(砂沙美の航海日誌「第八話」)
ナデシコが地球の防衛ラインを強行突破して宇宙に出た時から遅れること約一日後
連合軍の連絡用のシャトルがL2コロニーサツキミドリを目指していた
表向きは、物資の補給と人員の交代となっているが、実際はネルガルの依頼でナデシコの人員補充を行うためである
えっ、なぜそんな面倒な事するのかって?
先日のナデシコの強行突破のせいで、現在は連合軍とネルガルの関係が最悪なためである
それでも、蛇の道は蛇という訳ではないが、何事にも抜け道というものがあるようである
「・・・ふぁ〜あ・・・・・・夕べは変な夢見ちゃったけど、明日にはサツキミドリ二号か・・・
ルリさん今頃どうしているかな?」
そう言って起きてきたのは黒髪の六歳くらいの男の子
名前を『マキビ・ハリ』という。 愛称はハーリー君ね・・・
何でも良いが、なぜ連合軍のシャトルにこんな子供が乗っているのでしょうね?
何でも予備のオペレーターが必要との事で、この男の子に白羽の矢が立ったのであるが、
詳しい事は知らされていない・・・
ハーリーはルリさんの所に行ける、と単純に喜んでいるようだ(事情を知らないとはいえねえ・・・)
「夢?、夢ってどんな夢を見たのかな、ハーリー君」
「え!、いや何でも・・・たいした夢じゃないですよ・・・はは・・・」
腰まである黒髪の、まだ少女の面影のある女性が興味をもって聞いてきた
彼女は、雰囲気的にはおしとやかな日本人形のような外見であるが、外見のわりには活発で行動的であるらしい
このシャトルではまだ新人の『イツキ・カザマ』准尉である
本当は戦闘機、もしくは機動兵器のパイロット候補なのだが、まだ前線には配置されていないようだ
昨日からこのシャトルで同乗しているイツキの質問に、ハーリーは曖昧に誤魔化していた
それに対しイツキさんは少し残念そうである、シャトルの中は仕事をしていない時は退屈なのだ
とは言っても、ハーリーとしてもその夢は相手の退屈しのぎに話せる内容ではないのだ・・・
それでもイツキは聞きたがったのだが、その時コクピットの機長からイツキあてに緊急の呼び出しがあったのだった
イツキが席を立ったことでハーリーはほっとした
あの夢の内容が内容だけに、人に話すわけにはいかないのだ・・・
「火星の後継者とかナデシコCとか言ってもわからないだろうし・・・」
仮に理解されても困るだろう・・・今の時代では
ある意味その夢は、ハーリーにとって過去の栄光だった・・・いや未来のかな(苦笑)
火星の後継者相手に極冠遺跡でのナデシコCによる電子制圧戦
ハーリーの中の時間では、ほんの数ヶ月前の出来事だったのだし忘れるはずも無い
だが・・・・・・その夢には大きな違和感があった
艦長席にはルリの姿が無く、かわりに腰まである水色の髪の女性艦長
そして、夢の中の自分は自分がルリに対してそうだったように、その艦長にあこがれの感情を抱き、慕っていたのだから・・・
『なんだったんだ、あの夢は?』
ハーリーはそれを思い出し、何か大切な物を傷つけられた気分になってしまい・・・・・・
『でも、あの艦長・・・美人だったよな、ルリさんより大人っぽかったし』 (オイオイ)
身長もルリより高く(と言うよりルリが小さいのかな)、知的で落ち着いた雰囲気で・・・・・・でも
どこかもの悲しげな金色の瞳がもっとも印象的だったかもしれない
夢とは思えないほどリアルだったが断片的で、結局全部を理解できないでいたが
その辺は自分の経験した記憶でカバー出来るので、どういう事か事情は理解できた
「でも、なんであんな夢みたんだろう? それと、あの艦長は何て名前なのかなあ?・・・」
