(ササミの航海日誌「第二話」)
西暦2201年末、火星宙域にて
ユーチャリスとナデシコC、二隻の戦艦がカーチェイスならぬ戦艦チェイス(そんな言葉あるのか?)していた
遠い異世界の代理人と呼ばれる人物の言う 『お約束』 と呼ばれるやつである
「帰ってきてください、アキトさん!!」
「・・・俺とユリカの道が交わる事はもうあり得ない
そうルリ、君と同じ道を歩む事も無い
もし、全てが・・・
よそう、それは言っても仕方が無い事だ。」
(イヤホント、書いててこう言うのもなんだがお約束だな、僕も何回書いたろう、苦笑)
「よし、ジャンプ先は・・・」
「させません!! アキトさん!!」
ドガッッッンンン!!!!!
ナデシコCからユーチャリスへ強襲用のビームアンカーが打ち込まれ
これまたお約束の事態へと状況は悪化して行くのであった
「駄目だアキト!! フィールドの制御装置にアンカーが直撃して暴走している!!」
ラピスの報告はほとんど絶望的な状況である
「ルリちゃん、早く逃げるかアンカーを切り離せ!!
このままだとナデシコCも、ユーチャリスのランダムジャンプに巻き込まれるぞ!!」
「ハーリー君!! 急いでアンカーを切り離して!!
ディストンション・フィールド緊急展開!!」
しかし、どこまで行ってもお約束はお約束
ナデシコCのアンカー切り離しは間に合う事は無く、フィールドの展開も間に合う事も無く
二隻の戦艦はランダムジャンプでその世界から忽然と消えた
ただ、いろんな人たちのやり切れない想いだけを残して・・・・・・
「アキトさん・・・・・・」
機動戦艦ナデシコ
砂沙美の航海日誌
〜第二話「逆行者の想い、そして・・・」〜
By 三平
ここは・・・私は一体?
「ああ良かった、ルリちゃん急に苦しそうな顔をして気を失うから心配したわよ。気分はどう? 具合は悪くない?」
!!?目の前にいるその人は!!
「み、ミナトさん、何故あなたがこんな所に!? それにハーリー君やタカスギさんは?・・・・・・」
「?なぜってナデシコの調整の為だけど、数日前からずっと一緒にやっていたじゃない
それに、ハーリー君とかタカスギさんとか言うのは? 夢でも見ていたの?」
夢? そんなはずありません、あれが夢なわけが・・・
ふと、小さな自分の手に気が付き、驚いて自分の身体を見下ろしてみると
!? えっ、か身体が縮んでます!!!
それに着ている服もナデシコA時代の物です・・・これはまさか
あたりを見回してみると、そこは懐かしいナデシコAのブリッジで、そこにいるのはあの頃のミナトさん
まさか・・・でもそうとしか・・・・・・
だんだん落ち着いてきて状況が見えてきて、私は一つの結論に達しました
あの時のランダムジャンプで精神、あるいは魂が過去の自分の身体に戻ったのでしょうか?
だとしたら今の状況の説明がつきます・・・もっとも専門的なことはわたしにもわかりません
この場にイネスさんでもいれば説明してくれるかも・・・・・・まあ、それは遠慮しておくとして
ちなみに、今はナデシコ出航の一週間前ですか
一週間後には、木星蜥蜴の襲撃があり、あの時アキトさんと初めて出会ったんでしたっけ・・・
「あの〜ルリちゃん、さっきから一人でぶつぶつ言っているけど本当に大丈夫?」
「えっ、あ、ああ大丈夫、大丈夫ですミナトさん、ご心配をおかけしてすみませんでした」
ぺこり
「よかった、とりあえず大丈夫そうだけど具合が悪くなったらすぐに言ってね、私はすぐそこにいるから・・・」
ミナトさん変わりませんね・・・あ、過去だからそう言うのもヘンですか?
でもこのころはまだ『ルリルリ』とは呼んでなかったんですね、そう言えば・・・何時からでしたっけ?
おや、わたし宛ててしょうか? 何やら通信が来てますが?
『艦長・・・いえ、ルリさん!! 僕の話を聞いて下さい!!』
「うるさいですよ、ハーリー君」
ハーリー君からでした。
わたしがそう言うとハーリー君はがっくり来た様子でしたが、まあそれは置いておいて(ひでー)
という事は、わたしやハーリー君以外にもあのランダムジャンプで、過去のこの世界に戻ってきている人がいるかも知れません
とうぜんあの人も・・・・・・
アキトさん・・・
あなたも今頃この世界のどこかに戻ってきているのですか?
