(砂沙美の航海日誌「第四話」)

ナデシコの主砲、グラビティーブラストにより敵機動兵器は一掃された



「そんな・・・こんなの偶然よ・・・」

目の前で見た現実なのに認められないのでは柔軟性が無いといわれてもしょうがないぞ、ムネタケ
それとも、軍人の意地がそれを認めたくないのだろうか?



「認めざるをえまい、良くやった艦長」

フクベ提督のほうがよほど素直に現実を認めているようだ



「まさに逸材」

とにかくナデシコの綱渡り的な初陣もどうにか果たし
プロスさんほっと一息つき余裕の一言と言った所でありましょうか



で、賞賛されている艦長のミスマル・ユリカ嬢でありますが・・・

ある一点を見ていた・・・すなわち
お互いの無事を喜びあっている兄妹の兄の方を・・・





ともかくも、無事囮の役はたして帰ってきたアキトを迎えるためブリッジ要員の一部は格納庫に出迎えにきていた
ササミも当然来ていて、プロスやゴートがアキト兄ちゃんに必要な事話し終えてから兄妹の会話を始めていたが

そこには艦長のユリカも来ていたのであった。



「あの、私は艦長のミスマル・ユリカです。カワイさんでしたよね?」


「そうだけど、僕に何か?」


いきなり艦長に話しかけられて少し困惑のカワイアキト君
えっ、この人が艦長(?)などと少しばかり失礼な事も感じたとか?


「不躾な質問で申し訳ありませんが、あなた以前どこかでお会いしました?」

理由はわからない、だがユリカはそんな気がしたのだ


「多分初めてじゃないかな? 僕は会った覚えが無いけど・・・」

戸惑いつつも、そう答えるアキト、実際本当に覚えがないし


「そうですか・・・わかりました。」



ユリカはそれでも釈然としない物を感じて困惑していた。 私はなぜこの人の事が気になるのだろうか?、と
カワイ・アキト君もまた、艦長がそんな事言ってきた事に加え、その後の異様な空気にさらに困惑していた



ユリカさん勘がいいのだか悪いのだか・・・・・・





何にせよ無事今回の初陣が終わり、関係者がそれぞれの持ち場や部屋に戻っていったのだが



ミスマル・ユリカがそのカワイさんのこと(この時点では下の名前がアキトという事さえ知らない)
幼馴染だったテンカワ・アキトである、という事実を知るのにまだまだ少し時間がかかるのであった。





機動戦艦ナデシコ

砂沙美の航海日誌



〜第四話「二人の想いは火星へ・・・そして」〜



By 三平







さて、カワイ兄妹の部屋割りだが、さすがに二人は別々の部屋割りであった


・・・まあ、兄妹とはいえ当然の配慮だし二人ともその件に関しては特に不満はないようであるが
(ふと、とある桃色の髪の少女の場合だとそうはいかないだろうなあ、と思ってしまうのは何と言うか・・・)


そんな訳で、二人はそれぞれ自分の部屋でシャワー浴びるなり着替えるなりしてきて
あとで待ち合わせ場所にて、お互いの制服姿を見せっこしていた


アキトは厨房の黄色い制服でササミはブリッジ勤務の制服(子供サイズ)で、オレンジ色のベストにネクタイ姿
簡単に言えばササミのはルリが着ていたのと同じ制服である



「えへへ、お兄ちゃん似合ってるよ、ササミのはちょっと恥ずかしいんだけど・・・」

と、いうのもスカートがミニだからである・・・たしかに子供の制服までミニである必然性はないわな本来は
ササミがその言葉通り恥ずかしそうにスカートのすそ押さえてたりしてるもんだからかえって目立つかも



