時の流れに番外編
ナデシコ的三国志
八話、曹操周瑜に火攻めを受け、大敗を喫する中編
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・クス、今日あたり風が吹きそう(はぁと)。」
陸口の岸から長江を見つめていた周瑜ラピスがそう呟いた。
十二月の上旬に入り、濃い霧が非常に多く見られるようになっていた。
この日の天気は雲一つない蒼天に加え、冬とは思えない暑さである。
このいつもと違う気候にラピスは確信していた、夜になれば必ず東南の風が吹くと。
「よし、ゴートさんとプロスさんを呼んで!!。」
「御意!!。」
ラピスの命を受けて、すばやく動く兵士達。
彼女は烏林焼き討ちを今日と決めた。
「うきゃ!!、これであの曹操ユリカを追い返せる。
アキトをあんなおかしい女になんか渡さないんだから!!。
見てなさい、幼き妖精の本領をとくと見せてあげる。
レッツ・ファイヤー・ショーよ!!。」
劉備サラの武将趙雲アキトをユリカの魔の手から救うため、ラピスの戦いが始まる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、
それでいいのか、戦う理由?(爆)。
「いいわけないでしょう(汗)。
ここにいる全員の首がかかっているのですぞ。」
参軍校尉の魯粛プロスが冷や汗をかきながらやってきた。
どうも途中からラピスの独白を聞いていたらしい。
「あ、プロスさんいたの?。」
「(呼んでおいてそれはないでしょう)。
ええ、お呼びがかかったということで。
今日あたりですかな、出兵は?。」
確信犯のプロスは予測していながらそう質問した。
対してラピスはにっこりとした表情で肯定の意思を示した。
「では急ぎ軍備を整えます。
それと主君孫権ナガレ会長にもご一報入れておきます。
そして劉備サラさんにも追撃要請を入れておきます。
以上でよろしいですかな。」
「うむ、では私は各武将達に命を発した後偽装船の手配をして夜に備えよう。」
「ゴートさんいたの(ですか)!?。」
いつのまにか来ていた黄蓋ゴートを見てラピスとプロスは驚きの声を上げた。
驚く二人を見てゴートは寂しそうな表情を見せた。
「う、うむ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本編でもよく同じ台詞を言われるような気がする(?)。
俺ってそんなに存在感ないか?(笑)。」
急にブルーになってしまったゴートを見て2人は慌ててフォローを入れた。
「あ〜いやいや、そんなことはありませんぞ(存在感ありすぎですぞ!!)。」
「そうそう、体おっきいしね(体おっきいのに忍者みたいに突然現れるからびっくりするのよ!!)。」
「そ、そうか。
それはともかくとして、この後の行動を少しだけ聞かせてもらえるとありがたい。」
「ゴートさんが奇襲を成功させた後は、私の本隊で一気に上陸して蹴散らすよ。
逃げ切られた場合は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・追わないで江陵へ行くの。」
「「江陵へ!?。」」
ラピスの発言にプロスとゴートは驚きの声を上げた。
追撃をしないというのだ。
「本気ですか?。」
「うん、そのためにサラ達を追撃役にしたんでしょ。
ユリカを討ち取れればよし、仮に逃げられても江陵へ先回りしておけば問題なし。
まあ主眼はむしろ江陵を中心とする南郡の確保なんだけどね。」
南郡とは荊州の中央に位置し、江陵は南郡の中心的な城である。
すなわち江陵をとれば南郡は掌握したに等しく、荊州を真っ二つに分断できるのだ。
江陵がどれほど重要な拠点であるのか、それは劉表フクベが大量の軍需物資を溜め込んでいたことからも
容易に想像できる。
「うーむ、そこまでお考えとは。
いやいや、ラピス都督、恐れ入りましたぞ。」
「えへへ〜、でも策は更にあるの。