だとしたら、もう一度ナデシコに乗り込むのですか?
あの未来を変えるために
悲劇を繰り返さないために
私は待つ事にしました・・・・・・一縷の望みを抱いて
ルリはまだ気づかない・・・この世界が自分の知っている世界と微妙にちがうということに
何よりも、その微妙な違いがアキトとその周辺に大きく出ていてルリの思惑を大幅に狂わせることになるのだが・・・
まあ、何はともあれ一週間後
いよいよ今日です、アキトさんは来てくれるのでしょうか?
期待と不安が入り混じる複雑な心境です
でも、アキトさんが来るまでまだ時間があるはずですし、それまでどうするか・・・
ピッ 『ルリ』 と言ってオモイカネのウインドウが開きました
「何ですかオモイカネ?」
『ルリの言っていた、テンカワ・アキトらしい特徴の人物がプロスともう一人と一緒に車に乗ってこのドックに来たよ』
「!!なぜこの時間に、まだ少し間があるはずです、それになぜプロスさんと・・・・・・!?」
そこまで考えて、私はアキトさんが事前にネルガルと交渉している可能性に思い至りました
(まあ、じっさいナデシコSS逆行モノではわりとポピュラーな展開ですしそのくらい思いついてもおかしくないでしょう)
「そうですか、そうだったんですねアキトさん・・・やっぱりあなたは私の知っているあのアキトさんなんですね」
もしそうでなかったらあの時のように、ユリカさんを追いかけてきてナデシコに乗り込んでくるはずです
事前交渉など、あのころのアキトさんでは思いもよらない事のはずですし
そういうことならとにかく行かなくては・・・会って話したい事がたくさんありますし
何より私は早くあなたに会いたいです
私も戻ってきていると知ったら、アキトさんはどんな顔をするでしょうね(くすっ)
無理の無いことかも知れないが・・・
ルリのそれは希望的観測で物事を予測したため実際とは状況は異なっていたのだが、それを責めるのは酷だろうか?
だが、事態は待ったなし、遅かれ早かれ動き始めるのであった
私が待っていると、プロスさんに連れられてアキトさんたちがやってきました
やっとまた会えるのですねアキトさん
嬉しさのせいでしょうか? 私の胸はドキドキと高鳴っているのを感じます
落ち着かないと、アキトさんを驚かせるのですから平静を保たないといけません・・・
??何でしょう、プロスさんとアキトさんはわかるのですが、もう一人は・・・!?
年恰好は今の私と同じくらいで、水色の髪をツインテールにまとめていて、私のような金色の瞳をもった女の子!!
まさかこの子はマシンチャイルドなのですか? それも私の知らない・・・・・・
まあいいでしょう、私の知らないだけでそんな子がいてもおかしくないのかも知れません
(実際ラピスやハーリーのこと、この時期本来のルリは知らなかったし)
問題なのは私のアキトさんの隣に当然のように立っていることです
いまはその事を追求する時じゃないですね、気にはなりますが詮索はあとできっちりするとしておかしなことは無いですよねアキトさん
あの子の事は気にしない事にしましょうあくまで今はね・・・・・・
もっとも皮肉な事に、おかげでかえって落ち着けたようですが
そして私はあの人に声をかけました「今日は・・・アキトさん」 と・・・・・・
でも、どういうことなのでしょう? 帰ってきた答えは私の予想外の言葉でした
「えーっと、あのさあ、僕の方は心当たりがないのだけど、勘違いとか他人の空似とかそんなことないかな?」
「!!そ、そんなはずありません、そんなこと・・・・・・」
うそです、うそです、そんなこと・・・そうですアキトさんは私を逆にからかっているだけですきっとそうです
でも・・・・・・
私はアキトさんの言葉を否定する材料をさがしてアキトさんたちを見ます
さっきまで浮かれていたせいで気が付かなかったけれど、アキトさんの私を見る目はまるで知らない人を見るようです
どうして、どうしてなんですかアキトさん・・・・・・
考えたくはありません、でもあなたは私の知っているアキトさんではないのですか?
確かめるのは怖いけど、確かめない訳にはいきません、私は覚悟を決めました
「アキトさんは、私の知っているテンカワ・アキトさんですよね?」
「「「!!?・・・はいっ!?」」」
なぜかこの場にいた皆さんの声がハモッてました
・・・予想外の反応なので私も戸惑いました・・・どういうことなのでしょう?
