テンカワアキトの女難体験記E

 

 

 

げに恐ろしきは思い込み

 

 

この話は1人の男の、女心を解さない軽率な行動が起こした女難体験のお話・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコのクルー達のアイディンティティといったらなんだろう。

木星蜥蜴を倒そうとするヒーロー的な精神か、あるいは地球の平和を守る博愛的精神か、当然どちらでもない。

クルー達のアイディンティティ、それは思い込みである。アキトが自分を好きだと信じて疑わないユリカ、経理の事

しか頭にないプロスぺクター、出世が全てだと錯覚しているムネタケ、キザったらしさが大きくずれてるアカツキ。

これはみな自分自身の陶酔にも近い思い込みがなせる所業だ。今回話のタネとなる思い込みは彼らほど極端

なものではない。

現実によくありそうな出来事だがそれが彼、テンカワアキトを再び女難へと引き込む・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

地球連合本部のある一室、ひとりの軍人が落ち着きなく室内を歩き回っている。

 

「心配だ、心配だ、心配だ、心配だ、心配だ・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・心配だ。」

 

立派な髭を生やしたその軍人の名はミスマルコウイチロウ、連合宇宙軍第三艦隊提督である。

 

「イツキ君にユリカの様子とテンカワアキトの実態調査を依頼したがどうにも心配だ。パイロットとしての腕は優秀

 だしそれ以外もすばらしいものがある。だが彼女は生真面目だ。

 果たしてテンカワアキトに接触した時、臨機応変に対処できるのだろうか。今思うと人選を違えただろうか?。」

 

娘カワイさのあまり部下に無理な命令を出しておきながら勝手な事を言うコウイチロウ。

だが彼はすでに第2の刺客(?)を用意していた。

 

「あの人物ならきっとテンカワアキトの化けの皮をはいでくれるだろう。ん?。」

 

ぶつぶつ独り言を言っているとドアをノックする音が。

 

「入りたまえ。」

 

「失礼します。」

 

威厳のある声に礼儀正しく返事を返す人物。声からして女性か。

入ってきた人物はそれはもう美しい人物だった。

腰まである黒い髪、やや高めの身長、整った顔立ち。大和撫子とはこういう人物のことを言うのであろう。

 

「ユキ=キクノ中尉、御命令により出頭いたしました。」

 

ユキ=キクノ、連合軍中尉である。優秀な人物であり軍内部の評価も高い。あることでとても有名な人物らしい。

 

「う、うむ。まあ立ち話もあれだからイスにでも掛けてくれたまえ。」

 

「はい。」

 

なぜか怪訝な表情で彼女を見るコウイチロウ。彼女は行儀よく高そうなイスに腰を下ろした。

 

 

 

 

 

「君を呼んだのはだね・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「わかっております。御息女の様子と漆黒の戦神、あるいは希代の女たらしと目されるテンカワアキト氏の実態

 調査ですね。」

 

先読みされたことに驚いたのか、狼狽するコウイチロウ。

 

「よ、よく分かったね。」

 

「はい、それはもう軍内部でも評判ですから。

 差し出がましいですが私的感情を軍務よりも優先するのはいかがなものかと。御息女も21、男性とのお付き合

 いもおかしくはないと思います。軍人としての権限で私的行為をお続けになられるのは提督の名誉を失墜させ

 てしまうでしょうし、かえって御息女の機嫌を損ねてしまうのではないかと推察しますが。」

 

かつてこれほどまでに毅然とした物言いでコウイチロウに諫言を呈した人間がいただろうか。コウイチロウは何か

言いたそうだったがあえて反論をしなかった。いや、できなかった。自分に対してこれほど的を得た正論を言う人

間に出会ったことがなかったからだ。これがジュンやカザマなら烈火のごとく怒り狂う所だろう。

 

「うっ!?(冷や汗)。確かにな。だがそれでも心配で手を差し伸べてしまうのが親というものだ。」

 

「御息女の力になるのと過保護を同義でお考えとは、ミスマル提督のお言葉とは思えません。」

 