プロスさん、アカツキさん宛の書状にね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「!?、なんと!!。」
大きく驚いたプロスだったがすぐに行動に移すべく姿を消した。
ラピスは一体何を指示したのだろうか。
「それは秘密(はぁと)。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰に言ってんだ、おい(笑)。
その日の夕刻、烏林のナデシコA(漢魏)の陣内は多く大きく沸いていた。
今日の夜半から明日にかけた時刻に、黄蓋ゴートの一軍が投降してくるという密書が届いたからだ。
長期戦に加え疫病が多発し、士気の低下が著しかったナデシコAにとっては久々の朗報だった。
これで長いにらみ合いも終わり、ようやくネルガル(呉)を制圧して慣れ親しんだ北へ帰れる、
陣内全体に安堵の雰囲気が流れていた。
「ちぇ、つまんねーの。」
久々登場の蕩寇将軍、張遼リョーコが不満の声を上げた。
戦闘屋の彼女としてはやはり派手なぶつかり合いで勝利を収めたいようだ。
「女房に逃げられた男、妻んね(いね)ー・・・・・・・・・・・・・・・・・・、苦しい(苦笑)。」
本当に苦しいギャグをかました(苦笑×2)折衝将軍、楽進イズミが突然現れたのでリョーコはびっくりした。
「!?、なんだイズミか。
びっくりするじゃねーか。」
「別に驚かすつもりじゃなかったんだけど。
それより今の発言はよくないわね、無理して血を流すよりなるべく穏便な方がいいと思うけど。」
「けっ!!、よく言うぜ!!。
ナデシコAでも一、二を争うほどの猛者がそんな平和的解決を求めてるなんてよー。
って、最近姿見せなかったけどどこにいたんだ?。
もしかして疫病にかかっていたとか。」
「まさか。
リョーコには教えとくけど、私は別働隊を指揮することになったの。
その準備をしてたの。」
イズミの話を聞いてリョーコは、ははあんと思った。
艦長はなかなか抜け目がない、万が一の時のために遊撃部隊を用意していたのかと。
「もう行かなきゃなんだけど、リョーコ。
忠告しとくけど熱くならないようにね。」
「おう!!、任せとけ・・・・・・・・・・・・・・・・っておまえいつから俺の目付けになったんだよ!!。」
「前からよ。
それよりヒカルは?。」
ヒカルの姿を見かけなくなったので、イズミはリョーコに質問した。
「あいつは合肥城の守備についたぜ。」
合肥(がっぴ、またはごうひとも)は揚州の上方に位置する魏の最前線とも呼べる城である。
ここは呉への防衛における魏の生命線と言ってもよく何度も激戦が繰り広げられたが魏はこの城を守りきり、
三国志の終幕である280年までの間、ただの一度も陥落することはなかった。
後に魏の二代目皇帝の明帝・曹叡(曹操の孫)は、魏の生命線として、西の岐山、南の襄陽ともに東の合肥を
上げている。
そしてこれらの地を死守したがために度重なる呉の進攻や関羽の北上、そして諸葛亮の北伐を防ぎきった
のである。
「合肥城の守備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、なぜこんな時に?。」
「俺に言われたってわかるわけねーだろ。
でも艦長に合肥城の防備を進言したのは賈クヨシサダのおっさんらしいぜ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
リョーコに説明を受けはしたものの、イズミは釈然としないままその場を後にした。
日も沈み真夜中となった頃、烏林の岸にはナデシコAの船団でうめつくされおり、松明で照らされていた。
船団の中央にあるひときわ豪華な船、雛菊に曹操ユリカら幹部連が乗っていた。
ユリカはご機嫌だった。
それはこの戦に終結のめどが着きそうだからではない、ましてや長対陣から開放されるからではない。
「それはアキトが手に入るからでーーーーーす!!
