えば・・・難しい筈だ。
「・・・やはり別人でしょうか?」
 ミリーナの独り言を例の村の男の証言が打ち砕く。
「三人の男性の特徴だけどね。
 一人は白いフードを被ってて顔が見えなかったけど・・・
 後の二人の顔は知ってるよ。」
 そして誇らしげにその人物の事を話し出す・・・
「一人の男性は黒髪で赤い目の人だったよ。
 この人と先程のフードを被った男性も、凄い剣と魔法の使い手だったさ。
 だけど最後の金髪碧眼のあの人には遠く及ばないね。」
 ドクンッ!!!
 一瞬、あたしの心臓が激しく弾む。
「そ、その人はどんな人だったの!!」
 あたしはその村人に詰め寄って激しく体を揺すぶっていた。
「お、落ち着いてくれよぅ姉ちゃん。
 今話すからさ!!」
 ミリーナの手助けもあってあたしの手から自由になる町民A(もう面倒くさいからAです)
 そして息を整え、Aは彼の特徴を話し出す。
「長い金髪の男性でしたよ・・・その上瞳も綺麗な碧眼でした。
 剣の腕前も凄まじい物でしたね、はたから見ても剣光さえまともに見えませんでしたよ。
 しかもその剣で面白い位デーモンが斬れましてね・・・」
 ・・・デーモンを斬った?
 そんな馬鹿な!!
 ガウリイがあたしと別れた後の時間で、魔法剣を入手するのは不可能だ!!
 それとも、やはり他人の空似なのか?
「そうそう確か黒髪の男性が金髪の男性の事を、ガウリイと呼んでましたよ。
 私達も町を救った英雄に、もう少し居て欲しかったんですけどね。」
 Aの言葉にあたしの心は激しく揺れる・・・
 ガウリイは一体どうなっているのか?
 何故普通の剣でデーモンを斬る、等という事が可能になった?
 それとも・・・今のガウリイはあたしの知っているガウリイでは無いのだろうか?
 もうあたしはAの言葉に感心を持っていなかった。
「・・・それで彼等は何処に向ったの?」
 替わりにミリーナっがAに質問を投げかけている。
「ああ、何でもディルス王国の知り合いに会いに行くって言ってましたよ。」
 ディルス王国の知り合い?
 ・・・まるでガウリイ達の行動が読めない。
「有難う・・・参考になったわ。」
 何とかショック状態から立ち直ったあたしがAに礼を言う。
「いいえ、どういたしまして。
 あの男性の方達とお知り合いなのですか?
 もし会われたらもう一度私達の替わりに、お礼を言っておいて下さい。」
 その言葉を背中で聞きながらあたしも返事を返す。
「・・・ええ、出会えたら伝えておくわ。」
 ・・・そう出会えたらね。
「行きましょうミリーナ・・・まず追い付かない事には何も始まらないわ。」
「そうですね・・・何が起こっているのか確かめなければいけませんね。」
 そしてあたし達は次の目的地ディルス王国に向う。
 いろいろな疑問と、さまざまな懐疑の心に悩まされながらも・・・

 

 

(5)へ続く

 

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