「グッ!?(痛い所を突きおって!)。とにかく君にテンカワアキトの実態調査を依頼するぞ。

 これは軍にとっても必須事項なのだからな。」

 

軍という言葉で強引に話しを進めるコウイチロウ。だがユキは特に動じることもなく粛々と聴いている。

ここらへんが、いちいち心の中で突っ込みを入れていたカザマよりも役者が上かもしれない。

 

「わかりました。私としても彼には興味がありますので。喜んで受けさせていただきます。」

 

「うむ、頼んだぞ。まあ彼は私の友人であるテンカワ博士の息子だ、私自身はそれほど危険だとは思ってない

 のだがな。」

 

「ならなぜ御息女とお付き合いしてるとの噂があると、馬の骨などと初対面のような態度を取られるのですか?。」

 

「それとこれとは話が別だ!!(怒)。」

 

大量の唾がユキの顔にかかった。ハンカチでぬぐいつつも冷静な態度を崩さない。

 

「一応出向社員という形だが、場合によっては延長することも考えられるからよく覚えておいてくれ。」

 

「わかりました。では失礼いたします。」

 

ユキはそれだけ言うとそつのない礼儀正しい態度を見せつつ部屋を出ていった。

 

「うーむ、噂通りの人物だな。まあ歯に衣を着せない物言いは少々問題だが非の打ち所がないし、臨機応変も

 できそうだ。イツキ君より頼りにしていいだろう。だがそれにしても・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

なぜかコウイチロウはなんとも言い難い苦悶の表情を浮かべている。

 

「天は2物を与えないというか最近の若者の考えは年寄りにはわからんというか、本当に噂通りの人物だな。」

 

苦悶の表情から悟りを開いたようなかなしげな表情に変えるコウイチロウ。

一体何を意味するのだろうか・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

それから一週間ほど経ち、ユキ=キクノの着任の日が来た。

ナデシコは現在補給を兼ねてサセボドックに待機中である。

普通の白い乗用車で(22世紀後半だからもっとすごい乗り物があるかもしれないが)ユキはやってきた。

 

「テンカワアキト、ナデシコでの活躍よりも西欧方面での活躍で名を上げたエースパイロット。あらゆる面で万能

 らしく、コックを兼任するという異彩ぶり。一方でいわくつきの人物らしく女性関係の噂が後を絶たない。彼を

 形容する言葉は2つ、漆黒の戦神と希代の女たらし・・・・・・・・・・・・・・・か。

 私のような凡人には理解できないわ。

 近寄りがたい殺気を放つ最強の軍人と、女性ならだれかれかまわず毒牙にかけるどうしようもない遊び人、

 この2つが1人の人間に同居するなんて。だからこそ興味があるんだけど。」

 

1人ぶつぶつ言いながら迎えを待っていると、中央で髪の毛をわけたメガネの男が近寄ってきた。

 

「ユキ=キクノさんですかな。私、ナデシコの経理及び人材を担当しておりますプロスぺクターと申します。

 お迎えに参上しました。」

 

「連合より派遣されましたユキ=キクノです。どうぞよろしく。」

 

「こちらこそ。いやぁお美しい、噂通りの方なんですなぁ。」

 

「い、いえ(ぽっ)。ありがとうございます。」

 

「さあ、ナデシコへ案内いたしましょう。」

 

そう言ってプロスはユキをナデシコ内へと連れていった。入り口には誰もおらずプロスはカードでドアを開ける。

 

「あ、あの、誰か身元を確認する人はいないのですか?(冷や汗)。しかもカード一枚で開くなんて!?。」

 

「ナデシコは一応民間の戦艦でして。」

 

デスクワークとはいえ彼女も軍人のはしくれ。この気軽さには少し戸惑いを覚えたようだ。

 

「ま、まあそれはいいとして。ミスタープロスペクター、私の出向の理由はある程度察していらっしゃるでしょう

 か?。」

 

「ええ、ミスマル提督のご推薦という時点で。特定の人物以外は皆察していると思いますよ。」

 

「そうですよね。でもこれは私の意志でもあるんです。その、是非テンカワアキト氏に会ってみたくて(ぽっ)。」

 