(はぁと)。」
とてつもないでかい声で嬉しさをアピールするユリカ。
だが周りに反応がない、程cメグミあたりが文句言いそうなのに彼女も何もいってこない。
「う〜、何よみんなして!!(怒)。
私の言うこと無視しないでよ!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでみんな寝てるの?。」
無論彼らは寝ているわけではない。
気絶、あるいは失神という言い方が正しいのだ。
しかも気絶しているのは雛菊に乗っている連中だけではない、船団の広範囲に渡ってである。
疫病よりもはるかに早く余波が広がっていったのだ(爆)。
そしてこの何気ない行動が、このすぐ後に起こる戦いに大きく左右することになるとはユリカ自身夢にも
思わなかった(?)。
「もうっ!!、皆お休みしてる場合じゃないでしょ!!。
もうすぐ黄蓋ゴートさんが投降してくるんだからちゃんと見てなくちゃ!!。
ちょっとヨシサダ提督!!、起きてったら!!。」
ユリカが気絶しているヨシサダの肩をぶんぶんと容赦なく揺する。
しばらくしてようやく目を覚ましたが、目はうつろだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、いや、ここはどこでしたかな。
えーーーーーーーーーーー・・・・・・・・、艦長どうかしたかね。」
ヒューズが飛んだらしく(笑)、会話がみょうちきりんになっている。
自分のせいだという自覚もなくユリカはヨシサダの応対の悪さにふくれっつらをしていた。
「ここはどこじゃないです!!、プンプン!!(怒)。
なんで寝てるんです、油断しないよう見張ってるんじゃなかったんですか!!。」
「あ、そう言えばそうだったねぇ。
なんで寝てしまったのかな、私は。」
ユリカの馬鹿デカ声が原因だというこさえ飲み込めず、ヨシサダ頭をくらくらさせながらは周りをみまわした。
周りの人間達は皆倒れている、あわを吹いている者さえいる始末だ。
「こ、これはもしや・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・疫病がこれほどまでに広がるとは!?(違うって)。」
「え〜、そうなんですか!?、どうしよう、こんな時に。」
「!?、全くその通り。
こんな状況でもし黄蓋ゴートの投降が嘘だとしたら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?。」
よく見ると明かりらしきものがこちらに近づいてくる。
そう、ゴートの投降船、いや偽装船である。
「わ〜い、やっと来たのね。
もちアキトが乗っているんだよね(はぁと)。」
アキトの三文字に過剰に反応したのは程cメグミである。
ばっと起きあがり嬉しそうな表情を見せた。
「え!!、アキトさんが私に会いに来るんですか!!。」
「ちょっとメグちゃん!!、何余計な台詞を強調してるのよ!!。
大体なんでこの大事なときにのんきに寝てるわけ!!。」
「艦長こそ私物化しないでもらえません!!。
・・・・・・・・・・・・・・・そう言えばなんで私寝てたんだろ。
なんか突然大きな声がしたような・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
メグミも誰のせいでお休みさせられていたかわかってないようだ(笑)。
ヨシサダもちんぷんかんぷんな顔をしている。
その間にも船団はどんどん近づいてくる。
そして大声で何かを叫んでいた。
「投降!!、投降!!。」
この声で倒れていた他の兵達も徐々に目を覚まし始めた。
ユリカはこの声を聞いて安堵の表情を浮かべた。
「ようやく来たね。
これでアキトは私のもの、うふふ(はぁと)。」
喜ぶユリカとは対照的にメグミとヨシサダは解せないという表情を浮かべていた。
「メグミ君、確か敵は軍需物資も積んで来るといっとったね。」
「え、はい、でもそんな重い物を積んでいるにしてはやけに船の速度が速いような・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
2人の話を聞いてユリカも冷静になりだした。
「それは風がこっちに向かって吹いているから追い風で・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・東南の風?。
あ!?、もしかして!?。」
ボアッ!!
それを言うか言わないか、投降してくるの大半の船が突然けた違いに明るくなったのである。
それは紛れもなく火、敵は船に火を放ったのだ。
「やはり投降は虚言であったか!!。
艦長、あの船に突っ込まれたら風に乗って瞬く間に船団に広がってしまいますぞ。」
「う〜、それはまずいよ〜。
イツキちゃん、全軍に通達、あの船をなんとか止めなさーーーーーーい!!。」
だが近衛軍の許チョイツキに反応がない。
そう、彼女は先ほどのユリカの声で気を失ったままなのだ(いいのかそれで)。
「イツキちゃん!!、寝てる場合じゃないでしょ!!。
早く起きて全軍に!!。」
「でも知らせてどうするんですか!!。
船は全て鎖で繋がれたままですよ。」
そう、船と船どおしは鎖で繋がれたままである。
安定感を持つために簡単に外せないのだ。
長期戦に耐えられる様にとの配慮が裏目に出てしまった。
「ぬお、間に合わぬか!?。」
ドカッ!!
