そう、それは長い長い夢、夢と言う名の不思議な物語・・・・・・



『俺の帰るべき場所は・・・ナデシコだ!!

 皆が揃っているナデシコだ!!

 どこに飛ばされようと、俺は絶対帰ってくる!!

 例え、遥かな距離だろうと、時を越えても―』





ふいに少年は目を覚ました

でも景色はにじむ

涙?・・・僕は泣いているのか?

あのつらくて悲しい夢を見たから・・・・・・かな?



それは運命のいたずらだろうか

一人の青年の数奇で過酷な物語・・・・・・

夢の中で少年はその青年になっていた



幼いころに両親を失い

成長してナデシコという機動戦艦に乗り込み

そして終戦

幼馴染と引き取った養女とのささやかな家庭、ささやかな幸せ

しくまれたシャトルの事故・・・引き裂かれた小さな幸せ

桃色の髪の少女を伴い白い戦艦を駆る復讐者、黒い王子様・・・・・・

火星の後継者の乱の勃発・・・終結

仇敵北辰との決着をつけ・・・黒い王子様はアテもなく宇宙をさまよう


そして、ナデシコCとの追いかけっこの果てにジャンプの事故・・・・・・





青年はその事故で時をさかのぼり

再びナデシコに乗り込む・・・すべてに決着をつけるために

だが、強くなった青年にはより過酷な戦いが待っていた

新しい出会い、より強い敵

北斗との出会いと戦い、交流



そして、再び火星の極冠遺跡での戦い

そして青年は遺跡に取り込まれ・・・・・・・・・





そして目を覚ました少年は思う
涙をぬぐいながら

僕はどうしてあんな夢を見たのかな?
夢と言うには妙にリアリティがあったような・・・

それとも、かえって現実味がないとも言えるだろうか?


「おお、気が付いたか、少年」

すぐ側で声がして、少年は、はっと気が付いた

「えっ・・・・・・あなたは?・・・それにここは?」

目の前に七十を越えていると思われる白髪の老人がいた

「わしか、わしはじゃな・・・・・・」

この老人の名は『アトスリュア・スューヌ=アトス・前フェブダーシュ男爵・スルーフ』

現フェブダーシュ男爵クロワールの父親である

そしてこれが、今、目を覚ました少年

『リン・スューヌ=ロク・ハイド伯爵公子・ジント』

ことジント・リンと前男爵との出会いでもあった






時の流れにIF

星界の漂流者



〜第二話「時空を越える者?」〜



By 三平






アキトがジャンプした先は、どこかの通路の中央だった

と、いってもかなりの広さがある場所なので、そうと知らされなければ気づかないかもしれないが
もっとも、アキトにはそんな事考えている余裕などなかったが・・・・・・



(友好的な雰囲気じゃあないよな・・・・・・)

ジャンプアウトした直後に人の気配を感じ、その方向を見ると
そこには二人、銃をかまえた黒っぽい服装(?)の青い髪の少女と、その後方にメイドらしい女性が立っていたのだ

どういう場面に鉢合わせたのかわからないが、ここで楽天的な気分になれるほどアキトは楽な人生送ってなどいない

何より彼は侵入者であり
どのように言いつくろおうとも、見た目からして怪しさ大爆発なのだから・・・・・・



一瞬、時が止まったかのような錯覚を受けたが、次の瞬間少女の口から誰何の声があがった

もっとも、アキトには何を言っているのかさっぱり言葉がわからなかったが

まあ、こういう状況である、『うごくな』とか『何者?』とかそんな所だろう・・・雰囲気的にも



また、その少女の銃の構えなど隙が無く、良く訓練されたものなので

『ここの警備員か駐留の軍人なのだろうか?』などと思ったが

この時点で情報のほとんど無いアキトには、この少女が星界の王女様であるなどと洞察するのは不可能であろうか

(まあ、軍人というのはあながち間違いではないが・・・より優雅に翔士修技生とか表現するべきかな)



できれば無駄な争いはしたくない・・・抵抗してこの少女達を傷つけるようなことはしたくないし、
ここは大人しく捕まるべきか・・・・・・アキトはそう思いかけたが・・・





いきなり前方通路の中央が光ったと思ったら
誰もいなかったはずのそこには人影が立っていた

全身黒ずくめのあやしげな青年、少なくともここの人間とは思えない・・・

多少の事では動じない(ように見える)ラフィールであったが、さすがに一瞬動きが止まった

さすがに人知を超えた現象
少なくとも自分の知識で計れない出来事が起きた場合、呆気に取られてしまうのは仕方が無いか?

