いつか・・・信じあえる日まで
第二話 戦う理由
「おい、現状を報告しろ。」
呼ばれた女の軍人が静かに報告を行う。
「今、火星宇宙領域第二次防衛ラインでフクベ提督が第一艦隊を率いて応戦中です。
しかし数が多くかなり押されていて撤退するのは時間の問題かと思われます。
さらに敵の一部がもうすでに侵入し、いくつかのコロニー及び軍基地が攻撃を受けています。」
短い報告。しかしそれだけで軍の本部に深い絶望を与えるには充分すぎた。
「くそっ!早く攻撃を受けていない基地の応戦準備は?」
「八割がた整っています。すぐに出撃させますか?」
「いや、一気に攻撃しないとすぐにやられる。全部そろったら行くように伝えろ。
後もう攻撃を受けている場所には援護は出すな。」
「・・・わかりました。」
無表情でそれを伝えていく。
「民間人の誘導は?」
「はい。避難所への誘導は七割がたです。
残り二、三時間で全て終了するかと。」
「遅い。90分で終わらせろ。」
「「はい。わかりました。」
報告をしていく通信士。それを見ながらその場の責任者は下唇を噛みしめながら
深くイスに座り直す。
そしてつぶやいた。
「・・・終わったな。」
火星が謎の集団に奇襲を受けてすでに三時間が経過していた。
イツキは確信していた。
絶対に軍の上層部は知っていたはずだ。
そんなことを考えているうちにまた敵の一匹が攻撃を仕掛けてきた。
やむなく反撃をしようとするが、あちこち被弾しているし、
さっきからビービーなっていて集中できなくてなかなか壊せない。
さらに言うならもう燃料が尽きかけていた。
さっさと帰らないと、地面とアツイ抱擁を交わさなければならない。
「ああもう!バッタの分際でうっとうしいわね。」
敵の機体はバッタに似ていて、そのまま呼ばれていた。
もう一種類はジョロだったか。
バッタがミサイルを雨のごとく降らせてくるも
イツキは右に旋回して被害を最小限に抑える。
「さっきから本当にどれだけいるのよー!?」
そう言いながら残っていた全てのミサイルを打ち出す。
ミサイルを打った直後だったのでバッタは回避行動が一瞬遅れ、
そのまま爆発する。
「帰らなきゃ・・・・・・」
ためいきをつきながらイツキはうなだれた。
人一人しか入れない狭い空間に
いつまでもけたたましく鳴り響く警告音を無視しながら。
「報告をするぞ。」
もう半分以下になってしまったパイロットたちにそう告げる。
言葉を発した人はイツキがいる隊の隊長でウチダ大尉だった。
「まず敵の二種類の機体をこじ開けたところ、
何かが乗るスペースがなかったんだ。つまり無人兵器というわけなんだが・・・・・・」
「なんですって?」
大尉の言葉にイツキは驚きの声をあげるしかできなかった。
「まあ黙って聞け。驚くのは無理ないがな。
どこもこんな高性能の無人兵器は作れるわけがないし。
他にも伝えなければならないこともある。」
そう言いながらウチダ大尉は頭を掻く。
「火星にあるコロニーのうちもうすでに四つが連絡不能になっている。
もうすでにやられているものと判断する。
死傷者は数えられる者だけでも相当な人数だ。
ここユートピア・コロニーも敵の侵攻がひどい。
そこで我々は持ちうる全ての力で敵に総攻撃をかける。」
「そんなことをして大丈夫なんですか?」
隊員の一人が場違いな発言をした。
「大丈夫じゃないからするんだよ。
わかったな。詳しいことはあとで連絡する。わかった奴からさっさと行け。」
「「「「「「はい!!!」」」」」」
「あとイツキ少尉。」
走って行こうとするイツキを隊長は呼び止めた。
「はい。なんでしょうか?」
「少尉、君には避難所にいってもらう。」
「な、何故なんですか?わたしも最後まで戦います。」
「残念だがもうまともな機体はパイロットの人数分ないんだ。
そこで民間人に安心させるためにも避難所に行き、説明するんだ。
絶対に助かるとな。」
「・・・説明など向こうにいる人に連絡をとればいいでしょう。
それに機体などなくても武器があれば・・・・・・」
イツキはみんなが戦っているのに、そんなことはできない。
そう目で告げていた。
「向こうの通信システムが破損していて連絡がとれない。だからこっちから直接誰かが行かないといけない。
それにパイロットに機体があるように他の武器にも担当がいる。イツキ少尉、これは命令だ。君に拒否権はない。」