紅蓮の炎で包まれた船の先に付けられた杭が、強烈な音を立てて次々と”連環”の船団に突き刺さっていく。
この衝撃で完全に目を覚ました兵士達、だが目にしたそれは自船に次々と引火していく様だった。
ゴォーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・お、おいなんだよこれ。」
「ネルガルのなんとかって将軍が投降するんじゃねーのかよ?。」
「なんでうちの船に火がついてんだ?。」
状況を把握できない兵士達が次々にそんな言葉を交わす。
だが次に目にしたもので完全に理解した。
「あ、見ろ向こうを、ネルガルの船団が近づいてくる!?。」
「嘘だったんだ!!。」
「それどころじゃねー!!、どんどん引火してるぞ、早く陸へ上がらねーと!!。」
ついに総攻撃に出たネルガルの船団と炎の自船団を見て、士気系統は完全に分断された。
「どうするんですか、艦長!!、敵の総攻撃ですよ!!。」
メグミの問いにしばし沈黙のユリカ。
当然である、アキトが手に入るどころかネルガルに奇襲を食らっているのだから!!。
「ユリカ先輩、ご采配を!!。」
ようやく目を覚ましたイツキも沙汰を待っている。
ややあってユリカは歯がゆそうな顔をしながら重い口を開いた。
「う〜・・・・・・・・・・・・・・・・、悔しいけど、撤退します!!。」
ユリカは船団を放棄して烏林からの撤退を決断した。
その間にもネルガルの船団はどんどん近寄ってきていた。
「さ、艦長、早く陸へ上がりませんと!!。」
ヨシサダへ促され雛菊を降りるユリカ。
その表情は悔しさでいっぱいだった。
「なんでこうなるのよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!(涙)。
アキトーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!。」
場違いにも敵に助けを求めていた。
この時ばかりはメグミも呆れ顔だったとイツキは後に語った・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・
遠くから歓声が聞こえ、烏林の岸が真っ赤に燃えている。
実行役で前衛のゴートの後方にネルガル水軍本隊が待機状態だった。
主船常緑草(ユーチャリス)からこの光景を見ていたラピスは奇襲に成功したことを悟った。
「よぉし!!、全軍突貫!!。
烏林に上陸してナデシコAを撃破して!!。」
「御意!!」×家臣一同
指示は各船にすばやく行き渡り、次々に紅蓮の烏林に向けて行動を開始する。
いかに東南風による追い風とはいえ潮の流れが激しい長江を自在に進めるとは、ネルガルの操船技術の
たまものである。
「!?、ゴートさんもう上陸してるみたいだ。
急いで追いつかないと「ハハハハハハハハハハハハハ!!、
敵はどこだ!!。」
やたら馬鹿でかい声が船団を駆け巡った。
気を失ってしまうかもしれないほどに(ユリカと一緒じゃねーか)。
叫んでいたのは呂蒙ガイ、ネルガル水軍本隊の主力の1人として当然従軍していた。
桃色の鎧に身を包むその姿はなんともアンバランスな印象である(だってピンク色)。
「はっはっは!!、本隊の切りこみ隊長役とは、ラピス都督も意気な計らいをしてくれるぜ。
よぉし!!、ブロス!!、このガイ様についてこいやーー!!。」
別の船から指揮をとっている中郎将韓当ブロスに大声で怒鳴った。
一方ブロスはふらふらになっていた(笑)。
『こ、声が大き過ぎるよ〜(汗)。
意識が5秒くらい途切れた〜・・・・・・・・・・・・・・。
き、君大丈夫〜。」
部下の1人に声をかけると、やはりふらふらだった。
「は、はあ・・・・・・・・・・・・・・・・。
少々耳鳴りが響いております。」
『そうだよね〜。
お目付け役の万葉君は〜?』
「は!!、陸孫万葉様は陸軍の本隊に従軍されております。
そのためここにはいらっしゃいません。」
部下の報告を聞いてブロスは、『はあ〜』、とため息を漏らした。
ガイの暴走を止められる数少ない1人がいないからである。
『武勇では文句のつけようがないのに〜。
これで知略と知性と落着きが出ればな〜(切実)。」
このブロスの願いが届くのはもっと後の話である。
ブロスが物思いにふけっているうちにいつのまにかガイの部隊は烏林に一番乗りを果たしていた。
ガイの部隊兵達は大声に慣れていたのだ。
そして燃え盛る烏林のナデシコAの船団で、ガイの雄たけびと共に攻撃が始まっていた。
「食らえい!!、
ガイ、はいぷぁーーー、なっこうーーーーーーー!!」
ドッゴーーーーーン!!