とはいえ、呆然と思考停止したのは一瞬の事で、次の瞬間ラフィールは行動と思考を再開させていた



「動かぬがよい、そなたは何者であるか?」

凝集光銃の狙いを定めながらラフィールは誰何した
ある意味間抜けな展開である

本来ならさっさと家政室に行き、ジントと連絡をとるなり脱出の算段をするなりしなければならない所である

今は一分一秒と言えど貴重である・・・のはずなのだ



だが、だからといって得体の知れない侵入者を放っておいて行く事もできない

この者の正体が何であれ、放置するのは危険だ・・・ラフィールは本能的にそう感じていた

だが、彼女らしくない事だが、なぜかそれ以上動くに動けない
相手が殺気を放っている訳でもなく、そこにいるだけであるのに・・・・・・なぜか気圧されている気がする


!!馬鹿な、私はあの者を恐れているのか!?


それは負けず嫌いで、ある意味怖いもの知らずのラルトネーには初めて体験する容認できない未知の感覚だろうか?
そういうわけでもないのだろうが、ここで引くとか逃げるとか言う発想は彼女には出てこないのだった

『本当に、一体何者であろか?』

そう思わないでもない

ラフィール自身、今までそれほど修羅場というものを体験しているわけではない、が
こんなつかみ所のない相手は初めてだった。


人類統合体あたりの工作員と考えられないでもないが、こんな辺境に送り込む合理的理由が思い浮かばない
理由うんぬんはともかく、そういうのとは違う気もする(でも、放っておくことも出来ない)




にらみあい(?)が続く・・・
両者にとって長い時間のように感じられたかも知れないが、実際はほんのわずかな時間

そのわずかな時間、両者はお互いの出方をうかがうが・・・・・・

唐突に破局がおとずれた


ラフィールの後方から凝集光銃のエネルギー弾が発射され、侵入者の間近に着弾したのだ
もう一人、その場にいたセールナイが緊張に耐えられずに発砲してしまったのだ・・・・・・
この件で、素人の彼女を責めるのは酷だろう。だが、あるいは事態が動く時とはこんな物かもしれない

同時に侵入者、アキトは動いた、動かざるえない・・・
これを切っ掛けに、とまっていた空気は一気に加速した

『!はっ、早い!!』

狙いをつける余裕もない、普通の人間なら目の前から急に消えたように見えるだろう
実際、ラフィールの目からも消えたように見えた・・・
ただ、アーヴには空識覚器官(フローシュ)があり頭環(アルファ)によって相手の位置など知る事も出来る

そして、実際ラフィールは目に見えずとも侵入者を補足していたのだが、スピードについて行けない
これでは狙いをつけるどころではない
射撃には自信があり、並みの相手なら問題なく対応できたのだが、生憎並どころかとんでもない相手のようだ