「はは、そういう人は多いですよ。軍の女性でも結構彼を理由に出向を申請してくる方がいますからね。

 ただ忌憚なく言わしていただければ、貴方には彼を振り向かせる事は根本的に無理があるのでは?。」

 

プロスのセリフにユキは過剰な反応を示した。

いつもの冷静な態度からは考えられないほどの、怒りの表情を見せたのだ。

 

「ミスター、言っていいことと悪い事の区別がつかないのですか?(怒)。」

 

「い、いえ(冷や汗)。これは失礼しました。」

 

「あ、ごめんなさい。感情的になってしまって。では案内をお願いします。」

 

「はい(あービックリした。結構恐い人なんですなぁ。それにしてもこれほどの美貌の持ち主なのに。天は二物を

 与えてはくれないのか)。」

 

コウイチロウと同じ思いをプロスは心の中で呟いた。なぜ2人ともそんなことを言うのだろうか?。

 

「とりあえず貴方の部屋へご案内しますよ。」

 

プロスはそう言って彼女を案内した。

 

 

 

 

 

 

「皆さん注目〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!。」

 

ブリッジから艦長ミスマルユリカが艦内放送を始めた。もちろんモニターを介してである。

 

「この度軍から出向社員としてまいられましたユキ=キクノさんが着任されました。」

 

ユキがモニターに映った途端歓声が上がった。特に格納庫から。

 

「ユキ=キクノ中尉です。この度出向社員として配属されました。所属は副官補佐、アオイ殿の下に就くことに

 なります。どうそよろしく。」

 

気品と優雅という言葉がこれほどマッチする人物もめずらしい。皆つられて礼儀正しくお辞儀をしていた(笑)。

 

「僕の補佐・・・聴いてなかったな。」

 

ジュンは複雑な顔をしていた。人を補佐する(色んな意味で)ことはあっても人に補佐されたことはない彼は、

彼女をどう扱えばいいのか分からないようだ。

 

「副官補佐とはいっても彼女にはメインブリッジにいる方々全員のカバーもしていただきます。

 まあ万能屋というところですかな。」

 

「十得ナイフって感じね〜。」

 

プロスの補足にミナトがいい喩を出した。そこへルリがきつい一言を。

 

「要は副官補佐というのは肩書きってことですね。」

 

「ぐっ!?。ルリちゃん僕に何か怨みでも(引きつった顔)。」

 

「いえ、別に。」

 

ジュンはちょっと落ち込んでしまった。自分の補佐が肩書きでしかないと言われたのはとてもこたえたようだ。

 

「まあまあ、とにかくユキさんには出向期間の間、活躍していただくという事で。」

 

「はーい、意見がありまーす。」

 

偶然ブリッジにいたアマノヒカルが手を挙げた。

 

「ブリッジにいる人のカバーをするより、ムネタケ提督の代わりに提督になったほうが有意義だと思いまーす。」

 

「うまい!、ヒカル差布団一枚。」

 

横にいたイズミがヒカルを誉めた。それに続いて周りからやんややんやの大喝采。

 

「ムネタケ提督ですか、あまりいい噂を聞かない方ですね。」

 

ユキが横にいたシュンに問い掛けた。

 

「僕も来て間もないからね。

 詳しい事は知らないけど、個人的事情に照らせば許せないし、一方で感謝もしてるんだ。

 きっかけを作ったのは結果的にだが彼だからね。」

 

「は?。」

 

「詳しくは時の流れに外伝漆黒の戦神を見てよ。まあこの場にいなくて良かったな。」

 

「それは確かに。」

 

ムネタケは軍との会議でドックにはいなかった(なんとつごうのいいBY作者)。

 

「所でテンカワアキト氏はどちらに?。」

 

 

 ギン!!