「心配しなくても良く似合ってるよ、それとそんなふうにしているとかえってみんなの目を引くよ・・・」


「うーっ、そんなこといっても恥ずかしいものは恥ずかしいよう」


ササミのそんな様子にアキトも苦笑せざるおえない、こればっかりは男のアキトがアドバイスできる問題でないしね
(筆者が意見述べるとすれば、○リティ○ミーのコスチュームよりは恥ずかしくはないと思うが、あれ?、爆)



まあ、それはさておき、結局アキトは現在コック兼臨時のパイロットということになっている
現在唯一のパイロットが骨折していて戦力として計算が立たないし、補充が来るまで臨時という事なのだが


ササミの場合、現在の所は、ホシノ・ルリが復帰するまで臨時のオペレーターという事になっていて
ルリが回復すればその補佐、予備に回る事になっているが、これまたはたしてどうなることやら・・・

(本当はササミちゃん、ああいう事が無かったら食堂でアキト兄ちゃんのお手伝いでもしたかったようではあるが)



「それじゃ、ササミそろそろ行かなきゃなんないから、アキト兄ちゃんもコックさんのお仕事頑張ってね」


そう言ってきびすを返し、ブリッジに向かうササミ、その後を黒猫(?)のリョウちゃんが追いかけて行くのが見える
アキトはその後姿を見送りながらつぶやく


「ササミも頑張れよ、僕もコックさんとして頑張るからパイロットじゃなくてね・・・



ともかくも、二人は別れて食堂とブリッジ、それぞれの新しい職場に向かったのだった







そんな訳で、ブリッジにやってきたササミは改めて自己紹介をしていた


「臨時でオペレーターをやることになったカワイ・ササミです。
 元気なだけがとりえだけど、どうかよろしくお願いしま〜す。」


シンプルでかつ飾り気はないが、ササミちゃんらしい元気な自己紹介のようだ


「私はハルカ・ミナト、躁舵手をやっているわ、改めてよろしくねササミちゃん」


そう言ってミナトさんにっこり笑ってササミちゃんを迎えます。
その笑顔にササミちゃんもホッと安心できたようだ


「こっちこそ改めてよろしくね、ミナトお姉ちゃん」


苦笑するミナト、あの時もそうだったがお姉ちゃんと呼んでもらえるとは思っても見なかったから
でも、ササミちゃんにそう呼ばれるのは悪い気はしない

『お返しにササミちゃんにも何か愛称考えてあげないとね、うーんと、
 ササミちゃんじゃあルリルリみたいに行かないし・・・どっしよっかな〜っ?』

笑顔を絶やさず内心妖しげな事考えてるミナトさん、ササミ危うしどんな愛称つけられるか(爆)
ただ、裏を返せばササミちゃん、ミナトさんにすっかり気に入られたということで、ここでの居場所は確保したと言える



「私は通信士のメグミ・レイナード、よろしくねササミちゃん・・・て、どうしたの私の顔じっと見て?」


「あーっ、どこかで見た顔だと思ったら子供番組に出ていたメグミお姉ちゃんだ・・・・・・だよね、もしかして違うとか?」


そう言ったササミだったが、もし途中で違っていたらどうしようと思い直したのか最後は少し自信なさげ
こんな所でこんな事言われるとは思っていなかったので、メグミは苦笑したが