夢の中では『艦長』としか呼んでいなかったので名前がわからない・・・気にはなったのだがどうしようもない
・・・まあ、考えてもわからないし、気にしてもしょうがないか・・・・・・と、ハーリーが気を取り直したその時
「大変よ、サツキミドリ二号が敵の攻撃を受けたらしいわ!!」
あわてて戻って駆け込んできたイツキがそう言った
「・・・と、いう事は・・・それじゃ僕達はどうするの!?」
「知らないわよ、そんな事! これからそれを決めるみたいだけど!!」
何はともあれ、ここでも事態の迷走が始まったようであった
機動戦艦ナデシコ
砂沙美の航海日誌
〜第八話「不協和音」〜
By 三平
その日は(艦内標準時で)早朝から慌ただしく始まったと言えるだろう
突然、コロニーサツキミドリ二号でエマ−ジェンシーコールが鳴り響き、敵襲と判断された
その報告を受け、ナデシコでも警戒態勢を発令、ブリッジ要員も緊急招集されたようである
ちなみに、困った事に一番遅くブリッジにやってきたのは艦長だったりする(おいおい)
それはそれとして、コロニーにいた非武装の民間人は慌てて脱出をおこない無事脱出できたらしい
脱出後に誤報であるとわかったのであるが、直後に本当に木星蜥蜴の襲撃があり
出撃していたエステバリスのパイロット達に撃退されたが、この戦闘でサツキミドリも大きな損害を受けたらしい
結局は居住区にも大きなダメージを受けたらしく、コロニーを放棄してこのまま避難する事になったのだという
とりあえず、もうじきナデシコは脱出船団とすれ違うので
そこで合流予定だったパイロットたちとエステバリスのゼロG戦フレームを回収することになったようである
だが、彼らは知らない・・・本来の歴史ならば(?)ナデシコの到着直前に敵襲があったはずだという事を
なぜ、あの時エマージェンシーコールが鳴ったのだろう?
誰も気づかないうちに、あるいは自覚しないうちに少しづつ歴史は書き換わっているのだろうか?
ふと、ミナトはササミの方を見た
昨日はあれだけ落ち込んでいたのだが、今は表面的には落ち着きを取り戻しているようだ
「おはようササミちゃん。昨夜はよく眠れた?」
「・・・だ、大丈夫、ササミはもう大丈夫だから・・・ミナトお姉ちゃんにも心配かけちゃってゴメン」
表情はまだ硬さも残っているが、ササミちゃんどうやら何か吹っ切れているようだ・・・どういう訳か少し慌ててたが
そんな様子にミナトはホッとした・・・どうやら立ち直りつつあるようだ
この子は優しすぎるから、いつか大きく傷つかないか心配ではあるけれど
それにしても、さっき慌てていたのはもしかして・・・・・・
「ところで、ササミちゃんは昨夜はどこへ行っていたのかな? お兄ちゃんは優しくなぐさめてくれたのかな?」
「えっ、えっ、そ、そんなんじゃないよ・・・ササミはただ・・・・・・」
ミナトがストレートに切り込んでみたら、真正直な反応が返ってきたので、どうやらかまかけた通りのようだった
「そっか、やっぱり優しいお兄ちゃんの所に行ってたんだ、
今朝パジャマ姿のササミちゃんとすれ違ったからもしかしたらとは思ったけど・・・」
今朝は緊急招集がかかったため、あわただしく朝が始まったのだが、
準備して部屋を出たミナトは、慌てて自分の部屋に戻るパジャマ姿のササミとすれ違ったのだ
「だ、だから、そんなんじゃないんだってば・・・・・・」
顔を真っ赤にしてしどろもどろに反論しても説得力がないかもしれないねササミちゃん
いずれにせよ、こういう話になったらササミはまだミナトの相手には分が悪くてまともにはいかないようだ
「ササミちゃんたらかわいいんだから、まだまだ甘えんぼさんなんだね」