「ルリさん、ちょっと良いですか? 聞きたいことがあるのですが」
プロスさんが詰め寄ってきます、いつもの営業スマイルでなくもう一つの裏の顔で・・・
完全に詰問モードですね、どういうことでしょう? 何かまずい事言ったのでしょうか?
「ルリさん、単刀直入にお尋ねします、なぜあなたは『テンカワ・アキト』 この名前を知っていたのですか?」
!!どういうことでしょう!? 目の前に居るアキトさんの名前になにか問題でもあったのでしょうか?
私が悩むそのうらで、アキトさんともう一人の女の子が話しているのが聞こえてきます
「ねえ、アキト兄ちゃん、テンカワって何? ササミよくわかんないだけど・・・?」
「ああ、テンカワというのはね、お兄ちゃんの昔の姓なんだ・・・それでね・・・・・・」
「だーっ、カワイさん、私が尋問しているのに一体何話してるんですか!!」
・・・プロスさんこそ声が大きいですよ、でもおかげで断片的ですが情報が入りました
あの子が、ササミとかいう子がアキトさんの妹?・・・多分義理のでしょうけど
テンカワ、は昔の姓で今はカワイ? でしょうか? いったい何があったのですか
アキトさんがプロスさんの抗議を受けて苦笑してます・・・おかげで今は助かりました
でも、という事はアキトさんは私の知っているアキトさんじゃないと言う事なんですか?
そんなの・・・あんまりじゃないですか
アキトさんは、私の知っているアキトさんは・・・・・・えっ!?
一瞬、ほんの一瞬アキトさんにボゾン反応の光を見たような気がします
「!? 急にどうしたんですかカワイさん、しっかりしてくださいカワイさん」
「お兄ちゃん、アキト兄ちゃん、しっかりして」
!!?その直後、アキトさんが急に苦しみ出しだして倒れたようです
プロスさんとササミとかいうアキトさんの妹がすぐ介抱しています・・・!!こうしてはいられません私も!
「担架です、早くカワイさんを医務室へ」
「お兄ちゃん、ササミはここにいるよ、お兄ちゃん」
ササミさんはアキトさんのすぐ脇で手を握りながら声をかけ続けています
やがて、運ばれてきた担架に乗せられてアキトさんは医務室に運ばれていきます
もちろん、私もついて行きます。
その間もこのササミとかいう子はアキトさんの手を握りつづけていますが・・・少しイヤです
この件のせいで、私に対するプロスさんの追求はうやむやになってしまったようですが、そんな事はどうでも良いです
それより、アキトさんは大丈夫なのでしょうか?
いえそれより、さっきアキトさんが気絶する直前に見たあの光・・・それに
私が戻ってきたときにミナトさんの言っていた言葉
「急に苦しそうな顔をして気を失うから心配したわよ」
アキトさん、今度こそあなたが帰ってきたのですか? 今度目が覚めたときはあなたなのですか?
アキトさん・・・・・・
待っています、あなたが目を覚ますのを・・・・・・
つづく
後書き
今回は、ルリの一人称(?)で書いてみました。
ちょっと短めですが、この先はルリの一人称では苦しいので次回につづきます
(アキトやササミの事情はルリ視点では書けませんから、特にアキトのはね)
どういうことか、別にごまかしてもしょうがないので書きますが、逆行者たちは時ナデをベースにして書いてます
だから、ルリが戻ってきたのは一週間前だったし、時ナデでアキトが目を覚ましたのは夜(月を見てました)だったので
逆行アキトが過去の自分(?)に乗り移ったのは(やな表現だなあ)当日の夕方以降かなあ、と
さて、次に目を覚ました時アキトはどちらのアキトでしょうね? (どっちかで、全然この後の展開が変わってきますし)
まあその辺は、次回のお楽しみということで
話はかわって、アキトのこと下調べしていなかったのはルリにしては迂闊な気はしますが
時ナデ見てもそんな形跡ないですし、(一縷の望み抱いてるし)何よりああいう落とし方したほうが面白いかなあ、と
(面白ければよい、などと不届きなこと考えていたりします)
時ナデベースなので、逆行者はルリとハーリー、あと登場していないラピスとサブロウタですが、さてどうするかな?
その辺はまた次回のあとがきででも書くとしよう
このあとは、砂沙美の第三話書きます。ナデシコ発進まで終わらせたいし、そのあとはそろそろ星界やラピスも続き
書きたいのでそっちのほうやると思います(ああ、生産が追いつかない)
と、言ったところで今回はこの辺で・・・
代理人の感想
そうですね・・・やっぱりカワイアキトの方が面白いと思います(笑)。
逆行アキトだとそれこそ良くある展開になってしまいますからね〜。