いつか・・・信じあえる日まで
 
 
 第三話  失った大切なもの

 

 

 

 

 

 

 

 「ん・・・ここは・・・・」
 
 
 そう言ってわたしは目を覚ました。
 
 確かわたしは・・・火星の避難所で・・・
 
 !!!
 
 襲われたはず!!
 
 何故こんな所にいるの?
 
 ここは・・・草原!?
 
 上を見ると・・・空にナノマシンの煌きがない!!
 
 じゃあここは・・・地球!?
 
 そんなバカな!!
 
 確かに火星で襲われた筈なのに・・・
 
 そう考え込んでいると近くからうめき声が聞こえた。
 
 
 「う・・・・・・」
 
 
 「アキトくん!!大丈夫!?」
 
 
 アキトくんに話し掛けてみるも返事がなかった。
 
 揺さぶってみても起きる気配がなかった。
 
 
 「どうしよう?こんな所にずっといるわけにも・・・・・・」
 
 
 「おい、どうした?」 
 
 
 唐突に話し掛けられて驚きながら振り返る。
 
 そこにいたのは人が良さそうな中年の男の人だった。
 
 
 「いや・・・あの・・・その・・・」
 
 
 もう四十を超えているだろうか・・・その人はアキトくんの方を見て、
 
 
 「何があったかは知らんが・・・とりあえず家に来な。
 
 そのままって訳にもいかないだろうし・・・その兄ちゃんも連れて行くんだろ?」
 
 
 何か事情があるのを察知してか、その男の人はそう言ってくれた。
 
 
 「はい。お願いします。」
 
 
 アキトくんの腕を首に回して引きずるようにして運びながら
 
 その人、ユキヤ・サイゾウの家にお邪魔することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 「で・・・いったいなにがあったんだ?
 
 服以外何もねえじゃねえか。しかもお前が着てるのはパイロットスーツってやつだろ。」
 
 
 わたし達は今、サイゾウさんの家の二階の部屋にいた。
 
 アキトくんは布団の中で今も目覚めていない。
 
 隣で死んだように眠っていた。
 
 
 「あなた、そんなに問い詰めても・・・わたしの服なんですけど・・・
 
 とりあえず着替えませんか?ずっとその服はちょっと・・・・・・」
 
 
 「はい。ありがとうございます。」
 
 
 そう言って奥さんの服を受け取るわたし。
 
 
 「さ、こっちですよ。」
 
 
 隣の部屋を案内する奥さんを見ながら、
 
 
 「いいんですか?怪しいですよ、わたし達。」
 
 
 「困ったときはお互い様ですよ。
 
 それに怪しい人はわたし達で判断をして決めますから。
 
 じゃあ着替えが終わったらまたお話しましょうね。」
 
 
 部屋を出て行く奥さんを見ながら、
 
 今までのことやこれからのことを考えていた。
 
 パイロットスーツを脱ぎながら貸してくれた服に手をかける。
 
 白のブラウスと黒のスカートだった。
 
 自分達に何が起こったか?
 
 それはわたしにもわからなかった。
 
 ただ覚えていることはアキトくんの体に不思議な光のラインが描かれていたことだけだった。
 
 もしかするとアキトくんなら何かわかるかもしれない。
 
 着替えが終わったのでサイゾウさん達がいる部屋へ戻ろうとする。
 
 とにかくアキトくんが目覚めない限り何もわからない。
 
 
 「すいません。着替えさしていただきました。」
 
 
 「おう、今二人で話していたんでけど・・・・・・
 
 行く所がなかったら、落ち着くまでここにいていいぞ。」
 
 
 突然の申し出に驚く。
 
 
 「あの・・・とてもうれしいんですが・・・いいんですか?」
 
 
 「ああ。だけど店で働いてもらうからな。ちょうどバイトにやめられて困ってたんだ。
 
 見つかるまで働いてもらってもいいし、そのまま住み込みしてもいいし。好きなようにしな。」
 
 
 お茶を飲みながら楽しそうに話すサイゾウさん。
 
 奥さんもにこやかに笑っていた。
 
 
 「ありがとうございます。精一杯がんばります。」

 

 

 

 

 

 

 

 「姉ちゃん。ラーメンとギョウザね。」
 
 
 「俺はラーメンと・・・チャーハンだ。」
 
 
 「はい、ラーメン二つとチャーハンとギョウザですね。」
 
 
 と言いながら厨房の奥で忙しく天津飯を作っているサイゾウさんに伝えに行く。
 
 
 「ラーメン二つにチャーハンとギョウザです。手伝いましょうか?」
 
 
 「い、いや、いい。また客が来るかもしれないから向こうで待ってくれ。」
 
 
 どもりながらそう言うサイゾウさん。
 
 ここだけの話、イツキが手伝うようになった日の夜に
 
 サイゾウさんがイツキの料理の腕を見ようとしたとき、
 
 
 厨房は戦場になった。
 
 
 イツキがチャーハン(本人談)を作ると謎の緑の生命体が生まれ、
 
 
 
 一時間も店の中で闘っていた。
 
 
 最終的にイツキが勝ち、チャールズ(謎の緑の生命体のこと。イツキが何故かそう呼んでいた)
 