「ぐわ!?」
「うげぇ!?
「あべし!?」
ドボン!!
ドボーーーーーーン!!
ドッボーーーーーーーーーーン!!
強烈な右拳打により吹っ飛んで長江へ次々と沈んでいくナデシコAの兵士達。
そう、呂蒙ガイの武器は剣や槍ではなくなんと拳。
右手につけられた手甲、暗黒破砕拳(ブラックホールフィスト)より繰り出す一撃はすさまじく、
衝撃で複数の人間を瞬時に倒すことができるのだ。
当然直撃を食らった人間はただではすまない。
食らった個所が拳だいに陥没し絶命する。
これにより彼はネルガルでも指おりの猛将として畏怖されていた。
「ば、化け物だー!?。」
「あんなのと戦って勝てるわけねー!?」
恐怖を口にして逃げ惑うナデシコAの兵士達。
ガイはというと悦に入っていた。
「はははははははは!!、このガイ様と戦う勇気を持つ奴はいないのか!!。
そらそら向かってこないならこっちから行くぞ!!。」
焼き討ちの挙句大将のユリカが戦線から離脱している状態である。
戦意など持ち合わせているわけはない。
だがガイにそんなことを察する神経はなかった。
「フォーーーーーーーーー!!、ガイ、はいぷぁーーーーー!!、なっこうーーーーーーーー!!。」
奇声を発しながら再び拳打を放つガイの手により次々ナデシコAの兵士達が葬られていく。
これに加え、ゴートと遅れてやってきたブロスの軍、更にラピスの本隊も到着。
これによりネルガルの勝利は決定的なものとなった。
ついにナデシコAは戦線を放棄、逃げるもの、降伏するもの、様々だったがそこに幹部連の姿はなかった。
どうやら虎の子である主力と共にいち早く脱出したようである。
その証拠に降伏してくるのは荊州兵ばかりだった。
そしてその多数が疫病にかかっているものだった。
「くあー!!、艦長の姿がねーじゃねーか!!。
逃げ出しやがったか!!。
ま、でもこれでナデシコAなんて対したことないってことが天下に知れ渡ったってわけ
・・・・・・・・・・・・・・・おわ!?。」
鷹揚に勝ち台詞を上げていたガイに突然刃が襲った。
片刃の剣、それは紛れもなく張遼リョーコの愛刀、赤雷だった。
「いってくれんじゃねーか、この馬鹿野郎がよぉ!!(怒)。
楽な戦はさせねーぞ!!。」
なんとリョーコの部隊は残っていた。
ユリカを逃がすために岸でふんばっていたのだ。
その証拠にネルガルの兵達の死体が多数転がっている。
混乱の中の一矢だった。
「負け犬の遠吠えにしか聞こえねーぞ!!。
このガイ様をなめると痛い目にあうぜ!!。」
部下を制したガイは一騎打ちを望んだ。
ブロスやゴートも来ていたが、あえて止めはしなかった。
すでに烏林での大勢は決している。
ガイの強さはよく知っているし、仮に敗れたとしても影響はでないほどに勝利しているのだ。
またリョーコの行動が足止めだということもわかっている。
だがラピスには無理してユリカを追う意思はない。
猛将リョーコを討ち取れればよし、だめでも影響はなし。
リョーコは愛馬、赤鳳花をぽんと叩くと、赤雷を片手に猛然とガイに突進していった。
ガガガッ!!、ガガガッ!!
「おりゃあ!!」
ガキーン!!