「多分私がササミちゃんの見た子供番組のお姉さんよ、
 ササミちゃん見てくれてたんだ、でもあの番組の対象年齢はたしか・・・」

「うーっ、ササミ子供っぽいわけじゃないもん、でもでも、お姉ちゃんと一緒に出てたウサたんかわいかったよね?」

「ウサたんならあの時のぬいぐるみ貰ったのがあるから、あとで私の部屋で見てみる?」

「見る、絶対絶対見る、約束だよメグミお姉ちゃん・・・」



とまあ、こんな調子でササミはブリッジの女性クルー達と短期間のうちに打ち解けていったようである



『みゃ〜う』

「ああ、リョウちゃん、ごめんリョウちゃんの事紹介するのすっかり忘れる所だったよ・・・」


そう言って、飛び乗ってきたリョウちゃんを抱き上げて二人に紹介するササミ・・・が


「か〜わいい、この子リョウちゃんて言うの? ホント可愛いわね」

「ああっ、ミナトさんずるい、私も・・・」

『みゃ?』


速攻でミナトさんが抱き上げ、出遅れたメグミもずるいと言いながらリョウちゃんを抱きたがったりした

まあ、結局リョウちゃんことリョウオウキくんは順番に変わりばんこに可愛がってくもらえることになったのだが・・・

「ここはブリッジだ!、一体何をやってるんだ!!」

いつの間にかゴートとプロスペクター、それにフクベ提督がブリッジにやって来たようだ
ついでに、ヤマ『ダイゴウジ・ガイだあっ』もね

「何って?、ネコちゃんを可愛がっているだけだけど」

怒鳴るようなゴートの問いにしれっと答えたのはミナトさん

「ネコ?」ネコと言うには耳とか後ろ足とか大きかったりして変わっているが・・・しっぽも丸いし

「・・・と、そんな事を聞いてるんじゃない、ブリッジにそんな物もちこんでどういうつもりだと聞いてるんだ!!」

ゴートの問いにあわてて口を開きかけたササミだが、ミナトはそっとそれを制し引き続きゴートとの矢面に立った

「物とはなによ物とは、リョウちゃんは物じゃないわよ・・・こんなに可愛いのにね」

「そういう事を言いたいのではなくてだな・・・不謹慎だと」

「可哀想に、こんなに怯えて、大丈夫お姉さんが守ってあげるから食べられたりしないわよ」


「誰が食べるか〜っ!!」


そりゃまあそうだわな、これが某突撃艦の監督官ならルティモンドにして食べてしまうかもしれないが(苦笑)
(ちなみにルティモンドとは、とある惑星の煮込み料理で・・・そこは白菜と料理人が死闘を演じるすごい所らしい)

とはいえゴートさん、このくらいで怒鳴るようではそろそろ勝敗は見えてきたかも・・・


「あれ、どうしたんですかゴートさん、朝から怒鳴ったりして?」


さらに遅れて入ってきたのは、艦長のユリカと副長のアオイ・ジュン (20) の二名であった


「ああ、艦長いいところに来た、艦長からも何か言ってやってくれ、
 艦内に、それもブリッジ内にネコを持ち込むなどと不謹慎な行為を・・・・・・」


ゴート氏はまだユリカという人物をよく判っていなかったようだ。
これが某突撃艦艦長ならゴートの意見を是としたろうが、この人の場合・・・


「あー可愛い、ねえユリカにも見せて見せて、名前なんていうの? 私も抱かせてもらってもいいかな?」


「か、艦長・・・」


「へえ〜っ、この子リョウちゃんて言うんだ・・・どうかしたんですかゴートさん?」


リョウちゃんを抱かせてもらい名前も聞かせてもらったユリカは上機嫌でゴートに向き直った
ゴートはすがる様な目で副長を見、それに対してジュンはただ諦めた様な表情で首を振るだけだった


「さて、その件はひとまず置いておくとして、ブリッジ要員全員が揃った所で重大発表といきますか」


そう言いつつ、さっきの件は勝負あったなと思うプロス
さすがにブリッジにネコを持ち込まれては困るが、それ以外では譲歩の必要あるだろう、それは後で交渉するとして・・・


「ごめんミナトお姉ちゃん、ササミがリョウちゃんを連れてこなければ・・・」

申し訳無さそうな顔をしてこっそりあやまるササミにミナトはやさしく微笑んで言う

「いいのよ、私たちも悪ノリしていたしあなただけの責任じゃないわ、気にし過ぎなくていいわよ、それに・・・」

あの石頭にはいい薬だろうとも思う。
注意するにせよあの言い草ではこちらもカチンと来るしこちらも非を認めづらいではないかとも思う
そしてミナトはそういう態度には反発を覚えるタイプなのだった