 

 

質問の瞬間殺意を帯びた多数の視線が貫かんばかりにユキに注がれた。

 

「あ、ああ、アキトなら食堂の厨房にいるよ(また一波瀾か、楽しくなりそうだ)。

 あいつはコックも兼任しているからな・・・・・・・・・って知ってるよな?。」

 

「はい、では少し顔を出してきます。ではみなさんまた。」

 

そう言ってユキはブリッジから姿を消した。一つ一つの行動が優雅、それもまるでイヤミがない。

 

「う〜、ちょっとうらやましいな。ああいう人。」

 

メグミが羨望の眼差しを浮かべた。ああいう生まれ持ったものはまねできるものではないことはまがりなりにも

声優として名をはせた彼女には良く理解していた。

 

「ちょっと、ミスター!。あの手の人はなるべく入れないっていう約束じゃなかった?。」

 

エリナがプロスにクレームをつけた。

 

「おやおや、アキトさんが絡むと貴方も女になるんですなぁ。」

 

「なっ!?(まっ赤)。べ、別にそんなつもりだけど。」

 

「もういちいち言い分けしないというわけですか(にやにや)。

 それはいいとして、彼女を推薦したのは艦長の父上であるミスマル提督ですから。軍と歩調を合わせている

 我々としては、むげに拒否できないのが現状です。」

 

「え〜〜〜〜〜、お父様の推薦なのぉ!。

 もう、お父様ったらすぐに私とアキトのラブラブを邪魔するんだから!! プンプン!!。」

 

父親の心配などまるで意に返さないユリカ。もしかしたらコウイチロウこそユリカに一番ふりまわされている男

かもしれない。

 

「なにはともあれ、アキトさんと万が一にもいい雰囲気にさせるわけにはいけませんね。」

 

ルリが熱く語っている。かつての彼女からは想像もできない。

 

「ホウメイガールズが止めてくれるわよ。今回はライバルに期待ね。」

 

ライバルに期待をよせるサラ。メグミもうんうんとうなずいている。

 

「ミスタープロス、ちょっと。」

 

カズシがプロスに声をかけた。

 

「なんですか?。」

 

「いや、気のせいかもしれないがあの人に首に・・・・・・・・・・があったような気が。」

 

「ユキさんはですねぇ・・・・・・・・・・なんです。軍でも有名なんですよ。」

 

「そ、そうなんですか?(冷や汗)。はあ、ナデシコはつくづく変わった連中が集まる所なんだなぁ。」

 

「ええ、そういうわけでアキトさんがユキさんになびくことはありません。」

 

「なら女性陣にそう言ったほうが。」

 

「いいじゃないですか。言わない方が楽しみが増ますし。」

 

「あ、そうですね(喜)。」

 

「なんだなんだ、2人でひそひそ話か?。俺にも聞かせろよ。」

 

「シュン隊長、実はですね・・・・・・・・・・。」

 

「そ、そうなのか。なんともったいない。」

 

話題の中心にいるユキ=キクノ、一体どういう人物なのだろうか・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

食堂でもユキのことが話題になっていた。

 

「アキトさんに会いに来るみたいね。あの綺麗な人(怒)。」

 

タナカハルミがアキトをジト目で見ている。

 

「えっ、べ、べつに俺が呼んだわけじゃないし(冷や汗)。」

 

「そうだよ、ほらほら仕事仕事!。」

 

ホウメイの檄でまた仕事が再開されたがホウメイガールズは納得いってないようだ。そして同じく納得していない

女性、正確には女の子が1人。ラピス・ラズリである。隣で座っているハーリーに愚痴を漏らしていた。

 

「ねえ、なんでアキトの周りにはああいう要注意な人が次々現われるの?(怒)。」

 

「そんなこと僕に言われたってわかるわけないだろ。」

 

「何よ!、そんなこと言うくらいだったらアキトは最後にはラピスを選ぶよ、くらい気の利いたセリフを言いなさい

よ!。」

 

「僕が言ったら気休めにもならないとか言いそうじゃないか!。」

 

「そんなこと言ってるからルリがいつまで経っても振り向かないんだ!!。

 

「うっ、人が一番気にしてる事を・・・・・。」

 

「気にしてるんだったら努力して直しなさいよ!。この唐変木!!。」

 

うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!(涙)。

 

「ハーリー、うるせーぞ!。」

 

胸をえぐるようなラピスの文句を前にハーリー泣きが炸裂。だが周りの連中は慰めるどころかうるさいと

たしなめるめる始末(笑)。そんなやかましい情景をうっとりとした表情で見ている人物が。誰あろうユキだった。

 