はっ、と気が付いた時には成すすべも無く背後に回りこまれていた

『ごめん』

ラフィールの知らない言葉で相手の一言
その直後、首筋にショックをうけ、ラフィールは意識を失った








「参ったなあ、どうしよう?」

その場にいた二人をあっさり気絶させたアキト

さてどうしようか?と思案しかけたとき


パチパチパチパチパチ・・・・・・


どこからともなく拍手のような音が鳴り響いた、と思ったら

「いや、お見事お見事、さすが漆黒の戦神と向こうの世界で呼ばれただけの事はあるね」

誰もいないはずのこの場に、甲高い子供のような声で誰かが話しかけてきた・・・アキトの知ってる言葉で

「!?誰だ、なぜ俺の事を知っている? それに何処にいる!!」

気配はまったく感じられない、それなのにコミニュケや何かのスピーカーからの音でなく肉声で話しかけられた

「慌てなくても今姿を見せるよ、アキトくん」


それは、明らかにボゾンジャンプとは異なる現象だった
何もない所から、ひょいとばかりに十歳くらいの赤毛の少年が姿を現したのだから・・・

たとえるなら、どこか隠れていた物陰から出てきて姿を現したような感じだろうか?
もっとも、あくまでものの例えであって、そういうのとも違うような気もするが・・・


どんなヤツが現れるかと思ってたアキトは少し拍子抜けしたが、それでも油断なく対していた
得体の知れない相手なのだから、見かけに惑わされたら痛い目にあうかもしれない

「失礼だね、せっかく君の手助けしてあげようと思ったのに、得体の知れないやつはないと思うよ」

「な、俺の考えている事がわかるのか?」

「まあね、だからおかしな事考えない方が良いよ」

そうは言いつつ、その少年は別に気を悪くするでもなく、会話や状況を楽しんでいるようでもあった

「あ、一応自己紹介しておくね、オイラの名はナオ、時空の旅人と言った所かな」

「ナオ?」思わず知り合いのあの男を思い出すアキト

「名前がたまたま一緒なだけだよ、だけどオイラとあんなのと一緒にしてほしくないよ・・・・・・」

少し不愉快そうに言うナオ君、もっともヤガミ・ナオの方でも何と言うやら



ちなみにこのナオ君、顔は可愛いけどちょっと生意気そうな表情をしている
体型は小柄ですらりとしてすばしっこそうである。
変わったところで言えば、着ている物がそでのない貫頭衣のようなものを着て裸足でいること
まるで、ファンタジーの世界の下町から抜け出たようなそれは、はっきり言ってここではミスマッチだろうと思うが・・・

アキトはこの少年から相反する二つの印象を受けていた
その見た目通りのどこか悪戯っ子のような表情と、表に出してないが、どこか大人びたさめた様な印象と・・・



「アキト君はあの遺跡ユニットのせいでここに飛ばされたんだよね?」

「ああ、まさかとは思うが、もしかして・・・・・・」

「そういう事なら違うよ、アキト君を飛ばした遺跡とオイラは別口だよ・・・だけどアキト君を向こうに帰すことは出来るけどね」

その少年、ナオ君は事も無げに言い放つ
たちまちアキトは反応した

「!!だったら俺を帰してくれないか、ナデシコへ、みんなの所へ・・・」

本当にそれができるのか?
本来なら見た目がこんな少年が言ったところで信じられる物ではないはずだが、アキトは信じた
溺れる者はなんとかをつかむ・・・でもないだろうが、さっきからのことやこの少年の話
何より目を見てウソ言っているように見えないと感じたから・・・・・・


「すぐには無理だよ、それにタダというわけにもいかないし・・・」

そう言ってナオは倒れている少女、ラフィールの方を見る
つられてアキトもその少女を見た

「本来ならばこの子は今頃家政室を制圧していたはずなんだ、イレギュラーの君が現れなければね・・・」

アキトはハッとした

どういう事なのか細かい事はわからない、だが
本来いない筈のアキトがここに来たために、歴史が変わりつつあることは理解できた


「俺はどうすればいいんだ?」







そのころ、フェブダーシュ男爵クロワールは
家臣(ゴスク)のなかでとくにお気に入りのメンバーで選抜された武装家臣団を編成し終えた所であった

「よし、では不審な侵入者を排除し、王女殿下をお救いしにいくぞ」

彼は彼の計算で動き始めていた・・・
本来の動きとはわずかに狂いが生じ始めた歴史がどのように修正されるのか?

まだ、だれにもわからないのだった





つづく





あとがき

さて、遅くなりましたが、星界の漂流者の第二話お届けします

こんなに苦労するとは思ってなかったです。何度も書き直しましたし・・・・・・

当初はもっと原作にそった展開を考えていたのですが、アキトがそれではそこにいるだけで書いていてつまんなかった

おそらく、読んでいてもつまんないだろうなあ、と、思いましたもので、このさい多少話を壊してもいいな

そういうつもりでこれ書きました。(ああ、ラフィールに手荒なマネしたからって怒んないでね、なぜかああなってしまったんです)

でも、中途半端だなあ、これはこれでなかなか進まずに苦労しましたが、さすがにこれ以上先送りしたくなかったので

これでやってみることにしました・・・話が進むのは次回からかなこの展開だと(さんざんまたせてこの内容ですみません、苦笑)

とりあえず、あと二回でフェブダーシュ編を終わり、外伝(?)はさんでクラスビュ−ル編に早く行きたいなと、予定は

立ててますけどさて、どうなりますやら・・・

オリキャラの謎(?)の少年ナオ君、ご都合主義的な気もしますが、遅かれ早かれ出すつもりだったので、まあ

気にしないでくださいね(特にモデルはいません)

ぽつりぽつりと星界ネタで書く人出て来てますし、他にも書く人が出る事を、一読者として期待してます(本当だれか書かないかな)

そんな所で、今回はこの辺で・・・・・・

 

代理人の感想

 

ナオ君とやら、十分得体が知れないと思います(笑)。

こんなキャラを出して大丈夫かなとちょっと考えないでもありませんが(爆)。