 
 を流し台に流していた。
 
 
 幸い店に客はいなかったし、不思議と店の中は全く壊れていなかったが、
 
 
 翌日のテレビで謎の生物襲来と大きく書かれていて
 
 怪獣映画さながらの軍隊との戦闘シーンが映し出されていた。
 
 その映像を見てイツキは
 
 
 「わー、チャールズが大きくなったー。これで立派な有名人だね。」
 
 
 と言っていたのをサイゾウさんと奥さんは冷や汗を掻きながら聞いていた。
 
 
 ちなみにチャールズ(イツキ命名)は約一日で消滅した
 
 それ以来二人はイツキを厨房に立たせないことを誓った。
 
 
 「おい、イツキちゃん。
 
 もう大体お昼終わるから二階で休んできていいよ。」
 
 
 「あ、はい。すみません。」
 
 
 と言いつつ二階に上がって行く。
 
 
 アキトくんはもう三日も目を覚ましていない。
 
 最初に病院に連れて行こうとサイゾウさん達は言っていたが、
 
 イツキはなんとかいい訳をしてなんとか待つように言った。
 
 何故ならイツキ達は火星出身で地球に来た記録もないので大騒ぎになることは間違いなかった。
 
 せめてましな言い訳を考えないと不審人物で警察や軍に拘束される可能性もあった。
 
 
 「アキトくん。早く目を覚ましてよ。
 
 もうこれ以上誤魔化すのは無理だよ。」
 
 
 わたしがそう言った矢先、
 
 
 「う・・・・・うん・・・・・・・」
 
 
 と言い、目を開くアキトくん。
 
 
 「アキトくん!!気付いたの!?」
 
 
 ボーとしてわたしの方を見ている。
 
 
 「大丈夫?今わたし達は地球に・・・・・・・」
 
 
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 
 
 「え?何?」
 
 
 「誰ですか、あなた?」
 
 
 目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 「完全な記憶障害ですな。」
 
 
 サイゾウさんの友人の老医者はそう言った。
 
 普通の病院には行けないことを知り、友人を紹介してくれたサイゾウさんに感謝した。
 
 
 「すぐに治るんですよね?」
 
 
 「わかりません。こういったことは時間に任せるのが一番です。
 
 それに一般的な生活知識は覚えていましたから気長にできますよ。」
 
 
 などと無責任なことを述べる。
 
 
 「記憶を戻す方法として一番いいのはやっぱり故郷に連れて行くことですかね・・・・・・」
 
 
 医者の説明は耳に入っているが頭までは入っていなかった。

 

 

 「失礼します。」
 
 
 そう言いながらアキトくんがいる病室に入っていく。
 
 
 「あ、お連れさんが来ましたよ。ではこれで。」
 
 
 さっきまで部屋の中にいた看護婦が出て行く。
 
 
 「・・・・・あなたはオレのことを知っているんですよね?
 
 オレはなんていう名前だったんですか?」
 
 
 「テンカワ・アキトっていう名前よ。
 
 わたしはイツキ・カザマっていうの。ねえ、本当に覚えていないの?」
 
 
 いまだに信じられず、再度確認をする。
 
 
 「はい、すみませんが本当にそうみたいです。なにも思い出せません。」
 
 
 「そう・・・・・・仕方ないね・・・・・・」
 
 
 「一つ・・・・いいですか?
 
 あなたは・・・・・・あなたはオレのなんですか?」
 
 
 真剣な眼差しでわたしを見つめている。
 
 
 「わたしはあなたの・・・・・・・・・・・・・・・」
 
 
 「・・・恋人なんですか?」
 
 
 「なななななな何をいっているんですか?」
 
 
 いきなりそんなことを言われあからさまに動揺した。
 
 
 「さっきの人が言ってたので・・・違うんですか?」
 
 
 わたしはアキトに振られたことを思い出た。
 
 もう苦しみたくない。そんな思いがわたしの胸をよぎった。
 
 わたしは・・・わたしは気付くと言っていた。
 

 「わたしは・・・あなたの・・・婚約者です。」

 

 

 

 

 

 

 

 後書き
 
 やーーーーちまったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 石を投げないで-----------。
 
 「ゲギャギャギャギャギャ。」
 
 おう、チャールズ。こっち側に来たか。
 
 あのくそ親父は今日は来ないぞ。主役は常に登場してはいけないとかほざいてたから。
 
 「ゲギャギャギャ、ギャ、ギャギャギャギャ?」
 
 オレは今回限りのゲストかって?
 
 う〜ん、せめて言葉くらいは話せないと通訳すんのも辛いし。
 
 「ゲギャギャギャ、ギャギャギャギャギャギャ。」
 
 今度までに覚えてくるって?そんな、お前の成分、お米と卵とハムとネギと油だぞ。
 
 「ゲギャギャギャ、ギャギャギャギャギャギャギャ。」
 
 そんなことはない、やればできるって?つってもなあ〜。
 
 次出てきても親父と対戦することになるぞ?いいのか?
 
 「ゲギャギャギャ、ギャギャギャ!!!」
 
 あいつを倒してレギュラーにオレはなるって?
 
 ・・・まあ、がんばれ。応援はするから。
 
 「アリガトウ、ガンバル。」
 
 話せたのかよ!!!!
 
 後ツールでHTML化したんですができてました?きっとできてないんだろうな。
 
 がんばって覚えますんでそれまで迷惑かけます。すみません。

 

 

 

代理人の感想

 

おおっと、これは意外な展開。

ナデシコに乗船する経緯とかユリカとの再会とか、色々と先が楽しみです。

そして、アキトが記憶を取り戻した時、二人の関係はどうなっているんでしょう?

まあ、とりあえず二人で雪谷食堂に住み込むのは決定として(笑)。

 

 

追伸

料理から新しい生命を作り出したのはアクションでも二人目の快挙ですね(笑)。