<真実への路>
第一部 第四話「再会」
(3)
・・・リナさんらしい、と言えばらしいですけど。
外出を止められたからとはいえ、船を抜け出してまで街に出無くても。
それだけ、想いが募っているのでしょうか?
なら、私は・・・
「ミリーナは別に無理しなくてもいいのに。」
「お目付け役です、私は。」
結局、リナさんに付いて来てしまった。
やはり、私も情報が欲しいのだろうか・・・ルークに関する。
「はいはい。
・・・そんな事、言われなくても無茶しないわよ。」
その台詞に説得力は皆無ですよ、リナさん。
そして、私達は街角のポスターに魅入っていた。
「本当に・・・王様になっちゃたんだガウリイ。」
「・・・そうですね。」
ポスターに描かれているのは、豪奢なマントに身を包んだガウリイさんだった。
そして、そのガウリイさんを守る様に付き添っている4人の人物。
その一人は私達が良く知ってる人物だった。
「ルークが将軍ですって!!
笑えない・・・冗談よね。」
わざと明るく振舞うリナさん。
私に気を使っているのでしょうね。
ですが・・・
「冗談、では済まない事ですよね。」
「・・・そうみたいね。」
その現実を前に。
私達はただ黙ってポスターを見詰めていた。
ルーク、貴方の本当の気持ちはいったい・・・
その時、私達に二人組みの兵隊から誰何の声が掛かる。
どうも、ポスターの前に長居をし過ぎたみたいね。
「おい、君達は・・・この港街の住人じゃないな。
それに帯剣は現在禁止されている筈だぞ。」
さて、どうしましょうか?
リナさんは・・・逃げるつもりの様ね。
実際、船から抜け出している私達は、ここで兵隊達に捕まる訳にはいかない。
「・・・行くわよ!!」
「はい。」
振り返りざま、弾かれた様に駆け出す私達。
「おい!! 待て!!」
「くそっ!! おい笛を鳴らせ!!」
思ったより判断が早い?
結構、練度の高い兵隊みたいね。
「リナさん。」
「・・・船には帰れないわね。
アメリアの立場が危なくなるわ。」
結局、こうなるのよね。
まあ、リナさんらしいと言えばらしいですが。
「と、言う訳で。
そこの兵隊さん御免なさいね!! ディム・ウィン!!」
ゴォウ!!
突然の突風に押し戻される兵隊達。
しかし、私達に対する追撃の手は緩めるつもりは無い様だ。
「あ!!貴様はあの船に乗船していた魔道士!!
さては無断で船を抜け出してきたな!!」
「くっ!! つまらない事覚えてるんじゃないわよ!!」
ドゲシ!!
船の検閲の時に、リナさんと一悶着を起した兵隊がいたらしい。
これで、リナさんと私とアメリアさんの関係がバレたわね。
「このこのこの!!」
「あうあうあうあう!!」
「リナさん、それ位で止めておかないと。」
ここぞとばかりに、例の兵隊を踏み付けるリナさん。
余程、悔しかったんですね・・・
「はあ・・・これでアメリアも同罪、か。
それなら、このまま抜け出して直接ガウリイに会いに行ってやるわ!!」
「そんな事はさせるか!!」
ガウリイさんの名に反応して、意気込む兵隊達。
・・・慕われているんですね、ガウリイさん。
ルーク、貴方は・・・どうなの?
「御免ねミリーナ、付き合わせちゃって。」
「私が自分の判断で付いて来たんですよ、気にしないでいください。」
そして、私達は兵隊達との戦闘に入り。
相手を傷付けない様に、と戦ううちにリナさんとはぐれてしまった。
ドゴォォォォォォォォンンンン・・・
・・・まあ、呪文の爆発音が聞えている間は大丈夫でしょう。
それに、私にもそれ程余裕はありませんし。
キン、キィン・・・
相手の剣を受け流し、反撃で腕を狙う。
しかし、私の一撃はその兵隊の横に控えていた兵隊の剣に弾かれる。
思っていた以上に・・・兵隊達の腕は立った。
個人の実力もかなりのモノだが、連携プレーが実に巧みだ。
お互いの隙を埋め合う戦法をとっている。
この部隊の隊長は、兵隊の命を尊重している。
・・・最低限の被害で勝てる戦法を、兵隊達に教えているわね。
そして、ジリジリと後退していた私の前に、一人の女性が現れた。
その豪奢なマントと、腰に付けた華麗な剣・・・
この女性が隊長?
「貴方が・・・リナ=インバース?」
「残念ですが、違います。」
「あらそう、でも良い腕ね私の部隊相手にたった一人で、ここまで持ち堪えるなんてね。」
感心した様に女性は肩を竦める。
しかし・・・隙が無い。
かなりの使い手ね。
「でも、私もこの部隊の責任者として、貴方達を捕らえないと駄目なのよ。」
「・・・貴方達?」
「お待たせ、ミリーナ。」
何時の間にか、私の後ろにはリナさんがいた。
どうやら、あちらは片付いたらしい。
「貴方が?」
「そうよ、あたしがリナ=インバースよ。」
二人の間に・・・火花が散った。
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