そう言って、ミナトはくすくすと笑うのだった
ササミは恥ずかしさのせいで顔から火が出るような気がしたとか何とか
『パジャマ姿の砂沙美ちゃん』 またもやRambleさんから頂きました。大変感謝です。
『まさかミナトお姉ちゃんに見られていたなんて・・・・・はずかしいよう・・・』
まあ、間が悪かったという事で・・・
でも、そう言われて改めて今朝の事思い出すと、顔が火照ってくるのが自分でもわかる
緊急招集でお兄ちゃんに起こされた後、あわてて部屋に戻ったからその時は意識する間もなかったけれど・・・でも
『ササミはアキト兄ちゃんと一緒に寝ていたんだよね・・・』
ふと、お兄ちゃんの笑顔を想い浮かべ・・・ドキドキ胸が高鳴っている自分に気が付き・・・
『違うもん、ササミとお兄ちゃんは兄妹だもん、そんなんじゃないよ・・・』
あわてて首を振ってよからぬ思考を追い払った
『でも、血はつながっていないよね?』・・・何かがそうささやきかけてくるような気もする
今までこんな事考えた事もなかった
意識した事もなかった・・・
物心ついた時からアキトがお兄ちゃんでササミが妹なのは当たり前の事だったから
だからササミは戸惑っていた、困惑していた・・・・・・
『砂沙美はアキト兄ちゃんの妹だよ、兄妹なんだよ・・・』
ともかくササミは自分にそう言い聞かせるのだった
ナデシコは、L2コロニーサツキミドリより脱出してきた船団とすれ違い
そこで合流するはずだったパイロット三人とゼロG戦フレーム五機のパーツを回収したのであった
「どーも、あたしパイロットのアマノ・ヒカル、蛇使い座のB型十八歳!
好きな食べ物は、ピザの端の固い所とちょっとしけったおせんべいで〜す。よろしくおねがいしま〜す」
「おおおおおおお!!」
格納庫でやって来た三人のパイロット達の自己紹介が始まったようである
三人ともうら若き乙女達(?)
男たち、特にメカニック達からは熱い歓声が上がる・・・何だかなあ・・・・・・
「オレの名はスバル・リョウコ、十八歳、パイロットだ・・・以上」
「だめだよリョウコ、もうちょっと愛想良く、趣味とか好きな物くらい言わないと・・・」
ヒカルがリョウコにそう言い、リョウコは仕方無さそうに言葉を続けた
「ちっ、かったりいなあ・・・しゃあない
特技は居合い抜きと射撃、好きな物はおにぎり、嫌いな物は鳥の皮、以上だ!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ〜〜っ!!」
何か知らんが、メカニック達中心に盛り上がっていますね・・・いやほんと
で、三人目は何か空気が違うような・・・・・・どんよりと・・・
「どうも、パイロットのマキ・イズミです」
そう言いつつ、ウクレレ片手になにやら言い始めたようで・・・
「・・・・・・・・・」(その場にいた全員凍結)
何があったのか・・・そこにいた人たちの記憶がすっぽりと抜けているようで・・・・・・(汗)
その後、パイロット達とブリッジ要員はブリッジに集まり今後の事を話し合う事になったようである
「ねえねえ、この船にはパイロットが二人乗っていると聞いたんだけど、誰なんですか?」
ヒカルが興味深そうに質問をしてきた
それに対し、艦長のユリカが質問に答えていた
「・・・一人は地球を脱出する時に死んじゃって・・・もう一人のカワイさんは今食堂でコックさんしています」
「「「コックさん!!?」」」
三人の声が呆れたようにハモッた・・・・・・そりゃあ見事に
「あ、いい機会だから皆さんにも紹介しときますね、メグちゃん食堂からカワイさんを呼び出して」
しばらくするとカワイ・アキト君が呼び出されてやって来た・・・何事か?といぶかしがっていたが・・・
