(砂沙美の航海日誌「第七話」)
ササミは自分の部屋で一人ビデオを見ていた
それは、あのガイさんの持っていた『ゲキガンガー3』だった
なぜそんなモノ見ているのかと言うと・・・・・・
「みんな冷たいよね・・・人が一人死んじゃったのに・・・・・・」
パイロットのガイさんが、ナデシコを脱出していった軍人に撃たれて死んでしまったのだ
なのに、その死を本気で悲しんでいる人がいないのだから・・・
ササミは特にガイさんと親しかった訳ではない・・・だけど
少しだけだけどお話もして、ビデオを見る約束もして・・・
そんな人が突然死んでいなくなる・・・人の死に敏感なササミにはショックだったのだ
そんな様子を見てミナトお姉ちゃんはササミの事を慰めてはくれた
だけど、それはササミの心配をしたのであって決してガイさんの死を悲しんでくれた訳じゃない
敏感にそれを感じていたからササミは一人部屋でビデオを見ていたのだ
『もう一緒にって訳にはいかないけど、約束したから、ビデオを見るって約束をしたから・・・』
誰も悲しんでくれる人がいないのなら、せめてササミだけでも悲しんであげよう
こんな形でしかできないけれど、ガイさんのこと見送ってあげよう
このビデオを見ているのも、ササミなりの弔いなのであろうか・・・・・・
(ちゃんと本人の方も見送りしましたよ、一応)
あの日、第一次火星会戦の直後、ユートピアコロニーの地下でササミは多くの人の死に触れた
以来、そういう事に敏感になっていると言える
心のキズは目立たなくなってはいるけど、決して完全に癒された訳ではないのだ
そんな状態だったせいだろうか?
この日の夜、ササミの見た夢は・・・・・・
機動戦艦ナデシコ
砂沙美の航海日誌
〜第七話「それは遠い世界のナイトメア」〜
By 三平
Rambleさんから砂沙美ちゃんのイラストもらったので載せてみました
どうもありがとうございます(腰にあるケースは左右逆ですが、バランスの関係でだそうです)
ふと、ササミは気が付いた・・・・・・
ここはどこだろう?
どこかの空港か宇宙港だと思うけど、なぜササミはこんな所にいるんだろう?
「・・・無理しないほうがいいわよササミちゃん、中で少し横になっていたら?」
「いい、せめてみんなが無事出発する所を見届けたいし・・・・・・」
ミナトお姉ちゃんがササミの事心配そうに見ている
それと、ミナトさんの隣にいる女の子は誰だろう?
ササミの知らない人だけど、よく知っているような気もする??
それと、こころなしかミナトお姉ちゃん、少し老けてるような気が・・・・・・
よくわからないけど、だんだんわかってきた
ササミはお兄ちゃん達をお見送りしてるんだ
それにしても、アキト兄ちゃんと艦長とルリちゃんと・・・
どういう組み合わせなのかなこれは?
気分が悪い・・・なぜだかわからないけどササミ、身体の調子が悪くて仕方がないみたいだよう
立っているのがやっとで、本当は横になっていたいけど、
でもササミはお兄ちゃん達を見送りたい・・・・・・見送らなきゃ
「ミナトさん、あれがお兄ちゃん達の乗ったシャトルなんだよね?」
「ええ、そうよ・・・どうかしたの、浮かない顔をして?」
なぜだかわからない、だけど胸騒ぎがする・・・どうして?
嫌な予感がだんだん大きくなっていく
お兄ちゃん達を乗せて今しがた飛び立ったシャトルは、だんだん小さくなっていって・・・・・・
ドオオオォォォ〜ンンン・・・・・・
うそ・・・だよね?・・・・・・こんなの?
お兄ちゃん達が乗ったシャトルが爆発して落ちていく・・・こんなことって・・・・・・
「イヤだ・・・イヤだよこんなの・・・こんなのウソだよ・・・・・・」
「イヤだ!、お兄ちゃんアキト兄ちゃ〜ん!!」
わからない、もう何も考えられない・・・考えられるのは少しでも早くお兄ちゃんの所に行きたいと言う事だけ
だからササミは走った・・・うまく動かない身体がもどかしい・・・だけど・・・・・・
「砂沙美ちゃん、落ち着いて、駄目よ落ち着いて・・・」
ミナトお姉ちゃんがササミの事止めようとする・・・邪魔しないでよ、ササミは、ササミは・・・・・・
「はなして、はなしてよミナトさん
お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、
こんなのって・・・こんなのって・・・・・・」
イヤだっ、行かないで・・・
どこにも行かないで・・・アキト兄ちゃん・・・・・・
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、・・・・・・」
・・・ここは?
気が付いたらここはササミの部屋・・・
あれは夢?、夢だったの!?