「・・・わかりました。イツキ・カザマ、これより避難所に行って参ります。」
イツキは憮然としながらそう言った。
「また会おう。」
隊長は敬礼をして最後にそう言った。
イツキはバギーに乗って避難所へ向かっていた。
隊長はああ言っていたが、女だからこの任務になったことは明らかだった。
いままではこういったことに腹を立てていたが、
今回だけは感謝していた。
イツキがさっきまで戦っていた一番の理由はアキトのためだった。
終わってからアキトにこの思いを打ち明けること。それだけだった。
でも惨事を見れば勝つことはおろか守り抜くことも不可能だと誰だってわかる。
だからせめてこれだけは、この思いだけはどうしても伝えたい。
ひときわ大きな爆発音がイツキの鼓膜を響かせた。
最後の抵抗が始まった。
イツキは思い人がいるであろう場所に向かってアクセルを踏んだ。
「はい、どうぞ。」
と言いながらアキトはみかんを小さな女の子に手渡した。
「ありがとう、お兄ちゃん。」
「すいません。本当に。」
栗色の髪を両サイドで結んでいる女の子と
その母親であろう女性がお礼の言葉を言った。
「いえ、配達の途中でしたんで・・・・・・」
少女が近づいてきていきなり、
「お兄ちゃん、デートしよう。」
「え、デ、デート!?」
「こら、アイ。すみません、この子ったら。」
「お兄ちゃん、アイとデートするのイヤ?」
アイと呼ばれた少女が目を潤ませながら聞いてくる。
「いや、そういうわけじゃ。
・・・わかった。今度デートに誘っていいかな?」
「うわーい。やったーー。」
少女が手放しで喜んでいたそのとき、
「おい!!いったいどうなっているんだ?」
「説明してくれ。」
「なんなんだ?あの機械どもは?」
民間人が大勢軍の兵士に詰め寄っていた。
このようなことになれば誰だって不安になるのだから当然だろう。
「だからさっきから前の爆発で電波が乱れて連絡が取れないんです。」
兵士が何度もしている説明の言葉がそれだった。
そのときだった。
避難所の重々とした扉がゆっくりと開いて
その隙間からでてきた顔はイツキのものだった。
「わかりました。わたしが説明します。」
「イツキちゃん!無事だったんだね。」
喜んで近づいていくアキト。まるでそれを阻むように人々がイツキを取り囲んでいく。
「おい、さっさと説明しろよ。」
「いったい外は、街はどうなっているんだ?」
「すみません。今火星は正体不明の集団によって攻撃を受けています。」
「そんな、俺たち死ぬのか?」
「こんな所で死んじゃうなんて。」
などと言い、民間人たちが混乱しかけたとき
「落ち着いてください。
今、軍が総力を持って敵を殲滅しています。
この戦闘さえ終われば、街に帰れます。信用してください。」
人々の騒々しい声はイツキの一声によって退けられた。
「・・・まあそんなにいうんだったら、なあ?」
「ああ、騒いでも仕方ないし。」
場はなんとか収まり、アキトがイツキの元へ駆けつけた。
「さすがイツキちゃん。みんなわかってくれたよ。」
「わかったって言うか・・・・・・」
轟音が響き、またしても混乱が起こりつつあった。
「落ち着いてください。大丈夫です。まだこのあたりは軍の領域です。」
いつまでこんな嘘が通じるかわからなかった。
けれど悪い嘘だとは思わなかった。
この嘘のおかげでみんなは残りの時間をまだ幸せに過ごせる。
無知は罪だと人は言うが、苦しむのだったら知らないほうがいい。イツキはいつもそう思っている。
「アキトくん、ちょっといいかな?」
「なに?イツキちゃん。」
そう言いつつ、イツキの後ろをついてくる。
なるべく人がいない方向へ歩いていく。
そして誰もいない所へ行くと、一呼吸おいて
「アキトくん、あのね、わかってるよね?私の言いたいこと。」
「ははっ、ごめん。ちょっとわかんないなあ。」
「もう、本当に鈍感なんだから。」
と言いつつアキトの方へ向き直りアキトの目を見つめる。
「アキトくんが好きなの。この世で一番誰よりも。」
静かに、しかしはっきりとそう言った。
目を丸くして驚くアキト。だがすぐに申し訳なさそうな顔をして
「ごめん、イツキちゃん。
イツキちゃんのことはどうしても友達としてしか見られないんだ。」
悲しげな表情をしながらアキトの胸に軽く抱きつくイツキ。