「まあ、あの子泣いてるわ。かわいそうに・・・・・・・・。」

 

ユキは泣きじゃくるハーリーに近寄っていった。そして彼を抱きしめた。そのなんとも異様な光景に

周りは唖然としていた。

 

「かわいい子。泣いては駄目よ。男の子は強くなくちゃね。」

 

聖母マリアにも似た自愛の微笑みにハーリーは見とれた。いや、ハーリーだけではない、周りのクルー達も、

そしてアキトさえもユキに見とれた。途中で我に返ったホウメイガールズがアキトに詰め寄ったのは言うまでも

ない話。

 

「は、はい(ぽー)。す、すいませんでした。見ず知らずの方の前で。」

 

「いいのよ。泣きたい時あるものね。」

 

横にいたラピスは開いた口がふさがらなかった。かつてのマシンチャイルドからは想像できないほどマヌケな表情

をしている(笑)。ユキはハーリーを離すと厨房のアキトの方へ向かっていった。

 

「こんにちは、テンカワさん。私ユキ=キクノと言います。アオイ副官の補佐として着任しました。」

 

「あ・・・・・・・・、テンカワアキトっス。どうぞよろしく(綺麗だ)。」

 

「はい、では後ほど。」

 

アキトに会いに来たとは思えないほど簡単な自己紹介で締めくくったユキは再びハーリーに話し掛けた。

 

「あなたお名前は?。」

 

「えっと、マキビハリです。皆からはハーリーって呼ばれてます。」

 

「そう、かわいい子(はぁと)。」

 

泣きまくるハーリーのマヌケな姿(笑)に母性本能が刺激されたか、ユキはハーリーに興味を持ち始めたようだ。

 

「あ、あのよかったら艦内をご案内しましょうか?。」

 

「ええ、お願いするわ。」

 

こうしてハーリーとユキは食堂を出ていった。残されたクルー達は放心したままだ(20分近く)。

 

「あ、あのホウメイさん。俺ちょっと様子見てきます。」

 

最初に意識を取り戻したアキトがそう言った。その言葉に敏感に反応したのがホウメイガールズ。

 

「ちょ、ちょっとアキトさんどうして!。」

 

エリが文句を言った。

 

「そうよ。あの人アキトさんには関心ないみたいだしほっといてもいいのに。」

 

ミカコやジュンコがそれに続く。

 

「あ、うん。でも気になるから。じゃ!。」

 

「アキトさん!!。」

 

サユリの制止は耳に届いてなかったようでアキトは厨房から姿を消した。後に残ったのは強烈な嫉妬の炎。

 

「ハルミ。艦長達に連絡、大至急よ・・・・・・・。」

 

「分かってるわサユリ。アキトさん、私達よりもあの人を選ぶってこと?(怒)。」

 

「全く、テンカワの奴は。」

 

ホウメイのぼやきも彼女達にはなんの効果もなかったようだ。ホウメイは何か心に引っかかってることがあった。

ユキを見た時なんとも言えない違和感を感じていたのだ。

 

「あっ!。」

 

その声で我に返ったラピスが質問した。

 

「何、どうかしたの?。」

 

「あのユキって子のことさ。あの子、首に喉仏が見えたんだよ。

 

その言葉で周りのクルー達が青ざめ始めた。

 

「ってことは、ホウメイさんの言う通りならあの人は・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「ああ。多分まちがいないな。」

 

思い込み、それはとても恐ろしい事。クルー達は外見だけにだまされ根本的なことをプロスに聴かなかった。

クルー達全員が、そして慰められたハーリーも、気になって追っかけたアキトさえもずっとユキが女だと

思い込んでいたのだ。

だが、すでにハーリーの絶望とアキトの女難のカウントダウンは始まっていたのだ・・・・・・・・・・・・・・・(哀)。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・がVRです。」

 

ハーリーが一生懸命ユキに艦内を案内している。なにせ初めて自分の味方と呼べる人物が現われたのだ

(あくまでようなだが)。喜びもひとしおだろう。

 