「全艦に艦内放送の準備が出来ました」

メグミからプロスに報告があがりプロスはうなずいた

「では、始めますかな」



食堂ではすでにアキトの自己紹介は終わっており、あさの準備に大忙しだった。

ともかくも、ホウメイさんや助手の女の子達(後のホウメイガールズ)に暖かく迎えられ
アキトの新しい職場での生活が始まったのであった・・・のだが


「ん、何かな?」


艦内放送が始まり、食堂の大モニターにもブリッジの様子が映し出されたのであった


話を切り出したのはプロスペクターからであった

「今まで、ナデシコの目的地を明らかにしなかったのは、妨害者の目を欺く必要があったためです
 ネルガルがわざわざ独自に機動戦艦を建造した理由は別にあります
 以後ナデシコはスキャパレリプロジェクトの一端を担い軍とは別行動をとります。」

そこでプロスは一旦言葉を切り、それをフクベ提督が引き取り目的地を言い放つ

「我々の目的地は火星だ!」と





「火星? もう一度火星に行ける!?・・・」

それを聞いた瞬間、アキトは一瞬何の事かわからなかったが次には歓喜の感情が満たされていくのを感じた

「こらあっ、さぼるんじゃない」

ホウメイさんの怒声が飛び、あわてて持ち場にもどるアキト

「もう一度火星に行けるんだ・・・ギンジ父さんやホノカ母さん、それにアイちゃん・・・どうなったのかわからないけど」

でも、行って確かめる事が出来る、もしかしたら助ける事ができるかもしれない
今までは成り行きでナデシコに乗り込みここにいる。
だが、この瞬間、アキトには積極的にナデシコに乗り込む理由が出来たと言える・・・もう一人、ササミにとっても



「では、現在地球が抱えている侵略は見過ごすというのですか?」

根が生真面目なジュンは思わず疑問を投げかける、彼には容認しがたいのだろうか

「多くの地球人が火星と月に殖民していたというのに、連合軍はそれらを見捨て
 地球にのみ防衛線を引きました。火星に残された人々と資源はどうなったのでしょう?」


「生きてるよ・・・きっと生きてるよ、生きているって信じなきゃササミたちは・・・」
そう言うササミの声は、いつもの明るい調子でなく、辛そうな、泣きそうな、震える声で・・・

「ササミちゃん・・・」
そんなササミをミナトは心配そうに見ていた
今まで明るいササミちゃんしか見たことなかったから・・・一体この子はどんな経験をしてきたのだろう?


「・・・と、とにかく確かめる価値は・・・」
「ないわねそんなこと」

プロスの言葉をさえぎるようにムネタケが現れてそう言い放つ

同時にナデシコ艦内各所で武装した兵士たちによって要所を制圧された
兵士はクルー達に銃を突きつける。
もちろん食堂も例外でなくアキト達も銃を突きつけられていた


「ムネタケ、血迷ったか!!」

「うふふふ、提督この艦をいただくわ」

余裕があるのか何か楽しそうだねムネタケくん


「その人数で何が出来る!」

とはゴートの言、まあ確かに二百人以上乗員のいるナデシコを制圧するには少ないかも
あくまで彼らだけならではあるが・・・・・・


「わかったぞ!、おまえら木星のスパイだな!?」
自覚なくボケかますのは熱血野郎ヤマダ・ジロウ(自称ガイ)

銃を突きつけられたちまち大人しくなったが、それでいいのか自称正義?