「もう、こんなときなんだから少しぐらい嘘言ってもバチは当たらないよ。」
なんでこんなにバカ正直な人を好きになってしまったんだろう、
イツキはそう思った。
「そんなことしたらイツキちゃんに悪いだろう?」
「でも幸せは感じることはできるよ。
たとえ嘘の幸せでも不幸を感じるよりはずっといいと思う。」
「・・・イツキちゃん。」
アキトが何か言おうとした瞬間、大きな物音と共に壁が崩れ落ちた。
崩れた穴から見えるのは四つの赤い光だった。
「敵だー!早く逃げろー!!」
その物体は黄色の機体を持ったバッタと呼ばれるものだった。
「扉をとっとと開けろー!!」
「だめだ。さっきので電源が落ちた。手動で開けるんだ。」
そんなとき目の前にいたはずのアキトがバギーに乗ってバッタに突進していく。
「アキト!なにしてるの!!」
「今のうちにみんな早く逃げるんだ!」
そう言いながらバギーでバッタを壁に押し付ける。
バッタは機械なのに苦しそうにもがいている。
「くそーーーーーーーーーー!!!」
アキトのIFSが一層輝き、バギーが加速する。
そしてついにバッタの目のセンサーが砕け、その機体は力尽きた。
「すげえぞ。兄ちゃん。」
「やった、これで助かるぞ」
アキトの行為に人々が絶賛する。
「アキトくん、早く逃げよう。」
そう言いアキトのそばに寄ってくる。
「ん、ありがとう。」
バギーから降りてこようとしたとき、
さっきとは比べようが無いほどの爆発が扉のほうから起こった。
バギーといっしょに吹き飛ばされるアキトとイツキ。
「う・・・なにが起こったんだ?」
煙で視界が悪く、ほとんど何も見えない。無機質な音だけが響いていた。
煙が収まりアキトが視線を元に戻すと凄惨な光景が飛び込んできた。
血を流して倒れている人。
爆発によって体の一部が吹き飛んでいる者。
さっきまで話し、動いていた人と呼ばれていた物が無数にころがっていた。
「・・・う・・・・あ・・・・・・」
扉だった所の奥からたくさん赤い光がこぼれていた。
「・・・う・・・・う・・・・・ああ・・・」
視界が赤く染まり、さらに狭まっていく。
やっとイツキが気がつき、あたりの様子に気付いた。
「うあああ・・・・・ああああ・・・あ・・・あ・・」
「アキトくん!?落ち着いて。」
イツキが錯乱しているアキトのそばに近づいて腕を掴む。
しかしアキトに異変が起こっていた。胸のペンダントがきらめき、体中に光のラインが描かれていた。
「うああああああああああああーーーーーーーーー」
叫んだ瞬間光に包みこまれていく。
機械たちは見ていた。光が収まるとそこには誰もいなくなっているのを。
後書き
駄文を書いてしまってヘコんでいる十二の翼です。
「お前が書くのはすべて駄文だろうが。勘違いすんな。」
・・・なんでいつも出でくるんだ?くそ親父。そして手に持っているものはなんだ?
「ソーセージ。うまいぞ。食うか?」
会社のもんを持ってくるな。ここは後書き書くところなんだよ。
あんたのせいで今まで後書きらしいことしてないんだよ。邪魔すんなよ。
「ちっ、だったらさっさとやれよ。」
でわ、でわ。今回は作者の視点で書いたんですけどやっぱり難しいですね。
「うん、うまい。やっぱり燻製の仕方で美味さが引き立つな。」
・・戦闘シーンや軍の内部はよくわからないのでかなり混乱しました。
「肉は国内産の黒豚にしたいんだがな。予算がないからなあ。」
・・・・あと文のバランスがかなり悪かったです。なんとかバランスよくしたいなあ。
「ああ、ソーセージの案を提出しなきゃな。給料が良くなるし、いい案出ればだけど。」
・・・・・・ここが悪いっていうメールください。直しますんで。
「本場のドイツのソーセージは日本人向けではなかった気がする。」
こらーーーーーーー!!
普通に邪魔すんなーーーーーーー!!
「今回はこんな風に邪魔しました。てへっ。」
気持ち悪いんじゃーーーー!!ああっ照明が落ちるーーーー!!絶対に勝利を我が手にーーーーーー!!
代理人の感想
いきなり「お友達宣言」かい(爆笑)!
ああ、罪なアキト。
ああ、不憫なイツキ。
しかし状況は二人のそんな一時をも許さず、
戦火の中にボソンの光は煌く。
果たしてアキトの、イツキの、そしてこの恋のゆくえは!
待て次回!
・・・と言いつつ既に掲載されてますので続きが気になる方は今すぐれっつごう(笑)。