<真実への路>


第一部 第三話「あの丘へ至る路」

(7)

 どこか釈然としない顔をしているゼルを横目で見ながら。
 俺はもう一人の腐れ縁の女性とのご機嫌取りに必死だった。
 昔から癇癪持ちな奴だったが・・・
 よくこれで巫女頭なんて要職になれたよな。
 ・・・考えたらあのアメリアも巫女頭だったんだよな。
 巫女頭のつく女性は皆こうなのか?
 そのアメリアに想いを寄せているゼルをまた盗み見した時、それは来た・・・

「ルーク!!」

 フィーナが俺に注意を呼びかけながら俺の背後に素早く移動をする。

「解ってる!! ゼル!! 俺の側を離れるなよ!!」

 俺はゼルが隣にいる事を確認しながら、腰の剣を抜き放ち地面に突き立てる!!
 そして素早く俺の意識の底にいるある存在と連携し強力な結界を張る!!
 それと同時にガウリイの篭っている神殿から、圧倒的な力を伴った青い光が溢れ出す!!

 ドウゥゥゥゥゥゥンンン・・・・・

「くっ!! 前回の比じゃね〜なコレは!!」

 思わず弱音を吐いてしまう程その青い光には凄まじい力があった。
 しかし神殿とその辺りの草木には変化は無い。
 そうだろう・・・この光は自己意識がある者にしか脅威にならない。
 無機質な物やただ自然にある物には無害なのだ。
 つまり・・・人間と魔蔟、そして神蔟にのみ有効な攻撃。

「ルーク!! この青い光は一体何なんだ!! ガウリイは大丈夫なのか!!」

「ああ!! この光が溢れてきたって事はガウリイが爺と対決している証拠だ!!」

「爺? 誰だそれは。」

「詳しい事はフィーナに聞いてくれ!! 俺は結界の維持だけで手一杯だ!!」

 俺はフィーナに全ての説明を任せて結界の維持に意識を集中する。

「今ガウリイ様はある存在と戦っています。
 十年前にはその戦いに敗れて大変な災厄を巻き起こしました。」

 フィーナの声を背中で聞きながら俺は十年前を思い出す。
 あの時は四聖の将軍は揃っていた・・・しかし、今は俺一人だ。
 しかもガウリイの力は十年前の時より遥かにレベルアップしている!!

「こりゃ・・・暴走されたら俺達どころか大陸が滅ぶぜ。」

 前回は・・・それでも辺り一面焼け野原だったよな・・・

「思っていても口に出すんじゃないわよルーク!!
 昔から貴方の不吉な予言だけは当たるんだから!!」

「・・・何だか大事らしいが。
 もう少し詳しく教えて欲しい物だな、過去では部外者の俺としては・・・」

 あ、ゼルの奴いじけてやがる・・・まあ、もう何度も話しが脱線してるからな。
 それ以前にあのフィーナに説明を任せた俺のミスかもしれん・・・

「つ・ま・り!! ガウリイ様が試練に失敗したらこの大陸が滅んでお終い!!
 ついでに私達もお終い!! 解った?」

 ・・・解らんよその説明だけじゃ。

「・・・後でルークに詳しい話しを聞くからもういい。」

 賢明な判断だゼル、さすがガウリイの旅に同行できる人物だな。

「本当にそれで納得するわけ? 信じられない程いい加減な人ね・・・
 ガウリイ様が失敗すれば自分も死ぬのよ?」

 あまりゼルが動揺しないのが面白くないらしい・・・フィーナがゼルに食い下がる。
 どうでもいい事かもしれんが、お前本当に巫女か?
 他人の不安を煽ってどうする?
 しかし、フィーナの質問に対するゼルの返答に迷いは無かった。

「ガウリイが失敗すれば、だろ?
 なら大丈夫だ・・・ガウリイはまだこんな所で死ねる程善人じゃない。
 あいつにはもう一度会わなければならな人がいるんだからな。」

 その通りだゼル!!
 今のガウリイには目的がある、再会を誓った人がいる!!
 前回の様に周りに強制されてこの試練を受けた訳じゃない!!
 十年前の張り詰めた顔で神殿に入っていった幼馴染の顔を思い出す。
 あれから十年か・・・俺も変わった、何よりガウリイも変わっていた!!
 
「十年前は最小限の被害で事件は終わった・・・ガウリイの心に消せない傷を残してな。
 俺は正直今回の試練を受ける必要など無いと思っていた。
 だがガウリイなりのケジメを着けたかったんだろうな。
 城に戻る前にガウリイは過去を乗り越えたかったんだろうな・・・」

「・・・じゃあ私に対する謝罪が無いのはどうしてよ。
 あの時の事は・・・さすがにまだ忘れられないわ。」

 沈み込んだ口調でフィーナが誰にでもなく呟く。
 フィーナの父親は十年前の事件で命を落とした・・・
 ガウリイがその事を気にしていない訳は無い。
 ただ何を言っても言い訳ににしかならないから、ガウリイは何も言わないだけだ。
 自分があの時しっかりしてさえいれば、と・・・十年前の事で自分を責め続けている。
 無理矢理に試練を受けさせた親蔟達のせいに出来れば楽なのにな・・・
 頑張れよガウリイ!!
 今度は俺とゼルが最後までお前の戦いを見届けてやる!!

 

 

 

(8)へ続く

 

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