「勘違いしないで、ほら来たわよ」



ナデシコ前方の海中より、先回りしていた極東方面軍所属、第三艦隊旗艦戦艦トビウメが現れた


「こちらは連合宇宙軍第三艦隊提督、ミスマルである。」

スクリーンに現れたのはごっついサリーちゃんのパパ、艦長ユリカのおやぢであった

「お父様、これはどういうことですか?」


「ユリカ〜ッ、元気か〜ッパパは心配で心配で〜ッ」


「お父様、元気かといわれても昨日の朝お会いしたばかりではないですか」


何でもいいがいきなりのサリーちゃんのパパ砲の炸裂である。ブリッジは多少(?)混乱していた


「お、親バカって、家の親が一番かなと思ってたけど・・・上には上が居るんだね・・・」

どうにかダメージから回復したササミの率直な感想であった・・・確かに上には上かも・・・・・・



「こ、困りましたな、軍とは話し合いはついているはずなんですが・・・ナデシコはネルガルが私的に使用すると」

これまたサリーちゃんのパパ砲から回復したプロスさん、すかさず会話に切り込みます

「我々が欲しいのは今確実に木星蜥蜴どもと戦える兵器だ!! それをみすみす民間に!」

「いや〜さすがミスマル提督分かり易い、では交渉ですなそちらにうかがいましょう」

「よかろう、ただし作動キーと艦長は本艦があずかる」



と、いうことで、作動キーを艦長のユリカが抜いてしまいナデシコはその場で停止
プロスと副長のジュンを伴ってトビウメに行ってしまった



他の主要メンバーはナデシコ食堂に集められ、まとめて監禁されたのだった

「自由への夢は一日にして終わる・・・か」

「だーっあきらめるな、まだ希望はそこにある」

「はいはい・・・」


何か暑苦しい熱血バカが騒いでいるが、それはどうでもいいとして


「なんかがっかり、戦艦に乗ればかっこいい人いっぱいいると思ってたのに」

何か当てが外れちゃったねメグミちゃん、でも何か違わない?


「まあ、世の中そんなものよ」

何ていうか・・・悟ってますねミナトさん


「でも、ネルガルのヒゲメガネの人大丈夫かな? ちょっと頼りないよねえ」

「人は見かけによらないよメグちゃん、意外とね大丈夫よ」

ミナトさん、案外人を見る目があるのですね・・・



そんな会話がなされている別の一角では

「よーしおれが元気の出るものを見せてやる」

そう言いつつ秘蔵のビデオディスクとプレイヤーを取り出すヤマダ(自称ガイ)



「すんげえ旧式のプレイヤーだからさあ、今のテレビに映すの面倒なんだよなあ・・・」

ぶつぶつ文句を言いながらもウリバタケ、接続作業をおえたようだ



と、その頃、カワイ兄妹は厨房でジャガイモの皮を剥いていたりして

「あ、お兄ちゃんこれも皮剥いとくね・・・」

「ありがとう、ササミ」

手伝ってくれているササミの手つきは手馴れたものであった。
お兄ちゃんを手伝いたい、という事もあるが、今は何かやっていないと落ち着かない気分なのだろう
また火星に戻る事できるかもしれないと知らされた直後におあずけ食っているのだから