イヤだ・・・あんなのは・・・たとえ夢でも・・・・・・
夢にしては妙にリアルだったしそれに・・・寒い、寒いよう・・・寒くて震えがとまらない
ササミの心が、身体が、がたがた震えて止まらない・・・・・・
『みゃう』
リョウちゃんがササミの事心配してササミの顔をなめてくれた・・・ササミの涙を・・・
あ、あれ? ササミ泣いてたんだ・・・・・・あんな夢見たからかな・・・
「リョウちゃん・・・」ササミはリョウちゃんを抱きしめた・・・少しでも温もりを求めて
だけど、暖かいはずなのに、ササミの心はちっとも温かくならない・・・寒いまま
悲しくて、寂しくて・・・・・・イヤだよ・・・ササミは一人ぼっちはイヤだよう・・・・・・
「どうしたんだササミ、こんな時間に?」
ササミがアキトの部屋をたずねて来た・・・ちなみにピンク色の人参柄のパジャマ姿で枕も持参してきている
ついでに言うと、頭はいつものツインテールをお団子状にして布でカバーしており
その頭の上にはいつものように、リョウちゃんこと、リョウオウキが乗っているようだ
艦内標準時間は現在は夜中、妹とはいえ、こんな時間にたずねて来るのは何事だろうか?
そう言えば、ササミはヤマダ・ジロウが死んだことで落ち込んではいたけれど・・・・・・
「ねえ、お兄ちゃん・・・今日は一緒に寝てもいいかな?」
「・・・いいけど、本当にどうしたんだ?」
だが、次の瞬間アキトはハッとした・・・ササミの様子がおかしいと気が付いたから
今にも泣きそうで、まるで何かに怯えているような・・・何をそんなに怯えているんだろうか?
「お兄ちゃんはどこにも行かないよね・・・どこにも行ってしまわないよね?・・・・・・」
ササミは今にも消え入りそうな声でそう言った
何があったのか知らないけれど、ササミが恐れているのはその事だろうか?
「・・・大丈夫だよササミ、お兄ちゃんはどこにも行かないよ・・・何か怖い事でもあったのか?」
そう言ってアキトがササミの頭を撫でてやると
ササミは泣き出してしまったのだった・・・その顔をアキトの胸に埋めて・・・・・・
「ササミ、夢をみたんだ・・・怖い夢を・・・
お兄ちゃん達がシャトルに乗ってて、それが落ちちゃって・・・お兄ちゃんたちは・・・・・・」
やっと落ち着いたササミが見た夢の話をしてくれた・・・
にしてもササミの夢の中で僕が死ぬなんて複雑な気分だなあ・・・(苦笑)
それに、あの艦長と、あのルリとかいう子と一緒だなんて・・・・・・どういう組み合わせなのかな(?)
「大丈夫だよ、お兄ちゃんはどこにも行かないよ・・・だから、安心しておやすみ」
アキト兄ちゃんはそう言ってくれた・・・ササミはお兄ちゃんと一緒に布団の中に・・・
そういえば、お兄ちゃんと一緒に寝るのは何年ぶりかな?
「お兄ちゃんて、暖かいや・・・」
アキト兄ちゃんの温もりにふれて・・・身体も暖かいけど、心も暖かく感じる・・・
優しくて暖かくて・・・お兄ちゃんの側だとササミは何か安心できるかな
さっきまで感じていた不安もだんだん晴れてきた気もする
「ササミは大きくなっても甘えんぼうさんなんだね・・・・・・」
お兄ちゃんの意地悪・・・いいもん、今だけは甘えん坊でも・・・
でも安心したらまた眠くなってきちゃった・・・だから
お兄ちゃん、お休みなさい
ササミは気づいてしまった・・・大切な人を失う事の痛みを・・・・・・いつか失うかもしれないという事を
ササミはまだ知らない・・・・・・遠い遠いどこかで大切な人たちを失って心に大きな傷を負った少女がいることを・・・
それが、この後どう影響を与えるかは、まだ誰にもわからないのだった
「ササミはもう寝たみたいだな・・・明日の朝までまでゆっくりお休み・・・ふぁ〜あ・・・僕も寝るかな」
翌朝は、ゆっくりどころか慌ただしく起きる事になる
次の目的地、L2サツキミドリが敵襲を受けたと緊急電が入り、その対応に追われる事になるのだから・・・
つづく
あとがき
今回は、サイドストーリー的な話になってますが・・・
今回の夢の話は、本来はまだ砂沙美は知る予定はなかったのですが・・・掲示板やメールでいろいろ書いていると
つい書きたくなっちゃいまして・・・予定だと砂沙美があのこと知るのは物語の後半になってからなんですけどね
だけど、断片的に夢で見るだけだからいいかな?(砂沙美にはくわしい事情までわかりません)
何であんな夢を見たのかは、意味は持たせてあります・・・まだ何の事かわからないですけどね
ちなみに、あの夢は『月の女神』の第一話のラストのあれです。 何であんな夢みたのでしょうね?
砂沙美ちゃんにはちょっときつかったかもしれませんが、ほとんどダメージはありません(まあ夢だし・・・)
でも、これをきっかけにいろいろ考えることになるかと思います。
さて、このあとどうなっていくでしょうね(少しだけストーリーに修正が入るかな?)
そんな所で、今回はこの辺で、次回もよろしくお願いします。
代理人の感想
まさか逆行者とか言いますかこの砂沙美?
それでなくても別世界の自分と夢の中で混信したとかなんとか・・・・。
ま、わかりませんけど(笑)。