「えーうそぉ、パイロットに見えないよこの人?」
第一声はこれ、いきなりそんな言い方は失礼でないかいヒカルちゃん・・・
でも、他の二人も同じ意見なのかアキトを見る目は不信に満ちていたが
で、さすがにいきなり呼び出されてこのあつかいは、おとなしいアキト君でもムッときたようです
「余計なお世話だよ! 人手が足りないからやってくれって言われて臨時でやっているんだ!!」
「あ、やっぱりそうなんだ、そんなんじゃないかと・・・・・・」
能天気にお気楽な口調でそう言うヒカルちゃん・・・彼女の場合、悪気がないだけに始末に悪いかも
「そんな言い方って無いよ、お兄ちゃんだって好きでやってたんじゃないけど
怖くても逃げたくてもみんなを守るために一生懸命頑張ってきたんだよ・・・・・・
お姉ちゃんたちみたいな本当のパイロットみたいにいかないだろうけど
でも、だからといってそんな風に言われなきゃなんないことじゃないよ・・・」
アキト兄ちゃんのこと認めようとしないパイロットたちの態度に腹を立てたササミのそれは本心だった
「そうね、アキト君には今まで何回も助けられて来たものね、
たしかに本職のパイロットにはかなわないだろうけど、彼がいなかったら、多分私たちはここにはいなかったわ」
ミナトはササミやアキトの援護をするようにそう言った
と言っても、本心からそう思っているだけに説得力は大きいかも
「そうですね、カワイさんいつも頑張ってましたもんね・・・むしろパイロットは素人なのによくやってましたよね」
メグミもカワイ・アキト援護モードのようである。ササミやミナトがアキト擁護だったせいもあるが、
たしかにアキトが一生懸命な姿を今まで見てきたから、メグミ自身もそう思うのであろう
「・・・ありがとうササミ、それにミナトさんやメグミさんも・・・
みんながそう言ってくれて、今までやってきた事が無駄じゃなかったんだってわかっただけでも僕はうれしい・・・」
初めはムッとしていたアキトだが、話を聞くうちにおさまってきた
なによりも、みんなは僕の事を認めてくれているんだ、という事がわかったのだから・・・かえって照れくさいかもしれない
(筆者自身、書いていて意外に思いました。砂沙美だけでなく、ブリッジのみんなはアキトの味方なんだもの・・・
多分、砂沙美ちゃんを通じてアキトに対するブリッジのみんなの認知度が高いせいもあるのでしょうか?
TV版とはえらい違いだね・・・アキトにかぎらずみんなが認めてくれるというのはやる気に大きく関わってくるかも)
ヒカルちゃんさすがにバツが悪そうです。
自分の発言が地雷を踏んだ事に気づき、笑って誤魔化して戦略的後退を始めたようです
まあ、パイロットらしくないと言ったのだって見た目で深く考える事無く思った通りに言っただけの事で、
ヒカルとしてはアキトの事否定してるつもりではないのだし・・・
むしろ、不機嫌そうにおさまりが悪いのは残りの二人、特にリョウコの方であった
とはいえ、この空気の中でこの二足わらじのトーシローのことけなす訳にもいかずに黙っていたが・・・
『気にいらねえ・・・何だってここの連中はそんな半端な奴をかばうんだ?』
リョウコはプロのパイロットであることに誇りとプライドを持っている
だから、半端な気持ちでパイロットを掛け持ちなどというふざけたヤツが許せなく思うのだろう
もっとも、リョウコはここに来たばかりでアキトの事もこれまでの事も知らないでそう思っているのであるが・・・
何にせよ、この時点でパイロット組とブリッジ要員との間に、アキトの件で見えない小さな溝ができつつあるようである
一体これからどうなりますやら?