苦笑しながらその様子を見るアキト、もっとも彼も今おかれている状況にあせりが無いとは言えないのだが・・・
そういう意味では兄は妹の気持ちがよくわかるのだ

『それでも僕は火星に行きたい・・・もう一度』

あせる気持ちを抑えるように、アキトもジャガイモの皮を剥いていた。
と、そんな時

「お二人さん何か始まるみたいだよ」

そうアキトとササミに話しかけて来たのは料理長のホウメイさん

「何かのビデオだってさ」



「さーて見て驚け、ディスク・イン・ザ・スタート、スイッチオン」

熱血バカヤマダの掛け声とともにビデオスタート、大スクリーンに映し出されたのは・・・


「ゲキガンガースリー」

昔のアニメだった

その瞬間、そこにいた者ほとんどが表情を引きつらせ固まっていた



「何だこれは?」とはゴートの問い

そのゴートの問いにヤマダ(自称ガイ)嬉しそうにゲキガンガーの解説を始めるのであった



お兄ちゃん、これって・・・

ばか、目をあわすな、かかわっちゃ駄目だ・・・

どうやらこの世界のアキト君、家族や妹がいるせいかまっとうな感性(?)もっているようだ

何にせよ、ナデシコ食堂でのゲキガンガーの上映会が始まったのであった





そのころ、トビウメの応接室では

ユリカの父、ミスマル・コウイチロウ提督がケーキを並べて娘の機嫌をとっていた

まあ、お茶を飲みながら世話ばなししていたということで・・・

と、ここで奥での話し合いが終わったのかジュンとプロスペクターが入ってきた

「結論は出たかね?」

ミスマル提督の問いにプロスぺクターははっきりと宣言する

「はい、協議の結果、ナデシコはあくまでわが社の私有物でありその行動に制限うける必要なし」





また場面はナデシコ食堂

上映中のゲキガンガーは話の内容が佳境に入っているようだ
主人公達がしきりに決め台詞を言ってたりする



「しかし暑苦しいなこいつら・・・」

ウリバタケさん、主人公達のセリフにうんざりしながら感想です

「武器の名前を叫ぶのは音声入力なのか?」

ゴートさん、真面目腐った顔をしてボケをかましてます・・・本人はボケてるつもりはないだろうけど



「だーっ、ちがうちがう、これが熱血なんだよ、魂のほとばしりなんだよお〜っ

 みんな〜っ、このシュチュエーションに燃える物感じないのか?

 奪われた秘密基地、軍部の陰謀、残された子供たちだけで事態を打開して鼻をあかしてやろうとおもわねえか?」


ガイ、仁王立ちして熱血に演説します
どうでもいいが足骨折してたよな、大丈夫か君?