雄たけびと共にリョーコの馬上からの一撃がガイを襲ったが、ガイは手甲でこれを阻止。
双方ともに驚きを覚えたようだ。
「な、なんて奴だ、馬上からの一撃を右腕一本で受け止めたってのか!?。」
「て、てめーこそなんて早さだ!?。
あとちょっと防御が遅れていたらやられてたぜ!!。」
だが利はリョーコにあった。
当然である、馬上からの攻撃の方がはるかに早さも力も射程も上だからだ。
「そりぁそりゃそりゃそりゃ!!。」
赤雷から繰り出される連続攻撃がガイを襲う。
紙一重で交わし、そして受け止めていたが明らかにガイが押されていた。
「くっそーーーーーー!!。
頑我を連れていれば!!。」
ガイの言葉を聞いて見物状態に入っていたブロスがゴートにたずねた。
『ねえ〜、頑我って何〜?。』
「・・・・・・・・・・・・・・確か彼の愛馬だ。
頑我(ガンガー)、妙な名前だが。」
『うん。
でもさ〜、拳じゃあ射程が短いから馬に乗っていてもあまり意味がない気がするけど〜。』
「負け惜しみのつもりなんだ。
言わせてやれ。」
そうこうしているうちにいよいよガイは追い詰められていた。
馬を差し引いてもリョーコの方が実力は上のようだ。
「ヨシ!!、これで決めるぜ。」
そう言うとリョーコはゆっくり距離をとりはじめた。
チャンスなのだがリョーコの強さにネルガルの兵士達も恐れて近づけない。
ガイはというとチャンスを感じた。
「!?、チャンス!!。
俺の”はいぷぁーなっこう”が近距離にしか使えないと思うなよ!!。」
ガイは右拳を握り締め構えはじめた。
すると拳が妖しく輝き出した。
「食らえい!!、
ガイ、はいぷぁーーー、なっこうーーーーーー!!」
ドオーーーーーーン!!
そう、この暗黒破砕拳は遠当ても可能だったのだ。
彼は集中力が散漫なためなかなか使えないのだが、追い詰められため今回は成功した。
「おお!、あんな隠し技を持っていたとは!?。」
『逆転だ〜。』
ゴートとブロスもびっくりの大技が一直線に向かっていく。
だがリョーコは刀を鞘に戻していた。
そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
「二の太刀、十文字!!」
ザン!!
抜刀から放たれた衝撃は、文字通り十文字となってネルガル側の方へ向かっていく。
このために距離をとったようだ。
ゴワッ!!
ギュイーーーーーーーン!!
互いの技がぶつかり合う、そして競り勝ったのはリョーコだった。
「なにっ!?」×ネルガル全員
威力こそさがったもの、その一撃でネルガルの兵達は少なからず被害を受けた。
「うげぇ!?。」
ショックのところに容赦ない威力が襲い、ガイは吹っ飛ばされた。
『うわぁ!?』
ブロスも吹っ飛ばされる。
「ぬお!?。」
ゴートに至っては吹っ飛び過ぎて長江へ落ちてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅ。
くそ、あの一撃で全部つぶすつもりだったのに。
あのガイとかいう奴、とんでもねー技もってやがる。
遠当てとはいいえ、俺の十文字の威力があれほど落ちるなんて。
世の中広いぜ、俺より強いのはアキトだけだと思ってのに。」
ひとしきり毒づくとリョーコは残った配下を連れ烏林を落ち延びていった。
猛将として知られる呂蒙ガイの敗北はネルガルの兵士達に少なからず影響したようである。
そのせいか兵士達はリョーコ達を追えなかった。
『・・・・・・・・・・・・あいたたた〜。
すごい武将がいるな〜。
でもまあいいや〜。
ラピス姉は追わないで江陵へ行くっていってたし〜。』
最初に目を覚ましたブロスは気絶しているガイをどうするかに気を回したようだ。
こうして、ゴートの奇襲は見事成功しナデシコAの”連環”を焼き払うことができた。
だがユリカは討ち取られることなく華容道から江陵へと落ち延びようとしている。
そしてその動きに劉備サラや諸葛亮ルリらは対応できるのだろうか。
命令無視して烏林に出張ってきていた夏候淵テツヤの動きは?。
長江へ落ちたゴートの生死は?(実はどうでもよかったりする)。
赤壁の戦いは終幕へ向かおうとしていた。
ちなみに、ナデシコAが奇襲を食らった理由として、ユリカの大声で気絶していたからだというのをネルガルが
知るのはもっと先の話である(笑)。
ドクターイネスの三国志講座
皆さんこんにちは、ナデシコ科学班および医療班担当のイネスです。
今回は赤壁の戦いについて第2回をお送りするわ。
興味のある人は読んでみてね。
ちなみに私の出番はもうしばらくここだけだと作者が言っていたわ。
うふふ、そろそろヤマダ君やマキビ君に続く新たな実験台が欲しかったのよねぇ(イネス先生トリップ中)。
赤壁の謎5、大戦か局地戦か!?