「そう、ありがとう。」

 

「(なんて綺麗な人だろう。)」

 

気品溢れる姿をまるで雛人形のようだ。

 

「あら、ここは・・・・・・・・・・・お風呂かしら。」

 

「ええ、大浴場です。男性と女性は時間制限になってるんです。あ、すいません。ちょうど男性の時間なんで

 僕入ってきてもいいですか?。僕夜出勤なんで。」

 

「ええ、どうぞ。」

 

ハーリーはそう言って風呂に入っていった。夜出勤とは口実でちょっと緊張しているので心を落ち着けようと

しているのだ。

 

『マセガキだね。』

 

「わっ!。オモイカネ、失礼な事を言うなよ。僕は別に・・・・・・・・。」

 

着替えながらオモイカネに文句を言うハーリー。ここへ来てオモイカネはまた人間くさくなってきた。

 

『だって前はルリ一筋だって・・・・・・・・・・・・・・え!?。』

 

「どうしたの?。」

 

『後ろ・・・・・・・・・・・・・・・。』

 

「後ろ?。あ!!

 

お約束でも言うべきか(笑)、ユキがハーリーのとなりで副を脱ぎ始めていた。

 

「な、な、な、な、何してるんですか!!。今は男性の時間ですよ。」

 

「ええ、だから一緒に入ろうと思って。」

 

「そんな混浴じゃないんだから・・・・・・・・・・・・え、む、胸が真っ平ら、なんでどうして?、そして下半身から見えてる

 それは・・・・・・・・・・・・・・(汗だらだら)。」

 

「やだ、ハーリー君たらじろじろ見て。それはついてるでしょう。なんだから(はぁと)」

 

 

うっぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーー!!

 

 

ハーリーの叫びが大浴場を響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキトさん、どこに行くんですか?(怒)。」

 

アリサがユキとハーリーを追うアキトに話し掛けてきた。すでに女性陣には情報が伝わっていたのだ。

 

「あのユキさんが気になるそうですね(怒)。」

 

「あ、アリサちゃん。別にそういうわけじゃなくて。」

 

「最近べつにそういうわけじゃないでごまかしまくってません?。どういうわけなんですか?。」

 

「(その言葉で許してくれた事ないじゃん!)。いや、ははは。」

 

「笑ってごまかしたってだめだぜアキト。ユキに無視されたから振り向かせようとしたんだろ(怒)。」

 

「リョ、リョーコちゃん、だから違うって」

 

「問答無用だ!、アリサやれーーーーーーーーーーー!!。」

 

 

ぎえーーーーーーーーーーーーー!、ギブギブギブ!」

 

 

 

「うっぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーー!!」

 

 

プロレス技をかけられてギブアップ宣言をしているアキトとほぼ同時にその絶叫が聞こえてきた。

 

「な、何今の声?。」

 

「風呂場の方から聞こえてきたぜ。行ってみよう。」

 

アリサとリョーコはアキトをほっぽって行ってしまった。

 

「たっ、助かった(技かけられてたが)。それにしても今のは?。」

 

「そんなわけないでしょう?。」

 

「げっ、エリナさん!!。」

 

「後でキクノ中尉の詳細を見てビックリしたわ。彼女、ニューハーフなんですって。」

 

「ニュ、ニューハーフ?。うそ!?」

 

「本当よ。私だってびっくりしたもの。で、あのハーリー君らしき悲鳴だけどきっと風呂場で見たんでしょうね。」

 

「見たって何を?。」

 

「見たってそりゃぁ(ぽっ)、普通そんなこと聴く?。全く朴念仁なんだから。でもそんなこと問題じゃあないの。

 君が気になったのはいわゆるオカマさんなのよ。女である私を無視してあろうことかオカマを(怒)。」

 

「で、でもあれは誰が見たって女性に見え・・・・・・・・・・(しまった)。」

 

「ということは浮気をしたってことですよね(怒)。」

 

メグミが殺気を込めた目で睨んでいた。後ろにはいつもの面々が。

 

「もうお仕置き決定だねアキト(怒)。」

 