と、そんな中アキトは考え続けていた

まあ、この熱血アニメ見てなおかつ熱血バカの演説聴いたからでもないだろうが・・・でも

僕は火星に行きたい・・・行ってやりたいこと確かめたい事がある、いや行かなきゃならない

だってそこには大事な物があるのだから、僕やササミにとって大事な物、大事な事、大切な思い出

置いてきた物はたくさんある。

何よりもう一度火星にいかなくては何も始まらないと思うのだ

それがたとえ僕たち兄妹にとって辛い事でしか無かったとしても・・・・・・それでも



ドカッ・・・どさっ

気がついたらアキトは見張りの兵士をうしろから小突いて気絶させていた

「僕は火星に行きたい、火星を助けたい・・・たとえ無茶でも、ひょっとしたらみんなが言うように

 もう誰も生きていないかも知れないけど、でもここで何もしないでじっとなんかしていられない・・・僕は

 僕はもう一度火星に行きたいんだ、行って火星のみんなを助けたい・・・・・・」

「お兄ちゃん・・・・・・やっぱりお兄ちゃんもだね



アキトの宣言だった・・・それはたんなるコック見習いのたわごとかも知れない、だけど・・・

いいかげんな言葉は無く、裏表の無い心情はクルー達に素直に伝わったのだろうか

少なくとも、熱血の演説よりは・・・・・・



直後、ナデシコクルーによる反撃が始まったのであった・・・・・・



「カワイとかいったよな・・・くう〜泣かせるじゃねえか、気に入ったぜ」

何かしらんが熱血野郎も感動にふるえているようだ・・・どうなることやら





「チューリップだと?」

トビウメ艦橋にてミスマル提督が報告をうける

「護衛艦クロッカス、パンジー共に捕まりました」

「やつめ、生きていたのか?」

このチュ−リップは海中で活動停止していたので実害なしと軽視していたのだが、どうやら考えが甘かったらしい

ナデシコ拿捕のため海中に護衛艦を伏せさせていたのも仇になったようだ、二隻は次々チューリップに吸い込まれていく



「ただちに反撃の準備、さあユリカナデシコの作動キーを渡しなさ・・・ん!?」

気が付けばユリカはそこにはいなかった

「ユリカはどこだ?」

「ここですわ、お父様」

メインスクリーンに映し出されるユリカ、どうやらプロスといっしょにヘリに乗り込んでいるようだ

「ま、またんかユリカどこへ行くんだ!!」

「どこへって、ナデシコに決まってますわお父様」

さも当然と言った顔をしてそう言い放つユリカ

「ユリカ、提督に艦を明け渡すんじゃ・・・」

あれま、副長のジュン君置いてきぼり食っているようですね・・・陰薄いな君

「私そんな事言ったっけ?、それに艦長たるものたとえどのような時でも艦を見捨てるような事はいたしません。

 そう教えてくれたのはお父様ですわ」

「し、しかし・・・」

「それではお父様、私はこれで・・・ケーキごちそう様」

「ユ、ユリカーッ!!」

親ばか親父の絶叫を残してユリカは行ってしまった・・・例によってジュンは置き去りか(涙)



「ぶいっ、今から帰ります、お迎えよろしく」

「なっ!?」

ユリカの通信に驚くムネタケ
そのムネタケの元に次々とナデシコが逆制圧された報告が入る

そのブリッジも・・・どこからともなく飛んできた鍋でムネタケ撃沈し、あっさり制圧された

「はっはっはっ、ちょろいもんさね」

とはホウメイさん・・・いいのか料理人が鍋投げて・・・

「ぶいっ」

最後はミナトさんのブイサインでシメのようです





そのころ格納庫のアキトたちは・・・

エステに乗りこんだアキトは慌ただしく発進準備していたのだが・・・

なれない作業に戸惑うオペレーターのササミが少し手こずっていた・・・とそこへ

「まてまて、それは陸戦フレームだ、飛べないヤツなんだよ!!」

おくれてやってきたウリバタケがあわてて指摘する

「ええっ、じゃあどうするの?」

ササミもあわてて聞き返す

「さいわい空戦フレームは準備できてる、あんたの兄貴にすぐ乗り換えるように指示しな」

幸か不幸かササミが手馴れてなく、発進準備がおくれたため陸戦で出ずにすんだようだ





何にせよやや遅れながらもアキトは空戦フレームで出撃した

チュ−リップはエステが気になるのかアキトのエステに触手のような物を伸ばしてくる
アキトはそれを避けながら飛行していたのだが、結果的に囮の役をはたしている状態のようだ


「カワイさん、また囮になってくれるんですね?」

その声は、ヘリに乗ってナデシコにもどる途中の艦長ユリカであった。(あとプロスさんもいます)

「えっ?」

「この隙に私はナデシコに乗り込みます」

こころなしか艦長の声はうれしそう

「そういうつもりじゃないんだけどなあ・・・」

苦笑しながらつぶやくカワイ・アキト、気をとりなおして再びチューリップに向かい直す

ナデシコに向かうヘリのなかでユリカはカワイさんの事に思いを馳せる

『やっぱり私、あの人の事気になるな、どうしてなんだろう?』

理由はわからないけど気になるものは気になるようだ





何にせよブリッジにもどったユリカが作動キーを使用しナデシコを再起動させた


「それでは早速全速前進」

「ええっ〜!!」

ユリカの指示に驚くクルー

全速ったってその先はチューリップなのである・・・普通に考えたら無茶である

「い、行くの?」

おそるおそる聞き返すミナト

「行きます」

ユリカは躊躇なく言い切った





再始動したナデシコ、チューリップに向き直り前進を開始する

「なっ?やめろーっ、何考えてんだ!?」

アキトの言葉に前進を止めるわけでもなく、ナデシコはチューリップに突入する

思わずアキトは叫んでいた


「!ササミ〜ッ!!」


直後、チューリップの内側からナデシコによるグラビティーブラストによる砲撃で、これを完全に殲滅した



「内側からの砲撃・・・確かに凄いけど何考えてるんだ・・・」

アキトはほっとしつつもあきれたようにその光景を見ていた

確かに大胆な作戦だし硬い殻も実は内側は案外もろいものではあるが
チュ−リップがどんな物か、それによって作られるジャンプフィールドがどんな物か知らないから出来たとも言えるかも