赤壁の戦いは正史があまりにも曖昧な記述が多いため、局地戦だと主張する人が多いわ。
それも当然の話で、大敗はしたと言われながら曹操のその後の軍事行動に赤壁が影響しているという印象は
記述からは感じられないものね。
精神的な面では影響は出ているものの、212年の呉への進攻、馬超の撃退、漢中奪取と度重なる戦いを
継続して行っているわ。
ではやはり赤壁の戦いは局地戦だったのかしら。
赤壁の戦いの際、孫権は周瑜に3万の兵を与えたわ。
40万近いといわれる曹操軍にわずか3万ではと、劉備も正直びびっていたようね。
ではなぜ周瑜は3万しか率いてこなかったのか。
実は呉は曹操の進行に際し、前線全てに兵及び将を配置しているの。
対曹操の拠点であった柴桑、本拠地である建業、後方の広陵、歴陽、盧江にそれぞれ守備軍を配置。
いわば総力体制であるこの布陣は、10万を動員できると豪語しておきながら3万しか攻撃にまわせなかった
皮肉が具体化した結果と言えるわ。
そして曹操はこれに対応した形で合肥、そして後に激戦となる襄陽にも兵を回したの。
もしこれを局地戦と称するなら、互いに万全の防備を強いたがゆえに大きい戦にならなかったと言えるんじゃ
ないかしら。
結論づけとしては、兵力は大戦だったが戦闘そのものは局地戦だったでどうかしら。
赤壁の謎6、劉備の行動は?
赤壁の戦いでもっとも得をした男、それは劉備。
曹操が呉に敗れて北へ逃げ帰りそれを呉が追ったため自由に行動するチャンスを得られ、南荊州4郡を
あっさりと支配化に置いたわ。
演義での南荊州奪取は過剰な演出が加えられているのだけれど、正史では別段抵抗もされなかったようね。
そんな劉備だけど、赤壁では一体どのような役割だったのかしら。
演義では諸葛亮の指示の元、曹操をあざ笑うような追撃をした以外には別段ないわ。
そして正史でもはっきりとした記述はないの。
武帝紀によれば、「公は赤壁に至り、備と戦ったが、利がなかった」、すなわち赤壁で劉備と戦ったが
勝てなかったということね。
この曖昧な記述から考えれば、やはり赤壁は劉備と曹操の戦いだったということになるわ。
これもはっきりではないけれど、劉備と孫権は同盟している以上、最低でも劉備の立場は周瑜以上のはず。
やはり彼もまた対曹操の中心として戦っていたのではないかしら。
また呉書に劉備の活躍は書かれてはいないものの、後年敵対した劉備を貶めるため情報操作をしたという
疑惑がありむしろそれが劉備の活躍を位置付けているともとれるわ。
周瑜が水路を選んだのに対し、劉備は陸路で激しい追撃を行ったようね。
それはむしろ当然で、呉が破れればもう劉備に向かうところはないわ。
そう考えれば少ない記述からでも彼は積極的に戦に参加していたのではないかという推測も信憑性十分だと
思うわ。
ではまた後編で会いましょう。そう言えば今回アキト君もルリちゃんも出番なかったわね(ちょっといい気味)。
管理人の感想
3104さんからの連載第八話中編の投稿です!!
ガイ・・・活躍してるな〜
まあ、最後は見事に散ったけど(生きてるって)
それにしても、アキトなんて今回名前だけの登場だもんな(苦笑)
ルリちゃんなんて、名前すら出てないような気が・・・(汗)
それぞれが活躍をして、戦闘は最終局面に向かいつつあります。
さて、後編ではアキトの出番はあるのでしょうか?
最後に、ゴートさんの生死は如何に?(爆)
では3104さん、投稿有り難う御座いました!!
次の投稿を楽しみに待ってますね!!
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