ところで・・・・・・
「アキト?・・・・・・カワイさんの名前はアキト・・・・・・偶然よね・・・だけど・・・・・・」
今のちょっとした騒ぎをよそに、艦長のミスマル・ユリカさんぶつぶつ何か言ってるようです
さっきミナトさんがアキトという名前を出してからこうなったようですが・・・(や、やっと気づきましたか・・・)
じぃ〜〜〜っ「えっええっ!! 何、なんでしょうか!?」
気が付きゃみんなの視線を受けていることに気が付いたユリカさんあわてて聞き返します
「何って・・・パイロットの皆さんにカワイくんの紹介もするからって呼び出したのはユリカじゃないか、忘れたの?」
ため息まじりに副長のジュン君がフォローします・・・ほんと、苦労するよね
「あははそうだったね、じゃあカワイさん、改めて自己紹介のほうをお願いします」
そんなわけで、カワイ・アキト君をはじめ、ブリッジ要員たちも改めて自己紹介を済ませたのであった。
『カワイ・アキト・・・カワイさんの名前はアキト・・・・・・』
ユリカさん、何か心に引っかかるようです
だけどカワイという姓が邪魔をして答えまでたどり着けないようだ・・・でも時間の問題かなこれは(苦笑)
「SOSを確認、後方のシャトルからです」
メグミから報告があがる
ナデシコは現在速力を落とし、地球からサツキミドリで合流するはずだったシャトルを待っていたはずだったが・・・
どうやらそのシャトルが敵の攻撃を受けて現在逃走中らしい
「エステバリス隊の発進準備は?」
いつもはおちゃらけているように見える艦長ユリカだが、こういう時はびしっとしている
「準備は万全、こっちはいつでもいけるぞ!!」
格納庫のウリバタケからコミニュケ越しに報告、短期間のうちに整備完了させているあたりさすがだったりする
「俺たちならいつでもいいぜ」
リョウコたち、パイロット三人娘も準備オッケーのようだ
「僕も行けます」
カワイ・アキト君も準備ができたと報告した
「・・・何だ? オメェもくるのかよ?」
「何だよ、そのとげのある言い方は?」
「別に・・・まあせいぜい俺たちの足を引っぱらねえように後からゆっくりついて来るんだな」
まあ、気に入らないのはわかるが、アキトにいちいちつっかかるのは大人気ないよ、リョウコさん
態度といい、言い草といい、リョウコは完全にアキトの事を見下しているようですね・・・無理ないかもしれないが
何にせよ、ちょっとした不協和音を奏でつつエステバリス隊はスクランブル発進して行き、
直後にナデシコは反転し、シャトルとの合流を急ぐのであった
補充のオペレーター、ハーリーを乗せたシャトルは、木星兵器のバッタ達と命がけの追いかけっこの真っ最中であった。
所々被弾した跡があるが、幸い損害は軽微であるようだ・・・そのコクピットをのぞいて見ると・・・・・・
「今度は左後方のバッタから攻撃!!、移動ポイントは・・・」
「了解・・・って、無茶な機動させないでよ、ほとんど曲芸飛行じゃない!!」
とか何とか言いつつイツキさん、その無茶な機動をやってのけるのはさすがかもしれない
何をしているのかと言うと、イツキが操縦桿にぎってシャトルを操縦して敵の攻撃をかわし
ハーリーが敵の動きや攻撃をトレースして、それに対して回避ポイントをナビゲートしているようである
二人とも命がけなだけに『マジ』である
ところで、本来の機長や副操縦士は最初の被弾で負傷してしまったようで(汗)
そんなわけで、この二人が代役やっていたのだが、即席なわりにどうにかうまくいっているようである
もっとも、いつまでもつのか保障の限りではないが・・・・・・
『冗談じゃない!、ルリさんにもう一度会うことなくこんな所で死んでたまるか!!、絶対生き延びてやる!!』
『・・・何もしていない、私はまだ何もしてないよ・・・まだパイロットとして実戦に参加もしてないし
それに・・・それに、私はまだ素敵な出会いも恋もしていない・・・まだ死にたくないよ・・・・・・』
それぞれの想いを胸に、生き残るために必死で二人は頑張っていた、それがどうやら報われそうだ・・・