それはともかくとして、ナデシコは今回もどうにか勝利を収め生き残ることができ
アキトの乗るエステバリスを回収すると、この海域を去って行ったのであった





「提督、ナデシコが当空域を離脱していきます。追撃しますか?」

幕僚の進言に、コウイチロウは首を振って答えた

「もうあの艦には追いつけんよ、作戦は失敗だ・・・」

もともと、まともに行ったのでは補足できないからこんな気の進まない作戦を行ったのである
それが失敗した今、とれる手段は限られているのだ・・・そしてこれ以上何もする気は無かった

「それはそれとして、アオイ君、君はこれからどうするのかね?」

「ユリカ・・・・・・」

ユリカに置いてきぼりにされたナデシコ副長アオイ・ジュン君は
ナデシコの去っていた方向をただ見つめているだけだった・・・・・・





つづく



あとがき

『プリティミューテーション・マジカルリコール』

・・・いやね、今プ○ティ○ミー<TV版>のビデオ見直しててついね(苦笑)

もっとも、このSSの砂沙美ちゃんは境遇が違ってるし、性格とか違ってきているけど、初心を振り返る意味でもね

細かい所、結構忘れているから参考になるなあ・・・

あと、天○○用やサ○ーのファンにこんなの砂沙美ちゃんじゃないとか言われたらどうしよう? と、びくびくしてましたが

ここまで書いたら何か自分のキャラになってきた感じですし、行けそうな気はします

天○無○や○ミーの他のキャラ出してみたい気もするのですが、バランス的に難しいかな? まあ、しばらくはいいや



がらっと話は変わりますが、ユリカさんまだアキトのこと気づいてません(爆)

これはもう狙ってました、せっかく『テンカワ』の姓を封印したんだからこれはやらなきゃね(笑)

でも書いてみると、ユリカさん勘がするどいのか、うすうす気づきはじめてる? どう引っ張るかなこれ?

河合さんの正体(笑)に気が付いたらやっぱり例のごとくなるのかな、アキト争奪戦に参戦・・・と

問題は、どこまで気が付かないように引っ張るかですが・・・一応考えてますが、意見ある人プリーズ



アキト君はTVシリーズほど実の両親の死に対してこだわりをもってません。

冷たい言い方かもしれませんが、あの事故は過去の出来事、このSSのアキトにとってもう終わった事なんです

むしろ、最近生き別れて生死不明の養父母、河合夫妻の行方のほうがよっぽどの関心事だったりします

そのせいもあってか、いまだユリカの事に気が付いてませんし、気が付いたとしても両親の死についてユリカに聞くこともありません

でも、いつか両親の死について向き合うことになるでしょうね・・・ナデシコに乗っているかぎり



あと、白い鉄さん、ネコもどきですがああいうのでどうですかね?(リョウオウキのこと)

もっとも、最近白い鉄さん来てないようなので、こんな事書いてもあまり意味が無いのかな?

といった所で、今回はこのへんで、次回もよろしく

(一応、次は星界の漂流者を書く予定にしてるんだが・・・どうするかなあ・・・・・・)少し悩み・・・

(ラピスナデシコに早めに乗せるかどうしようか? 誰か意見プリーズ)

 

代理人の感想

OVAの第一期シリーズしか知らないので私には意見を求めないで下さい(爆)。

でもそうか〜。

この世界のアキトはゲキガンガー見てない(あるいは大っぴらに好きだという感性の持ち主ではない)

んですね。

恐らく妹に「恥ずかしい」とか馬鹿にされて泣く泣く封印した暗い過去があるのでしょう・・・・

妹許すマジッ!←百%私情