「ユ、ユリカ。聴いてくれよ。俺はハーリー君だけじゃ心配だったからさ。」

 

「今更そんな言い訳通用すると思ってるの?。」

 

「イ、イネスさん。」

 

「さぁて、医務室へ連れてこうか。」

 

「ちょ、ちょっと・・・・・・・・・・・・・。」

 

こうしてテンカワアキトは姿を消した(拉致された)。その頃風呂場では・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「あ、あんな綺麗な人が・・・・・・・・。」

 

「俺達と同じモノを・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「皆さん。そんなにじろじろ見ないで下さい。さてハーリー君、優しくしてあげるね(意味深)。」

 

風呂場では先に入っていた男性陣が驚きと失望の声を上げていた。ハーリーはというとすでに意識がなかった。

 

「リョーコさん・・・・・・・・・・・・・。私悔しいです。」

 

「全くだ。あんな美人、俺達よりも美人なやつが男だったなんて。」

 

「これというのもアキトさんの責任ですね(怒)。」

 

「もちろんだ!。アキト、今日のお仕置きはいつもの倍だ!!(怒)。」

 

強引にアキトのせいにして彼女達も医務室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・それから、ユキは大浴場での入浴を禁止された。女性にしか見えないユキが入ると男性陣が

勘違いをするためである。ただ救いだったのはユキは極めて優秀だったということ。はっきり言ってジュンは必要

ないほどだ(笑)。

ユキに見初められたハーリーはびびりまくって1人になれずシュンとずっと一緒にいた。

ルリと一緒にいようとしたが案の定煙たがられた。

 

「ハーリー君、うざい。」

 

「ル、ルリさん、僕は被害者ですよ〜〜〜〜〜〜〜〜。」

 

「ハーリー君、ルリルリは機嫌が悪いだけだから気にしない方がいいわよ。」

 

それもこれもユキにちょっかい出そうとしたアキトのせいだが。

 

「ハーリー君、寂しくなったらいつでも私の所へ来なさい(はぁと)。」

 

「ユ、ユキさん(びびりまくり)。」

 

「お似合いだね、ハーリー。」

 

 

「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!(涙)」

 

 

同じく機嫌の悪いラピスの一言でハーリーは撃沈した。

 

 

 

 

 

作者よりの教訓、人は見かけでは判断できません。哀れなハーリー。

 

 

 

 

 

 

作者の話(たわいないけど)

 

どうも、3104です。今回はゲストをお呼びしてます。ホシノルリさんです。

「ホシノルリです。所で3104さん、今回私の出番少なかったですね。」

「うっ、まあたまには楽したいでしょうし(冷や汗)。」

「それにこの題、テンカワアキト女難体験記はちょっと失礼ではないですか?。

 まるで私達がアキトさんの疫病神のように書いてますけど(怒)。」

「(そのとおりじゃん)。はあ、失礼しました。」

「それとですねぇ。今回のゲストキャラクターのユキさんですが。」

「ええ、神威氏からの提供第2弾です。」

「喉仏で男か女か判断してますが、女性や子供は外見からはほとんど見られないというだけで無いわけでは

 ないんですよ。例外があるんですよ。」

「こ、これはするどいツッコミを。まあいいじゃないですか。あまり長くするとBenさんに迷惑をかけるので

 そろそろ今後の抱負を一言お願いします。」

「皆さん、最後にアキトさんが選ぶのは私です。というわけでこれからも応援よろしくお願いします。」

「そっけない返事かつ圧倒的な自信ありがとうございました。」

次回は誰がゲストなのか、ではみなさんまた。

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

3104さんから六回目の投稿です!!

前回は幸せだったのにな・・・ハーリー(笑)

今回は見事にヒットしてるやん、君。

まあ、そのお陰でジュンの不幸があまり目立って無いけど(苦笑)

今回はナオはお休みでしたね〜

・・・あの料理の余波に苦しんでいるのか?(爆)

でも神威さんも、凄いキャラクターを考えつきますね。

でも既に任務を放棄してないか、ユキさん(笑)

 

 

それでは、3104さん投稿有難うございました!!

 

感想のメールを出す時には、この 3104さん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!

 

 

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