だんだんシャトルは追い詰められて、今まさに攻撃せんとしていたバッタがいきなり火を噴いて爆発した
そのバッタだけでなく、他のバッタ達も次々打ち倒されていく・・・
どうやらナデシコのエステバリス隊が戦場に間に合ったようである。
颯爽と現れる三機のエステバリス・・・
うん?三機?、出撃したのは四機のはずだが・・・・・・そんなわけで、ここに来るまでの話
「うわあああ〜っ、ど、どうすればいいんだ・・・」
・・・どうやらアキト君だけ、ゼロGの宇宙での操縦に慣れていないようだ・・・
うまく操縦出来ずにふらふらしているのはまだいいほうで、バランス崩してあさっての方向に飛んだりして
そのため、三人娘について行けずに、アキト君はまだ戦場に到着できていない
『はっ、いわんこっちゃない、だからトーシローは・・・』
とまあ、リョウコあたりの言い草はあいかわらずこんな調子であるが
ま、この場にいない人の話はおくとして、三人娘達はバッタ達をほぼ片付け、この辺りの安全を確保したようである
「た、たすかった・・・」
どうやら生き延びることが出来そうで、ハーリーもイツキもホッと一息、リョウコたちも緊張を解いた・・・その時
残骸に隠れてたバッタがシャトルに向かって突っ込んでいく
「し、しまった!!」
「ああっ!?」
「ちいっ!!」
一番近くにいたイズミがラピットライフルで狙撃しようと狙いをつけるが、射線上にはシャトルが・・・撃てない!!
「わあああっ!!」
「い、いやあああぁ〜っ!!」
ハーリーもイツキも悲鳴をあげた・・・もう駄目だ
「させるか、食らえっ!!」
絶妙なタイミングで現れたようだねアキト君
アキトのエステバリスによるディストンションフィールドの高速アタックで、最後のバッタも撃破され、この戦いは終わった
「・・・今度こそ助かったみたいねハーリーくん・・・あれ、どうしたのハーリーくん、ハーリーくん・・・」
あわてて気絶したハーリーを起こしにかかるイツキさん・・・
ちなみになぜ気絶したかと言うと、さっき悲鳴を上げていた時イツキがハーリーを思い切り抱き寄せていたからだろうか?
その時、いささか力が入りすぎたようで・・・
もっともハーリーくん、少しだけ幸せそうな顔をして気絶しているようですけどね・・・
「何なんだ、あいつは・・・認めない、俺はアイツの事絶対認めないぜ・・・・・・」
最後に現れておいしい所をさらっていったアキトに対し、リョウコはさらに反感をつのらせていったのであった(苦笑)
もっとも、リョウコ達が油断して詰めが甘かったせいでそうなった部分もあるのですけどね・・・
「ふう、何とかできたけど・・・でも、このままじゃあ駄目だよな・・・」
最後にシャトルを狙っていたバッタを一機だけだが撃破できたアキトだが、
今のままでは僕はパイロットとしては駄目だとも実感していた。
くやしいけれど、あのパイロット達の言うとおりだろう・・・僕はどうするべきだろう
はたして、これからどうするのだろうか?
それはそれとして、反転してきたナデシコとの合流もはたし、いよいよ彼らは目的地を目指すこととなる
ナデシコ、一路火星を目指して出発進行
これからかれらを待ち構えているのは何なのか? 今はまだわからない
つづく
あとがき
さあて、ようやく主要キャラ達も出揃ったようですね
リョウコ、ヒカル、イズミのパイロット三人娘にハーリーくん、さらにイツキさんまで入れちゃいました。
あとは、火星でイネスさんを合流させればほぼ完璧かな?
ラピスは・・・・・・今回は見送りました(何とハーリーに負けた?)一応どうするか考えてありますが
冒頭、ハーリー変な夢見たとのたまってますが、これは前回の砂沙美が夢を見たのと同じ理屈で設定してます
さらに言うならほぼ同じ時間に夢をみていたはずです。
その訳は、いずれ書くかもしれませんが、ルリがいなくて謎の女性艦長(?)のいるこの夢は何なのでしょうね?
ただ、砂沙美と違ってハーリーの場合は、少し違うとは言っても未来の事知っている訳ですからどうなるやら?
次回以降、砂沙美と接することが多くなるキャラだけに取り扱いがむずかしいかな?(夢はちと早まったかな!!)
まあいいや、なんとかしましょう。
アキトが三人娘、特にリョウコと険悪になるのは予定通りです(笑)
実は『Takuyaの戦い』でも書いてみたいと思っていたネタなんですよね・・・形をかえてここでやれました
(もっとも負けず嫌いのタクヤの場合、リョウコと罵り合いしたあげく、取っ組み合いまでやる予定でしたが・・・)
もっとも、アキトの方はそれほどリョウコ達を嫌っている訳でなく、リョウコが一方的に気に入らないと言っているだけですが
ただ、パイロットとして誇りをもっている自分達の前に、半端者がうろちょろしたら、気に入らないのは当然の感情かもしれません
(自分の仕事場にろくに仕事も出来ないやつがうろちょろして、こちらの邪魔までされたら、まあ腹も立ちますわな)
なのに、ブリッジの連中はアキトの味方だしね・・・僕も書いていて意外でした
砂沙美がアキトの味方をするのは当たり前なのですが、その流れでミナトさん、メグミちゃんと芋づる式に来るものなあ
これぞ連載の醍醐味か?予定外、予想外の事もおきますしね・・・
何にせよ、少しの間はアキトとリョウコ達は険悪になりますが、いずれリョウコもアキトの事認めるようになると思います
(その時、リョウコさんのとある感情にそれまでの反動が来るのですが・・・まあ、お約束かなあ、苦笑)
イツキはどうしようか迷いましたが、好きなキャラだしハーリー入れるこの機会に入れてみました
(イツキでなく天地無用やサミーのほかのキャラを入れることも考えてみたが、しっくりいかないので止めました)
そうしたら、イツキさん思いつきで入れたわりに良いポジションに入れそうですね
土壇場でアキトに助けられ、他のパイロット達はアキトと距離をおいている・・・アキトと親しくなるチャンスなんです
次回はいちやくヒロイン候補のトップにおどりでそうです。(これまた僕としては意外です)
元祖(?)ヒロインのミスマル・ユリカさんですが、そろそろ気づきます・・・次回かその次くらいかな?
うかうかしていたらカワイさん、もとい、アキトをとられちゃいますしね・・・当面の敵(?)はイツキかな
メグミがヒロインの目はサツキミドリのイベントが無くなったので当分なし・・・このままないかも?(議長・・・すまん)
砂沙美は前回の件をきっかけに、アキト兄ちゃんのことを意識しはじめました・・・ブラコン路線の第一歩か(苦笑)
ただし、兄妹という意識強いので、いきなりおかしな方向にはいかないと思いますが
アキトのほうはまだ完璧に砂沙美の事は妹と認識していますしね・・・さて、どうなるやら
(くどいようですが、砂沙美のベースはプリティサミーですが、ナデシコ設定にアレンジしたため、
だんだん別物になってきてます。が、ご理解お願いしますね・・・砂沙美ファンの方、怒んないでね)
そんな訳で、今回はこの辺で、次回もよろしくおねがいします
代理人の感想
おお、キャラが勝手に動き始めましたね(笑)。
三平さんの中でキャラクターに対する充分な量の情報が蓄積・整理された為に
特に考えないでもその情報を元に勝手にキャラが喋ってくれるわけです。
かの手塚治虫先生などは苦しい時に夢にアトムが出てきて励ましてくれたとか。
ただこれは単にデータがそろっているだけでは駄目で、
頭の中でそれらが有機的に結合している必要があります。
つまりキャラの何が好きだとかこういった過去があるとか言った個々の事柄だけでなく、
キャラクターの疑似的な人格が頭の中に出現している、とそう言う状態なんですね。
だから、頭の中でその人格を「起動」させればPCの中のプログラムの如く勝手に走って
勝手に答えを出してくれると。
ただ便利なんだけど、ノらないと書けないという欠点もあったりします。
・・・・・・・それは毎度の事か(爆)。